清須市の災害リスクと歴史|洪水・地震・高潮が重なる「極めて高い」リスクの街

この街が抱える5つのリスク

愛知県清須市の統合リスクスコアは 91点(極めて高い)防災DB(bousaidb.jp)が全国市区町村を対象に算出した数値として、これは最上位クラスに属する。

洪水・津波・高潮・地震・土砂災害のすべてにおいて高リスクを抱えるこの街では、過去150年間に6つの大規模災害が記録されている。最も甚大な被害をもたらした2000年の東海豪雨では、新川の堤防が決壊し約29,000人が避難を余儀なくされた。1891年の濃尾地震(M8.0)は「日本観測史上最大の内陸直下型地震」として今も語り継がれる。南海トラフ巨大地震の30年以内発生確率が70〜80%と言われる中、清須市内の震度6弱以上確率は平均59%に達している。

2006年に清洲町・春日町・新川町・西枇杷島町が合併して誕生した清須市は、木曽川(西側)と庄内川(東側)という2本の大河に南北から挟まれた低平地に広がる。「河川が決壊しても流れ込む水をある程度受け入れる」という前提で形成されてきた土地の歴史が、現在のリスク構造を作っている。


なぜ清須市は水害に弱いのか

2本の大河に挟まれた低平地という宿命

清須市は標高2〜3メートル程度の低平地が大部分を占め、木曽川と庄内川に挟まれた地形にある。古くから洪水常習地帯であり、明治28年(1895年)の地図を見ると街道沿い以外はほぼ水田——水をため込むことが前提の土地利用だったことがわかる。1779年(安永年間)にも庄内川が氾濫し西枇杷島地区などを襲った記録が残る。

防災DB(bousaidb.jp)の125mメッシュ解析では、清須市内の洪水想定浸水メッシュが木曽川だけで約20,139メッシュ、庄内川で約4,974メッシュにのぼる。市内に125mの格子を敷き詰めた際の浸水影響エリアの広さであり、これは市域のほぼ全域が何らかの河川氾濫の影響を受けうることを示している。

軟弱地盤が地震動を増幅する

地表付近の地盤のS波速度(AVs30)の市内平均値は 219.5 m/s。これは「比較的軟らかい沖積低地」に相当し、地震動が増幅されやすい地盤特性を持つ。30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は市内平均 59.24%、市内で最も高いメッシュでは 77.09% に達する。震度5弱以上の確率は平均 92.97% と、この地域では強い揺れはほぼ確実に起きると考えるべきだ。


過去の主要災害

2000年9月11日 東海豪雨 — 新川決壊が招いた市域水没

2000年9月11日から12日にかけて、秋雨前線と台風14号が重なり、名古屋市では日降水量428mm・2日間合計567mmという記録的大雨が降った。清須市(当時は西枇杷島町・清洲町・新川町)では新川の堤防が決壊。庄内川の越水とも重なり、複合的な浸水被害が広がった。

浸水域は約19km²、被災住宅は18,000戸を超え、約29,000人が避難。清洲町・西枇杷島町・新川町を含む21市町に災害救助法が適用された。西枇杷島地区では浸水深が数メートルに達し、住民が屋根の上や2階に避難する事態となった。浸水が解消するまでに長期間を要した地区もあった。

この災害は清須市の地形的脆弱性を全国に知らしめた象徴的な出来事となった。現在の清須市地域防災計画の水害対策は、東海豪雨の教訓を骨格として組み立てられている(出典:清須市地域防災計画)。

1891年10月28日 濃尾地震 — 日本最大の内陸直下型地震

1891年10月28日午前6時38分、岐阜県の根尾谷断層を震源とするM8.0の巨大地震が発生した。日本の観測史上最大の内陸直下型地震とされるこの地震は、死者7,000人超・全壊家屋142,000棟以上という甚大な被害をもたらした(全国計)。清洲町(現・清須市)にも強い揺れが及び、市の防災計画にも当時の被害が記録されている。

濃尾断層帯は清須市の至近距離に延びており、現在もM6.5〜6.9クラスの断層が複数走っている。1891年の悲劇は、この地域が断層直下型地震にも脆弱であることを歴史的に証明している(出典:清須市地域防災計画)。

1944〜1946年 昭和東南海・南海地震 — 南海トラフの連続発生

1944年12月7日(M7.9、東南海地震)と1946年12月21日(M8.0、南海地震)は、南海トラフを震源とする2年連続の大地震だった。いずれも清須市地域防災計画に記録されており、南海トラフ地震が繰り返し発生してきた歴史を示す。現在の南海トラフ巨大地震対策において、昭和期の連続発生はその蓋然性の根拠のひとつとなっている。

1854年12月 安政東海・南海地震 — 1日違いの二連続巨大地震

1854年12月23日の安政東海地震(M8.4程度)と翌24日の安政南海地震(M8.4程度)は、わずか32時間の間隔で連続発生した。清須市地域防災計画はこれらを過去の重要災害として収録している。現在の南海トラフ巨大地震想定においても「東海・東南海・南海の3連動」シナリオが設定されており、安政期の事例はその現実性を示す歴史的証拠だ(出典:清須市地域防災計画)。


全災害年表

月日 災害名 種別 主な被害
1854年 12月23日 安政東海地震 地震 記録あり
1854年 12月24日 安政南海地震 地震 記録あり
1891年 10月28日 濃尾地震(M8.0) 地震 市域に記録あり(全国:死者7,000人超)
1944年 12月7日 昭和東南海地震(M7.9) 地震 記録あり
1946年 12月21日 昭和南海地震(M8.0) 地震 記録あり
2000年 9月11日 東海豪雨 風水害 浸水約19km²、被災住宅18,000戸超、避難者約29,000人

(出典:清須市地域防災計画、NIED自然災害データベース)


洪水・浸水リスク — 想定最大浸水深10m超

防災DB(bousaidb.jp)の125mメッシュ解析が示す清須市の洪水リスクは、全国でも最上位クラスだ。

河川名 影響メッシュ数 想定最大浸水深 平均浸水深 最大浸水継続時間
木曽川 20,139 10m以上 2.02m 336時間(14日間)
庄内川 4,974 10m以上 2.23m 336時間(14日間)
矢田川 2,530 5m以上 0.88m 336時間
八田川 1,000 3m 0.33m 72時間
香流川 933 5m 0.66m 336時間
天白川 770 5m 1.50m

浸水深の目安として、2mは1階天井付近まで水が来る状態、5mは2階建て住宅の2階床上まで、10mは3階建て建物の3階以上でなければ生命が危険にさらされるレベルを意味する。木曽川・庄内川ともに最大10m超という数値は、大規模破堤シナリオでは3階以上への垂直避難でも安全を保証できない可能性があることを示している。

浸水継続時間が最大336時間(14日間)という点も見逃せない。東海豪雨では浸水が数日〜2週間続いた地区があり、「水が引くまで待てばいい」という発想は通用しない。清須市が「逃げどきマップ」として早期避難を促す指標を整備しているのは、こうした被害想定を踏まえた対応だ。

清須市では庄内川・新川・五条川の3河川決壊を想定した浸水ハザードマップを整備している。詳細は清須市 水害対応ガイドブックで確認できる。


津波・高潮リスク

清須市の津波スコアと高潮スコアはいずれも 100点(最高値)。津波影響メッシュ数は 168,098メッシュ、高潮・沿岸リスクに関連するメッシュは 20,960メッシュ にのぼる。

内陸の清須市に津波リスクが高く設定される理由は、南海トラフ巨大地震発生時に伊勢湾奥部に津波が進入し、木曽川・庄内川を遡上して市内に浸水が及ぶシナリオが想定されているためだ。高潮ハザードマップは清須市公式サイトで公開されている。


地震・活断層リスク

震度6弱以上の30年確率が平均59%

清須市内の震度6弱以上確率(30年間累積)の平均は 59.24%、市内で最も高いメッシュでは 77.09% に達する。政府の地震調査研究推進本部が公表する南海トラフ巨大地震の30年以内発生確率(70〜80%、2024年時点)が清須市の地震確率に直接反映されている数値だ。震度5弱以上の確率は市内平均 92.97% に達しており、「強い揺れが来る」ことは確実に想定すべき前提と言える。

周辺活断層

清須市周辺には複数の活断層が分布している。

断層名 想定M 30年発生確率
養老山地西縁断層帯 M7.0 0.499%
濃尾断層帯主部(三田洞断層帯) M6.5 0.200%
庄内平野東縁断層帯(南部) M6.4 0.019%
養老−桑名−四日市断層帯 M7.2 0.003%
濃尾断層帯主部(根尾谷断層帯) M6.8

特に注目すべきは濃尾断層帯だ。1891年の濃尾地震(M8.0)を引き起こした根尾谷断層を含む断層系であり、清須市の北西から西にかけての地域に延びている。地盤AVs30の平均が219.5 m/sと軟弱であるため、活断層が活動した際の揺れは増幅される。建物の耐震性確認と家具固定は、この地域では必須の対策だ。詳細は清須市 地震防災ハザードマップで確認できる。


土砂災害・液状化リスク

土砂災害スコアは 50点で、市内に9か所の土砂災害ハザード区域が存在する(土砂災害リスク関連メッシュ数:2,853)。清須市は基本的に低平地であるため土砂災害リスクは洪水・地震に比べると相対的に低い。

液状化スコアは 60点(中程度以上)。市域の大部分を占める沖積低地は砂質土層が多く地下水位も高いため、大地震時には上下水道管の破損・建物の不均等沈下・道路の隆起などの被害が広範に発生する可能性がある。耐震診断の際に液状化リスクの評価も同時に行うことを推奨する。


避難施設一覧

清須市内には 65か所の避難場所・避難所が整備されている(広域避難場所:15か所)。

施設名 住所 種別
古城小学校 西枇杷島町城並2-2-1 避難所・広域避難場所
庄内川西枇杷島緑地 西枇杷島町西枇杷池地内 広域避難場所
新川中学校 須ヶ口1239 避難所・広域避難場所
新川小学校 須ヶ口1239 避難所・広域避難場所
星の宮小学校 阿原神門125 避難所・広域避難場所
春日グランド 春日新田畑1 広域避難場所
春日中学校 春日振形126 避難所・広域避難場所
春日小学校 春日振形131 避難所・広域避難場所
桃栄小学校 桃栄2-21 避難所・広域避難場所
清洲中学校 一場695 避難所・広域避難場所
清洲公園駐車場 清洲古城441-3 広域避難場所
清洲小学校 清洲1013 避難所・広域避難場所
清洲東小学校 清洲2576 避難所・広域避難場所
西枇杷島中学校 西枇杷島町七畝割3-1 避難所・広域避難場所
西枇杷島小学校 西枇杷島町住吉1 避難所・広域避難場所

注意:洪水時には広域避難場所であっても浸水する可能性がある。清須市のハザードマップで、自宅と最寄りの避難場所の両方の浸水リスクを事前に確認しておくことが不可欠だ。


今からできる備え

清須市に住む・働くすべての人が最優先で行うべきことは、清須市 水害対応ガイドブックの「逃げどきマップ」を確認し、自宅・職場の浸水リスクを把握することだ。木曽川・庄内川が決壊した際の浸水範囲と浸水深を、家族全員で共有しておく必要がある。

あわせて、清須市 地震防災ハザードマップで地震リスクの確認も済ませておきたい。震度6弱以上の確率が平均59%という地域では、建物の耐震性確認と家具固定は「いつかやろう」ではなく「今やる」問題だ。

備蓄は7日分以上を目標にする。東海豪雨では浸水継続が最大2週間に及んだ地区もあり、短期間での復旧を前提とした備えでは不十分だ。非常持ち出し袋は2階以上に保管し、避難先は第1・第2候補を決めておく(洪水時に第一希望の避難所が浸水している可能性がある)。

防災DB(bousaidb.jp)では、自宅周辺の125mメッシュ単位で洪水・地震・津波の詳細リスクを確認できる。自宅の具体的なリスク数値を把握することが、適切な避難判断の第一歩となる。


データ出典

データ種別 出典 時点
統合リスクスコア・洪水浸水想定 防災DB(bousaidb.jp) 125mメッシュ解析 2024年時点
過去の災害記録 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース(清須市地域防災計画収録) 2024年時点
活断層情報・地震動確率 地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図2024年版 2024年
避難場所情報 国土数値情報 避難施設データ(p20) 2024年時点
東海豪雨被害詳細 気象庁・国土交通省庄内川河川事務所・Wikipedia(東海豪雨) ウェブ調査
自治体防災情報 清須市公式ホームページ 防災・安心情報 ウェブ調査

著者:防災DB編集部 / 最終更新:2026年4月

本記事のデータは防災DB(bousaidb.jp)が提供する公的データの解析結果および各種公的機関の資料に基づいています。最新情報は各自治体の公式発表をご確認ください。