鳴門市の災害リスク完全ガイド|南海トラフ・吉野川洪水・過去の大災害を年表で解説

鳴門市(徳島県)の総合災害リスクスコアは100点満点中86点(極めて高い)防災DBが収録する全国の市区町村の中でも、洪水・津波・高潮・地震の4つ全てのリスクスコアが満点(100点)を記録する稀有な都市だ。渦潮観光で知られるこの海峡都市は、その地理的条件ゆえに複合的な自然災害に常にさらされている。

NIEDの災害事例データベースには、1946年の南海地震を皮切りに、ジェーン台風・第二室戸台風・阪神淡路大震災・2004年の連続台風まで、少なくとも18件の災害記録が残る。防災DBの解析では、南海トラフ巨大地震が発生した場合、市内で最大10mを超える津波浸水が想定されており、浸水面積は16.2㎢に達する。

本記事では、防災DBの125mメッシュ解析データと公的機関の被害想定をもとに、鳴門市民が知っておくべき災害リスクの全貌を解説する。


この街はなぜ危ないのか――鳴門市の地形とリスクの構造

鳴門市は徳島県北東端に位置し、紀伊水道に面した海峡都市だ。北部・西部は讃岐山脈の末端が海岸まで迫り、南部は吉野川の扇状地が広がる低平地となっている。この「山・低地・海峡」の組み合わせが、複数の災害を同時に呼び込む地形的構造を生み出している。

防災DBのデータが示すリスクの全体像は以下のとおりだ。

リスク種別 スコア(100点満点) 主な指標
洪水 100 最大浸水深20m(鮎喰川)、吉野川流域10,583メッシュ
津波 100 最大浸水深10m、浸水面積16.2㎢
高潮 100 紀伊水道に直接面する海岸線
地震 100 震度6弱以上30年確率 平均49.6%、最大80.1%
土砂災害 50 241ハザード区域
液状化 5 低地部は砂質地盤

「どれか一つのリスクが高い」のではなく、全方位的に最高レベルの災害リスクを抱えている。この点は、全国の市区町村の中でも特筆すべき特徴だ。


過去の主要災害|記録に残る大きな被害

1946年12月21日――南海地震(M8.0)

昭和南海地震とも呼ばれる1946年の南海地震は、南海トラフを震源とするM8.0の巨大地震だ。鳴門市(当時の鳴門町・撫養町等)では、地震動による建物被害に加え、紀伊水道を伝って押し寄せた津波が沿岸低地を直撃した。鳴門市地域防災計画の資料編に記録されており、南海トラフ地震の周期性を考える上で欠かせない歴史的事例だ。

1950年9月3日――ジェーン台風

1950年のジェーン台風は、紀伊水道に沿って北上し近畿・四国に上陸した強力な台風だ。鳴門市地域防災計画の資料編には、この台風による被害が複数の地区で記録されている(5件の記録が収録)。吉野川の増水と高潮が重なったとみられ、低地部を中心に浸水被害が広がったと考えられる。

1959年9月26日――伊勢湾台風

死者・行方不明者5,000人超を出した日本台風史上最大級の伊勢湾台風(中心気圧895hPa)は、四国にも甚大な被害をもたらした。鳴門市でもこの台風による災害記録が残されている。

1961年9月16日――第二室戸台風

室戸岬付近に上陸した第二室戸台風(中心気圧888hPa)は、徳島県を直撃した戦後最大級の台風だ。鳴門市では暴風と高潮が重なり、沿岸部を中心に大規模被害が記録されている。

1995年1月17日――阪神淡路大震災

直接震源地は明石海峡付近(M7.3)だが、鳴門市も鳴門海峡を挟んで淡路島の対岸に位置するため、相応の揺れを経験した。市内でも建物被害が発生し、鳴門市地域防災計画の資料編に記録が残る。

2004年9〜10月――台風21号・23号(連続台風)

2004年は、9月の台風21号(平成16年台風第21号)と10月の台風23号(平成16年台風第23号)が立て続けに徳島県を直撃した。鳴門市ではいずれの台風でも被害が記録されており、2004年は特に災害の多い年として防災計画に記録されている。

鳴門市の災害年表

発生年月 災害名 種別
1946年12月 南海地震 地震・津波
1950年9月 ジェーン台風 台風・高潮
1959年9月 伊勢湾台風 台風
1961年9月 第二室戸台風 台風・高潮
1965年9月 台風(2件) 台風
1970年8月 台風 台風
1972年9月 台風 台風
1976年9月 昭和51年台風17号 台風
1979年9月 台風16号 台風
1990年10月 災害(詳細不明) 不明
1995年1月 阪神淡路大震災 地震
2004年9月 台風21号・秋雨前線 台風
2004年10月 台風23号・前線 台風

出典:NIED自然災害データベース(鳴門市地域防災計画-資料編)


洪水・浸水リスク|吉野川が運ぶ「四国三郎」の脅威

吉野川の規模と浸水リスク

「四国三郎」の異名を持つ吉野川(全長194km、流域面積3,750㎢)は、防災DBの解析において鳴門市内で最も多くの浸水リスクメッシュを生み出している河川だ。

河川名 浸水リスクメッシュ数 最大浸水深 浸水継続最大時間
吉野川 10,583メッシュ 10m 168時間(7日間)
旧吉野川 877メッシュ 5m 168時間(7日間)
鮎喰川 730メッシュ 20m 168時間(7日間)
宮川内谷川 332メッシュ 5m 72時間
馬宿川 145メッシュ 5m 12時間

(出典:防災DB 125mメッシュ洪水浸水想定解析)

吉野川の最大浸水深10mは2階建て住宅が完全水没するレベルに相当する。浸水継続時間が168時間(7日間)に達する区域では、洪水後も長期間の孤立が生じる可能性がある。

特筆すべきは鮎喰川で、最大浸水深が20mという極端な数値が記録されている。これは河川の上流部での土砂崩れや山腹崩壊を含む複合災害シナリオを反映している可能性があり、山沿いの住民は特に注意が必要だ(推測)。

鳴門市洪水ハザードマップ

鳴門市は吉野川・旧吉野川・新池川の浸水想定区域をもとに洪水ハザードマップを作成・公表している。このハザードマップは全国初のカラーユニバーサルデザイン(CUD)認証を取得しており、色覚特性のある方でも利用しやすい設計になっている。

洪水ハザードマップを確認する(鳴門市公式)


津波リスク|南海トラフ直撃で最大10mの浸水

南海トラフ地震と鳴門市

鳴門市は南海トラフの震源域に近く、南海トラフ巨大地震が発生した場合に最も早期・最大級の津波被害を受ける自治体の一つだ。防災DBの解析では、津波リスクメッシュが137,803メッシュに及び、最大浸水深は10mを超える区域が存在する。

徳島県が令和6年(2024年)9月12日に公表した最新の「徳島県津波浸水想定」によると、鳴門市の津波浸水面積は16.2㎢。これは平成24年(2012年)の旧想定と比較して約21.0%減少しているが、依然として市域の相当部分が浸水想定域に含まれる。

市域を14地区に区分した津波避難マップ

鳴門市は「津波防災地域づくりに関する法律」に基づき、市域を14地区に区分した津波避難マップを整備している。各地区に津波災害警戒区域の範囲・基準水位・避難場所が明示されており、事前に自分が住む地区の情報を確認することが不可欠だ。

津波避難マップを確認する(鳴門市公式)


地震リスク|中央構造線が鳴門海峡を走る

震度6弱以上の30年確率が平均49.6%

防災DBの125mメッシュ解析によると、鳴門市内の震度6弱以上の30年発生確率は平均49.6%、最大で80.1%に達する。「30年以内にほぼ2回に1回は大地震」というレベルであり、全国的に見ても突出して高い数値だ。

また震度5弱以上の確率は平均86.4%(最大96.8%)に上り、中程度の揺れはほぼ確実に経験するとみなせる。

中央構造線断層帯が直下を走る

鳴門市にとって特筆すべき地震リスクの一つが、中央構造線断層帯(紀淡海峡-鳴門海峡区間)の存在だ。防災DBの断層マスタによれば、この断層帯はM7.0を想定しており、30年発生確率は0.131%と記録されている。

さらにこの区間が他の区間と同時に活動する連動型地震のシナリオでは、最大でM7.8(紀淡海峡-鳴門海峡区間~豊予海峡-由布院区間が同時活動)という規模の地震が想定されている。これは阪神淡路大震災(M7.3)を上回る規模だ。

南海トラフ地震に加え、中央構造線断層帯による直下型地震のリスクも重なっている点は、見逃せない。


土砂災害リスク|山地との境界に241カ所の危険区域

鳴門市の土砂災害リスクスコアは50点(中程度)だが、市内には241カ所の土砂災害ハザード区域が存在し、防災DBの解析では3,735メッシュが土砂災害リスク域に分類されている。

山地と低地の境界付近に居住する住民は、台風・豪雨時の土砂崩れや土石流に十分注意が必要だ。大雨警報・土砂災害警戒情報が発表された際は、速やかな避難行動が求められる。

土砂災害・洪水ハザードマップを確認する(鳴門市公式)


避難施設一覧|市内139カ所の避難所

2024年時点のデータによると、鳴門市内には139カ所の避難所が指定されている。以下は主要な避難施設の一覧だ(防災DBのデータに基づく)。

施設名 住所 種別
北灘中学校 北灘町大浦字東浦75 避難所
北灘東小学校 北灘町粟田字西傍示228-5 避難所
北灘西小学校 北灘町折野字屋敷66 避難所
北灘公民館 北灘町宿毛谷字クロハエ66 避難所
堀江北小学校 大麻町大谷字中筋41 避難所
堀江南小学校 大麻町西馬詰字橋ノ本58 避難所
勤労者体育センター 撫養町大桑島字濘岩浜35-8 避難所
勤労青少年ホーム 撫養町南浜字東浜27-3 避難所
人権福祉センター 大麻町三俣字前野18 避難所
北泊公民館 瀬戸町北泊字北泊103 避難所

(出典:防災DB 避難場所データ(国土数値情報 nlftp_p20))

なお、現時点のデータでは広域避難場所の区分が0件となっている。鳴門市公式の防災情報ページで最新の避難場所・広域避難場所を確認することを強く推奨する。


今からできる備え

1. 自分の地区のハザードマップを確認する

鳴門市公式のハザードマップポータルから、自分の住所が洪水・津波・土砂災害のどの浸水区域に含まれるかを確認する。

▶ 鳴門市ハザードマップ(公式)

2. 南海トラフ地震対策編を読む

鳴門市は南海トラフ地震専用の地域防災計画を策定している。PDF版が公開されており、発生確率・被害想定・避難行動がまとまっている。

▶ 鳴門市地域防災計画【南海トラフ地震対策編】(PDF)

3. 防災DBで自分の住所のリスクを調べる

防災DB(bousaidb.jp)では、125mメッシュ単位で住所ごとの洪水・津波・地震リスクを無料で検索できる。ハザードマップと組み合わせて利用することで、より精度の高いリスク把握が可能だ。

4. 家族と避難経路・連絡方法を決める

津波の場合、南海トラフ地震発生後の津波到達時間は徳島県沿岸部では短い可能性がある。地震発生後すぐに高台へ避難を開始できるよう、平時から避難経路を歩いて確認しておくことが重要だ。


データ出典

データ 出典
市区町村リスクスコア 防災DB(disaster-risk-db)、2024年時点データ
125mメッシュ洪水浸水想定 国土交通省 洪水浸水想定区域データ(防災DBが集計)
125mメッシュ津波・高潮浸水想定 各都道府県・国土交通省 津波浸水想定データ(防災DBが集計)
125mメッシュ地盤・地震確率 防災科学技術研究所 J-SHIS(2024年版)
活断層データ 産業技術総合研究所 活断層データベース(防災DBが集計)
過去の災害事例 防災科学技術研究所 自然災害データベース(NIED)
避難場所データ 国土数値情報 指定緊急避難場所データ(p20)
津波浸水面積(16.2㎢) 徳島県「徳島県津波浸水想定」(令和6年9月12日公表)
南海トラフ地震対策 鳴門市地域防災計画【南海トラフ地震対策編】
洪水ハザードマップ 鳴門市公式(https://www.city.naruto.tokushima.jp/kurashi/bosai/saigai/saigai/hzmap/)

この記事は防災DB編集部が防災DBの解析データと公的機関の公表情報をもとに作成しました。被害想定・ハザードマップは定期的に更新されます。最新情報は鳴門市公式ホームページおよび各機関の公式発表でご確認ください。

防災DB(bousaidb.jp)は日本全国の市区町村の災害リスクデータを無料で提供しています。