スコア計算ロジック v2.1

統合リスクスコアの算出方法を公開しています。全ハザードで学術論文に基づくフラジリティ曲線(被害関数)を使用し、損壊確率からスコアを算出します。

設計思想

場所の物理的危険性のみを評価 — 人口・高齢者率・インフラアクセスはスコアに影響させず、参考情報(context)として別途提供します。山奥の土砂災害危険区域は、人口0人でも危険度100です。

フラジリティ曲線ベース — 「浸水深3mなら建物被害率は何%か」を学術的な被害関数で定量算出し、その確率をスコアに変換します。

データはすべてBQ Gold層から提供 — 外部APIへの依存をゼロにし、安定性と速度を確保しています。

統合リスクスコア(INFORM方式)

EU/UNDRR INFORM Risk Indexを参考にした複合スコア集約です。単純な加重平均の「低スコアが高スコアで相殺される」問題を解消しています。

統合スコア = 最大ハザード × 0.4
+ 幾何平均(アクティブなハザード) × 0.4
+ 複合ハザードボーナス × 0.2

最大ハザード (40%): 6ハザード中の最高スコアを40%反映。「最悪のケース」を重視します。

幾何平均 (40%): スコア>0のハザードの幾何平均。算術平均と異なり、1つでも0に近いハザードがあると全体が下がります。

複合ボーナス (20%): 物理的に連動するハザードが同時に高い場合の相乗効果(地震×液状化、地震×津波、洪水×土砂)。

リスクレベル

0-19
極めて低い
20-39
低い
40-59
やや高い
60-79
高い
80-100
極めて高い

地震リスクスコア

根拠: 内閣府「南海トラフ巨大地震被害想定」(2013) / 村尾・山崎モデル

Step 1: 超過確率 → 計測震度

J-SHISの「30年以内に震度6弱以上の確率」をポアソン過程で年超過確率に変換し、対数線形補間で計測震度(SI 4.5〜7.0)を推定。

Step 2: 地盤増幅率による震度補正

J-SHISの地盤増幅率(ARV)で計測震度を補正: ΔI = 1.0 × log10(ARV)。軟弱地盤(ARV=2.0)なら+0.3程度震度が上がります。

Step 3: フラジリティ曲線で全壊確率を算出

建物構造×建築年代ごとの正規分布CDFで全壊確率を求め、全国平均の建物ストック比率で加重平均。

P(全壊) = Φ((SI - μ) / σ)
Step 4: A39密集市街地の延焼補正

木造密集市街地(国土数値情報A39)内では、地震時の延焼リスクを反映してスコアを最大25%増幅。木造率に応じた補正係数を適用。

洪水リスクスコア

根拠: 国交省「治水経済調査マニュアル」(R6改訂版)

浸水深 → 被害率(対数正規分布)

木造は浸水深1.5mで50%被害、RC造は3.0mで50%被害。構造別に被害率を算出し加重平均。

P(被害) = Φ((ln(depth) - μ) / σ)
継続時間補正

24時間以上の浸水で+10%、48時間で+20%、72時間で+30%。長時間浸水による構造材劣化を反映。

崩壊区域補正

家屋倒壊等氾濫想定区域(A31a/b)では流速による倒壊リスクを加算。氾濫流+30%、河岸侵食+15%。

内水氾濫統合

外水氾濫がない地域では内水氾濫(A51)の浸水深でスコアを算出。都市部で頻発する浸水被害を捕捉。

津波リスクスコア

根拠: Suppasri et al. (2013) Natural Hazards, 67(2), 951-973 — 東日本大震災MLIT調査25万棟データ

津波浸水深 → 全壊確率(対数正規分布)

木造は浸水深2.2mで50%全壊、RC造は5.0mで50%全壊。洪水とは異なるパラメータ(津波は波力・漂流物の衝撃で被害が大きい)。

標高補正

地盤標高に応じて実効浸水深を減衰。標高5m以上で×0.5、20m以上で×0.1。

高潮リスクスコア

根拠: 国交省 治水経済調査マニュアル(高潮被害の章)

洪水と類似の被害メカニズムだが、塩水による腐食と波力による構造被害が加わるため、洪水より厳しいパラメータを使用。木造は浸水深1.2mで50%被害(洪水の1.5mより厳格)。標高補正も適用。

液状化リスクスコア

根拠: Iwasaki et al. (1982) LPI / 若松 (2011) 液状化履歴マップ

AVS30 × 表層地質 → 簡易LPI

SPTデータなしで液状化ポテンシャルを推定。AVS30(地盤S波速度)が低いほど軟弱、表層地質(砂質沖積地盤、埋立地等)が液状化しやすいほど高スコア。地震動レベル(計測震度5強以上で顕在化)も考慮。

Iwasaki分類

LPI 0-5: 低い → スコア0-33 / LPI 5-15: 高い → スコア33-67 / LPI 15+: 非常に高い → スコア67-100

土砂災害リスクスコア

根拠: 土砂災害防止法に基づく区域分類

種別 × 区域レベルの定量マトリクス

ハザード種別の破壊力(土石流 1.0 > 急傾斜 0.85 > 地すべり 0.65)と区域レベル(特別警戒95 / 警戒70 / 指定50)の積で基礎スコアを決定。複数区域が重なる場合は密度補正を加算。

近傍メッシュ探索

125mメッシュの中心点がハザード区域のわずかに外側にある場合でも、周囲125m以内(隣接8メッシュ)に指定区域があれば「nearby_designated_area」としてスコアに反映します(距離減衰×0.7を適用)。

学術参考文献

  1. 内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)」(2013)
  2. 国土交通省「治水経済調査マニュアル」(R6改訂版)
  3. Suppasri, A. et al. (2013). Building damage characteristics based on surveyed data and fragility curves of the 2011 Great East Japan tsunami. Natural Hazards, 67(2), 951-973
  4. Iwasaki, T. et al. (1982). A practical method for assessing soil liquefaction potential based on case studies at various sites in Japan. Proc. 2nd International Conference on Microzonation, 885-896
  5. INFORM Risk Index Methodology — EU Joint Research Centre / UNDRR
  6. Midorikawa, S. et al. (1994). New attenuation relations for peak ground acceleration and velocity considering effects of fault type and site condition. J. Struct. Constr. Eng.