釧路市の災害リスクと歴史年表|洪水・地震・津波が重なる道東最大都市の防災ガイド

釧路市(北海道) は、防災DBの統合リスクスコアで79点(極めて高い) を記録する、北海道有数の災害多発都市です。洪水スコア・津波スコア・地震スコアがいずれも満点(100点)という、三重の高リスクを抱えています。

1993年1月15日の釧路沖地震(M7.8)では市内で死者2名・負傷者966名・建物被害約5,600棟を記録。233件にのぼる過去の災害事例が示すとおり、この街は繰り返し自然の猛威にさらされてきました。

日本最大の湿原・釧路湿原に抱かれた低地都市という地理的宿命が、釧路市の高い災害リスクの根本にあります。


なぜ釧路市は災害に弱いのか

泥炭湿地の上に広がる低地市街地

釧路市の市街地の大部分は、軟弱な泥炭湿地 を造成した低地に立地しています。背後に釧路湿原国立公園(日本最大の湿原)が広がり、市域の東側は太平洋に直接面します。この地形が、洪水・津波・地震の三つの脅威を同時にもたらします。

  • 洪水リスク: 市内に阿寒川・釧路川・新釧路川など15河川が流れ込み、低地に大量の水が滞留しやすい
  • 津波リスク: 海岸線に直接面した低地が広く、千島海溝由来の大型津波が直撃する想定がある
  • 地震リスク: 千島海溝の沈み込み帯に位置し、大規模地震が繰り返し発生している

地震確率データが示す現実

防災DBの125mメッシュ解析(2024年時点データ)によると、釧路市内の地震リスクは以下のとおりです。

指標
30年以内に震度6弱以上が起きる確率(平均) 27.0%
同上(最大値:市内最高リスク地点) 92.3%
30年以内に震度5弱以上が起きる確率(平均) 91.1%
表層地盤S波速度(平均Avs30) 439.5 m/s

震度6弱以上の30年確率が平均27%というのは全国的にも高い部類であり、最大地点では約9割という数値が示すとおり、特定のエリアでは大地震の発生が「いつか」ではなく「いつ起きてもおかしくない」状況です。


過去の主要災害

1993年1月15日:釧路沖地震(M7.8)——戦後最大の直下型被害

釧路市の近代史で最も深刻な地震被害をもたらした災害です。

震源: 釧路市南方沖約15km、深さ101km
規模: M7.8(気象庁発表)
釧路市の最大震度: 震度6(烈震)

被害項目 数値
死者 2名
負傷者 966名
住宅全壊 53棟
住宅半壊 254棟
住宅一部損壊 5,311棟

死者2名のうち1名はシャンデリアの落下による圧死、もう1名はガス漏れによる一酸化炭素中毒死でした。M7.8という巨大地震に対して人的被害が比較的少なかった背景には、震源深度が101kmと深かったこと、そして道東地区が地震多発地帯であるため市民の防災意識が高かったことが挙げられます。

しかし建物被害は甚大で、市内の家屋約5,600棟が何らかの損傷を受けました。釧路川河川敷での液状化現象 も確認されており、泥炭地盤の脆弱性を改めて示した地震でした。

2003年9月26日:十勝沖地震(M8.0)

被害項目 数値(釧路町含む)
半壊 12棟
一部損壊 154棟

M8.0という巨大地震でしたが、震源が帯広方向(十勝沖)だったため釧路市への直撃は1993年より限定的でした。一方でこの地震では苫小牧市近郊のタンク火災 が発生するなど、道内各地に広範な被害をもたらしました。

2004年11月29日:平成16年釧路沖地震(M7.1)

被害項目 数値
負傷者 26名
一部損壊 3棟

2004年11月29日深夜に発生。釧路市では26名が負傷しました。釧路沖周辺は地震多発地帯であり、1990年代以降も大小の地震が繰り返し記録されています。

1994年10月4日:北海道東方沖地震(M8.2)

被害項目 数値(釧路町含む)
半壊 13棟
一部損壊 30棟

M8.2という記録的な規模の地震。釧路市周辺でも津波が観測され、被害が出ました。

1986年9月:洪水(床上浸水71棟)

被害項目 数値
床上浸水 71棟
床下浸水 122棟

台風・前線による記録的な大雨が釧路市を直撃。市街地の低地部で193棟が浸水被害を受けました。

全災害年表(NIEDデータセット・釧路市地域防災計画より)

種別 主な被害
1986 9 洪水 床上浸水71、床下浸水122
1991 9 風水害 一部損壊43棟
1993 1 地震(釧路沖M7.8) 全壊6、半壊35、一部損壊77(釧路町記録)
1994 10 地震(北海道東方沖M8.2) 半壊13、一部損壊30
1997 11 風水害 一部損壊18棟
1998 8〜9 洪水・台風 床下浸水20〜16棟
2003 9 地震(十勝沖M8.0) 半壊12、一部損壊154
2004 9 台風第18号 一部損壊28棟
2004 11 地震(釧路沖M7.1) 負傷者26名、一部損壊2棟
2007 9 台風第9号 床上浸水1〜2棟

出典: 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース・釧路市地域防災計画(風水害等対策編・地域災害等対策編)、釧路町地域防災計画


洪水・浸水リスク

15河川が重なる多重リスク

防災DBの125mメッシュ解析では、釧路市内に以下の主要河川による洪水浸水想定区域が確認されています。

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深
阿寒川 7,867メッシュ 10.0m 1.75m
釧路川 4,640メッシュ 10.0m 1.69m
新釧路川 4,055メッシュ 5.0m 1.21m
茶路川 1,727メッシュ 5.0m 2.61m
久著呂川 1,434メッシュ 5.0m 1.39m
音別川 1,328メッシュ 5.0m 1.08m
仁々志別川 968メッシュ 5.0m 1.02m
庶路川 868メッシュ 5.0m 0.96m
雪裡川 754メッシュ 5.0m 0.89m
その他6河川 〜660メッシュ 〜5.0m

阿寒川と釧路川では最大浸水深10m超が想定されています。10mという浸水深がどれほど危険か——3階建て建物の屋上ギリギリの水位です。市街地の低地部でこの規模の浸水が発生すれば、避難の猶予はほとんどありません。

茶路川は最大5mにもかかわらず、平均浸水深が2.61m と高く、流域全体に深い浸水が広がることを示しています。1階の天井(約2.4m)を超える浸水が、流域の広範囲で起こりえます。

新釧路川誕生の背景

現在の新釧路川は、大正9年(1920年)の釧路大水害を契機に開削された人工河川(全長11.2km)です。かつての釧路川が氾濫し、市街地の大半が水没するという未曾有の洪水が発生。1921〜1931年にかけて、泥炭湿地を掘削して放水路として整備されました。100年前に大水害で生まれたこの川が、現在も釧路市街を守る主要な治水インフラとなっています。


津波リスク

沿岸メッシュ15,740という数字の重み

防災DBの解析では、釧路市の津波・高潮影響メッシュ数は15,740メッシュ(1メッシュ=125m×125mの区画)に達します。これは市内の広範な低地部が津波の影響圏内にあることを意味します。

指標
津波スコア 100点(最高値)
想定最大津波浸水深(下限) 10m以上
津波影響メッシュ数 15,740メッシュ

釧路市は千島海溝(クリル海溝)の沈み込み帯に近接しており、過去の北海道東方沖地震(1994年、M8.2)でも津波が観測されています。内閣府・北海道庁の最大クラス想定では、釧路外環状道路より海側の低地全域が浸水するとされています。

津波発生時は即時の高台避難が不可欠です。 市が公開しているハザードマップで自宅・職場の浸水エリアを必ず確認してください。


土砂災害リスク

防災DBの解析では、釧路市内の土砂災害影響メッシュ数は282メッシュ、土砂災害ハザード区域数は6箇所 が確認されています。釧路市街地は主に平坦な低地で構成されますが、市域西部・阿寒地区・音別地区では山間部が多く、土砂災害のリスクが存在します。

釧路市のランドスコア(土砂災害スコア)は50点(中程度) で、洪水・津波・地震と比較すると相対的に低いリスクですが、大雨の際には急峻な山岳部での崩落・土石流への注意が必要です。


地震・断層リスク

千島海溝が生み出す地震多発地帯

釧路市は日本最大規模のプレート境界「千島海溝(クリル海溝)」の陸側に位置します。太平洋プレートが北米プレートの下に年間約10cmのペースで沈み込み、巨大地震を繰り返し発生させてきました。

防災DBのデータでは、釧路市付近で固有の活断層は確認されていませんが、プレート境界型の巨大地震が最大のリスクです。1993年釧路沖地震(M7.8)、1994年北海道東方沖地震(M8.2)、2003年十勝沖地震(M8.0)——過去30年間だけでM7以上の地震が3回以上発生しています。政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は、千島海溝沿いのM9クラスの超巨大地震が30年以内に発生する確率を高いと評価しています。


避難施設一覧

釧路市内には246箇所の避難場所が指定されており、うち55箇所が広域避難場所です。主要な広域避難場所は以下のとおりです。

施設名 住所 種別
シビックコア地区(合同庁舎前広場・こども遊学館) 幸町10-2、3 広域避難場所
中島公園 中島町6-1 広域避難場所
春採公園 春湖台35他 広域避難場所
幸町公園 幸町12-1 広域避難場所
市役所前庭 黒金町7-5 広域避難場所
大楽毛1号公園 大楽毛1-4 広域避難場所
星が浦中央公園 星が浦大通4-7 広域避難場所
光陽公園 光陽町16 広域避難場所
北海道教育大学グランド 城山2 広域避難場所
中央公園(阿寒) 阿寒町新町2-5 広域避難場所
エコミュージアムセンター広場(阿寒湖) 阿寒町阿寒湖温泉1-1 広域避難場所
パークゴルフ場(音別) 音別町あげぼの1-1 広域避難場所

市内全246箇所の避難場所の詳細は、釧路市ハザードマップ(電子地図版)で確認できます。


今からできる備え

釧路市の3大リスク(洪水・地震・津波)に備えるため、以下を今すぐ確認してください。

1. ハザードマップで自宅・職場の浸水エリアを確認する
- 釧路市Webハザードマップ:電子地図で洪水・津波浸水区域を確認可能
- PDF版ハザードマップ:各種ハザードマップのPDF版

2. 最寄りの避難場所を確認し、避難経路を実際に歩いて把握する

特に津波リスクのある沿岸部・低地部に住む方は、「高台への最短ルート」を複数把握しておくことが重要です。地震後に発生する津波は、到達まで数分〜十数分しかない場合があります。

3. 72時間の備蓄を用意する
- 飲料水(1人1日3L×3日分)
- 非常食(3日分以上)
- 携帯ラジオ・ランタン・モバイルバッテリー
- 常備薬・救急セット

4. 釧路市公式防災情報を確認する
- 釧路市防災・危機管理ページ
- 問合せ: 釧路市総務部防災危機管理課 TEL 0154-31-4207


データ出典

データ 出典 取得時点
統合リスクスコア・メッシュ解析 防災DB(bousaidb.jp) 2024年
過去災害事例 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース 〜2008年
過去災害事例(補完) 釧路市地域防災計画(風水害等対策編・地域災害等対策編)、釧路町地域防災計画 〜2008年
1993年釧路沖地震被害 内閣府防災情報ページ、国土地理院報告 1993年
洪水ハザードマップ 釧路市(阿寒川・釧路川・新釧路川等) 最新版
津波浸水想定 北海道庁 最新版
避難場所データ 国土数値情報(避難施設)P20、釧路市地域防災計画 〜2023年
河川治水の歴史 国土交通省 釧路開発建設部

本記事は公的データに基づき、防災DB編集部が作成しました。データの時点や詳細は各出典をご確認ください。防災情報は最新のハザードマップを必ず参照してください。


著者: 防災DB編集部 | 最終更新: 2026年4月