国東市の災害リスク完全ガイド|1500年の地震・津波・水害の記録と今後の備え

大分県北東部に突き出た国東半島に位置する国東市は、洪水・津波・高潮・地震の全スコアで最高評価(100点)を記録する、大分県内でも有数の複合災害リスク地帯です。防災DBの統合リスクスコアは87点(極めて高い)。684年の白鳳地震から2024年台風第10号による大規模浸水まで、1500年を超える災害の記録が市の地域防災計画に刻まれています。

この記事では、防災DB(bousaidb.jp)の125mメッシュ解析データと国東市地域防災計画のデータをもとに、国東市で「どの災害が、どこで、どれほど深刻か」を具体的に解説します。


なぜ国東市はこれほど多くのリスクを抱えるのか

火山性半島が生む「放射状の急勾配谷」

国東半島の地形は独特です。両子山(721m)を中心とする両子火山群から複数の河川が海へ向かって放射状に流れ出す構造で、急勾配の谷と尾根が交互に連なっています。この地形の結果として:

  • 豪雨時に河川増水と土砂災害が同時多発しやすい(谷が急で水の逃げ場が少ない)
  • 海岸沿いの低地が狭い(海に近い集落ほど洪水・津波双方のリスクが高い)
  • 北部のリアス式海岸が津波エネルギーを入り江に集中させる

市内を流れる主要河川は桂川・八坂川・安岐川・武蔵川など15本以上。その全てが浸水想定区域を持ちます。

「四方から来る水」のリスク

国東市の際立った特徴は、洪水・津波・高潮の三つが重なるエリアが存在することです。沿岸低地では、台風一つで内陸からの洪水と海からの高潮・津波が同時に押し寄せる可能性があります。


統合リスクスコアの内訳

防災DBの125mメッシュ解析による国東市のリスクスコア(2024年時点):

リスク種別 スコア 詳細
洪水 100点 最大浸水深20.0m、浸水想定メッシュ168,386
津波 100点 最大浸水深10.0m、浸水想定メッシュ145,487
高潮 100点 沿岸部全域に高潮リスク
地震 100点 30年以内震度6弱以上確率 最大55.9%
土砂災害 50点 土砂災害リスクメッシュ12,656
液状化 20点 沿岸低地の一部で確認
統合スコア 87点 リスクレベル:極めて高い

出典:防災DB 125mメッシュ解析(2024年)


過去の主要災害(詳細)

国東市の地域防災計画には、684年から現代まで35件を超える災害記録が収録されています。以下に主要なものを取り上げます。

令和6年(2024年)台風第10号——史上初の「緊急安全確保」

2024年8〜9月、台風第10号が九州を直撃。国見町では72時間雨量448mm(観測史上最大)を記録し、国東市として初めて「警戒レベル5 緊急安全確保」が発令されました。

  • 住宅被害:2,379棟(全壊4棟、半壊26棟、床上浸水203棟、床下浸水1,077棟、一部破損1,069棟)
  • 安岐川では業者の施工ミスで可動ぜきが正常に作動せず、浸水被害が拡大(2025年2月に大分県が公表)
  • 護岸崩落・橋崩落により集落が一時孤立

この被害規模は、近年の国東市で最大のものです。「観測史上最大の雨量」と「施設の人的ミス」が重なった事例として、防災計画の見直しが求められています。

令和2年(2020年)7月豪雨——河川被害8件

令和2年7月豪雨(2020年7月6日)では、市内で河川被害8件が記録されています。人的被害の詳細記録は現時点で確認できていませんが、九州全域で甚大な被害を出した豪雨の影響が国東市にも及びました。

昭和21年(1946年)南海地震

1946年12月21日に発生したマグニチュード8.0の南海地震。国東市の地域防災計画に記録されており、津波が国東半島沿岸に到達したとされます。具体的な被害数値は現時点で公式記録に未収録ですが、南海トラフ沿いで発生するM8クラス地震の影響を受けた事例として重要な記録です。

宝永地震(1707年)・安政南海地震(1854年)

江戸時代には南海トラフを震源とする大地震が相次ぎました。1707年10月28日の宝永地震(M8.6推定)と1854年12月24日の安政南海地震(M8.4推定)はいずれも国東半島沿岸に津波被害をもたらしたとされます。

慶長豊後地震(1596年)——国東半島直下

1596年9月1日発生の慶長豊後地震は、別府湾を震源とする直下型地震で、推定マグニチュードは7.0〜7.5。国東半島を含む大分県東部沿岸に甚大な被害をもたらし、家屋倒壊と津波を引き起こしたとされます。国東半島にとって「足元からの脅威」を示す歴史的記録です。

白鳳(天武)地震(684年)——最古の記録

最も古い記録は684年11月の白鳳地震(推定M8.25)。日本書紀にも記載されるこの地震は、南海トラフ沿いの大地震で、津波が太平洋岸から四国・九州東部沿岸に及んだとされています。


過去の全災害年表

発生年 災害名・内容 種別
684 11月 白鳳(天武)地震 地震
1498 6月 地震 地震
1596 9月 慶長豊後地震 地震
1605 2月 慶長地震 地震
1698〜1769 計6件の地震 地震
1841 11月 地震 地震
1854 12月 安政南海地震 地震
1855〜1857 計3件の地震 地震
1891 10月 地震 地震
1898〜1909 計4件の地震 地震
1941 11月 地震 地震
1946 12月 南海地震 地震
1960 5月 チリ地震津波 地震/津波
1968 4月 日向灘地震(M7.5) 地震
1969〜1972 計4件の地震 地震
2001 3月 芸予地震 地震
2002 11月 日向灘地震(M6.5) 地震
2011 3月 東北地方太平洋沖地震(遠地) 地震
2020 7月 令和2年7月豪雨(河川被害8件) 洪水
2020 9月 令和2年台風第10号 台風
2024 8〜9月 令和6年台風第10号(史上最大被害) 台風/洪水

出典:国東市地域防災計画(地震・津波対策編)、国土交通省NIED 自然災害情報室


洪水リスク:武蔵川の「最大20m浸水」が示す脅威

市内主要河川と浸水想定

防災DBの125mメッシュ解析による各河川の浸水リスク(国東市域):

河川名 浸水想定メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
桂川 494 10.0m 2.78m 12時間
八坂川 377 5.0m 1.86m 24時間
安岐川 343 10.0m 2.33m 24時間
田深川 343 5.0m 1.33m 72時間
武蔵川 257 20.0m 1.11m 24時間
都甲川 210 5.0m 2.78m 12時間
荒木川 158 10.0m 2.41m 12時間

武蔵川の最大浸水深20mは要注意です。これは6〜7階建て建物の高さに相当し、武蔵川上流域の谷底集落が浸水すれば壊滅的な被害になりかねません。浸水深のイメージ:

  • 1m:立っていられない(歩行困難)
  • 2m:1階全体が水没(木造住宅は流失リスク)
  • 5m:2階建て住宅が完全に水没
  • 10m:3〜4階建て建物の屋根まで水没

2024年台風10号では実際に安岐川が越水し、可動ぜきの施工ミスという「人災要因」が加わって被害が拡大しました。「天災」と「人災」が重なったこの事例は、防災インフラの定期点検の重要性を示しています。


津波・高潮リスク:南海トラフと新活断層の二重の脅威

南海トラフ地震による津波想定

南海トラフ巨大地震が発生した場合、国東市・杵築市・日出町では最大6mの津波が想定されています(2025年3月・大分県新被害想定)。大分県全体では最大約18,000人の死者が想定され、浸水面積は従来想定比30%増という深刻な内容です。

防災DBの解析では国東市の津波想定浸水メッシュは145,487メッシュ、最大浸水深は10mに達します。

国東半島沖の新活断層(2024〜2025年判明)

2024〜2025年にかけて、国東半島沖に新たな活断層が確認されました。産業技術総合研究所の調査によると、国東半島沖から山口県周防大島にかけて約60kmにわたる複数の活断層が存在し、一連の断層が同時活動した場合、M7以上(M7台後半に達する可能性)があるとされています。

主に横ずれ断層のため大規模津波の可能性は現時点で低いと評価されていますが、大分県は2026年度中に被害想定を改訂する予定です。従来の防災計画に織り込まれていない新リスクであり、今後の動向を注視する必要があります。

別府湾地震リスク

別府湾を震源とする地震(慶長豊後地震と同タイプ)でも、国東市では最大震度6弱が想定されています。1596年の慶長豊後地震がその歴史的な実例です。


地震リスク:30年以内に震度6弱以上の確率

防災DBの125mメッシュ地震確率データ(国東市域、2024年時点):

指標 数値
震度6弱以上・30年確率(平均) 8.11%
震度6弱以上・30年確率(最大値) 55.9%
震度5弱以上・30年確率(平均) 73.75%
震度5弱以上・30年確率(最大値) 98.08%
平均地盤速度(Avs30) 427.7 m/s

震度6弱以上の確率最大55.9%という数値は、特定の地点(最も地盤条件が悪い箇所)の値です。市全体の平均でも8.11%——30年間で約8人に1人が「生涯に一度の大地震」を経験する計算です。震度5弱以上に至っては平均73.75%で、30年以内にほぼ確実に経験すると言えます。


土砂災害リスク

防災DBの解析では、国東市内に12,656メッシュの土砂災害リスクエリアが確認されています。両子山系から海へ向かう急勾配の谷地形が土砂災害の温床となっており、豪雨時は山腹から住宅地への土石流リスクが高まります。

2024年台風10号では護岸崩落・橋崩落が複数地点で発生し、集落が孤立状態に陥りました。「谷に沿って建てられた集落」という国東半島特有の立地が、土砂・崩落リスクを高めています。


市内の主な避難施設

国東市内には42か所の避難施設が整備されています(2024年時点)。

施設名 住所
国東体育館 国東市国東町浜崎2513番地
国東中学校 国東市国東町大字田深1422番地
国東小学校 国東市国東町安国寺623番地2
国東高等学校 国東市国東町鶴川1974番地
伊美小学校体育館 国東市国見町中850番地
国見福祉センター 国東市国見町伊美225番地1
安岐中学校 国東市安岐町中園408番地
安岐体育館 国東市安岐町下原750番地
武蔵中学校 国東市武蔵町成吉810番地
梅園の里コミュニティセンター 国東市安岐町富清8番地
(他32施設)

最寄りの避難施設と避難ルートを事前に確認するには、国東市WEB版ハザードマップをご利用ください。クリックした地点の海抜表示機能もあり、津波避難の判断に役立ちます。


今からできる備え

必ず確認すべき公式ページ

リソース URL
国東市WEB版ハザードマップ https://www.city.kunisaki.oita.jp/hazardmap/
国東市防災情報(公式) https://www.city.kunisaki.oita.jp/soshiki/somu/bousai-kunisaki.html
市内河川カメラ・水位情報 https://www.city.kunisaki.oita.jp/soshiki/somu/kasen-camera.html
大分県 津波災害警戒区域 https://www.pref.oita.jp/site/tsunami-keikaikuiki/

優先度の高い準備

1. ハザードマップで自宅のリスクを把握する
国東市の洪水・津波・土砂災害ハザードマップで、自宅がどのリスクゾーンに属するかを確認する。特に沿岸・河川沿いの世帯は複数リスクが重なる可能性があります。

2. 避難のタイミングを事前に決める
2024年台風10号では初めて「緊急安全確保(警戒レベル5)」が発令されました。レベル4(避難指示)の時点での避難が基本です。「まだ大丈夫」という判断が最も危険です。

3. 河川水位情報をリアルタイムで確認できるよう準備する
市が公開している河川カメラ・水位情報ページをブックマークしておく。夜間・停電時に備え、スマートフォンのモバイルバッテリーを常備する。

4. 地震・津波への備え
南海トラフ地震・国東半島沖活断層いずれも「いつ起きてもおかしくない」状況です。沿岸低地の住民は津波発生時の高台避難ルートを家族全員で確認しておく。

5. 最低7日分の備蓄を確保する
2024年台風10号では集落が孤立。水・食料・医薬品は最低3〜7日分を備蓄する。


まとめ:国東市の災害リスクと現実

国東市は、洪水・津波・高潮・地震のすべてで防災DB最高スコア100点を記録する複合リスク地帯です。1500年に及ぶ災害の記録は、「この土地が繰り返し自然の猛威にさらされてきた」ことを物語っています。

2024年台風10号による住宅2,379棟被害と初の緊急安全確保発令は、「防災意識の高い自治体でも大規模被害が起きる」という厳しい現実を示しました。さらに、2024〜2025年に判明した国東半島沖の新活断層という未知のリスクが加わっています。

過去の記録を知ることは、未来の備えの第一歩です。防災DBでは国東市の詳細なリスクデータを無料で公開しています。自宅の立地リスクを、ぜひ一度確認してみてください。


データ出典

出典 内容
防災DB(bousaidb.jp) 125mメッシュ解析 洪水・津波・地震・土砂リスクスコア(2024年)
国東市地域防災計画(地震・津波対策編) 過去の災害事例35件(684年〜2020年)
国土交通省 NIED 自然災害情報室 災害被害データ
産業技術総合研究所(2024〜2025年) 国東半島沖活断層の確認
大分県 南海トラフ地震被害想定(2025年3月) 津波・震度分布想定、最大死者約18,000人
国東市公式 WEB版ハザードマップ 避難施設・ハザードゾーン情報
TOSテレビ大分 / 読売新聞(2024年) 令和6年台風10号被害詳細

著者:防災DB編集部 / 最終更新:2026年4月 / データ基準時点:2024年