宮崎県国富町の災害リスクと過去の水害年表|大淀川・一ツ瀬川に挟まれた水害多発地帯

宮崎県東諸県郡国富町では、記録に残るだけで台風・豪雨による水害が繰り返し発生しており、特に平成17年台風14号(2005年)では大淀川流域全体で浸水家屋4,706戸、浸水面積3,321haという甚大な被害が生じています。防災DBの125mメッシュ解析による統合リスクスコアは87/100(極めて高い)。洪水・地震・高潮の各スコアが軒並み100を記録しており、宮崎県内でも突出したリスクを抱える自治体のひとつです。

大淀川と一ツ瀬川という二大河川に南北から挟まれた低平地に市街地・農地が集中するという地形的構造が、この町の「水害脆弱性」の根本にあります。なぜ国富町はこれほど水害に弱いのか。過去の災害データと地形分析から読み解きます。


この町の災害リスクの特徴

二大河川に挟まれた低平地という宿命

国富町は宮崎県中部、宮崎市の北西に位置する人口約1.8万人の農業町です。町の南側を東流する大淀川と北側を東流する一ツ瀬川に挟まれた形で、標高の低い沖積平野が広がります。この地形が、度重なる水害の構造的な原因です。

大淀川は九州南部最大の一級河川で、都城盆地を源流に宮崎平野を横断して日向灘に注ぎます。国富町付近は中流域に当たり、上流からの大量の流水が平野部に流れ込む際、地形傾斜が緩くなるために排水が遅れ、内水氾濫が発生しやすい構造となっています。

防災DBのハザードメッシュ解析では、大淀川の氾濫によって影響を受けるメッシュ数が4,614メッシュ(約125m×125mの区画)に上り、想定最大浸水深は10mに達します。一ツ瀬川はさらに深刻で、影響メッシュ3,165、想定最大浸水深は20mという数値が出ています。浸水深20mは3〜4階建て建物が水没する規模であり、最悪シナリオとして認識しておく必要があります。

防災DBリスクスコア一覧(2024年時点)

リスク種別 スコア(0〜100) 評価
洪水 100 最高リスク
津波・高潮 100/100 解析エリア内でリスクあり
地震 100 震度6弱以上の30年確率:平均16.2%、最大61.5%
土砂災害 50 ハザード区域54箇所
液状化 20 低〜中程度
統合スコア 87 極めて高い

地震リスクについては、町内の一部エリアで震度6弱以上の発生確率が最大61.5%(30年以内)という高い数値が出ています。国全体の平均と比べても著しく高く、地震対策も洪水と並んで優先課題です。


過去の主要災害(年表)

主要災害の詳細

令和2年(2020年)9月 台風10号

NIEDの農水産業被害データに国富町の被害が記録されています。令和2年台風第10号は九州各地に暴風・大雨をもたらし、宮崎県でも農業施設・農作物に甚大な被害が生じました。NIEDデータセットには農水産業被害が計上されており、同年の農業被害の大きさがうかがえます。

令和元年(2019年)6月下旬 大雨

2019年6月下旬、宮崎県を中心とした梅雨前線の活発化により大雨が発生。国富町でも洪水被害が発生し、NIEDの河川被害データに記録されています。

平成17年(2005年)台風14号(最大規模)

2005年9月4〜6日、台風14号が宮崎県に接近。総降水量607mmという記録的豪雨をもたらし、大淀川流域全体で以下の被害が発生しました(宮崎河川国道事務所の記録より)。

  • 浸水面積:3,321ha
  • 浸水家屋:4,706戸(床上3,834戸、床下872戸)
  • 内水氾濫:約60箇所以上(1,800ha超)

支川との合流点付近を中心に内水が溢れ、国富町を含む大淀川中流域の農地・宅地が長時間浸水状態に置かれました。この台風は戦後の宮崎において最大級の水害として記録されています。

過去の水害年表

発生年 災害名 主な被害内容 出典
2020 9月 令和2年台風第10号 農水産業被害(国富町) NIEDデータベース
2019 6月 大雨 洪水被害(国富町) NIEDデータベース
2005 9月 平成17年台風14号 大淀川流域:浸水4,706戸、3,321ha 宮崎河川国道事務所

※NIEDデータセットは全国の被害記録を収録していますが、データの記録粒度や収録対象に制限があり、全ての水害が網羅されているわけではありません。実際の被害件数はこれを上回る可能性があります。


洪水・浸水リスク:なぜ国富町は水害に弱いのか

防災DBの125mメッシュ解析では、国富町周辺で洪水ハザードに関わる河川が14本確認されています。主要河川の想定浸水深をまとめます。

主要河川の浸水想定(防災DB解析)

河川名 影響メッシュ数 想定最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
大淀川 4,614 10m 2.41m 72時間
一ツ瀬川 3,165 20m 2.46m 72時間
新別府川 529 5m 0.49m 72時間
八重川 185 3m 0.40m 24時間
石崎川 139 5m 1.35m 12時間
綾北川 72 5m 1.26m 72時間
深年川 69 5m 1.54m 72時間
その他支川 各50〜100 〜5m 〜1m 〜72時間

浸水深の目安(身近なイメージ)
- 0.5m未満:膝下浸水。歩行困難
- 1m:腰〜胸まで。自力避難が著しく困難
- 3m:1階天井まで。2階以上でなければ生存困難
- 5m:2階が水没。屋根上か垂直避難の高さが必要
- 10m:3〜4階建て相当。一ツ瀬川の最大想定では20mという桁違いの深さを想定

「最大浸水深20m」は河川氾濫時の最悪シナリオ(例:計画規模を大幅に超えた降雨量の場合)として算定されたものです。国富町の低平地に位置する市街地がいかに大規模な浸水リスクにさらされているかを端的に示しています。

また、大淀川・一ツ瀬川ともに「最大継続時間72時間」という長時間浸水が想定されており、一時的な逃げ遅れが命取りになりかねません。早めの避難行動が命を守る最大の対策です。


土砂災害リスク

防災DBの解析によると、国富町周辺の土砂災害ハザード区域は54箇所、土砂災害に関するメッシュ数は49,346メッシュに上ります(125mメッシュ換算)。

国富町西側の山裾・丘陵地には土砂災害警戒区域(イエローゾーン)・特別警戒区域(レッドゾーン)が点在しており、台風や集中豪雨の際には土砂崩れ・土石流のリスクが高まります。大雨警報発令時には山側エリアの住民は早めの避難を検討してください。


地震リスク:日向灘地震への備え

30年以内の震度別発生確率(防災DB解析・2024年時点)

震度 町内平均確率 町内最大確率
震度5弱以上 83.0% 99.7%
震度6弱以上 16.2% 61.5%

震度6弱以上の発生確率が最大61.5%に達するエリアが存在することは無視できません。国富町内の平均でも16.2%と、全国平均の数倍程度の高リスクです。

影響を受ける活断層

防災DBの断層マスタによると、国富町周辺に影響を及ぼす可能性がある断層として日向峠-小笠木峠断層帯(想定M6.7)が確認されています(30年発生確率:0.1%)。

ただし、宮崎県の地震リスクの主因は内陸の活断層よりも日向灘を震源とするプレート境界地震にあります。南海トラフ巨大地震(想定M8〜9)が発生した場合、宮崎県沿岸〜内陸部にかけて強い揺れと津波が予想されており、国富町も震度6弱以上の揺れに備える必要があります。

地盤については、防災DBの解析では国富町の表層地盤S波速度(AVS30)の平均が420.7m/sとなっており、比較的良好な固い地盤であることを示しています(250m/s以下が軟弱地盤の目安)。ただしこれは平均値であり、沖積低地の一部では地盤が軟弱な箇所があります。


避難施設一覧

国富町内には19か所の避難施設が指定されています(国土数値情報 nlftp_p20_evacuation_site、2024年時点データ)。広域避難場所の指定はなく、学校・体育館・地区センターが中心です。

施設名 住所
国富町中央体育館 宮崎県東諸県郡国富町本庄4780
国富町武道館 宮崎県東諸県郡国富町本庄4777-1
国富町農村環境改善センター 宮崎県東諸県郡国富町本庄4778
国富町農業者トレーニングセンター 宮崎県東諸県郡国富町三名1658
国富町北俣体育館 宮崎県東諸県郡国富町八代北俣2415
国富町深年体育館 宮崎県東諸県郡国富町深年3071
国富町籾木体育館 宮崎県東諸県郡国富町八代南俣3808-1
国富町川南地区健康増進センター 宮崎県東諸県郡国富町嵐田1518-1
国富町立本庄小学校 宮崎県東諸県郡国富町本庄4056
国富町立本庄中学校 宮崎県東諸県郡国富町本庄607-2
国富町立木脇小学校 宮崎県東諸県郡国富町木脇1752
国富町立木脇中学校 宮崎県東諸県郡国富町木脇1752
国富町立八代小学校 宮崎県東諸県郡国富町八代南俣2101
国富町立八代中学校 宮崎県東諸県郡国富町八代南俣1710
国富町立森永小学校 宮崎県東諸県郡国富町森永1938
宮崎県立本庄高等学校 宮崎県東諸県郡国富町本庄5071
本庄東部体育館 宮崎県東諸県郡国富町本庄2367-2
木脇地区農業構造改善センター 宮崎県東諸県郡国富町木脇3096-1
須志田地区農業構造改善センター 宮崎県東諸県郡国富町須志田1104-2

重要な注意点:洪水・浸水ハザードが高いエリアでは、指定された避難施設自体が浸水する可能性があります。大淀川・一ツ瀬川沿いの低地にある施設への避難を検討する場合は、事前にハザードマップで施設の浸水危険度を確認してください。


今からできる備え

公式防災情報を確認する

  • 国富町公式 防災マップページ:http://www.town.kunitomi.miyazaki.jp/main/disaster/other_disaster/page000322.html
  • 国富町ハザードマップ(PDF):http://www.town.kunitomi.miyazaki.jp/main/disaster/78ce9d7f267c8d9ba03c719546e883c9_1.pdf
  • 国富町ため池ハザードマップ:https://www.town.kunitomi.miyazaki.jp/main/disaster/page000898.html
  • 国土交通省ハザードマップポータル(国富町):https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/index.html?citycode=45382
  • 防災DB 国富町の詳細リスクデータbousaidb.jpで「国富町」を検索

実践すべき3つの行動

  1. ハザードマップで自宅の浸水想定深を確認する。大淀川・一ツ瀬川それぞれの氾濫シナリオで自宅がどのエリアに入るか、今日中に確認してください。
  2. 避難タイミングを前倒しにする。台風接近時は大雨警報が出る前に自主避難を検討する。最大72時間の浸水継続を前提にすると、ギリギリの避難は間に合わない可能性があります。
  3. 非常用持ち出し袋の用意。最低3日分の食料・水・薬・充電器を常時準備する。

データ出典

データ 出典 取得方法
統合リスクスコア・洪水浸水深・地震確率 防災DB(bousaidb.jp)125mメッシュ解析 BigQuery gold層クエリ(2024年)
市区町村マスタ 国土交通省 国土数値情報 disaster-risk-db silver層
過去の災害事例 国立研究開発法人 防災科学技術研究所(NIED)災害事例データベース disaster-risk-db bronze層
避難施設データ 国土交通省 国土数値情報 nlftp_p20(避難場所) disaster-risk-db bronze層
平成17年台風14号 浸水被害数値 宮崎河川国道事務所(大淀川の主な災害) ウェブ調査
活断層データ 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)地震ハザードステーション disaster-risk-db gold層
地盤データ(AVS30) 防災科学技術研究所 地震ハザードステーション(J-SHIS) disaster-risk-db gold層
国富町公式ハザードマップ 国富町役場 http://www.town.kunitomi.miyazaki.jp/main/disaster/

著者: 防災DB編集部
データ更新: 2024年時点
記事作成: 2026年4月4日


本記事のデータは防災DB(bousaidb.jp)が整備した125mメッシュ解析に基づいています。ハザードマップや避難計画の最終確認は、国富町の公式情報を参照してください。データの誤りやご意見は防災DBの問い合わせフォームからお寄せください。