宮崎県五ヶ瀬町の災害リスクと防災年表|九州山地の最奥部を襲う土砂災害と五ヶ瀬川洪水
宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町は、防災DBの統合リスクスコア92(極��て高い)と評価されている。洪水スコア100、土砂災害ハザード区域数54。125mメッシュ解析では30,461メッシュが土砂災害リスク圏内に入り、五ヶ瀬川沿いに211メッシュが浸水想定域となっている。
五ヶ瀬町は九州山地の中央部に位置し、町域全体が標高500m以上の山間地だ。過去には台風による大規模な斜面崩壊で死者を出した災害も記録されている。日本最南端のスキー場で知られるこの町は、同時に九州で最も厳しい自然環境と向き合い続けている。
五ヶ瀬町の地形と災害リスクの構造
五ヶ瀬町は宮崎県の最北西端、熊本県との県境に位置する。町域は九州山地の脊梁部にあたり、北部の丘陵地帯でも標高500mを超え、南部の山岳地帯は1,000mを超える。日本最南端のスキー場「五ヶ瀬ハイランドスキー場」があることからも、その標高の高さがわかる。
五ヶ瀬川の源流域。 五ヶ瀬川は町名の由来にもなった一級河川で、ここ五ヶ瀬町に源を発し、高千穂町・日之影町を経て延岡市で日向灘に注ぐ。上流部は深いV字谷を刻み、国の天然記念物・高千穂峡を形成している。五ヶ瀬町内でも急峻な谷地形が発達しており、豪雨時には斜面水が一気に谷底へ集中する。
脆弱な地質と急斜面。 九州山地を構成する秩父帯・四万十帯の変成岩・砂岩泥岩互層は風化しやすく、豪雨や地震で崩壊を起こしやすい。防災DBの125mメッシュ解析では、町域の30,461メッシュが土砂災害リスク圏内にある。町のどこに住んでいても、斜面崩壊のリスクと隣り合わせだ。
複数の支流が合流する地形。 五ヶ瀬川本流のほか、三ヶ所川・神働川・川走川・旅草川・笹原川など多くの支流が町内を流れる。広域豪雨では複数河川が同時に増水し、合流点で水位が急上昇する。
過去の主要災害
台風による斜面崩壊と死者
五ヶ瀬川流域では、台風による大規模な土砂災害が繰り返し発生している。宮崎県の災害記録によれば、台風23号の際に五ヶ瀬町三ヶ所で病院裏山が崩壊し、死者6名という大きな犠牲が出た。山間集落では斜面崩壊が建物を直撃するリスクが常にあり、この災害はその典型例だ。
2005年9月 台風14号
2005年9月の台風14号では、五ヶ瀬川流域全体が壊滅的な被害を受けた。隣接する日之影町見立では9月3日から6日までの総雨量が1,201mmに達し、五ヶ瀬川が氾濫。大規模な土砂災害も各地で発生した。五ヶ瀬町でも道路の寸断や斜面崩壊が相次いだ。
令和2年(2020年)台風第10号・7月豪雨
NIEDの災害記録では、2020年に台風第10号と7月豪雨による被害が記録されている。令和2年7月豪��では九州各地で甚大な被害が出たが、五ヶ瀬町でも森林・林業関係の被害が発生した。
洪水・浸水リスク — 五ヶ瀬川と9つの支流
防災DBの125mメッシュ解析による、五ヶ瀬町域の主要河川の浸水想定は以下の通りだ。
| 河川名 | 浸水想定メッシュ数 | 最大浸水深 | 平均浸水深 |
|---|---|---|---|
| 五ヶ瀬川 | 211 | 10.0m | 5.50m |
| 神働川 | 131 | 10.0m | 3.85m |
| 川走川 | 73 | 10.0m | 6.30m |
| 旅草川 | 71 | 5.0m | 3.72m |
| 笹原川 | 56 | 10.0m | 3.86m |
| 三ヶ所川 | 53 | 5.0m | 3.78m |
| 黒峰川 | 49 | 5.0m | 1.83m |
| 緑川 | 42 | 10.0m | 6.14m |
| 宇谷川 | 33 | 5.0m | 2.98m |
五ヶ瀬川本流の最大浸水深10mは、V字谷の谷底で水位が急上昇する山間河川の特性を反映している。平均浸水深5.5mは2階の床を超える水位であり、通常の垂直避難では対応できない深さだ。
三ヶ所川の最大継続時間72時間にも注目が必要だ。3日間の浸水継続は、孤立した集落への救援が長期間困難になることを意味する。
つまり、五ヶ瀬町の洪水リスクは「面積は広くないが、起きた場合の深さと期間が極端」という山間部特有のパターンだ。
土砂災害リスク — 30,461メッシュの警戒圏
125mメッシュ解析で30,461メッシュが土砂災害警戒圏内に入っている。町域の大部分が急傾斜地であり、至るところに斜面崩壊・土石流の危険がある。54箇所の土砂災害ハザード区域が指定されている。
五ヶ瀬町の防災ハザードマップには全16地区の土砂災害ハザードマップが掲載されており、自宅周辺のリスクを確認できる。
地震リスク
防災DBの125mメッシュ解析による地震確率データ(2024年基準)は以下の通り。
| 指標 | 平均値 | 最大値 |
|---|---|---|
| 震度6弱以上(30年以内) | 2.6% | 20.9% |
| 震度5弱以上(30年以内) | 60.7% | 94.3% |
| 表層地盤S波速度(Avs30) | 617.8 m/s | — |
震度5弱以上の確率が平均60.7%と高い。Avs30が617.8m/sと岩盤質で地盤自体は硬いが、山間部の最大の脅威は揺れに誘発される斜面崩壊だ。地震後の降雨では、通常時より低い雨量でも土砂災害が発生しやすくなる。
避難施設一覧
五ヶ瀬町には32箇所の避難場所が設置されている。うち4箇所が広域避難所だ。
| 施設名 | 種別 |
|---|---|
| 五ヶ瀬町Gパーク(ドーム) | 広域避難所 |
| 上組小学校・体育館 | 広域避難所 |
| 三ヶ所中学校・体育館 | 一時避難所 |
| 三ヶ所小学校・体育館 | 一時避難所 |
| 五ヶ瀬中等教育学校・体育館 | 一時避難所 |
| 五ヶ瀬町役場 | 一時避難所 |
| 五ヶ瀬町町民センター | 一時避難所 |
| 坂本小学校・体育館 | 一時避難所 |
※全32施設の一覧は五ヶ瀬町防災ハザードマップを参照。
山間部では豪雨時に道路が寸断されやすい。避難は警報が出る前の早い段階で開始し、徒歩でも到達できる最寄りの避難所を事前に確認しておくことが重要だ。
今からできる備え
自治体公式防災情報
- 五ヶ瀬町防災ハザードマップ — 全16地区の土砂災害・洪水ハザードマップ
- 五ヶ瀬町公式サイト — 防災・緊急情報
- 宮崎県土砂災害警戒区域等マップ — 自宅周辺の土砂災害リスクを確認
具体的な行動
- ハザードマップで自宅の位置を確認する。 五ヶ瀬川・三ヶ所川沿いの低地は浸水深5〜10mの想定がある。河川沿いに住んでいる場合、早期の水平避難が必要だ。
- 裏山の状態に注意する。 降雨量が増えた際、斜面に亀裂が入る・小石が落ちてくる・湧き水が濁るなどの前兆現象があれば、直ちに避難する。
- 孤立に備えた備蓄を。 道路寸断による孤立を想定し、水・食料・医薬品を最低3日分用意する。冬季は積雪による孤立も想定し、暖房用燃料の備蓄も重要だ。
- 早めの避難行動を。 大雨注意報が出た段階で、高齢者・要配慮者の避難を開始する。山間部では「まだ大丈夫」という判断が命取りになる。
データ出典
- 災害事例データ: 防災科学技術研究所(NIED)災害事例データベース
- 洪水浸水想定: 国土交通省 浸水想定区域図(防災DB(bousaidb.jp)の125mメッシュ解析による集計)
- 土砂災害ハザード: 国土交通省 土砂災害警戒区域データ(防災DBによる集計)
- 地震確率データ: 地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図」2024年版
- 避難場所データ: 国土数値情報 避難施設データ
- 台風14号被害: 国土交通省 災害事例パンフレット
- 宮崎県災害記録: 宮崎県「宮崎県に被害を与えた台風・豪雨」
※統合リス��スコア・125mメッシュ解析は防災DB(bousaidb.jp)による独自算出。
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