成田市の災害リスクと歴史年表|利根川・根木名川・地震のすべて
成田市では、1971年から2019年の間だけで台風・大雨による浸水被害が60件以上記録されています。直近の2019年台風15号(令和元年房総半島台風)では最大瞬間風速45.8m/sを記録し、全壊3棟・一部損壊203棟の被害が出ました。防災DBの統合リスクスコアは89/100(極めて高い)——関東7都県の中でも上位に位置するリスク水準です。
成田市が「極めて高い」リスクに分類される最大の要因は洪水です。市の北辺を流れる利根川、市内を縦断する根木名川・栗山川・高崎川など複数の河川が、台風や大雨のたびに氾濫リスクをはらんでいます。加えて、震度6弱以上の地震が30年以内に発生する確率は市内平均67.7%(最大99.7%)と、首都圏の中でも特に高い地震ハザードにさらされています。
なぜ成田市は水害に弱いのか——地形から読み解くリスク
成田市は下総台地の北縁ほぼ中央に位置し、標高は最低1m(安西地先)から最高42m(南三里塚地先)まで変化します。市域の約3分の2は標高10〜40mの台地(関東ローム層)で構成され、比較的地盤が安定しています。問題は残りの約3分の1です。
印旛沼・根木名川水系に沿って広がる低湿地帯(谷津田・氾濫低地)は、地下水位が高く軟弱な地盤が続きます。利根川は市の北辺で茨城県との県境を形成し、沿岸には広大な氾濫低地が展開。台地と低地の境界部には急傾斜の崖地が点在し、土砂災害の危険もはらんでいます。
防災DBの125mメッシュ解析によると、成田市内には15河川の洪水浸水想定区域が確認されています。
| 河川名 | 浸水想定メッシュ数 | 最大浸水深 | 最大浸水継続時間 |
|---|---|---|---|
| 利根川 | 14,883 | 5.0m | 336時間(14日間) |
| 霞ヶ浦 | 3,669 | 5.0m | 336時間 |
| 栗山川 | 3,193 | 10.0m | 336時間 |
| 小貝川 | 2,307 | 5.0m | 336時間 |
| 高崎川 | 1,853 | 20.0m | 336時間 |
| 小野川 | 1,610 | 5.0m | 336時間 |
| 根木名川 | 1,259 | 20.0m | 168時間 |
| 木戸川 | 339 | 3.0m | 168時間 |
| その他7河川 | 計1,018 | 最大5.0m | — |
浸水深5mは2階の窓枠あたり、10mは3〜4階まで水没する規模です。高崎川・根木名川で想定される最大20mという数字は、完全に家屋が水没する壊滅的なシナリオを意味します(ただし最深部のごく一部の区域であり、市全体の浸水深平均は1〜3m程度)。浸水継続時間が336時間(14日間)に達する区域では、洪水が引くまで2週間以上の孤立・避難生活を余儀なくされる可能性があります。
過去の主要災害(詳細記録)
1971年9月 — 記録的浸水、全壊9棟
1971(昭和46)年9月8日、台風の影響による大雨で市内が広範囲に浸水。床上浸水62棟・床下浸水142棟・全壊9棟・半壊7棟という、成田市の戦後史で最大規模の浸水被害の一つとなりました。出典:成田市地域防災計画(NIEDデータ)
1972年9月 — 半壊331棟、連続台風被害
1972(昭和47)年9月は2度の台風に見舞われました。9月12日の台風では半壊331棟・床下浸水54棟という建物被害が集中。16日には台風第20号が直撃し、床上浸水4棟・床下浸水73棟の追加被害が発生しました。この年の9月だけで半壊331棟という数字は、成田市の台風被害史上最大規模です。出典:成田市地域防災計画(NIEDデータ)
1982年9月 — 台風18号、床上22棟・床下89棟
1982(昭和57)年9月10〜13日、台風第18号および豪雨により床上浸水22棟・床下浸水89棟が発生。同年9月25日にも再び浸水被害(床下10棟)が記録されています。成田市の低地部において、秋の台風シーズンに連続して氾濫が起きやすい傾向が顕著に表れた年でした。出典:成田市地域防災計画(NIEDデータ)
1986年9月 — 床上2棟・床下51棟
1986(昭和61)年9月13日、床上浸水2棟・床下浸水51棟。同年8月には台風第10号系の大雨でも床上3棟・床下18棟の被害が記録されています。
1991年9月 — 平成3年台風で大規模浸水
1991(平成3)年9月8日には床上浸水194棟・床下浸水42棟・半壊1棟という大規模浸水が発生。同月19日の台風第17〜19号による被害でも床上1棟・床下33棟・全壊1棟・半壊1棟が加わり、1991年9月だけで床上浸水195棟を超える甚大な被害となりました。出典:成田市地域防災計画(NIEDデータ)
2013年10月 — 台風26号、全壊3棟・半壊14棟
2013(平成25)年10月16日、台風第26号による暴風・大雨で床上浸水16棟・床下浸水36棟・全壊3棟・半壊14棟。この台風は同日に伊豆大島で死者39名を出した大型台風で、千葉県全域で大きな被害をもたらしました。出典:成田市地域防災計画(NIEDデータ)
2019年9月 — 令和元年房総半島台風(台風15号)
2019(令和元)年9月9日午前5時頃、台風15号が千葉市付近に上陸。成田市では最大瞬間風速45.8m/s(午前5時36分)を観測し、観測史上最大値を更新しました。
成田市内の被害は全壊3棟・半壊19棟・一部損壊203棟・床下浸水2棟。台風15号は房総半島の森林・農地・住宅に壊滅的な暴風被害をもたらし、千葉県全体での停電はピーク時約64万戸に達しました。成田市でも広域停電が続き、空港周辺インフラへの影響も発生。この台風での成田市の被害は浸水より強風・停電が主体でした。出典:千葉県防災危機管理部、気象庁
過去の災害年表(1971年〜2019年)
| 年 | 月 | 主な災害名 | 床上浸水 | 床下浸水 | 全壊 | 半壊 | 一部損壊 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1971 | 9 | 台風 | 62 | 142 | 9 | 7 | — |
| 1972 | 9 | 台風(連続2件) | 4 | 127 | — | 331 | — |
| 1975 | 10 | 大雨 | 1 | 10 | — | — | — |
| 1977 | 9 | 台風 | 8 | 33 | — | — | — |
| 1981 | 10 | 大雨 | 3 | 28 | — | — | — |
| 1982 | 9 | 台風18号 | 22 | 89 | — | — | — |
| 1983 | 6 | 大雨 | 2 | 23 | — | — | — |
| 1985 | 7 | 梅雨前線・台風6号 | — | 4 | — | — | — |
| 1986 | 8・9 | 台風10号、大雨 | 5 | 70 | — | — | — |
| 1989 | 8 | 台風17号 | 7 | 31 | — | — | — |
| 1990 | 11 | 大雨 | — | 30 | 1 | 1 | — |
| 1991 | 9 | 台風17〜19号 | 195 | 75 | 1 | 2 | — |
| 1993 | 8・11 | 梅雨前線・台風 | — | 10 | — | — | — |
| 1996 | 9 | 台風17号 | 1 | 15 | — | — | — |
| 1999 | 10 | 大雨 | 1 | 4 | — | — | — |
| 2000 | 5 | 大雨 | 3 | 6 | — | — | — |
| 2001 | 10 | 大雨 | 2 | 7 | — | — | — |
| 2003 | 10 | 大雨 | — | — | — | 4 | — |
| 2013 | 10 | 台風26号 | 16 | 36 | 3 | 14 | — |
| 2019 | 9 | 台風15号(房総半島) | — | 2 | 3 | 19 | 203 |
出典:国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース、成田市地域防災計画(平成29年度修正)、令和元年台風15号被害報告
洪水・浸水リスク——利根川と根木名川が最大の脅威
成田市の洪水リスクで最も注目すべきは、利根川沿いの浸水想定区域の広さです。防災DBの解析では、利根川に起因する浸水想定メッシュは14,883個(1メッシュ=125m四方)に達し、市北部の低地帯に広範囲の浸水リスクが存在します。想定最大浸水深5.0m、浸水継続時間最大336時間(14日間)というシナリオは、利根川が決壊・越水した際の広域浸水を意味します。
市内を北東方向に流れる根木名川も、最大浸水深20mという極端なシナリオが示されています。これは河川最深部の局所的な想定値ですが、根木名川は歴史的に繰り返し氾濫を起こしてきた河川であり(1958年狩野川台風時に床上浸水17棟の記録あり)、流域の低地帯では継続的な浸水対策が必要です。高崎川も同様に最大20mという浸水深が想定されています。
成田市のハザードマップ(公式)では、洪水浸水想定区域として利根川・根木名川・竜台川・派川根木名川・尾羽根川・十日川・大須賀川・長門川・高崎川(印旛沼流域)などが指定されています。
→ 成田市公式ハザードマップで浸水区域を確認してください。
土砂災害リスク——台地崖沿いに134か所の危険区域
成田市は「市域の3分の2が台地」という地形構造のため、台地面は比較的安全ですが、台地と低地の境界部(崖地)には急傾斜崩壊の危険が潜んでいます。防災DBによると、市内の土砂災害ハザード区域数は134か所、関連する浸水想定メッシュは809個です。千葉県の公式指定では、土砂災害警戒区域・特別警戒区域が合計396か所に及びます(急傾斜地崩壊危険区域68か所を含む)。
大雨・台風接近時には、台地端の崖地沿いに居住している場合、特に注意が必要です。
地震リスク——震度6弱以上の30年確率は平均67.7%
成田市は関東平野の北部に位置し、首都直下地震・相模トラフ巨大地震・茨城県北部を震源とする地震など複数の地震ハザードにさらされています。防災DBの解析によると:
- 震度6弱以上の地震が30年以内に発生する確率:市内平均67.7%、最大99.7%
- 震度5弱以上の地震が30年以内に発生する確率:市内全域でほぼ100%
- 平均地盤S波速度(Avs30):240.6 m/s
Avs30=240.6 m/sは軟弱地盤の目安(200 m/s未満)より若干高い水準ですが、谷津・氾濫低地では局所的に大幅に低い値を示す区域もあります。液状化リスクスコアは40/100と、台地面が多い割に液状化の危険な低地部分も無視できません。
なお、成田市直下に伸びる固有の活断層は防災DBのデータでは確認されていませんが(断層名称に「千葉」「成田」「下総」「関東」が含まれる断層がマッチしなかった)、広域の地震ハザードは依然として高い水準です。
1987年12月には千葉県東方沖地震(M6.7)が発生し、成田空港でも被害が記録されています。また、2011年3月11日の東日本大震災では成田市で震度6弱を観測しました。
避難施設一覧
成田市内には計54か所の指定避難場所があります(2024年時点、広域避難場所の指定は現在なし)。主な施設を以下に示します。
| 施設名 | 住所 |
|---|---|
| 成田市役所 | 花崎町760 |
| 成田中学校 | 土屋928-1 |
| 吾妻中学校 | 吾妻1-24 |
| 中台中学校 | 中台4-2 |
| 中台運動公園 | 中台5-2 |
| 公津の杜小学校 | 公津の杜3-2 |
| 三里塚小学校 | 本三里塚153-1 |
| 大栄中学校 | 伊能125 |
| 久住中学校 | 久住中央2-1 |
| 下総中学校 | 名古屋1214 |
| 下総運動公園・下総公民館 | 高岡1435 |
54施設の完全な一覧と避難所種別は、成田市公式サイトで確認してください。
今からできる備え
公式情報の確認(必須)
- 成田市 防災・ハザードマップ: https://www.city.narita.chiba.jp/anshin/page070400.html
- なりた地図情報(GIS): https://www2.wagmap.jp/narita/Portal ——自宅住所で浸水深・土砂災害区域を確認
- 成田市の水害危険区域(千葉県): https://www.pref.chiba.lg.jp/kakan/sabou/keikai/narita.html
3つの具体的アクション
-
自宅の浸水リスクを確認する: なりた地図情報(GIS)で自宅住所を検索し、洪水浸水想定区域・想定浸水深を確認する。浸水深0.5m未満でも床下浸水、1m以上で1階浸水が発生します。
-
避難所と避難ルートを決める: 近隣の指定避難場所を2か所以上確認し、水害時の避難ルート(低地・冠水道路を避けるルート)を家族と共有する。
-
72時間分の備蓄と停電対策: 2019年台風15号では千葉県全域で長期停電が発生しました。飲料水(1人3リットル×3日分)・食料・ランタン・モバイルバッテリーの備蓄を優先してください。
最新のリスクスコアや浸水深マップは防災DB(bousaidb.jp)で確認できます。
データ出典
| データ | 出典 | 取得時点 |
|---|---|---|
| 統合リスクスコア・洪水浸水想定 | 防災DB(bousaidb.jp)、国土交通省浸水想定区域データ | 2024年 |
| 地震30年確率 | 防災科学技術研究所(NIED)J-SHIS、2024年 | 2024年 |
| 過去の災害事例 | NIEDデータベース、成田市地域防災計画(平成29年度修正) | 2017年修正版 |
| 2019年台風15号被害 | 千葉県防災危機管理部、気象庁 | 2019年 |
| 地形・地盤情報 | 地盤ネット(ジオテック株式会社)、国土地理院 | — |
| 土砂災害警戒区域 | 千葉県(土砂災害警戒区域等一覧) | 2024年 |
| 公式ハザードマップ | 成田市(https://www.city.narita.chiba.jp/anshin/page070400.html) | 2024年 |
| 避難施設情報 | 国土交通省 国土数値情報 避難施設データ(p20) | 2024年 |
著者:防災DB編集部
防災DB