流山市の災害リスクと歴史【2025年版】江戸川・利根川に囲まれた急成長都市の水害・地震・液状化リスク

人口21万人を超え、全国屈指の人口増加率を誇る流山市。つくばエクスプレス(TX)開通後、子育て世代の移住が急増した「成長する街」の裏側には、防災データが示す厳しい現実がある。

防災DBの統合リスクスコアは89点(極めて高い)。洪水・地震・高潮のスコアはいずれも満点の100点で、全国的に見ても最高リスク水準に位置する。とりわけ深刻なのが洪水リスクだ。市の西側を流れる江戸川、北側に接する利根川・利根運河、そして市内を縦断する大堀川など複数の河川が重なり、想定最大規模の降雨では市域の広範囲が深さ3〜10mを超える浸水にさらされる可能性がある。

東日本大震災(2011年)では液状化によって市内1,077棟が被害を受けた。2019年の台風19号では江戸川に氾濫警戒情報が発令され、市域への浸水危機は紙一重で回避された。「安全な住宅都市」というイメージの裏に、蓄積された災害リスクが静かに存在する。

本記事では、NIEDの災害事例データと防災DBの125mメッシュ解析データをもとに、流山市の災害リスクを徹底解説する。


流山市の地形と災害リスクの構造

流山市の地形は大きく2つに分かれる。台地低地(沖積平野)だ。

市の東部・北部には下総台地(北千葉台地)が広がり、標高20〜30mのロームに覆われた安定した地盤が続く。おおたかの森駅周辺やこうのとり団地、初石・西初石などの住宅地の多くはこの台地上に位置し、相対的に洪水・液状化リスクは低い。

一方、市の西側を流れる江戸川沿いと、流山地区・南流山地区を中心とした低地は事情が異なる。河川氾濫・内水氾濫・液状化のいずれのリスクも高く、ここに居住する人々は複合的な災害リスクにさらされている。

防災DBが保有する125mメッシュデータでは、市内の平均地盤S波速度(Avs30)は205.5 m/s。これは「軟弱地盤」に分類される値であり(一般的に200m/s未満が特に問題視されるが、200〜250m/sも注意が必要な水準)、地震動を増幅しやすい地盤特性を持つことを意味する。地震動増幅率の市内平均は1.834倍に達する。


過去の主要災害

2011年3月 東日本大震災 — 市内1,077棟が液状化被害

流山市にとって最も深刻な近年の災害は、マグニチュード9.0の東日本大震災(2011年3月11日)だ。震源から遠い関東平野で起きた「液状化」という二次被害が市内に甚大な被害をもたらした。

東日本大震災の液状化被害は全国9都県80市区町村で26,914棟に及んだが、そのうち千葉県の被害は18,674棟(全国の約69%)と突出しており、流山市は1,077棟が液状化による被害を受けた(千葉県第268報より)。

市内の低地部分—特に南流山地区や流山地区の江戸川沿い—では、道路に噴砂が発生し、家屋が沈下・傾斜する事態が相次いだ。ロームに覆われた台地部分での被害は軽微だったが、沖積低地と河川沿いの砂質地盤では地下水と砂が地表に噴出する典型的な液状化現象が確認された。

この教訓から、流山市は地震ハザードマップに「液状化危険度マップ」を追加し、居住地ごとのリスク可視化を進めている。

2019年10月 台風19号(令和元年東日本台風) — 江戸川が危険水位到達

令和元年台風第19号(令和元年東日本台風)は、2019年10月12日19時に伊豆半島に上陸した。箱根町では総雨量1,000mmを超え、全国で99人が死亡(行方不明含む)、土砂災害は962件(昭和57年以降の単一台風として過去最多)に達した歴史的な台風だ。

流山市では10月13日4時頃、江戸川の水位が危険水位に達し、氾濫警戒情報が発令された。西関宿水位観測所(野田市・流山市境界付近)での水位急上昇を受け、市周辺への氾濫警戒情報が出されたが、越水・破堤には至らなかった。

NIEDデータには台風19号による流山市の家屋被害として、一部損壊70棟の記録がある(ただし台風15号との合算記録の可能性あり)。氾濫は回避されたものの、この経験は「江戸川が本当に氾濫したら何が起きるか」を市民に強く意識させた出来事となった。

2019年9月 台風15号(令和元年房総半島台風)

台風19号の直前、2019年9月に上陸した台風15号(令和元年房総半島台風)は千葉県に記録的な暴風をもたらした。流山市でも全壊1棟、一部損壊70棟の被害が発生した(NIEDデータより)。

2013年10月 台風26号 — 床上床下浸水45棟

2013年10月16日の台風第26号では、流山市内で床上浸水3棟・床下浸水42棟・全壊1棟の被害が発生した(NIEDデータより)。市を流れる支流河川の溢水が主な原因とみられる。

2004年10月 台風22号 — 床上床下浸水51棟

2004年10月9日の台風第22号(前線を伴う)では、床上浸水4棟・床下浸水47棟の浸水被害が記録された(NIEDデータより)。

1979年10月 台風20号 — 全壊8棟・負傷2名

昭和54年(1979年)10月19日の台風第20号では、流山市で負傷者2名・全壊8棟という、近現代の台風被害としては比較的大きな被害が生じた(NIEDデータより)。

1923年9月1日 関東大震災

大正12年(1923年)9月1日の関東地震(関東大震災)も流山市の災害記録に残る。流山市での全壊1棟の記録があるが、震源から距離があるため被害規模は限定的だったとみられる(NIEDデータより)。


過去の災害年表

年月日 災害名 種別 主な被害
1923年9月1日 関東大震災 地震 全壊1棟
1979年10月19日 昭和54年台風第20号 風水害 負傷2名、全壊8棟
1996年9月22日 平成8年台風第17号 風水害 全壊1棟
2001年1月27日 大雪被害 大雪 全壊1棟
2004年10月9日 平成16年台風第22号 洪水 床上浸水4棟、床下浸水47棟
2008年8月16日 大雨 風水害 全壊1棟
2010年9月23日 大雨等 その他 全壊1棟
2011年3月11日 東日本大震災 地震(液状化) 液状化被害1,077棟
2011年9月21日 平成23年台風第15号 風水害 全壊1棟
2012年4月3日 突風 風水害 全壊2棟
2012年9月30日 平成24年台風第17号 風水害 全壊1棟
2013年10月16日 平成25年台風第26号 洪水 床上浸水3棟、床下浸水42棟、全壊1棟
2014年(複数) 台風・大雪 複合 建物被害複数回
2015年5〜9月 豪雨(複数) 洪水 床下浸水複数
2019年9月 令和元年台風第15号(房総半島台風) 風水害 全壊1棟、一部損壊70棟
2019年10月 令和元年台風第19号(東日本台風) 洪水 江戸川氾濫警戒情報発令

出典:NIED(国立研究開発法人防災科学技術研究所)自然災害データベース。東日本大震災液状化被害は千葉県第268報による。


なぜ流山市は洪水に弱いのか

流山市の洪水リスクを決定的に高めているのが、江戸川と利根川という2本の大河川に市が挟まれた地形だ。

防災DBの125mメッシュ洪水解析データによると、市内の洪水浸水想定メッシュ数は江戸川単独で4,476メッシュ(約1,125ヘクタール相当)、利根川は3,487メッシュ(約872ヘクタール)に達する。これに利根運河(495メッシュ)、荒川(264メッシュ)、大堀川(126メッシュ)が加わると、市域の相当部分が複数河川の洪水浸水想定区域に重なることがわかる。

河川名 浸水想定メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
江戸川 4,476 10m以上 3.46m 336時間(14日間)
利根川 3,487 10m以上 3.39m 336時間(14日間)
利根運河 495 5m 3.41m 336時間
荒川 264 10m以上 1.23m 336時間
大堀川 126 10m以上 1.69m 168時間
大津川 47 5m 2.05m 168時間

出典:防災DBの125mメッシュ洪水浸水想定データ(国土交通省洪水浸水想定区域データを集計)

浸水深の実感として参考にしてほしい:

  • 0.5m: 膝下(車が動けなくなる水位)
  • 1m: 腰上(大人が立つのが困難)
  • 2m: 1階軒下(1階の多くが水没)
  • 3m: 1階天井まで(2階への垂直避難でかろうじて助かる水位)
  • 5m: 2階天井まで(2階での生存も困難)
  • 10m以上: 3〜4階建て全没相当

江戸川の「最大浸水深10m以上・継続336時間(14日間)」という想定は、約1,000年に1回の頻度で発生しうる最悪シナリオだ。この水位が14日間続くということは、発生した場合の市域への影響が極めて甚大で長期にわたることを意味する。

流山市公式の洪水ハザードマップ(令和7年11月更新)では、対象河川として江戸川・利根川・利根運河・坂川・坂川放水路・北千葉導水路・新坂川・大堀川・今上落が記載されており、あらゆる方向から浸水するリスクが可視化されている。


地震・液状化リスク

防災DBの地震確率データ(全国地震動予測地図2024年版)によると、流山市内の震度6弱以上の30年発生確率は平均64.46%、最大97.28%に達する。震度5弱以上ではほぼ100%とされており、中規模以上の地震動は近い将来ほぼ確実に経験する見通しだ。

地盤的には平均Avs30(表層地盤S波速度)が205.5 m/sと軟弱な傾向があり、地震動増幅率の平均は1.834倍だ。これは硬い地盤(400 m/s以上)に比べて揺れが大きくなりやすいことを意味する。

液状化リスクについては、東日本大震災の実績が何よりの証明だ。市内1,077棟が被害を受けたという数字は、低地・河川沿いの砂質地盤が地下水に飽和しやすい構造であることを示している。流山市が公式ハザードマップに液状化危険度マップを掲載しているのは、この教訓に基づく判断だ。

地震ハザードマップ(流山市公式):
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1003604/1003691/1003692/1003693/index.html


高潮リスク

市の南西部を中心に、高潮の浸水想定も無視できない。防災DBの解析では市内に1,683メッシュの高潮浸水想定区域が存在し、最大浸水深は5mに達する(想定し得る最大規模の高潮)。

流山市は東京湾から直接の海岸線を持たないが、江戸川を経由した高潮の遡上により浸水リスクが生じる。台風時の高潮と大雨洪水が同時に発生する「複合災害」シナリオでは、河川水位の上昇をさらに押し上げる効果があり、通常の洪水ハザードマップよりも深刻な状況が生まれうる。

高潮ハザードマップ(流山市公式・令和7年更新):
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1003604/1003691/1003692/1027989.html


土砂災害リスク

流山市の土砂災害ハザード区域数は2か所(防災DBデータより)と、他の洪水・地震リスクに比べると限定的だ。125mメッシュで土砂災害危険性が認定されているのも15メッシュ程度にとどまる。下総台地の斜面部分に局所的に崖崩れ・地すべりのリスクがある地点が存在するが、市全体のリスクとしては相対的に低い。

ただし、局所的な危険箇所に居住・通勤している場合は、千葉県が指定する土砂災害警戒区域・特別警戒区域の確認が必要だ。


市内の主な避難施設

流山市内には計76か所の避難場所・避難所が指定されている(防災DBデータ、nlftp_p20より)。広域避難場所は1か所のみだ。

広域避難場所

施設名 住所
流山市総合運動公園 千葉県流山市野々下1丁目40番地の1

主な避難所・避難場所(一部)

施設名 住所 種別
南流山中学校 流山市大字流山2539番地の1 避難所・避難場所
南流山小学校 流山市大字木487番地 避難所・避難場所
北部中学校 流山市大字中野久木577番地 避難所・避難場所
八木中学校 流山市古間木210番地の2 避難所・避難場所
八木北小学校 流山市美田208番地 避難所・避難場所
八木南小学校 流山市芝崎92番地 避難所・避難場所
南流山センター 流山市南流山3丁目3番地の1 避難所
南流山中央公園 流山市南流山3丁目14番地 避難場所
勤労者体育施設 流山市大字大畔64番地の1 避難所
初石公民館 流山市西初石4丁目381番地の2 避難所

電子地図版ハザードマップ(最寄りの避難場所を確認):
https://map03.ecom-plat.jp/map/map/?cid=9&gid=35&mid=107


今からできる備え

1. 公式ハザードマップで自宅リスクを確認する

流山市が公開している電子ハザードマップは、洪水・地震・高潮・内水・土砂災害の各リスクを地図上で確認できる最も信頼できる一次情報だ。

  • 洪水ハザードマップ:https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1003604/1003691/1003692/1003697.html
  • 地震ハザードマップ(液状化含む):https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1003604/1003691/1003692/1003693/index.html
  • 高潮ハザードマップ:https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1003604/1003691/1003692/1027989.html
  • 内水ハザードマップ:https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1003604/1003691/1003692/1003698.html
  • 防災ポータル(総合):https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1003604/index.html

2. 避難行動をあらかじめ決めておく

「江戸川が危険水位に達したら○○小学校へ避難する」「液状化が起きたら△△公園に一時避難する」という具体的な行動計画を家族で事前に決めておく。2019年台風19号の江戸川氾濫警戒情報発令時のように、夜間・深夜に緊急情報が出ることも多い。

3. 垂直避難の準備をする

洪水発生時に外への移動が困難な場合、建物の上階に避難する「垂直避難」が命を救う。特に市内低地に居住する場合は、2階以上への素早い移動と、水、食料3日分、携帯電話充電器などを2階に置く習慣をつけておく。

4. 防災DBで最新データを確認する

防災DB(bousaidb.jp)では、流山市を含む全国市区町村のリスクスコア・ハザードデータをAPI・MCPで無料提供している。不動産の検討や企業のBCP策定にも活用できる。


データ出典

データ 出典 備考
統合リスクスコア(89点) 防災DB(bousaidb.jp)— 独自集計 国土交通省・気象庁等のオープンデータを集計
125mメッシュ洪水浸水想定 防災DB(bousaidb.jp)— 国土交通省洪水浸水想定区域データより 想定最大規模
地震確率データ 防災DB(bousaidb.jp)— 地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図2024年版」より
過去の災害事例 国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース
東日本大震災液状化1,077棟 千葉県第268報「東日本大震災について」(2023年3月7日付)
ハザードマップ各種URL 流山市公式ホームページ(令和7年11月更新版)
台風19号・江戸川氾濫警戒情報 国土交通省関東地方整備局「令和元年東日本台風による利根川・江戸川の出水状況」
高潮浸水想定 防災DB(bousaidb.jp)— 国土交通省高潮浸水想定区域データより 想定最大規模
避難場所データ 防災DB(bousaidb.jp)— 国土数値情報「避難施設」データより

この記事は防災DB編集部が2025年4月時点のデータをもとに作成しました。災害リスクは常に変化します。最新情報は流山市公式防災ページおよび防災DBでご確認ください。

著者:防災DB編集部