栗原市の災害リスク完全ガイド|2008年岩手・宮城内陸地震の震源地が抱える水害・地震・土砂災害リスクを徹底解説

栗原市(宮城県)は、防災DBの統合リスクスコアで79点(極めて高い)を記録する、日本でも有数の多重災害リスク地域です。2008年6月、市内を震源とする岩手・宮城内陸地震では死者13名・行方不明4名を出し、荒砥沢ダム上流では国内最大級の山腹崩壊が発生しました。洪水スコア100・地震スコア100・土砂災害スコア50と、主要な自然災害リスクが軒並み最高水準にある栗原市に住む人、あるいはその地を訪れる人が知っておくべき情報をまとめます。


この街の災害リスクの特徴

奥羽山脈から仙台平野へ──複雑な地形が生み出す多重リスク

栗原市は宮城県北西部に位置し、市域の西端には栗駒山(標高1,627m)がそびえます。最低標高は1.8mで、市内の高低差は1,600m以上に達します。この急峻な地形が、市内に複数の災害リスクをもたらす根本的な要因です。

栗駒山を水源とする迫川(はざまがわ)は、二迫川・三迫川・旧迫川など多くの支流を集めながら市内を南東に流れ下り、最終的に北上川へ合流します。栗駒山の西面から流れる江合川(えあいがわ)も市域を通過します。これらの河川が形成する沖積低地は豊かな水田地帯である一方、ひとたび大雨が降れば広範囲の浸水が避けられない地形でもあります。

防災DBによるリスク評価

リスク種別 スコア(0-100) 評価
洪水 100 最高リスク
地震 100 最高リスク
土砂災害 50 中程度
液状化 40 中程度
高潮 0 内陸のため非該当
統合スコア 79 極めて高い

(防災DB 2024年時点データ)


過去の主要災害

2008年 平成20年岩手・宮城内陸地震──震源地・荒砥沢で国内最大級の崩壊

2008年6月14日8時43分、栗原市駒の湯地区付近(北緯39度01分、東経140度52分)を震源とするM7.2の地震が発生しました。栗原市築館で最大震度6強を観測し、栗原市は震源直上の被災地となりました。

この地震が残した最も深刻な爪痕は、人的被害にとどまりません。荒砥沢ダム上流の山腹で発生した大規模崩壊は、崩落高差148m・水平移動距離300m超に及ぶ、国内地震による山腹崩壊としては戦後最大規模とされるものでした(国土交通省河川局資料)。

栗原市の被害(栗原市地域防災計画・資料編):

項目 被害数
死者 13名
行方不明者 4名
負傷者 180名
全壊 43棟
半壊 112棟
一部損壊 1,414棟

駒の湯温泉では土石流が旅館を直撃し、宿泊客・従業員が巻き込まれました。崩壊した土砂の不安定なままの堆積量は推定1億2,000万m³に達し、荒砥沢ダム周辺だけで約6,700万m³が残存したため、二次災害への警戒が長期間続きました。

この地震の教訓として押さえておくべきは、「震度6強でも平野部の建物被害は比較的少なかったが、山間部では土砂災害で死者が出た」という事実です。栗原市において山間部は深刻なリスクゾーンです。


2011年 東日本大震災──震度7を観測しながら死者ゼロの謎

2011年3月11日の東日本大震災では、栗原市築館で最大震度7を観測しました。しかし、市内の死者・行方不明者はゼロでした(NIEDデータセットには当該市の個別記録なし、住宅産業新聞・東北大学調査資料より)。

震度7を観測した地域としては驚異的に少ない被害でしたが、その理由は地震波の周期成分にあります。東日本大震災の揺れは0.3秒以下の短周期成分が卓越しており、木造住宅が倒壊しやすい周期帯(1〜2秒)とのずれが生じたと分析されています(東北大学源栄正人教授調査)。

  • 建物被害(2011年4月18日時点): 全壊17棟・大規模半壊5棟・半壊27棟・一部破損392棟 計444棟
  • 地震後の液状化や地盤沈下は一部地区で確認

「震度7でも建物被害が少なかった」という事実は、次の大地震でも同じ保証はありません。地震波の特性によっては木造住宅に致命的なダメージを与える揺れが来る可能性は常にあります。


1978年 宮城県沖地震──死者27名

1978年6月12日、宮城県沖を震源とするM7.4の地震が発生し、栗原市(当時は栗原郡各町村)でも死者27名を記録しました(栗原市地域防災計画・資料編)。当時の建築基準は現在より低く、建物倒壊による死者が多数出ました。この地震は1981年の新耐震基準制定のきっかけとなった歴史的な地震です。


1948年 アイオン台風──死者44名・河川被害1,160件

1948年9月16日に上陸したアイオン台風は、東北地方に甚大な水害をもたらしました。栗原市域では死者44名(一説には46名)、全壊61棟・半壊482棟、河川被害1,160箇所という壊滅的な被害を記録しています(栗原市地域防災計画・資料編)。迫川をはじめとする複数河川が氾濫し、低地の集落が軒並み水没しました。


1947年 カスリン台風──死者30名・河川被害327件

アイオン台風の前年にも大型台風が直撃しています。1947年9月14日のカスリン台風では死者30名、河川被害327箇所の大水害が記録されました(栗原市地域防災計画・資料編)。2年連続の壊滅的な台風水害は、当時の地域社会を深刻に疲弊させました。


過去の主要災害年表(一覧)

発生年月 災害名 死者・行方不明 主な被害
1947年9月 カスリン台風 死30 河川被害327箇所
1948年9月 アイオン台風 死44 全壊61棟・半壊482棟・河川被害1160
1950年8月 キビナン台風 全壊5棟
1962年4月 宮城県北部地震 死3 一部損壊2,000棟超
1978年6月 宮城県沖地震 死27 建物多数損壊
1981年8月 台風15号 死1 床上42・床下48棟
2002年7月 台風6号・梅雨前線 床上12・床下19棟
2008年6月 岩手・宮城内陸地震 死13・不明4 全壊43棟・荒砥沢大崩壊
2011年3月 東日本大震災 0 一部損壊392棟(震度7)
2019年10月 令和元年東日本台風 床上36・床下54棟

(NIED災害事例データベース、栗原市地域防災計画・資料編より。-1は不明を示す)


洪水・浸水リスク:迫川水系が覆う広大な浸水域

なぜ栗原市は洪水スコア100なのか

防災DBの125mメッシュ解析によると、栗原市には15本の河川の洪水浸水想定区域が確認されます。浸水想定メッシュ数は主要5河川だけで1万メッシュを超え、最大浸水深10mに達するエリアが複数存在します。

主要河川別洪水浸水リスク(防災DB 125mメッシュ解析):

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最長継続時間
迫川 5,588 10m 1.15m 336時間(14日)
荒川 1,724 5m 2.02m 336時間
江合川 1,351 5m 0.9m 336時間
小山田川 1,264 10m 2.92m 336時間
三迫川 1,068 5m 0.69m 168時間
旧迫川 1,007 5m 0.84m 336時間
北上川 771 5m 1.64m 336時間
夏川 731 10m 1.24m 336時間
二迫川 623 10m 1.82m 168時間
田尻川 450 3m 0.61m 168時間
芋埣川 392 5m 1.68m 168時間

つまり、最大クラスの洪水が起きた場合、迫川流域では最大2週間(336時間)にわたって浸水が継続する可能性があります。浸水深の具体的なイメージとして、1m=成人の腰、3m=1階天井まで、5m=2階床上まで、10m=3階以上の高さが必要となります。

小山田川は平均浸水深2.92mと全河川中最高で、流域住民には特に注意が必要です。迫川本川は影響面積が圧倒的に広く、市内最大の洪水リスク源です。

2019年の令和元年東日本台風(台風19号)でも床上36棟・床下54棟の浸水被害が発生しており、「地球温暖化による豪雨激甚化」という現在進行形のリスクと向き合わなければなりません。


地震リスク:震源地になりうる内陸部

30年以内の地震確率(2024年時点)

防災DBの125mメッシュグリッドデータから、市内の地震確率分布を分析しました。

指標 市域平均値 最大値
震度6弱以上(30年確率) 17.7% 58.1%
震度5弱以上(30年確率) 91.0% 99.95%
平均Avs30(地盤速度) 321.2 m/s

震度5弱以上の揺れは30年以内にほぼ確実(平均91%)に発生します。震度6弱以上についても、市内の一部地域では58%を超えるエリアがあります(2024年「全国地震動予測地図」に基づく防災DB解析)。

近接する活断層

断層名 想定M 30年発生確率
北上低地西縁断層帯 M7.2
滝沢鵜飼西断層(北上残部) M6.9 約0.1%

栗原市の東縁部には「北上低地西縁断層帯」(想定M7.2)が延びており、2008年の岩手・宮城内陸地震はこの断層系の活動とも関連すると考えられています。M7クラスの直下型地震を引き起こす断層が市内・市境に存在するという事実は見逃せません。

地盤のAvs30(表層地盤のせん断波速度)は平均321.2 m/sと標準的な硬さですが、市内の低地・河川沿いでは軟弱地盤も存在します。地震動増幅に注意が必要なエリアを確認するには、防災DBのマップで確認してください。


土砂災害リスク:2008年地震が証明した山間部の脆弱性

防災DBの125mメッシュ解析では、栗原市内に79メッシュの土砂災害リスクエリア(土砂災害警戒区域・特別警戒区域)が確認されています。

2008年の岩手・宮城内陸地震では、栗駒山周辺で2,000箇所以上の山腹崩壊・地すべりが発生しました(国土交通省データ)。土石流24件・地すべり9件・がけ崩れ15件が記録され、市内山間部(特に旧栗駒町・旧花山村エリア)は土砂災害の危険性が高いことが実証されています。

また、市内には荒砥沢ダム・花山ダム・栗駒ダム・二迫ダムなど複数のダムが存在します。2008年の地震で荒砥沢ダム上流に大量の不安定土砂が堆積し、長期間にわたって二次崩壊への警戒が続いた経緯があります。山間部に向かう際は、大雨・地震後には特に土砂災害警戒情報に注意してください。


避難施設一覧(築館地区)

以下は防災DBに収録されている栗原市内の主要避難施設です(築館地区・2024年時点)。市内には他にも多数の避難所が指定されています。最新情報は栗原市公式サイトまたは栗原市防災マップ(Web版)でご確認ください。

施設名 住所 種別
築館小学校 栗原市薬師一丁目6-1 避難所
栗原文化会館 栗原市高田二丁目1-10 避難所
築館体育センター 栗原市高田二丁目8-12 避難所
築館総合運動公園(体育館) 栗原市字荒田沢41-241 避難所
築館高等学校 栗原市字下宮野町浦22 避難所
宮野小学校 栗原市字上宮野台291 避難所
富野小学校 栗原市字城生野北田沖274 避難所
玉沢小学校 栗原市字照越大ケ原43-1 避難所

最寄りの避難所を事前に確認するには → 栗原市防災マップ(Web版)


今からできる備え

公式防災情報を確認する

  • 栗原市ハザードマップ(公式): https://www.kuriharacity.jp/li/010/010/040/index.html
  • 栗原市防災マップ(Web版): https://www.kuriharacity.jp/hazardmap/
  • 災害・避難情報(栗原市公式): https://www.kuriharacity.jp/li/010/010/080/index.html
  • 防災DB 栗原市の詳細データ: https://bousaidb.jp/

チェックリスト

  • 自宅がどの河川の洪水浸水想定区域に入るか確認する(特に迫川・小山田川沿いの住民は要確認)
  • 最寄りの避難所を2箇所以上把握しておく(1箇所が使えなくなる場合に備え)
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域に自宅が入るかを確認する(山間部居住者は必須)
  • 大雨・地震の際に山間部への移動を避けるルールを家族で決めておく
  • 3〜7日分の食料・飲料水・常備薬を備蓄する

データ出典

データ種別 出典 時点
統合リスクスコア・洪水・土砂・地震メッシュデータ 防災DB(bousaidb.jp) 2024年時点
災害事例(死者数・建物被害等) NIED自然災害データベース・栗原市地域防災計画資料編 各災害発生時
地震確率(30年確率) 全国地震動予測地図2024年版(防災科学技術研究所)を防災DBが解析 2024年
活断層データ 活断層データベース(産業技術総合研究所)を防災DBが整理 2024年時点
避難場所データ 国土数値情報・避難施設データ(国土交通省) 2024年時点
地形・地質情報 栗原市Wikipedia、栗駒山麓ジオパーク資料
2008年岩手・宮城内陸地震詳細 内閣府防災情報・国土交通省河川局 2008年
東日本大震災被害 東北大学源栄正人教授調査資料・住宅産業新聞 2011年
防災ページURL 栗原市公式ウェブサイト 2024年確認

著者:防災DB編集部 / 公開日:2026年4月 / データ更新:2024年時点

本記事の数値・リスク評価はオープンデータに基づく参考情報です。避難行動・防災計画の策定には栗原市の最新の地域防災計画・ハザードマップをご参照ください。フィードバックは 防災DB までお知らせください。