習志野市の災害リスクと歴史|洪水・液状化・津波が重なる東京湾岸の防災ガイド
習志野市(千葉県)は、防災DBの統合リスクスコアが89/100「極めて高い」に分類される都市だ。洪水・津波・高潮・地震の4カテゴリでいずれもスコア100という、首都圏でも屈指のリスク集中地帯である。
市の南西部に広がる東京湾岸の埋立地は、1923年の関東大震災から2019年の台風まで、繰り返し大きな被害を受けてきた。なかでも2011年の東日本大震災では、国道14号以南の埋立地区で大規模な液状化が発生し、袖ヶ浦・茜浜地区を中心に約5,400戸が断水した。その一方で、北東部の下総台地は地盤が安定しており、同じ市内でも地域差が明確に存在する。
「習志野市に住む・働く人」にとって防災計画の最重要事項は、自宅が埋立地かどうかの確認だ。この1点で取るべき備えが大きく変わる。
この街の災害リスクの特徴
地形が決める2つの顔
習志野市の地形は、国道14号を境に大きく異なる。
南西部(埋立地・海岸低地): 香澄・袖ヶ浦・茜浜・谷津・秋津の各地区が該当する。標高は概ね3m以下で、東京湾を埋め立てて造成された人工地盤が広がる。造成時期は主に1946〜1960年代で、緩い砂質土に地下水位が高く、液状化の3条件(飽和した砂質地盤・ゆるい締まり具合・外力としての地震)が揃っている。
北東部(下総台地): 実籾・東習志野・大久保・藤崎の各地区は関東ローム層に覆われた台地で、地盤は相対的に安定している。ただし、台地から谷底へ向かう「谷津(やつ)地形」の谷部には軟弱地盤が分布する。
洪水リスク:11河川が市域を流れる
防災DBの125mメッシュ解析によれば、習志野市内には11河川の浸水想定区域が重なっている。洪水浸水想定メッシュ数は449,961件にのぼり、スコアは最大の100だ。
主要河川の洪水リスクは以下の通り:
| 河川名 | 浸水想定メッシュ数 | 最大浸水深 | 継続時間(最大) |
|---|---|---|---|
| 勝田川 | 758 | 5.0m | 336時間(14日) |
| 海老川 | 516 | 5.0m | 168時間(7日) |
| 菊田川 | 290 | 5.0m | 24時間 |
| 浜田川 | 225 | 3.0m | — |
| 真間川 | 216 | 5.0m | 168時間(7日) |
| 都川 | 181 | 3.0m | 24時間 |
| 江戸川 | 141 | 5.0m | 168時間(7日) |
| 高崎川 | 125 | 5.0m | 168時間(7日) |
| 利根川 | 103 | 3.0m | 336時間(14日) |
| 谷津川 | 95 | 0.5m | 72時間 |
(出典:防災DB・国土数値情報洪水浸水想定区域データを125mメッシュに集計)
浸水深5mは2階の天井付近まで水が達するレベルだ。勝田川沿いでは最大336時間(14日間)の継続浸水も想定されており、避難が長期化する可能性がある。低地の住民は「垂直避難(上層階への避難)」ではなく、浸水前の早期水平避難が不可欠といえる。
高潮・津波リスク:沿岸メッシュ4,080件
津波・高潮の浸水想定メッシュ数は4,080件で、最大浸水深は20m以上と記録されている。東京湾に面した南西部の埋立地は標高が低く、高潮時には堤防越水の危険がある。習志野市では千葉県の津波浸水予測図を公開しており、沿岸に近い袖ヶ浦・茜浜・香澄地区の住民は必ず確認しておく必要がある。
地震リスク:30年以内に震度6弱以上が61%の確率
防災DBの125mメッシュデータによれば、習志野市内の震度6弱以上30年確率は平均61.1%、最大97.1%に達する。震度5弱以上はほぼ100%と見込まれる。
地盤の平均S波速度(AVS30)は229.1 m/s。一般的に300 m/s未満は「軟弱地盤」とされており、習志野市の地盤は揺れが増幅しやすい環境だ。
近隣の主要活断層としては、立川断層帯(約50km、M6.8、30年発生確率1.35%)や三浦半島断層群主部武山断層帯(約55km、M6.5、30年確率8.39%)が挙げられる。さらに、市内を通過する東京湾北縁断層の存在も習志野市の公式防災計画に明記されており、直下型地震のリスクがある(習志野市地域防災計画震災編に記載)。
過去の主要災害
2019年(令和元年)台風15号・19号
2019年9月の台風15号(令和元年房総半島台風)では、習志野市で半壊1棟・一部損壊159棟の建物被害が記録された(出典:NIEDデータセット、令和元年台風15号第101報)。記録的な暴風により、市内でも広範囲にわたる停電・倒木・屋根の被害が発生した。
続く10月11日の台風19号(令和元年東日本台風)でも被害が記録されている。2019年は同年内に複数の大型台風が続けて直撃するという異例の状況となり、防災体制の連続した対応を迫られた。
2011年3月11日:東日本大震災と大規模液状化
東日本大震災(M9.0)では、習志野市の埋立地区で大規模な液状化現象が発生した。特に被害が集中したのは、袖ヶ浦・茜浜地区で、液状化による水道管破損で約5,400戸が断水した(出典:Web調査・国土交通省関東地方整備局報告書)。
谷津3丁目(1946〜1960年代の埋立地)、香澄地区(第二次埋め立て造成)でも液状化が確認された。一方で、同じ谷津でも他の街区では被害が少なく、埋立時期・造成方法の違いが液状化発生の分岐点となったことが事後調査で示されている。
※本件はNIEDデータセットに習志野市分として収録されていないため、国交省関東地整局報告書および習志野市の液状化対策ページをもとに記載。
1987年12月17日:千葉県東方沖地震
1987年12月17日に発生した千葉県東方沖地震(M6.7)では、習志野市で一部損壊22棟の被害が記録された(出典:NIEDデータセット、習志野市地域防災計画震災編素案)。首都圏では広範囲で震度4〜5の揺れを観測し、習志野市の軟弱地盤が揺れを増幅させた。
1923年9月1日:関東大震災
1923年9月1日の関東地震(M7.9)は、現在の習志野市でも大きな被害をもたらした(出典:NIEDデータセット、習志野市地域防災計画震災編素案)。記録によれば火災・建物倒壊・液状化が複合的に発生し、当時の津田沼・谷津周辺にも甚大な影響があったとされている。
全災害年表
| 年 | 月日 | 災害名 | 主な被害 |
|---|---|---|---|
| 1923 | 9/1 | 関東大震災(関東地震 M7.9) | 建物倒壊・火災・液状化 |
| 1987 | 12/17 | 千葉県東方沖地震(M6.7) | 一部損壊22棟 |
| 2011 | 3/11 | 東日本大震災(M9.0) | 液状化・断水5,400戸 ※NIED未収録 |
| 2019 | 9月 | 台風15号(令和元年房総半島台風) | 半壊1棟・一部損壊159棟 |
| 2019 | 10/11 | 台風19号(令和元年東日本台風) | 建物被害 |
(出典:NIEDデータセット「自然災害情報室 災害データベース」、一部Web調査による補完)
液状化リスク:埋立地に住む人への警告
習志野市の液状化スコアは40と中程度だが、これは市全体の平均値であり、埋立地区に限れば話は別だ。前述の通り、2011年東日本大震災では国道14号以南で大規模な液状化が発生している。
市は千葉県の「液状化しやすさマップ」を公開しており、自宅がどのゾーンに該当するかを事前に確認できる。液状化が発生すると建物の傾斜・沈下・ライフライン断絶が長期化するため、居住地の液状化リスクを把握した上で耐震・液状化対策を検討することが重要だ。
土砂災害リスク
土砂災害警戒区域の数は10か所で、スコアは50(中程度)。台地と谷底の境界部(主に北東部の台地縁辺)に分布している。南西の埋立地とは異なり、土砂災害は限定的な範囲にとどまるが、台地の縁辺に住む場合は確認が必要だ。防災DBの125mメッシュ解析では、土砂災害関連メッシュ数は94件だった。
避難場所一覧
習志野市内には45か所の指定避難場所がある(2024年時点)。主な避難場所の一部を以下に示す。
| 施設名 | 住所 | 種別 |
|---|---|---|
| 千葉工業大学津田沼校舎 | 津田沼2-17-1 | 指定避難場所 |
| 千葉工業大学芝園校舎 | 芝園2-1-1 | 指定避難場所 |
| 千葉工業大学グラウンド | 茜浜3-4 | 指定避難場所 |
| 秋津総合運動公園 | 秋津3-7 | 指定避難場所 |
| 日本大学実籾校舎 | 新栄2-11-1 | 指定避難場所 |
| 市役所前広場 | 鷺沼2-1 | 指定避難場所 |
| 東習志野ふれあい広場 | 東習志野8-30 | 指定避難場所 |
| 向山小学校 | 谷津2-16-32 | 指定避難場所 |
| 大久保小学校 | 藤崎6-9-28 | 指定避難場所 |
| 実籾小学校 | 実籾1-25-1 | 指定避難場所 |
(出典:国土数値情報 避難施設データ)
なお、習志野市では広域避難場所(大規模火災時等に対応)が指定されていない。これは特筆すべき点であり、避難先や避難ルートについて事前に自治体の最新情報を確認しておく必要がある。
最新の避難場所・避難所情報は、習志野市Web版防災ハザードマップで確認できる。
今からできる備え
必ず確認すること
-
ハザードマップで自宅のリスクを把握する
習志野市Web版防災ハザードマップ — 洪水・液状化・津波・土砂災害の全リスクを地図で確認できる。 -
液状化マップで自宅が埋立地かどうかを確認する
津波浸水予測図・液状化しやすさマップ(千葉県) -
自宅最寄りの避難場所と避難ルートを確認する
台風・大雨では洪水経路が避難ルートと重なる場合がある。複数のルートを事前に把握しておくこと。 -
東京湾北縁断層の情報を確認する
東京湾北縁断層について(習志野市)
備蓄
習志野市の洪水浸水継続時間は最大336時間(14日間)が想定されている。最低7日分の備蓄(食料・飲料水・医薬品)を用意したい。埋立地区では断水・ライフライン断絶が長期化するリスクが高い。
防災計画の参照
習志野市地域防災計画 — 震災編・風水害編で市の対応方針と避難計画を確認できる。
データ出典
| データ | 出典 |
|---|---|
| 統合リスクスコア(防災DB) | 防災DB(bousaidb.jp)・国土数値情報各種ハザードデータを125mメッシュに集計 |
| 洪水浸水想定区域 | 国土交通省・都道府県洪水浸水想定区域データ(国土数値情報) |
| 津波・高潮浸水想定 | 千葉県 津波浸水予測図・高潮浸水想定区域図 |
| 過去の災害事例 | 防災科学技術研究所(NIED)自然災害情報室 災害データベース |
| 地震確率データ | 地震調査研究推進本部(HERP)全国地震動予測地図2024年版 |
| 活断層データ | 地震調査研究推進本部 活断層長期評価 |
| 避難場所データ | 国土交通省 国土数値情報 避難施設データ |
| 液状化・地形情報 | 国土交通省関東地方整備局・習志野市公式HP |
| 2011年東日本大震災液状化被害 | 国土交通省関東地方整備局報告書・習志野市液状化対策ページ |
著者:防災DB編集部 / 最終更新:2026年4月
本記事のデータは各出典の公開情報をもとに作成。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
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