むかわ町の災害リスクと過去の災害年表|洪水・地震・津波が最高水準の町
北海道勇払郡むかわ町は、防災DBが算出する総合リスクスコアが81/100(極めて高い)に達する、全国でも屈指の多災害地帯です。洪水・地震・津波の3スコアがいずれも100/100という数値は、単一リスクではなく「複合的な脅威が重なる」ことを意味します。
過去の記録では1898年の洪水で34名が犠牲になり、2018年の北海道胆振東部地震(M6.7)では穂別地区が震度6強に見舞われました。長い歴史を通じて繰り返し被災してきたこの町を知ることが、現在ここに暮らす人々の命を守る第一歩です。
なぜむかわ町はこれほどリスクが高いのか
むかわ町は2006年に旧鵡川町(太平洋沿岸)と旧穂別町(内陸山地)が合併して誕生しました。直線距離で約38km離れたこの2地域は、それぞれ異なる災害特性を持っています。
鵡川地区(沿岸部) は鵡川河口に広がる低平な農地・市街地で、太平洋に直接面しています。河川氾濫と津波の両方にさらされる地形です。低平地特有の「どこへ逃げるか」が問われる地域と言えます。
穂別地区(内陸部) は日高山脈西麓の山間地で、急傾斜地が広く分布します。中生代から古第三紀にかけての堆積岩が地盤を構成しており、強い揺れで崩れやすい特徴があります。2018年の地震では大規模な土砂崩れが発生し、道路が寸断されて集落が孤立しました。
この2地域を合わせた町域に、洪水・地震・津波・土砂災害という四重のリスクが重なり合っているのです。
地震リスク:震度6強を経験した土地
防災DBの125mメッシュ解析によると、むかわ町における30年以内の震度6弱以上の発生確率は平均7.6%、最大値は53.5%に達します。震度5弱以上では平均64%、最大99.8%という数値です。日本全体の平均と比べると、地震リスクが際立って高い地域であることがわかります。
なお、活断層データベースではむかわ町周辺の断層の直接的な登録が少ないものの、胆振・日高地方はプレートの沈み込みによる内陸直下型地震と海溝型地震の双方が想定される地域です。
2018年北海道胆振東部地震(M6.7)はその典型例でした。2018年9月6日3時7分、厚真町直下を震源としたこの地震は、むかわ町穂別地区に震度6強をもたらしました。道内では死者42名(北海道全体)、全壊491棟、半壊1,816棟の被害が生じ、むかわ町でも1名が犠牲になりました。深夜の突然の大揺れで穂別地区山間部では広範囲の斜面崩壊が発生し、道路が寸断されました(同地震はNIED本データセットの時点外のため本文にて別途記載)。
また、1982年3月21日の浦河沖地震(M7.1)では、むかわ町で負傷者2名、建物半壊1棟の被害が確認されています。
洪水リスク:鵡川の最大浸水深10mが示す脅威
鵡川は源流を日高山脈の狩振岳に持ち、全長約135kmの一級河川です。下流の鵡川地区は標高が低く、上流から流れ込む大量の水が平野に溢れ出やすい地形です。流域の8割以上を森林が占めるため、大雨時の表面流出が集中しやすいという特性もあります。
防災DBの125mメッシュ洪水浸水解析では、むかわ町に影響する主要河川の想定浸水深は以下のとおりです。
| 河川名 | 影響メッシュ数 | 最大浸水深 | 平均浸水深 | 最大継続時間 |
|---|---|---|---|---|
| 鵡川 | 5,412 | 10.0m | 2.5m | 72時間 |
| 厚真川 | 4,293 | 5.0m | 0.9m | 168時間 |
| 沙流川 | 1,691 | 10.0m | 4.4m | 72時間 |
| 安平川 | 1,387 | 10.0m | 2.2m | 336時間 |
| 夕張川 | 859 | 5.0m | 3.8m | 168時間 |
| 穂別川 | 781 | 5.0m | 2.4m | 12時間 |
| 額平川 | 640 | 5.0m | 2.8m | 12時間 |
浸水深の具体的なイメージを示すと、1.0m超で一般的な乗用車が浮き始め、3.0m(1階天井付近)では建物の1階への取り残しが致命的になります。鵡川の最大浸水深10mとは、2階建て住宅がほぼ水没する水位です。
安平川の最大継続時間336時間(約14日間)という数値も見逃せません。長期浸水になれば救援活動も困難になります。
過去の水害:1898年に34名が犠牲
むかわ町の水害被害記録を振り返ると、その頻度と深刻さが際立ちます。
1898年9月6日、この地域(当時は鵡川流域の開拓地)で大洪水が発生し、34名が犠牲になりました。明治時代の防災インフラが整っていない時代に発生した最悪規模の水害です。同年の記録からは、複数の集落が水害に見舞われたことが読み取れます。
1954年9月26日の洞爺丸台風では全壊898棟という甚大な建物被害が記録されています。これは当時の鵡川町・穂別町の世帯数と比べても壊滅的な規模でした。その5年後の1959年4月23日にも全壊280棟を記録した風水害が発生しています。
1958年7月22日の水害では死者3名・行方不明1名、1961年7月24日の洪水では死者2名・建物全壊2棟が記録されています。1962年8月4日にも死者1名・床上浸水105件・河川被害55件という大規模被害がありました。
津波リスク:千島海溝・日本海溝への備え
むかわ町の津波スコアは100/100で、想定最大浸水深は10m以上(下限値)です。コースタルメッシュは9,992にのぼり、沿岸部が広範囲にわたって津波想定域に含まれています。
令和3年7月に更新された「北海道太平洋沿岸の津波浸水想定」に基づき、むかわ町は最新のハザードマップを整備しています。千島海溝・日本海溝の巨大地震(想定Mw9クラス)によって鵡川河口部から津波が遡上する可能性があります。
重要な点として、大地震発生後は素早い避難が不可欠です。海岸付近にいる場合は揺れが収まり次第、すぐに高台や指定避難場所へ移動してください。沿岸部からの避難時間は限られており、「揺れたらすぐ逃げる」というルールを家族全員で共有してください。
土砂災害リスク:穂別地区の山間部
土砂災害については、防災DBの125mメッシュ解析で288メッシュが土砂災害影響域に含まれています。ハザード区域数は7箇所と比較的少なめに見えますが、穂別地区の山間部には急傾斜地崩壊・土石流・地すべりの危険箇所が点在します。
2018年の胆振東部地震でも穂別地区山間部で土砂崩れが発生しており、地震直後の降雨と組み合わさると危険度が増します。むかわ町の土砂災害ハザードマップで自宅周辺の状況を確認してください。
過去の主要災害 年表
むかわ町地域防災計画資料編に基づき、主な被害記録を一覧化します。
| 年月日 | 種別 | 災害名・概要 | 死者 | 負傷者 | 全壊 | 床上浸水 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1898年9月6日 | 水害 | 洪水 | 34名 | — | — | — |
| 1913年8月27日 | 水害 | 洪水 | 2名 | — | — | — |
| 1954年9月26日 | 風水害 | 洞爺丸台風 | 3名 | — | 898棟 | — |
| 1958年7月22日 | 水害 | 洪水 | 3名 | — | 2棟 | — |
| 1959年4月23日 | 風水害 | 春の風水害 | — | — | 280棟 | — |
| 1961年7月24日 | 水害 | 洪水 | 2名 | 2名 | 2棟 | 6件 |
| 1962年8月4日 | 水害 | 洪水 | 1名 | — | — | 105件 |
| 1966年8月17日 | 水害 | 洪水 | 2名 | — | — | — |
| 1981年8月3日 | 水害 | 北海道豪雨 | 1名 | 1名 | — | 2件 |
| 1981年8月21日 | 風水害 | 台風第15号 | — | — | 2棟 | — |
| 1982年3月21日 | 地震 | 浦河沖地震(M7.1) | — | 2名 | — | — |
| 1992年8月9日 | 風水害 | 台風第10号 | — | — | 2棟 | 16件 |
| 2004年9月7日 | 風水害 | 台風第18号 | — | — | 2棟 | — |
| 2018年9月6日 | 地震 | 北海道胆振東部地震(M6.7) | 1名 | 多数 | — | — |
※2018年の地震はNIEDデータセットの収録外のため、内閣府・気象庁の公表値を使用。
避難施設一覧
むかわ町には40箇所の避難所が登録されています(2024年時点)。主な施設を以下に示します。なお、広域避難場所に指定された施設は現時点でデータなし(0箇所)で、むかわ町の地域防災計画で別途定めている可能性があります。最新情報は町公式の避難場所マップでご確認ください。
| 施設名 | 住所 | 種別 |
|---|---|---|
| 四季の館 | むかわ町美幸3丁目3番地1号 | 避難所 |
| 宮戸小学校 | むかわ町宮戸280番地2 | 避難所 |
| 生涯学習センター報徳館 | むかわ町二宮315番地2 | 避難所 |
| 生田小学校 | むかわ町生田255番地 | 避難所 |
| さくら保育園 | むかわ町穂別80番地1 | 避難所 |
| たんぽぽ保育所 | むかわ町花岡310番地 | 避難所 |
| 富内生きがいセンター富久寿荘 | むかわ町穂別富内81番地15 | 避難所 |
その他33施設が各地区に配置されています。普段から最寄りの避難所への経路を確認しておきましょう。
今からできる備え
公式防災ページを確認する
- むかわ町 津波・洪水ハザードマップ: http://www.town.mukawa.lg.jp/2729.htm
- むかわ町 土砂災害ハザードマップ: http://www.town.mukawa.lg.jp/3192.htm
- むかわ町 津波緊急避難場所・避難所マップ: http://www.town.mukawa.lg.jp/5253.htm
チェックリスト
- 自宅・職場のハザードマップ確認(洪水・津波・土砂崩れ)
- 最寄りの避難所と避難経路の把握
- 飲料水・食料・医薬品の備蓄(最低3日分、理想は1週間分)
- 非常用持ち出し袋の準備
- 家族・地域との連絡手段の確認
むかわ町では洪水・地震・津波・土砂崩れという複合的なリスクに備える必要があります。特に沿岸部(鵡川地区)では大地震後の津波避難、内陸部(穂別地区)では地震時の土砂崩れ・孤立への備えを重点的に進めてください。
データ出典
- 防災DB(bousaidb.jp) — 洪水・地震・津波・土砂災害の125mメッシュ解析データ(2024年時点)
- むかわ町地域防災計画 資料編 — 過去の災害記録(NIED自然災害データベース経由)
- 内閣府・気象庁「平成30年北海道胆振東部地震」公表資料(2018年)
- 国土交通省「日本の川 鵡川」(https://www.mlit.go.jp/river/)
- むかわ町公式ウェブサイト(http://www.town.mukawa.lg.jp/)
- 気象庁「昭和57年(1982年)浦河沖地震」
- 北海道「令和3年北海道太平洋沿岸の津波浸水想定」
著者: 防災DB編集部
最終更新: 2026年4月
データ基準時点: 2024年(防災DBデータ)/ 2026年4月(記事執筆時点)
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