睦沢町の災害リスクと過去の災害年表|洪水・津波・地震リスクを徹底解説

著者: 防災DB編集部 | 最終更新: 2026年4月 | データ基準: 防災DB v2.5(2024年)


この町が抱える「複合リスク」の全体像

千葉県長生郡睦沢町の防災DB統合リスクスコアは 89/100(極めて高い)。この数値が示すのは、単一の災害が深刻なのではなく、洪水・津波・高潮・地震という4つの主要リスクが、それぞれ単独でも最高水準に達しているという複合的な危機だ。

睦沢町は過去400年以上にわたり、1605年の慶長地震から2019年の房総半島台風まで、合計19件の災害記録が残っている。九十九里平野の南部という地理的条件が、地震時の津波と台風時の洪水という「二重のリスク」を生み出している。

防災DBによる各リスクスコアは次のとおりだ。

リスク種別 スコア(100点満点) 評価
洪水 100 最高
津波 100 最高
高潮 100 最高
地震 100 最高
土砂災害 50 中程度
液状化 40 中程度
統合スコア 89 極めて高い

防災DBが独自に収集・分析した125mメッシュデータに基づくと、一宮川沿いの一部地区では最大浸水深10m、津波・高潮の影響を受けるメッシュは町内に1万1,000以上存在する。この数値の意味するところは、この記事を読み終えるころには明らかになるはずだ。


なぜ睦沢町はこれほど多くのリスクを抱えるのか

九十九里平野南部という地形的宿命

睦沢町は千葉県長生郡の西部に位置し、南北約11km、東西約7kmの小さな町だ(人口約6,300人)。地形的には九十九里平野の南端にあたり、その特徴が複合リスクを生み出している。

洪水リスクの源泉:複数河川の流域重複
町の中央部を流れる一宮川は、夷隅郡大多喜町を源流とし、長南町・長柄町・茂原市・睦沢町・長生村を経て一宮町で太平洋に注ぐ千葉県の二級河川だ。この流域には1市6町村が含まれており、上流の降雨が集中して睦沢町に流れ込む構造を持つ。加えて、南白亀川・夷隅川・養老川も町内の低地部に浸水リスクをもたらしている。

津波・高潮リスクの源泉:外房海岸への近接
睦沢町の東端から太平洋(外房)までの距離はわずか4〜5km程度だ。外房沿岸は歴史的に房総沖地震や南海トラフ系巨大地震の津波が繰り返し到来してきた地帯であり、一宮川河口から津波が遡上してくるリスクも大きい。

地震リスクの源泉:30年以内の高い揺れ確率
防災DBの125mメッシュ地盤データによれば、睦沢町内の震度6弱以上の揺れが発生する確率(30年以内)は平均52%、最大93.6%に達する。全国平均が26%程度であることを考えると、この地域の地震リスクがいかに高いかがわかる。地盤の平均S波速度(AVS30)は305m/sで、軟弱地盤とは言えないものの、低地部では液状化リスクも一定程度存在する。


400年の災害記録:睦沢町の災害年表

睦沢町地域防災計画および国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)の災害事例データベースに基づく、過去の主要災害を年表として示す。

主要災害の詳細

◆ 令和元年房総半島台風(台風第15号)— 2019年9月9日

2019年9月9日午前5時前、台風15号が千葉市付近に上陸した。中心気圧960hPa、上陸時の最大風速は関東上陸台風として記録的な勢力を誇り、「令和元年房総半島台風」と命名された。

睦沢町では住家一部損壊61棟(最終確定値)、停電がピーク時に町内の約8割に達した。注目すべきは、睦沢町が国内でも珍しい天然ガス発電による「電力地産地消」のインフラを保有していたことだ。この仕組みにより、他市町村と比較して比較的早期に一部電力を復旧できたとされている(出典:Business Journal、2019年12月)。

同じ2019年10月には台風19号(令和元年東日本台風)が続けて影響を与え、一宮川水系の流域では浸水被害が発生した。この被害を契機に国土交通省が「一宮川水系流域治水プロジェクト」を策定し、河道拡幅・護岸整備・排水ポンプ新設などの対策が進められている。

◆ 平成17年千葉県北東部の地震 — 2005年4月11日

2005年4月11日、マグニチュード6.1の地震が千葉県北東部を震源として発生した。同年7月23日には千葉県北西部を震源とするM6.0の地震も記録されており、この地域が継続的な地震活動にさらされていることを示している。

◆ 関東大震災 — 1923年9月1日

マグニチュード7.9の関東地震(関東大震災)は、睦沢町が位置する房総半島においても甚大な被害をもたらした。震源が相模湾であったため、外房沿岸への津波も発生している。9月1日・2日の連続記録から、被害が数日にわたって続いたことが読み取れる。

◆ 房総沖地震 — 1953年11月26日

1953年11月26日の房総沖地震(M7.0)は、睦沢町に揺れと津波の双方をもたらした。房総半島南部を震源とするこのタイプの地震は、近年も続く房総沖の地震活動の延長線上にある。

◆ 元禄地震 — 1703年12月31日

1703年(元禄16年)12月31日、M8.1〜8.2の元禄地震が発生した。震源は相模湾東部で、房総半島南端では6m超の津波が記録されている。睦沢町周辺でも大きな津波被害があったと伝えられている。

◆ 慶長地震 — 1605年2月3日

防災計画に記録された最古の災害が1605年(慶長9年)の慶長地震(M7.9)だ。南海トラフを震源とするとされるこの地震は、東海〜南関東の太平洋沿岸に大津波をもたらした。睦沢町のような外房沿岸の町は、この種の遠地津波の被害圏内にある。

睦沢町 災害年表(全記録)

発生年月日 災害名・分類 被害概要 資料
1605年2月3日 慶長地震(地震・津波) 睦沢町地域防災計画
1677年11月4日 地震 同上
1703年12月31日 元禄地震 同上
1855年11月11日 江戸地震 同上
1906年2月23〜24日 地震(連続) 同上
1909年3月13日 地震 同上
1921年12月8日 地震 同上
1922年4月26日 地震 同上
1923年9月1〜2日 関東大震災 津波・揺れ 同上
1953年11月26日 房総沖地震 同上
1960年5月23日 チリ地震津波 同上
1987年12月17日 地震 同上
1989年3月6日 地震 同上
2005年4月11日 千葉県北東部地震 M6.1 同上
2005年7月23日 千葉県北西部地震 M6.0 同上
2019年9月9日 令和元年房総半島台風 一部損壊61棟、停電約8割 NIED・千葉県
2019年10月 令和元年東日本台風(19号) 一宮川流域浸水 NIED・内閣府

注:死者数・負傷者数などの被害規模データは、資料に記載なしのものは「—」と表記。NIEDデータセットへの完全な収録状況は原資料によって異なる。


洪水・浸水リスク:一宮川とその支流

防災DBの125mメッシュ浸水解析に基づく、睦沢町内の主要河川の洪水リスクは次のとおりだ。

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最長継続時間
一宮川 5,126 10.0m 1.0m 168時間
南白亀川 3,413 5.0m 0.7m 336時間
夷隅川 2,396 10.0m 3.0m 72時間
養老川 435 10.0m 4.78m 72時間
真亀川 363 0.5m 0.48m 168時間

出典:防災DB 125mメッシュ浸水想定データ(2024年時点)

数値をどう読むか。浸水深10mとは、2階建て住宅の屋根を超える水位だ。一宮川沿いの低地では、想定最悪シナリオでは2階部分まで水没する危険がある。養老川の平均浸水深4.78mは「1階が完全に水没し、2階の床面まで浸水する」水準であり、人的安全のためには早期避難が不可欠だ。

さらに見過ごせないのが南白亀川の336時間という浸水継続時間だ。2週間以上にわたって浸水状態が続く可能性があることを意味し、建物への累積ダメージや生活復旧の長期化に直結する。

一宮川については、国土交通省が「一宮川水系流域治水プロジェクト」を策定し、睦沢町内での河道拡幅・護岸整備・雨水ポンプ能力増強・排水ポンプ新設が計画・実施されている。対策は進んでいるが、完成までの間もリスクは残る。

防災DBの125mメッシュ解析では、自宅の正確な浸水リスクを確認できる。


津波・高潮リスク:外房海岸からの脅威

防災DBの解析では、睦沢町内で津波・高潮の影響を受けるメッシュは 11,233メッシュ(125m×125m単位)に達する。これは町内の広い範囲が津波・高潮の浸水想定区域に含まれることを示している。

津波スコアと高潮スコアはともに100(最高値)だ。その根拠として、千葉県の想定では睦沢町周辺の海岸線付近で最大3m程度の津波浸水高が予測されている。一宮川河口から逆流する形で内陸部まで浸水域が広がる可能性もある。

歴史的に見ても、1605年慶長地震・1703年元禄地震・1960年チリ地震津波と、睦沢町は複数の大規模津波に見舞われてきた。特に1960年のチリ地震は太平洋の対岸から22時間をかけて津波が到達したという事例であり、「地震がなくても津波は来る」可能性を歴史が証明している。

千葉県が公開する津波・高潮ハザードマップと合わせて、自宅の位置と避難経路を事前に確認しておくことが重要だ。


土砂災害リスク

防災DBの解析では、睦沢町内の土砂災害影響メッシュは321件、土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定数は4か所(gold層データ)となっている。

千葉県が公開している土砂災害警戒区域の一覧(千葉県土砂災害警戒区域の指定状況)では、町内の斜面地における土砂災害のリスクが詳細に示されている。統合スコアにおける土砂災害スコアは50(中程度)だが、台風や豪雨時には特に丘陵部での警戒が必要だ。


地震リスク:関東の「地震の巣」の縁辺部

防災DBの地盤解析データによれば、睦沢町における地震リスクは次のとおりだ。

指標 平均値 最大値
震度6弱以上の30年発生確率 52.0% 93.6%
震度5弱以上の30年発生確率 99.8% 100%
地盤AVS30(地盤硬さ) 305 m/s

震度5弱以上の発生確率が平均99.8%、最大100%ということは、「今後30年以内に震度5弱以上の地震に遭遇する可能性がほぼ確実」であることを意味する。震度6弱でも平均52%と非常に高く、建物の耐震化・家具の固定・非常持ち出し品の準備が急務だ。

千葉県周辺の活断層としては、関東平野の地下に複数の活断層が存在することが知られており、過去の地震記録もそれを裏付けている。2005年の千葉県北東部・北西部地震のような中規模地震も引き続き注意が必要だ。

なお、液状化スコアは40(中程度)であり、特に一宮川沿いの低地・埋め立て地では地震時の液状化リスクも念頭に置く必要がある。


避難施設一覧

睦沢町内の避難施設は24か所(広域避難所7か所・一時避難所17か所)が登録されている。

広域避難所(7か所)

施設名 住所
中央公民館(ゆうあい館) 千葉県長生郡睦沢町
睦沢中学校 千葉県長生郡睦沢町
土睦小学校 千葉県長生郡睦沢町
瑞沢小学校 千葉県長生郡睦沢町
睦沢こども園 千葉県長生郡睦沢町
睦沢町総合運動公園 千葉県長生郡睦沢町
農村環境改善センター 千葉県長生郡睦沢町

主な一時避難所(抜粋)

うぐいす里コミュニティーセンター、上之郷区民センター、上市場区民センター、中央団地コミュニティーセンター、佐貫区民センター、大上構造改善センター、岩井区民センター、川島区民センター、河須ヶ谷区民センター、長楽寺区民センター、妙楽寺区民センターほか(全17か所)

ポイント: 洪水・津波ハザードマップと照らし合わせ、自分の自宅から最も近い高所の避難所を事前に確認しておくことが重要だ。特に浸水想定区域内にある施設は、洪水時に避難先として機能しない場合がある。


今からできる備え

自治体公式の防災情報を確認する

優先的に行うべき準備

  1. 避難経路の確認: ハザードマップで自宅の浸水想定を確認し、複数の避難ルートを把握する
  2. 非常持ち出し品の整備: 3日分の水・食料、充電式ランタン、常備薬
  3. 家具の固定: 震度6弱以上がほぼ確実に来る地域として、タンス・本棚の転倒防止を最優先に
  4. 早期避難の習慣: 一宮川・南白亀川の氾濫情報は、気象庁・国土交通省の川の防災情報(https://www.river.go.jp/)でリアルタイム確認できる
  5. 津波避難計画: 強い揺れを感じたら即座に高所へ。チリ地震津波の例が示すように、遠地津波はアラート後に行動する時間がある

データ出典

出典 内容
防災DB(bousaidb.jp) 統合リスクスコア・125mメッシュ浸水・地震確率・地盤データ
国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)災害事例データベース 過去の災害記録(1605〜2019年)
睦沢町地域防災計画 歴史的地震記録(元禄地震・関東大震災ほか)
国土交通省 一宮川水系流域治水プロジェクト 洪水対策の進捗情報
千葉県 土砂災害警戒区域指定一覧 土砂災害警戒区域データ
内閣府 令和元年台風第15号被害状況 2019年台風15号被害データ
Business Journal(2019年12月) 台風15号における睦沢町の電力地産地消事例
国土地理院 わがまちハザードマップ 各種ハザードマップ統合情報

本記事のデータは防災DB(bousaidb.jp)が独自に収集・分析した公的データに基づいています。データの正確性には万全を期していますが、最新情報は各自治体の公式発表をご確認ください。ご意見・訂正のご要望は防災DBまでお寄せください。