小林市の災害リスクと歴史|宮崎県の防災情報・ハザードマップ完全ガイド

著者: 防災DB編集部 / 最終更新: 2024年時点データ基準

宮崎県小林市は、防災DBの統合リスクスコアで83点(極めて高い)を記録する、九州でも有数の多災害地域です。霧島山系の北東麓に位置し、球磨川・大淀川・川内川という九州有数の河川の源流域をまたぐこの市では、洪水・土砂災害・火山噴火の三つのリスクが複合的に重なっています。

過去には2011年1月の新燃岳大噴火で市内に噴石被害が発生し、2020年の令和2年7月豪雨では球磨川水系の深刻な洪水被害に直結しました。防災DBの125mメッシュ解析では、市内の一部エリアで洪水時の最大浸水深が20mを超えるエリアも存在します。一ツ瀬川氾濫エリアに至っては平均浸水深が12.85mというデータが記録されており、氾濫時には2階建て住宅が完全に水没する規模の災害が現実の想定として設定されています。

この記事では、防災DBが保有する125mメッシュの一次データと、NIEDの災害事例データベース、公的調査資料をもとに、小林市の災害リスクを網羅的に解説します。


なぜ小林市はこれほど多くの災害リスクが集中するのか

小林市は宮崎県の南西部、霧島山地の北東麓から標高1,000mを超える山間部まで広がる市域を持ちます。市の南西方向にはえびの高原、北東には須木地区の急峻な山岳地帯が広がり、市域の大半を山地と丘陵地が占めます。

この地形が複合的な災害リスクを生み出しています。まず、球磨川・大淀川・川内川の源流域という立地が洪水リスクを際立たせます。急勾配の山地から流れ下る水は、平野部に出ると急速に流速を上げ、浸水深と浸水継続時間の両方が増大します。川内川の洪水浸水継続時間は最長168時間(7日間)というデータがあり、ひとたび浸水すると長期にわたる被害が続く可能性があります。

さらに市内の土砂災害リスクメッシュは112,145件(125m単位)に及び、急傾斜地崩壊危険区域や土石流危険渓流が市域全体に分布しています。急峻な霧島山系の斜面は雨水を集めやすく、大雨時には多数の箇所で土砂移動が発生する構造を持っています。

そして最大の特徴が霧島山(新燃岳)への近さです。2011年の噴火では市内に噴石被害が及び、降灰防除地域に指定されました。現在も活動を続けるこの活火山は、小林市にとって洪水や土砂とは異なる次元の即時リスクです。

地震リスクについても、市内の一部では30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率が42%に達するエリアが存在します。


過去の主要災害年表

2011年1月 新燃岳大規模噴火:約300年ぶりの爆発的活動(NIEDデータセット未収録、一次資料より記載)

2011年1月26日、霧島山の新燃岳が約300年ぶりとなる大規模な噴火を起こしました。翌27日にはブルカノ式爆発に変化し、九州広域で空振(爆発音による空気振動)が観測されました。

小林市は降灰防除地域に指定され、市内では噴石による被害が相次ぎました。民家の太陽光パネルやプラスチック製屋根の破損、自動車ガラスの割れといった物的被害が報告されています(出典:内閣府防災情報 https://www.bousai.go.jp/updates/110128kirishima/)。農業被害も広域に発生しました。

霧島山は現在も活動を続けており、2018年にも火口内への溶岩流入が確認されています。新燃岳から小林市中心部までの距離は約20km。爆発的噴火の際には噴石・火砕流・火山灰の流下経路として常に監視が必要な距離です。気象庁の噴火警戒レベルが引き上げられた際は、即座に避難行動に移れる準備が求められます。

2020年7月3日 令和2年7月豪雨:球磨川源流域での被害

2020年7月3日から降り始めた記録的な豪雨は、熊本県の球磨川下流域(人吉市等)で歴史的な大洪水を引き起こした大規模気象災害です。球磨川の源流域を含む小林市周辺でも被害が発生し、NIEDデータベースに記録されています(NIED「令和2年7月豪雨(7月3日から12日の大雨)による被害状況等について」収録)。

防災DBの125mメッシュ解析によると、球磨川水系で小林市域に影響するエリアの最大浸水深は10m、平均浸水深は2.33mです。10mの浸水深は木造2階建て住宅が完全に水没する深さであり、この規模の洪水が発生した場合には垂直避難では対応できない危険があります。

2020年9月 令和2年台風第10号:一部損壊3棟

令和2年台風第10号の接近により、小林市では建物の一部損壊3棟が記録されています(NIED「台風10号の被害状況について」より)。台風第10号は九州上陸前後に記録的な暴風を発生させた大型台風で、宮崎県内全域で風雨による被害が発生しました。

2019年6月30日 梅雨前線による大雨:一部損壊1棟

令和元年6月30日からの大雨(梅雨前線の活発化)により、小林市で建物の一部損壊1棟が確認されています(NIED「令和元年6月30日(日)からの大雨による被害状況について 令和元年7月4日 10:00時点」収録)。


全災害年表(NIEDデータセット)

発生年 災害名称 種別 建物一部損壊 備考
2020 9 令和2年台風第10号 台風 3棟 暴風・大雨
2020 7 3 令和2年7月豪雨 風水害 球磨川水系被害
2019 6 30 大雨(梅雨前線) 洪水 1棟

※NIEDデータセット(自然災害情報室)は掲載されている事例に収録基準があり、全ての災害が網羅されているわけではありません。2011年新燃岳噴火等の重要事例は上記別途記載。


洪水・浸水リスク:15本の河川が市域を脅かす

防災DBの125mメッシュ解析(国土交通省の洪水浸水想定区域データを基に変換)によると、小林市域に影響する主要河川は15本に上ります。影響メッシュ数が多い順に示します。

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
球磨川 879 10.0m 2.33m 72時間
大淀川 608 10.0m 2.60m 72時間
川内川 365 20.0m 1.38m 168時間
岩瀬川 363 10.0m 4.00m 72時間
綾北川 272 10.0m 5.97m 72時間
高崎川 178 5.0m 0.77m 24時間
免田川 153 10.0m 1.66m 72時間
長江川 129 3.0m 0.46m 24時間
本庄川 109 5.0m 1.20m 72時間
水無川 73 5.0m 2.60m 72時間
一ツ瀬川 53 20.0m 12.85m 72時間
平谷川 52 5.0m 3.35m

浸水深の具体的なイメージ:

  • 0.5m:成人の膝上。歩行が困難になる深さ
  • 1m:成人の腰まで。車のエンジンが止まる深さ
  • 3m:木造1階の天井まで浸水。1階からの脱出が不能
  • 5m:2階床上浸水。2階建て住宅でも危険
  • 10m以上:木造2階建て住宅が完全水没する規模

注目すべきは2点です。第一に川内川の最大浸水継続時間168時間(7日間)。一週間にわたる浸水が続けば、避難の長期化と物資補給の困難が重なります。自宅に戻れない期間が長くなることを前提とした備蓄・避難計画が必要です。

第二に一ツ瀬川の平均浸水深12.85m。最大20mの浸水が想定されるこのエリアでは、氾濫が発生すると街ごと水没する規模の被害が現実となります。このエリア在住の方は水平避難(早期の市外への避難)を最優先で検討してください。


土砂災害リスク:急峻な霧島山系が抱えるリスク

防災DBのデータでは、小林市域の土砂災害リスクメッシュは112,145件に上ります。また、国土交通省の土砂災害危険箇所データでは市内に54箇所のハザード区域が指定されています。

霧島山系の急傾斜な山地地形が、この高い土砂災害リスクの根本要因です。特に新燃岳の噴火後には、火山灰が堆積した斜面が不安定化します。通常の土砂斜面よりも保水性が高く、大雨時には土石流として一気に流下する可能性があります。

宮崎県が整備する土砂災害警戒区域等マップでは、市内の警戒区域・特別警戒区域の詳細位置を確認できます。自宅周辺の斜面状況を必ず事前に確認してください。


地震リスク:震度6弱以上確率が最大42%のエリアも

防災DBが採用する地震動予測地図2024年版(J-SHIS)データによると、小林市の地震リスクは以下の通りです。

指標 市内平均 市内最大値
30年以内に震度6弱以上が発生する確率 3.86% 42.05%
30年以内に震度5弱以上が発生する確率 61.06% 99.14%
平均地盤S波速度(AVS30) 537.2 m/s

市内の「最大値」は特定の局所的なエリアを指すものですが、市内平均の震度6弱以上確率3.86%という数字も、30年間の居住を前提にすると無視できない確率です。

地盤のAVS30(S波速度)は平均537.2m/sと比較的固い地盤を示しており、液状化リスクスコアは20(低い)と評価されています。ただし活断層データベースでの小林市近傍の断層情報は今回の検索では抽出されなかったため、最新の地震活動情報は気象庁・地震調査研究推進本部の情報を定期的に確認してください。


指定避難所一覧(主要施設・抜粋)

小林市内には62施設の指定避難所が設置されています(国土数値情報 避難施設データp20より)。主要施設を以下に示します。

施設名 所在地
小林総合運動公園 小林市南西方2085
市民体育館・中央公民館 小林市細野38-1
小林中学校体育館・グラウンド 小林市細野565-1
小林小学校体育館・グラウンド 小林市細野184-1
小林高校グラウンド 小林市真方124
小林秀峰高校グラウンド 小林市水流迫664-2
南小学校体育館・グラウンド 小林市細野1265
幸ヶ丘小学校体育館 小林市南西方7772
三松中学校体育館 小林市堤2331-3
内山小中学校体育館・グラウンド 小林市須木内山5052
内山地域福祉センター 小林市須木内山5203-1
中央公民館 小林市細野38-1

注意点:洪水ハザードゾーン内にある避難所は、大規模水害時に垂直避難先として機能しない場合があります。最寄りの避難所がハザードゾーンに含まれるかを、小林市総合防災マップで必ず事前確認してください。


今からできる具体的な防災行動

ハザードマップで自宅のリスクを確認する

まず行うべきは、自宅住所のハザードマップ照合です。

球磨川・川内川の水位情報をリアルタイム確認する

大雨時は国土交通省「川の防災情報」(https://www.river.go.jp/)で流域の河川水位をリアルタイム確認できます。避難判断の重要な情報源です。

火山噴火への具体的な備え

霧島山(新燃岳)が噴火警戒レベルを引き上げた際の行動として:

  • 気象庁の「噴火警戒レベル」を定期確認(https://www.jma.go.jp/)
  • 防塵マスクとゴーグルの備蓄(火山灰は目・鼻・喉に深刻なダメージを与える)
  • 車は屋内か洗いやすい場所に駐車(火山灰が蓄積すると重量でカーポートが倒壊する危険)
  • 屋外に出る際は長袖・長ズボンで肌の露出を最小限に

備蓄品の目安

川内川では最大7日間の浸水継続が想定されます。最低でも1週間分の飲料水・食料・医薬品を備えておくことが現実的な備えです。


データ出典

データ種別 出典
統合リスクスコア(洪水・地震・土砂等) 防災DB(bousaidb.jp)
洪水浸水想定区域(125mメッシュ) 国土交通省 洪水浸水想定区域図(防災DBが125mメッシュ変換・分析)
土砂災害ハザード区域 国土交通省・宮崎県 土砂災害警戒区域等データ
地震動確率(AVS30・震度確率) 地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図2024年版(J-SHIS)
過去の災害事例 自然災害情報室(NIED)災害事例データベース
避難場所一覧 国土数値情報 避難施設データ(p20)
新燃岳噴火(2011年)被害状況 内閣府防災情報(https://www.bousai.go.jp/updates/110128kirishima/110128kirishima.html)
小林市公式防災マップ 小林市総合防災マップ(平成31年3月発行)