松茂町は徳島空港(徳島阿波おどり空港)がある、徳島県の玄関口だ。吉野川河口の北岸に位置し、紀伊水道に面する沿岸低地。人口約15,000人のこの小さな町は、防災DBの統合リスクスコア91点(極めて高い)という深刻な評価を受けている。

特筆すべきは、地震スコア100点、津波スコア100点、洪水スコア100点、高潮スコア100点、液状化スコア60点という、ほぼ全ての災害カテゴリで高リスクを示していることだ。NIEDデータベースに記録された過去の災害事例は0件だが、それは「災害がない安全な町」を意味しない。むしろ、まだ大規模災害を経験していない沿岸低地という、最も警戒すべき状況にある。

この町の災害リスクの特徴

沿岸低地に広がる軟弱地盤

松茂町は吉野川と旧吉野川のデルタ地帯に形成された沖積低地だ。町域の大部分が標高2〜5m以下の低地であり、吉野川が運んだ砂礫と粘土が堆積した軟弱地盤の上に町が広がっている。

防災DBの125mメッシュ解析による表層地盤のS波速度(AVS30)は平均274.5m/s。これは極めて軟弱な地盤であることを示す数値だ。一般に、AVS30が300m/s未満の地盤は地震動が大きく増幅される「軟弱地盤」に分類される。松茂町はこの基準を大きく下回っている。

軟弱地盤は地震時の揺れの増幅に加え、液状化のリスクが高い。液状化が発生すると、地面が液体のように流動し、建物が傾斜・沈下し、地中の配管やマンホールが浮き上がる。松茂町の液状化スコア60点は、この地盤特性を反映したものだ。

地震リスク:南海トラフの直撃ゾーン

指標 平均値 最大値
30年以内に震度6弱以上の確率 65.2% 80.1%
30年以内に震度5弱以上の確率 91.2% 96.8%
表層地盤のS波速度(AVS30) 274.5 m/s

30年以内に震度6弱以上の確率が平均65.2%。これは中国・四国地方の市区町村の中でも最上位クラスの数値だ。震度5弱以上に至っては91.2%とほぼ確実に発生する。

松茂町は南海トラフの震源域に近く、軟弱地盤による揺れの増幅効果が加わるため、内陸の山間部と比べて地震の揺れが格段に大きくなる。地震スコア100点はこのリスクを正確に反映している。

洪水・浸水リスク ── 吉野川デルタの宿命

松茂町は吉野川と旧吉野川に挟まれた低地であり、洪水リスクは構造的に避けられない。

防災DBの125mメッシュ解析による河川別浸水リスク。

河川名 浸水メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大浸水継続時間
吉野川 4,257 5.0m 2.82m 168時間(7日)
旧吉野川 828 5.0m 0.94m 168時間(7日)
鮎喰川 211 5.0m 1.28m 168時間(7日)
新池川 122 0.5m 0.50m 72時間

吉野川の浸水メッシュ数4,257は、松茂町の町域のほぼ全域が浸水リスクにさらされていることを意味する。最大浸水深5.0mは「2階の床上まで浸水」する深さだ。

最も注意すべきは浸水継続時間168時間(7日間)だ。低地かつデルタ地帯のため、一度浸水すると水が引くまでに丸1週間かかる。この間、町全体が水没状態に置かれる可能性がある。

さらに、旧吉野川も168時間の浸水継続時間を示しており、吉野川・旧吉野川の両方から同時に浸水する最悪のシナリオでは、松茂町全域が長期にわたって水没する。

津波・高潮リスク ── 沿岸の第一線

松茂町は紀伊水道に面しており、南海トラフ巨大地震による津波の直撃を受ける位置にある。津波スコア100点、沿岸メッシュ数6,204。高潮スコアも100点だ。

松茂町の津波防災ハザードマップでは、南海トラフ巨大地震時の浸水想定が示されており、町内の広い範囲で津波浸水が予想されている。避難所の種別に「津波一時避難場所」が多く含まれていることからも、津波対策が最重要課題であることがわかる。

地震の揺れ→液状化→津波→洪水(河川遡上)→高潮。これらが連鎖的に発生する複合災害シナリオは、沿岸低地の松茂町にとって最も深刻な脅威だ。

避難施設一覧

松茂町には28か所の避難場所が指定されている。多くが「洪水避難場所、津波一時避難場所」の両方に指定されている点が特徴だ。

施設名 住所 種別
徳島空港ターミナルビル 松茂町 洪水・津波
松茂中学校 笹木野字八山開拓186 洪水・津波
喜来小学校 中喜来字前原西一番越14 洪水・津波
なごみ 笹木野字八北開拓329-1 洪水・津波
吉野川育成園 笹木野八北開拓236-1 洪水・津波
松茂中央公園 中喜来字群恵225-1 津波一時

出典:国土数値情報 避難施設データ(2022年時点)

徳島空港ターミナルビルが避難場所に指定されている点は、松茂町ならではの特徴だ。鉄筋コンクリート造の高い建物が少ない沿岸低地において、空港ビルは津波からの垂直避難の有力な選択肢となる。

今からできる備え

松茂町は南海トラフ巨大地震の発生時に、地震動・液状化・津波・洪水の全てに同時に直面する可能性が高い。「どの災害にどう備えるか」ではなく、「全ての災害が同時に来る」前提で備える必要がある。

確認すべきリンク

備えのポイント

松茂町では地震発生後、津波到達までの時間が限られている。揺れが収まったら即座に高い場所へ避難することが最優先だ。液状化で道路が通行不能になる可能性があるため、避難経路は複数確保しておく必要がある。

浸水が最大7日間継続する可能性を踏まえ、1週間分の食料・水の備蓄は最低限必要だ。液状化によりライフライン(水道・ガス・下水)が長期間使えなくなることも想定し、携帯トイレ・カセットコンロ・飲料水タンクも準備すべきだ。

防災DB(bousaidb.jp)では松茂町の125mメッシュ単位の詳細なリスク情報を無料で確認できる。自宅の液状化リスクと浸水想定深を事前に確認し、避難計画を立てておくことが命を守る鍵となる。

データ出典

出典 内容 時点
防災DB 統合リスクスコア・125mメッシュ解析 2024年時点
松茂町 津波防災ハザードマップ 津波浸水想定 2018年作成
徳島県 防災・減災マップ 液状化リスク分布図 2024年時点
国土数値情報 避難施設データ 避難所位置・種別 2022年時点
地震調査研究推進本部 南海トラフ地震発生確率 2024年時点

本記事は防災DB編集部が作成しました。記載内容は各データソースの公開時点の情報に基づいており、最新の状況とは異なる場合があります。防災対策の判断にあたっては、必ず自治体の最新情報をご確認ください。