中泊町の災害リスクと過去の被害記録|洪水・津波・地震が複合する津軽の町

青森県北津軽郡中泊町では、1948年以降だけで記録された自然災害が59件にのぼる。1983年の日本海中部地震では死者5名・全壊319棟、1948年の台風では死者25名という甚大な被害を経験しており、津波・洪水・土砂災害の3つのリスクが複合する地域だ。防災DBの統合リスク分析では、中泊町のリスクスコアは92点(極めて高い)と評価されている。

中泊町のリスク全体像

リスク種別 スコア 主な要因
洪水 100 岩木川・金木川の氾濫
津波 100 日本海沿岸・小泊地区
高潮 100 津軽海峡・日本海沿岸
土砂災害 50 106箇所の警戒区域
統合スコア 92(極めて高い)

(2024年時点。防災DBによる125mメッシュ解析)


なぜ中泊町は複数の災害リスクを抱えるのか

中泊町は2005年3月、旧中里町と旧小泊村が合併して誕生した。町の西部・北西部は日本海(津軽海峡)に面した断崖と漁村(小泊地区)が広がり、東部から南部にかけては津軽平野の低平地が続く。この地形的多様性が、複数の災害リスクを同時にもたらしている。

沿岸部(小泊地区): 日本海に直面する急峻な岬地形。1983年の日本海中部地震では津波が押し寄せ、小泊は甚大な被害を受けた。

平野部(中里地区): 岩木川流域の低平な沖積地。たびたび洪水・浸水被害が発生している。岩木川は青森県最大の河川で、流域全体の氾濫は中泊町にも影響する。

中間部(山地・丘陵): 津軽山地西縁に連なる丘陵地。106箇所の土砂災害警戒区域が指定されている。


過去の主要災害

1. 1948年10月31日 台風・暴風雨(死者25名)

中泊町の記録に残る近現代最大の人的被害をもたらした災害。1948年(昭和23年)10月31日の台風により、旧中里・小泊地域で死者25名が確認されている(出典:中泊町地域防災計画-資料編)。詳細な建物被害数値はNIEDデータに記録されていないが、当時の市街地が木造建築中心だったことを考えると、相当な被害があったと推測される。

2. 1954年9月27日 洞爺丸台風(行方不明1名・一部損壊70棟)

青函連絡船「洞爺丸」が沈没し国内最大の海難事故となった洞爺丸台風(台風第15号)は、中泊でも深刻な被害をもたらした。行方不明者1名、家屋の一部損壊70棟が記録されている(出典:中泊町地域防災計画-資料編)。

3. 1959年9月17日 宮古島台風(全壊19棟・床上浸水46棟)

宮古島台風(台風第14号)による被害。全壊19棟、半壊28棟、床上浸水46棟、床下浸水30棟と、住宅への被害が集中した(出典:中泊町地域防災計画-資料編)。台風の進路から離れていても、日本海を通じた高波・暴風が町を直撃した。

4. 1983年5月26日 日本海中部地震(死者5名・全壊319棟)

中泊町の地震・津波被害として最大規模。1983年5月26日11時59分、秋田県能代市西方沖でマグニチュード7.7の地震が発生した。地震発生から7〜8分後に津波が沿岸に到達し、日本海沿岸で合計104名が死亡した(気象庁発表。うち100名が津波による死亡)。

中泊町(当時の小泊村・中里町)では死者5名、全壊319棟という壊滅的被害が発生した(出典:中泊町地域防災計画-資料編)。特に日本海に面する小泊地区では、漁業関係者を中心に津波の直撃を受けた。この地震は「津波は揺れが収まってから来る」という事実を多くの住民が初めて体感した教訓的な災害でもある。

NIEDデータセットには同日付の別レコードとして「日本海中部沖地震」が記録されており、これが同一の日本海中部地震(昭和58年日本海中部地震)である。

5. 1987年8月5日 台風(床上浸水57棟・全壊5棟)

1987年(昭和62年)8月の台風による風水害。全壊5棟、半壊5棟、床上浸水57棟、床下浸水21棟が記録されている(出典:中泊町地域防災計画-資料編)。1983年地震からわずか4年後の災害で、住宅再建途上での追い打ちとなった。

6. 1968年5月16日 十勝沖地震

1968年(昭和43年)5月16日発生のM7.9十勝沖地震(1968年十勝沖地震)。中泊町地域防災計画-地震編にも記録されており、地域の地震リスク資料として引用されている。中泊での建物被害数値は同資料には記載されていないが、青森県全体で死者52名(うち津波32名)の大きな地震だった。


災害年表(1936年〜2001年)

月日 種別 主な被害
1936 洪水 記録あり
1948 10月31日 台風・風水害 死者25名
1950 10月16日 台風 河川被害
1950 12月31日 台風 河川被害
1952 8月20日 キャノン台風
1953 1月14日 風水害
1954 2月28日 風水害 床下浸水20棟
1954 9月27日 洞爺丸台風 行方不明1名、一部損壊70棟
1955 3月18日 風水害 床下浸水25棟
1955 6月25日 台風 床上浸水15棟、床下浸水50棟
1958 1月22日 風水害
1958 8月18日 台風 床上浸水23棟、床下浸水44棟
1959 9月17日 宮古島台風 全壊19棟、半壊28棟、床上浸水46棟
1960 8月2日 台風 床上浸水1棟、河川被害
1962 9月 台風
1963 洪水 記録あり
1963 10月 台風
1964 10月 台風
1965 洪水・降水 記録あり
1968 5月16日 十勝沖地震(M7.9) 地震被害
1968 8月20日 台風 床上浸水188棟、床下浸水282棟、河川46箇所被害
1971 大雨 2件記録
1972 7月31日 大雨
1975 7月28日 洪水 床上浸水2棟、床下浸水20棟
1975 9月8日 台風 床下浸水3棟
1976 8月20日 台風 床上浸水2棟、床下浸水2棟
1977 3月 風水害 2件記録
1978 3月21日 大雨 半壊2棟
1979 2月〜3月 風水害 河川被害
1980 1月〜10月 風水害 2件記録
1981 7月〜9月 台風・洪水 複数件(床下浸水等)
1981 1月28日 大雪
1982 5月・10月 台風 2件記録
1983 5月16日 台風 床下浸水1棟
1983 5月26日 日本海中部地震(M7.7) 死者5名、全壊319棟
1985 10月13日 台風
1987 8月5日 台風 全壊5棟、半壊5棟、床上浸水57棟
1990 11月4日 台風 全壊4棟
1991 2月16日 大雪・強風
1991 9月28日 台風17〜19号
1995 7月13日 洪水 河川被害
1997 8月4〜5日 洪水 床下浸水1棟、河川1箇所
2001 1月 大雪

(出典:中泊町地域防災計画-資料編・地震編)


洪水・浸水リスク:岩木川と金木川が生む低地の脆弱性

防災DBの125mメッシュ解析では、中泊町周辺の洪水浸水ハザードを複数の河川ごとに評価している。

河川名 浸水想定メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
岩木川 15,797 5.0m 1.24m 336時間(14日間)
十川 1,627 3.0m 0.70m 336時間
飯詰川 1,060 5.0m 0.66m 168時間
金木川 276 5.0m 0.59m 168時間
中村川 370 10.0m 3.62m 168時間
蟹田川 353 10.0m 2.37m 72時間

(2024年時点。防災DB 125mメッシュ解析より)

浸水深5mとは1階天井を超え、2階床上にまで水が迫る水位だ。洪水ハザードマップ(令和3年3月作成)によると、岩木川・金木川の200年に一度の大雨を想定した氾濫では、中里地区の広範囲が浸水域に含まれる。中村川・蟹田川の最大10mという数値は、山間部の急流河川特有の危険性を示している。

浸水継続時間が最大336時間(14日間)という点も見逃せない。引き水が遅く、長期間の避難生活が必要になる可能性がある。


土砂災害リスク:106箇所の警戒区域

中泊町には土砂災害警戒区域が106箇所指定されている(防災DBデータより)。防災DBの解析では土砂災害リスクメッシュが2,897メッシュに及ぶ。

特に小泊地区(日本海沿岸部)は、急峻な崖地形が海岸線に迫る地形で、がけ崩れのリスクが高い。台風や集中豪雨の際には、斜面崩壊とともに波浪・津波との複合被害が懸念される。


地震リスク:青森湾西岸断層帯が潜む

近傍の主要活断層

断層名 想定M 30年発生確率
青森湾西岸断層帯 6.8 0.66%
津軽山地西縁断層帯北部北方延長 6.8 0.06%
津軽山地西縁断層帯北部 6.4 ほぼ0%
津軽山地西縁断層帯南部 6.6 ほぼ0%

(出典:防災DB fault_masterデータ、地震調査委員会の活断層評価をもとに作成)

青森湾西岸断層帯は中泊町の北東岸に沿う活断層で、30年以内の発生確率0.66%はリスクとして無視できない水準だ(全国平均と比較して数倍の確率)。M6.8の地震が発生すれば、津波との複合被害が生じる可能性がある。

地震動の確率

防災DBの地盤データ(Avs30平均377.4 m/s、比較的硬い地盤)をもとに算出した震度確率:

  • 30年以内に震度6弱以上の揺れが起きる確率:平均3.31%(最大19.12%)
  • 30年以内に震度5弱以上の揺れが起きる確率:平均48.12%(最大95.55%)

平均Avs30が377.4 m/sと比較的安定した地盤であるにもかかわらず、一部エリアで震度6弱確率が19%を超える地点がある。これは直下型地震や断層近傍での強振動リスクを示している。

(2024年版地震ハザードステーション[J-SHIS]データをもとに防災DBが解析)


津波・高潮リスク:小泊地区は最大想定20mの浸水区域

防災DBの沿岸ハザード解析では、中泊町周辺の20,860メッシュが津波・高潮浸水想定区域に含まれる。これは洪水の浸水範囲を大幅に上回る数値で、沿岸部の広大なエリアが浸水リスクを持つことを示している。

リスクスコアは洪水・津波ともに最大値の100を記録。1983年日本海中部地震での実績(発生7〜8分での津波到達)を踏まえると、揺れを感じたら即座の高台避難が最優先となる。

中泊町の津波ハザードマップ(青森県津軽沿岸の津波浸水想定、平成27年3月9日公表ベース)では、小泊地区の沿岸低地が広く浸水域に含まれる。


避難施設一覧(2024年時点)

中泊町には45箇所の避難場所が指定されている(防災DBデータより)。主要な施設は以下のとおり。

中里地区(主要避難施設)

施設名 住所
中央公民館 中泊町中里字宝森1番地2
中里中学校 中泊町中里宝森309
中里小学校 中泊町中里亀山251-1
体育センター 中泊町中里字宝森70番地1
保健センター 中泊町大字小泊字砂山1144番地1

小泊地区(主要避難施設)

施設名 住所
小泊中学校 中泊町小泊鮫貝196-188
小泊小学校 中泊町小泊砂山1076-1
小泊保育所 中泊町砂山1142
すくすくこどまり館 中泊町小泊字小泊423番地
基幹集落センター 中泊町小泊字大山長根114番地

注意点として、広域避難場所の指定がない(45箇所すべてが一時避難場所)。大規模災害時には、隣接する五所川原市や つがる市方面への広域避難が必要になる可能性がある。

最寄りの避難所の詳細は、中泊町ハザードマップで確認できる。


今からできる備え

1. ハザードマップの確認(最優先)

2. 津波への備え(沿岸部居住者に特に重要)

1983年日本海中部地震では地震発生から約7分で津波が到達している。「大きな揺れを感じたら、揺れが収まる前でも即座に高台へ」という行動が命を守る。就寝時も含め、日頃から避難経路を体で覚えておくことが重要だ。

3. 洪水への備え

岩木川・金木川の氾濫情報は国土交通省川の防災情報でリアルタイム確認できる。大雨時には事前避難を検討すること。

4. 防災DBでのリアルタイム確認

防災DB(bousaidb.jp)では、中泊町を含む全国市区町村の125mメッシュ解析データをAPI・MCP形式で提供している。BCP策定や不動産リスク評価にも活用できる。


データ出典

データ 出典
過去の災害記録 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース、中泊町地域防災計画-資料編・地震編
リスクスコア(洪水・津波・土砂等) 防災DB(bousaidb.jp)125mメッシュ解析
洪水浸水想定 国土交通省・青森県発表ハザードデータ(防災DBにて加工)
津波浸水想定 青森県 津軽沿岸津波浸水想定(2015年3月9日公表)
土砂災害警戒区域 国土交通省 国土数値情報(防災DBにて加工)
避難場所データ 国土数値情報 避難施設データ(p20)
活断層データ 地震調査委員会 長期評価(防災DBにて加工)
地震動確率 地震ハザードステーション[J-SHIS] 2024年版データ(防災DBにて加工)
ハザードマップURL 中泊町公式ウェブサイト
日本海中部地震 気象庁、日本海中部地震調査報告書(防災科学技術研究所)

著者: 防災DB編集部 / 最終更新: 2026年4月


本記事のデータは防災DBのオープンAPI・MCPサーバーからも取得できます。詳しくは防災DB(bousaidb.jp)をご覧ください。