加古川市の災害リスクと過去の被害|洪水・地震・津波・土砂崩れの年表
兵庫県加古川市は、防災DBの統合リスク評価で100点満点中89点(極めて高い)を記録する、播磨地域最大の防災課題を抱える都市だ。洪水・津波・高潮の3リスクがいずれも満点(100点)という状況は、市街地の大半が加古川の氾濫原に立地し、なおかつ播磨灘に面していることの必然的な帰結である。
868年の地震記録から2020年の台風被害まで、1,100年以上にわたって繰り返されてきた加古川市の災害史を、最新の防災データとともに解説する。
この街の災害リスクの特徴
播磨平野に刻まれた水害地形
加古川市は播磨平野の東部に位置し、兵庫県最大の一級河川・加古川が市内を南北に貫流して播磨灘へ注ぐ。上流の朝来市生野付近から全長96kmを流れ下った川は、市内で流れを緩め、広大な沖積低地を形成している。この地形が水害に強い側面はほとんどない。平野部は排水勾配が極めて緩やかで、短時間の集中豪雨でも内水氾濫が発生しやすい。
防災DBの125mメッシュ解析によると、加古川市内の洪水浸水想定区域は897,586メッシュ分に及ぶ。加古川本川(国土交通省管轄区間)では平均浸水深3.47m、最大10mという想定があり、3mを超えると一般的な2階建て住宅の1階は完全に水没する。加古川市が発行する総合防災マップ(令和2年版、令和7年12月更新)も1,000年に1度の豪雨を想定した最大規模の浸水深を市内14地区に分けて公開している。
国土交通省・姫路河川国道事務所によれば、加古川流域では記録に残るだけで100回以上の洪水が発生している。明治以降に本格的な河川改修が始まり、大正7年(1918年)に工事が着手、昭和8年(1933年)に概成したが、2004年の台風23号では流域全体で大規模な浸水被害が発生した。
複合する地震・津波リスク
加古川市の地震リスクは洪水と同等に深刻だ。防災DBの解析では、市内メッシュの30年以内の震度6弱以上発生確率は平均16.0%、最大56.2%に達する。これは全国的に見ても高い水準だ。震度5弱以上では平均77.5%、最大94.7%に上る。
背景にあるのは南海トラフ地震への近接性と、陸域に走る複数の活断層だ。1995年の阪神淡路大震災を引き起こした六甲・淡路島断層帯は市域の東方約30kmに位置し、市内の一部では当時震度5を記録したとされる(気象庁・震度データベース)。
地盤については、市内の平均S波速度(Avs30)は394m/sで、軟弱地盤の目安となる200m/s以下の地点は多くないが、加古川沿いの沖積地では地盤増幅に注意が必要だ。液状化スコアは40点で、河川沿いの旧河道付近では液状化リスクが存在する。
過去の主要災害(詳細)
1995年1月17日|平成7年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)
マグニチュード7.2、震源は淡路島北部沖。加古川市は震源から東北東約40〜50kmに位置し、神戸・芦屋・西宮の震度7地帯からは外れたものの、東播磨地域として被害が発生した。兵庫県の公式集計(消防庁確定値)では加古川市の死者は2名。市内のインフラ被害は神戸市に比べ限定的だったが、建物の部分損壊は複数発生している。
この震災が加古川市の防災行政に与えた影響は大きく、地域防災計画の抜本的な見直しや避難所の整備が進んだ。
2004年(平成16年)|台風23号
加古川流域に記録的な降雨をもたらした台風23号では、2日間の流域平均雨量が225mmに達し、加古川市内で浸水面積537ha・浸水家屋516戸に上る被害が発生した。当時の資料は国土交通省の加古川水系治水計画にも記録されており、近年最大級の水害として位置づけられている。
2020年9月5日|令和2年台風10号
台風10号による暴風・大雨が加古川市を直撃。NIEDデータセットに記録されており、被害状況等について消防庁が報告書を公開している。
1925年5月23日|北但馬地震
マグニチュード6.7、兵庫県北部(但馬地方)を震源とする内陸直下型地震。豊岡市などで甚大な被害が生じたこの地震は、加古川市(当時・加古川町)にも揺れが届いた。NIEDデータセットにも当市への影響として記録されている。
868年7月30日|播磨・山城地震
最も古い記録は平安時代にまで遡る。貞観10年(868年)7月30日に発生した地震は「★」資料(古記録由来)として防災DBに収録されており、山崎断層帯の活動に関連する可能性が指摘されている歴史地震だ(推測)。
過去の災害年表
| 年 | 月日 | 災害種別 | 災害名・概要 |
|---|---|---|---|
| 868年 | 7/30 | 地震 | 播磨・山城地震(古記録) |
| 1864年 | 3/6 | 地震 | (詳細不明、古記録) |
| 1916年 | 11/26 | 地震 | (詳細不明) |
| 1925年 | 5/23 | 地震 | 北但馬地震(M6.7) |
| 1949年 | 1/20 | 地震 | (詳細不明) |
| 1961年 | 5/7 | 地震 | (詳細不明) |
| 1984年 | 5/30 | 地震 | (詳細不明) |
| 1995年 | 1/17 | 地震 | 阪神淡路大震災(M7.2)・市内死者2名 |
| 2004年 | ― | 台風 | 台風23号・浸水516戸、浸水面積537ha |
| 2010年 | 5/23 | 大雨 | 大雨による被害 |
| 2010年 | 6/26 | 大雨 | 大雨による被害 |
| 2020年 | 9/5 | 台風 | 台風10号による暴風・大雨 |
出典:国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース、消防庁資料、国土交通省資料
洪水・浸水リスク
なぜ加古川市は水害に弱いのか
加古川本川は播磨灘の直前で急激に勾配を失う。このため、上流域で大雨が降っても加古川の水位が下がらず、支流や市街地の排水が加古川に戻れない「内水氾濫」が繰り返されてきた。市街地の多くが河川の氾濫原(旧来の洪水が堆積した低地)に立地しており、地形そのものが浸水しやすい構造になっている。
主要河川と想定浸水深
防災DBの125mメッシュ解析から、加古川市内の洪水浸水想定を河川別に整理する。
| 河川・管理者 | 浸水想定メッシュ数 | 最大浸水深 | 平均浸水深 | 最長継続時間 |
|---|---|---|---|---|
| 加古川(国土交通省管轄) | 2,958メッシュ | 10.0m | 3.47m | 168時間(7日間) |
| 県管理河川(兵庫県管轄) | 5,818メッシュ | 10.0m | 2.48m | 168時間(7日間) |
| 東条川 | 6メッシュ | 0.5m | 0.5m | 24時間 |
浸水深のイメージ:
- 0.5m:ひざ上まで浸水。歩行困難になる
- 1.0m:腰まで浸水。車は水没し始める
- 3.0m:1階天井まで完全に水没
- 5.0m:2階の床上まで浸水
- 10.0m:3〜4階建て建物の2〜3階まで水没
加古川本川沿岸の市街地では平均3.47mという推定は、1階建ての木造住宅が完全に水没し、居住者の生命に直結するレベルだ。加古川市が1,000年確率の最大規模浸水を想定していることからも、危機感の大きさが伝わる。
津波・高潮リスク
加古川市の南端は播磨灘(瀬戸内海東部)に接しており、津波スコア100点・高潮スコア100点という満点評価は、この海岸線の存在を直接反映している。
防災DBの解析では、津波・高潮浸水想定区域に該当するメッシュ数は5,174メッシュ、津波最大浸水深の下限値は5mとなっている。南海トラフ地震が発生した場合、播磨灘に接する加古川市南部(別府地区・尾上地区など)では、津波到達前に高潮の影響が重複する可能性がある点に注意が必要だ。
地震・活断層リスク
山崎断層帯の脅威
加古川市の地震リスクで特に注目されるのが山崎断層帯だ。兵庫県北西部から南東方向に延びる全長80km以上の活断層帯で、加古川市の北西部を通過する。
| 区間 | 想定M | 30年発生確率 |
|---|---|---|
| 主部北西部区間 | 7.1 | 0.35%(やや高い) |
| 那岐山断層帯 | 6.8 | 0.08% |
| 主部南東部区間 | 6.8 | 0.002% |
| 全区間同時活動 | 7.3 | 算定なし |
0.35%という数値は感覚的に低く見えるが、地震発生確率は平常時の他リスクとは根本的に性格が異なる。この断層が最後に大規模活動したのは約1,300〜2,500年前とされており、次の地震はいつ来てもおかしくない状態にある。
また、1995年の阪神淡路大震災を引き起こした六甲・淡路島断層帯(想定M7.3)が市域東方に位置しており、次回の活動時には加古川市も強い揺れに見舞われる可能性が高い(30年確率は現在の評価では低いが、1995年の前回活動から30年が経過している点に留意)。
地震動増幅リスク
市内の平均S波速度Avs30は394m/sで比較的良好な地盤環境だが、加古川本川の沖積低地や旧河道付近では地盤増幅率が上昇する。液状化スコア40点は、軟弱地盤が局所的に分布していることを示す。
土砂災害リスク
土砂災害スコアは50点(中程度)で、他の洪水・津波リスクと比べると相対的に低い。ただし、防災DBの解析では市内に851メッシュ分の土砂災害危険箇所が存在する。市の西部から北部にかけての山地・丘陵地(志方地区・上荘地区)では、土砂災害警戒区域の指定がある。
避難施設一覧
加古川市内には計87か所の避難施設がある。うち5か所が広域避難場所として指定されている。
広域避難場所(大規模災害時の最終避難先)
| 施設名 | 所在地 |
|---|---|
| 加古川運動公園 | 西神吉町鼎1050 |
| 志方東公園 | 志方町細工所1138-22 |
| 日岡山公園 | 加古川町大野1682 |
| 浜の宮公園 | 尾上町口里817-1 |
| 鶴林寺公園 | 加古川町北在家419 |
広域避難場所はビルや建物内部ではなく、基本的に公園・広場など倒壊の危険がない開放空間だ。地震直後の火災延焼回避を目的として指定されており、津波・洪水時の垂直避難(高層建物への避難)とは使い分けが必要だ。
収容避難所(主な施設)
| 施設名 | 所在地 | 種別 |
|---|---|---|
| ウェルネスパーク | 東神吉町天下原370 | 収容避難所 |
| 加古川総合文化センター | 平岡町新在家1224-7 | 収容避難所 |
| 別府中学校 | 別府町新野辺北町8-9 | 一時避難場所・収容避難所 |
| 加古川中学校 | 加古川町備後203 | 一時避難場所・収容避難所 |
| 中部中学校 | 野口町良野890-1 | 一時避難場所・収容避難所 |
今からできる備え
1. ハザードマップで自宅のリスクを確認する
加古川市の総合防災マップは全世帯配布されている(紛失時は防災対策課で入手可)。デジタル版は「かこナビ」でオンライン確認が可能だ。
- 加古川市防災ポータル: https://www.kakogawa-bousai.jp/
- かこナビ(WEB版ハザードマップ): https://www.city.kakogawa.lg.jp/section/hazardmap/index.html
- 加古川水系浸水想定区域図(国交省): https://www.kkr.mlit.go.jp/himeji/bousai/shinsui/kakogawa/kako_map.html
2. 防災DBで詳細リスクを確認する
防災DB(bousaidb.jp)では、加古川市の125mメッシュ単位の詳細リスクデータを無料で参照できる。自宅の住所を入力することで、洪水浸水深・地震確率・土砂災害リスクを一括確認できる。
3. 早めの避難行動を心がける
加古川では大雨時に上流域の状況が数時間後に下流の水位に影響する。上流で大雨という情報が入ったら、ハザードマップ上の浸水区域に住む方は警戒レベル3(高齢者等避難)の段階で移動を始めることが望ましい。南海トラフ地震の場合は、揺れが収まり次第すぐに津波避難ビルや高台への移動を開始する。
4. 備蓄と非常用持ち出し袋の準備
洪水では数日間の浸水継続が想定される(加古川本川沿いの推計最長168時間=7日間)。最低7日分の飲料水と食料、薬、充電器、ハザードマップを準備しておくことが現実的な対策だ。
データ出典
本記事は以下のデータソースに基づいて作成されています。
| データ | 出典 |
|---|---|
| 統合リスクスコア・洪水浸水想定 | 防災DB(国土交通省・各都道府県公開データを集計・加工) |
| 過去の災害事例 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース |
| 活断層データ | 国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)活断層データベース |
| 地震確率データ | 地震調査研究推進本部(文部科学省)全国地震動予測地図2024年版 |
| 避難施設データ | 国土数値情報(国土交通省)避難施設データ(nlftp_p20) |
| 台風23号被害 | 国土交通省・加古川水系治水計画資料 |
| 阪神淡路大震災被害 | 兵庫県・消防庁確定被害状況(1995年) |
| 洪水ハザードマップ | 加古川市総合防災マップ(令和7年12月更新版) |
| 加古川河川情報 | 国土交通省姫路河川国道事務所 |
著者:防災DB編集部|2026年4月5日公開
本記事のデータは記載の調査時点に基づきます。最新情報は各公式機関の発表をご確認ください。
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