青森市の災害リスクと過去の災害年表|防災DB

青森市は、陸奥湾・青森湾の湾奥に位置する青森県の県庁所在地だ。市街地の大半が海に面した低地に広がり、背後に八甲田山系を持つ地形は、水害・津波・地震のいずれにも脆弱な構造を持っている。防災DBが算出した統合リスクスコアは87(極めて高い)。これは全国でも上位に入る水準であり、洪水・津波・高潮の3リスクが揃ってスコア100を記録している市区町村は、全国でも稀だ。

本記事では、NIEDの災害データベースと防災DBの125mメッシュ解析をもとに、青森市の過去の災害記録と現在進行形のリスクを詳しく解説する。


青森市の災害リスクの全体像

リスク種別 スコア(0-100) リスク水準
洪水 100 最大浸水深20m以上
津波 100 最大浸水深20m以上
高潮 100 極めて高い
地震動 85 高い
土砂災害 50 中程度
液状化 60 やや高い
統合スコア 87 極めて高い

2024年時点。防災DBによる125mメッシュ解析。

3つのリスクが同時に最高値を示す背景には、青森市の地形的な特殊性がある。市域の西側は岩木川が形成した津軽平野の沖積低地が広がり、市街地中心部は陸奥湾に向かって緩やかに傾斜する。海に向かって開いたすり鉢状の地形は、台風による高潮・河川氾濫・遠地地震による津波のいずれにも増幅効果をもたらす。


なぜ青森市はこれほど水害に弱いのか

防災DBの洪水メッシュ解析によると、青森市内では15本の主要河川で浸水想定区域が設定されており、合計252,066メッシュ(1メッシュ=125m×125m)が浸水ハザードエリアに含まれる。

主要河川の洪水リスク

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 最大浸水継続時間
岩木川 5,592 5.0m 336時間(14日間)
平川 3,104 5.0m 168時間(7日間)
浅瀬石川 2,214 5.0m 168時間
堤川 1,980 5.0m 72時間
十川 1,664 3.0m 336時間
沖館川 543 10.0m 72時間

防災DBの125mメッシュ解析(浸水深下限値)。

特に注目すべきは沖館川だ。メッシュ数こそ少ないが、最大浸水深が10mに達する区域が存在する。10mという深さは3階建て建物の屋根まで水没する規模であり、避難の余地がほとんどない。岩木川は影響範囲が最も広く、浸水継続時間が336時間(14日間)に及ぶ区域もある。これほどの長期浸水が起きると、水が引いた後の生活再建にも甚大な影響が出る。

浸水深の具体的なイメージ:
- 0.5m: 膝上まで浸水。高齢者・子どもの歩行が困難。
- 1.0m: 腰まで浸水。通常車両は走行不能。
- 3.0m: 1階天井まで完全水没。
- 5.0m: 2階の窓まで到達。建物ごと孤立。
- 10.0m: 3階建て建物の屋根相当。生命の危機。


過去の主要災害年表

NIEDの全国災害事例データベースに記録された青森市の災害を、被害規模順に解説する。

1968年十勝沖地震(昭和43年)— 死者5名

1968年5月16日午前9時48分、青森県東方沖を震源とするM7.9の地震が発生した。震源深さ26km。青森市では震度5を記録し、建物の倒壊・損傷が相次いだ。NIEDデータベースには青森市での死者5名が記録されており、建物全壊・半壊・一部損壊を合わせると膨大な被害が出た。

青森県全体の死者・行方不明者は52名に達し、そのうち33名が土砂災害によるものだった。この地震は「十勝沖地震」として青森県民に広く記憶されており、地震対策を見直すきっかけとなった大災害だ。

1991年台風第17・18・19号(平成3年9月)— 死者1名、半壊130棟

1991年9月28日、台風が連続して来襲し、青森市に甚大な被害をもたらした。死者1名、建物全壊16棟・半壊130棟・一部損壊1,521棟(NIEDデータでは453〜1,068棟の複数資料あり)。複数の台風が前線と重なって集中的に雨を降らせ、市内各所で河川氾濫・浸水被害が発生した。

1983年日本海中部地震(昭和58年5月)— 建物損壊

1983年5月26日にM7.7の日本海中部地震が発生。青森市でも建物の損壊(全壊3棟・半壊16棟・一部損壊201棟)が記録されている。この地震では秋田・青森の日本海沿岸に津波が押し寄せ、死者104名(全国)を出した大震災だ。青森市内での直接的な津波被害は限定的だったが、日本海沿岸の脆弱性を改めて示した事例として重要だ。

1994年三陸はるか沖地震(平成6年12月28日)

三陸はるか沖を震源とするM7.6の地震。青森市で震度6を記録し、建物被害が相次いだ。NIEDデータベースには青森市での具体的な死傷者数の記録がないが、青森市地域防災計画に重要災害として記載されている。

2004年台風第21号(平成16年9月)— 河川被害40件

2004年9月29日、台風21号と秋雨前線の影響で河川被害40件が記録された。床上・床下浸水も発生している。

2004〜2005年大雪(平成16〜17年)— 死者2名

平成16年から17年にかけての雪害で、青森市では死者2名を記録した。豪雪地帯である青森市では、雪害もまた重要なリスク要因だ。

全災害年表(NIED記録)

発生年 災害種別 主な被害
1967 台風・風水害 河川被害
1968 地震(十勝沖) 死者5名、建物損壊多数
1969 台風・風水害 河川被害
1974 台風 浸水被害
1975 台風・豪雨 浸水被害
1977 大雪 死者1名、浸水・損壊
1981 台風第15号 浸水・河川被害
1983 地震(日本海中部) 全壊3棟、半壊16棟
1991 台風17・18・19号 死者1名、半壊130棟
1993 地震(北海道南西沖) 記録あり(直接被害なし)
1994 地震(三陸はるか沖) 建物被害多数
1999 台風・風水害 河川被害8件
2000 台風・風水害 河川被害5件
2002 洪水 河川被害26件
2004 台風第15号・第21号 河川被害40件、浸水被害
2004〜05 大雪 死者2名
2005 風水害 河川被害8件

出典: NIED自然災害データベース(青森市地域防災計画記録)


津波リスク — 陸奥湾の増幅効果

青森市の津波リスクは全国でも最高水準にある。防災DBの125mメッシュ解析では、津波影響メッシュが139,622(推定浸水域約2,175km²相当)に達し、最大浸水深20m以上を記録する区域が存在する。

陸奥湾は入り組んだ地形を持つ湾であり、外洋から伝播した津波エネルギーが湾内で収束・増幅される特性がある。青森市はその奥部に位置するため、津波の遡上高が特に高くなりやすい。

青森市が警戒すべき主な津波シナリオ:
- 日本海溝・千島海溝型地震: 遠地津波として到達
- 青森湾西岸断層帯直下型地震: 震源が市直下のため初動が早く、避難時間が極めて少ない

2021年に青森県が改定した津波浸水想定では、青森市を含む陸奥湾沿岸の浸水想定が大幅に見直された。最悪ケースでは青森市単体で死者2万1千人・避難者11万6千人の被害想定が出ている(出典: 青森県2021年被害想定)。


地震リスク — 青森湾西岸断層帯

防災DBの125mメッシュ地震解析データによると、青森市の震度6弱以上30年発生確率は平均2.87%、市内最大では25.82%に達する区域がある。震度5弱以上は平均49.52%(最大97.34%)と、約半数のメッシュで震度5弱以上の揺れが想定されている。

青森市周辺の主要活断層:

断層名 想定M 30年発生確率
青森湾西岸断層帯 6.8 0.664%
津軽山地西縁断層帯北部北方延長 6.8 0.060%
津軽山地西縁断層帯北部 6.4 〜0%
津軽山地西縁断層帯南部 6.6 〜0%

出典: 防災DB・地震調査研究推進本部(2024年)

特に青森湾西岸断層帯は要注意だ。30年発生確率0.664%は全国的な平均より高く、直下型地震が発生した場合は震源が市街地の直下となるため、短時間で激しい揺れが来る。1994年の三陸はるか沖地震では青森市で震度6を記録しており、大規模地震への備えは一刻も早く整えることが求められる。


土砂災害リスク

防災DBの土砂災害メッシュ解析では、青森市内で2,572メッシュが土砂災害ハザードエリアに含まれる。土砂災害警戒区域数は134箇所(Gold層データ)。市の東側・南側は八甲田山系に連なる急峻な地形が広がっており、大雨・地震時の土砂崩れリスクが高い。

1968年の十勝沖地震では青森県内で33名が土砂災害で亡くなっており、地震と土砂災害の複合リスクは過去の災害でも実証されている。


避難施設一覧

青森市内には247箇所の避難場所が設置されている(防災DBデータ)。うち広域避難場所は6箇所。

広域避難所(主要6箇所)

施設名 住所
合浦公園 青森市合浦二丁目16他
青い森セントラルパーク 青森市浦町字橋本他
青森県総合運動公園 青森市安田字近野234-7他
新青森県総合運動公園 青森市大字宮田字高瀬地
野木和公園 青森市羽白字野木和58-3他
緑道公園(浪岡) 青森市浪岡浪岡字細田131-4他

市街地中心部は合浦公園・青い森セントラルパークが主要な広域避難所となる。津波警報が発令された際は、これら低地の避難所ではなく高台への垂直避難が最優先となる点に注意が必要だ。自宅から最寄りの避難所と複数の避難ルートを事前に確認しておくことが不可欠だ。


今からできる備え

自治体公式の防災情報を確認する

最低限の行動リスト

  1. ハザードマップで自宅の浸水深を確認する — 洪水・津波の両方を確認すること。自宅が浸水想定区域内であれば、早期避難の判断基準を決めておく。
  2. 避難場所と複数の避難ルートを決める — 津波時は高台への垂直避難が基本。低地の避難所は洪水時専用と割り切ること。
  3. 備蓄は7日分以上 — 大型台風・豪雪では道路が遮断されることがある。最低7日分の食料・飲料水を確保する。
  4. 青森市の防災メール・アラートに登録する — 避難指示が深夜に出ることも多い。気象庁・青森市の防災情報を受信できる体制を整える。

防災DB(bousaidb.jp)では、青森市の詳細な125mメッシュハザードデータを無料・登録不要で公開している。自宅住所を入力するだけで各種リスクスコアを確認できる。


データ出典

データ 出典
過去の災害事例(1967〜2005年) NIED(防災科学技術研究所)自然災害データベース、青森市地域防災計画
洪水浸水想定 国土交通省・青森県(防災DB 125mメッシュ解析)
津波浸水想定 青森県(2021年改定)、防災DB 125mメッシュ解析
地震動確率 地震調査研究推進本部(PSHA 2024年版)、防災DB解析
活断層データ 地震調査研究推進本部
避難場所データ 国土数値情報(nlftp)避難施設データ
リスクスコア 防災DB(bousaidb.jp) — 2024年時点
自治体防災ページ 青森市公式HP、あおもり防災ポータル

著者: 防災DB編集部 / 最終更新: 2026年4月
本記事のデータは公開情報に基づくものです。最新情報は各自治体・公的機関のサイトでご確認ください。