宮城県丸森町の災害リスクと歴史|阿武隈川が生む洪水大国の実像

宮城県南端に位置する丸森町は、防災DBの統合リスクスコアで79点(極めて高い)を記録する、宮城県内でも突出した洪水リスクを抱える自治体です。過去70年間に10件以上の風水害・地震被害が記録され、2019年の令和元年東日本台風では死者10名・行方不明1名という戦後最大級の被害を受けました。阿武隈川が町の中心部を縦断するという地形的宿命が、繰り返す水害の根本原因となっています。

丸森町はなぜ水害に弱いのか

丸森町は宮城県の南端、福島県と隣接する山間盆地に位置します。町域の約70%が山林で、阿武隈川が南西から北東方向に貫流しています。この地形的条件が、洪水リスクを著しく高める要因です。

防災DBの125mメッシュ解析によれば、丸森町内の阿武隈川流域では最大浸水深10mを超える区域が確認されています。阿武隈川だけで7,987メッシュ(1メッシュ=125m四方)が浸水想定区域に含まれており、これは町内最大の浸水リスク河川です。浸水深10mとは、一般的な3階建て建物の屋根付近まで水没する規模を意味します。

町の中心市街地は北側を阿武隈川、南側を支流の内川・新川に囲まれた盆地状の地形にあります。山地に降った雨水が一気に市街地へ流れ込み、排水が追いつかない「内水氾濫」が発生しやすい構造です。令和4年2月改訂の丸森町防災マップでは、「おおむね1000年に一度」の規模を想定した洪水浸水想定区域が公表されています。

過去の主要災害

令和元年東日本台風(2019年10月12日)— 戦後最大の被害

丸森町の歴史において最大の被害をもたらした災害が、2019年10月の台風第19号です。気象庁が「令和元年東日本台風」と命名したこの台風は、10月11日午後3時から13日午前9時にかけて総降水量427mmを記録しました。これは10月1カ月分の平均降水量の2〜3倍に相当する記録的な大雨でした。

阿武隈川は各地で越水・決壊し、丸森町内では死者10名・行方不明者1名を出す戦後最大の被害に。全壊96棟・半壊836棟・一部損壊276棟が記録され、床下浸水も12棟に及びました。町消防は救助要請50件・救助人数97名に対応しましたが、増水した市街地での救助活動は困難を極めました。

この災害は全国でも死者98人・住家被害9万1,000棟以上という甚大な被害をもたらしており、丸森町はその中でも特に深刻な被害地域の一つでした。

丸森町は令和3年に「令和元年東日本台風災害記録誌」を刊行し、被害状況と復旧経過を後世に残しています。

昭和61年台風第10号(1986年8月5日)

1986年の台風第10号は死者1名・負傷者1名を出した。床上浸水162棟・床下浸水354棟・全壊19棟という大規模な水害で、戦後の丸森町における台風19号以前の最大級被害として丸森町地域防災計画に記録されています。

昭和57年台風第18号・豪雨(1982年9月13日)

9月10日から13日にかけての台風第18号および豪雨で、床上浸水31棟・床下浸水274棟・負傷者2名の被害が発生しました。

昭和64年・平成元年台風第11・12・13号(1989年8月6日)

連続した台風来襲により、床上浸水18棟・床下浸水40棟・半壊4棟・一部損壊5棟の被害。複数の河川でも被害が記録されています。

宮城県沖地震(1978年6月)

1978年6月に発生した宮城県沖地震(M7.4)では、丸森町内でも一部損壊1棟の被害が発生しました。この地震は仙台市を中心に死者28名を出した宮城県最大級の地震で、丸森町においても建物被害の記録が残されています。

昭和33年狩野川台風(1958年9月26日)

1958年の狩野川台風でも負傷者3名が記録されています。

過去の災害年表

月日 災害名称 死者 負傷 全壊 半壊 床上浸水 床下浸水
2019 10/12 令和元年東日本台風(台風19号) 10 96 836 12
1998 8/26 前線・台風第4号 7 4
1991 10/12 台風 4 1 1 3
1989 8/6 台風第11・12・13号 4 18 40
1986 8/5 台風第10号 1 1 19 162 354
1982 9/13 台風第18号・豪雨 2 1 31 274
1978 8/5 宮城県沖地震
1958 9/26 狩野川台風 3

(「—」はデータなし。出典:NIED自然災害データベース・丸森町地域防災計画資料編)

洪水・浸水リスクの詳細

防災DBの洪水スコアは100点満点。丸森町は宮城県内で最高レベルの洪水リスクを抱えています。

主要河川と想定浸水深

河川名 浸水想定メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
阿武隈川 7,987 10m超 3.1m 336時間(14日間)
白石川 794 10m超 2.1m 72時間
内川 347 5m 2.5m 72時間
広瀬川 547 5m 2.9m 72時間
雉子尾川 440 5m 1.6m 168時間(7日間)

浸水深の具体的なイメージ:
- 0.5m未満:膝下。歩行困難
- 1m:腰まで浸水。自力避難が危険になるレベル
- 3m:1階天井まで。建物内に取り残されると命の危険
- 5m:2階床上まで浸水。2階への垂直避難も機能しない
- 10m:3階建て屋根付近。すべての居室が水没

阿武隈川では最大継続時間336時間(約14日間)という長期浸水シナリオも想定されており、単なる一時的な冠水ではなく、長期にわたる孤立・停電・断水のリスクも考慮が必要です。

令和3年6月には国土交通省が内川(新川・五福谷川含む)と雉子尾川の新たな浸水想定区域図を公表しており、想定リスク地域は更新されています。

土砂災害リスク

防災DBの125mメッシュ解析では、丸森町内で2,926メッシュが土砂災害リスク区域に含まれています。土砂災害スコアは50点(中程度)ですが、町内にはNIEDが記録する土砂災害ハザード区域が23カ所あります。

町域の70%が山林であることから、大雨時には山腹崩壊・土石流・地すべりのリスクが広範囲に存在します。特に令和元年東日本台風では、大雨による山腹崩壊が複数箇所で発生し、孤立集落が生じました。山沿いの集落に住む方は、土砂災害警戒情報が発表された際には早期避難を心がける必要があります。

地震リスク

防災DBの地震スコアは100点満点(最高リスク)。125mメッシュデータによれば:

  • 30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率(平均):約9.6%
  • 30年以内に震度6弱以上の最大確率(町内ピーク):約64%
  • 30年以内に震度5弱以上の確率(平均):約76.8%
  • 平均地盤S波速度(AVS30):530.1 m/s(比較的安定した地盤)

1978年の宮城県沖地震(M7.4)はその後も繰り返し発生するリスクが指摘されており、2011年の東日本大震災(M9.0)でも宮城県全域が大きな揺れに見舞われました。丸森町は太平洋プレートの沈み込みによる地震が繰り返し発生する地域に位置しています。

避難施設一覧

丸森町内の避難所は以下の通りです(広域避難場所は未指定、全37施設が「避難所」指定)。

施設名 所在地
丸森小学校 丸森町字菱川内39-1
丸森まちづくりセンター 丸森町字烏屋120
丸舘中学校 丸森町字田町南51
丸森東中学校 丸森町金山字長根63
丸森西中学校 丸森町耕野字羽抜30
町民体育館 丸森町字花田20
大内小学校 丸森町大内字横手18
大内中学校 丸森町大内字横手19
大内まちづくりセンター 丸森町大内字横手82-1
筆甫まちづくりセンター 丸森町筆甫字和田80-2
筆甫小学校 丸森町筆甫字中島3-2
大張まちづくりセンター 丸森町大張大蔵字川前
小斎まちづくりセンター 丸森町小斎字山崎63
小斎小学校 丸森町小斎字古舘95
耕野まちづくりセンター 丸森町耕野字小屋舘7-1
仙南ジェロントピア 丸森町舘矢間松掛字宮田67
伊手コミュニティセンター 丸森町大内字下梅ヶ作27
川平スポーツ交流センター 丸森町筆甫字川平二15-3

全避難所リストは防災DBの丸森町ページで確認できます。

注意点:令和元年東日本台風の際には、一部の避難所が浸水被害を受けたり孤立したりした事例があります。水害時の避難には、ハザードマップで自宅から避難所への経路を事前に確認し、浸水リスクの低い高台の避難所を選ぶことが重要です。

今からできる備え

自治体公式防災情報(必ずブックマークを)

  • 丸森町防災・防犯ページ:http://www.town.marumori.miyagi.jp/bousai.html
  • 丸森町デジタル防災マップ:https://www.town.marumori.miyagi.jp/hazardmap/agree.html
  • 国土地理院「重ねるハザードマップ」(丸森町):https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/index.html?citycode=04341

具体的な行動

今すぐ確認すること
1. 自宅・職場が何m浸水想定区域に含まれるかを丸森町デジタル防災マップで確認する
2. 最寄りの避難所と、洪水時に安全に到達できる避難経路を確認する
3. 土砂災害警戒区域・特別警戒区域に自宅が含まれるかを確認する

備蓄の目安
- 食料・水:最低7日分(長期浸水シナリオを考慮し2週間分が理想)
- 非常用電源・ラジオ:停電が長期化するリスクを考慮
- 避難グッズ:浸水を想定し、重要書類は防水袋に保管

阿武隈川の水位情報は国土交通省「川の防災情報」(https://www.river.go.jp/)でリアルタイムに確認できます。大雨が予想される場合は、川の水位を定期的にチェックし、「危険水位」に達する前に避難を完了することが命を守るうえで最も重要です。

データ出典

データ 出典 備考
統合リスクスコア(79点) 防災DB(bousaidb.jp) 2024年時点
洪水浸水想定区域・浸水深 国土交通省浸水想定区域データ(防災DBが加工) 125mメッシュ解析
過去の災害事例(1956〜2019) NIED自然災害データベース / 丸森町地域防災計画資料編
令和元年東日本台風被害詳細 丸森町令和元年東日本台風災害記録誌 2021年刊行
地震確率データ 地震調査研究推進本部(2024年全国地震動予測地図) 防災DBが125mメッシュ化
避難所一覧 国土数値情報 避難施設データ(nlftp_p20) 2022年度
土砂災害ハザード区域 国土交通省・都道府県(防災DBが統合) 125mメッシュ解析
降水量・台風情報 気象庁・国土交通省

本記事のデータは防災DB(bousaidb.jp)が整備する125mメッシュ解析データおよびNIED自然災害データベースに基づいています。数値には取得時点の限界があり、最新の情報は各一次情報源をご確認ください。フィードバックは防災DBのページから受け付けています。


著者: 防災DB編集部
最終更新: 2026年4月
データ参照時点: 2024〜2025年