根室市の災害リスク全記録|地震・津波・洪水——日本最東端の街が直面する複合災害

根室市では1843年以降、地震・洪水・台風を中心に54件の災害が記録されている。防災DB(bousaidb.jp)の統合リスクスコアは79(極めて高い)——洪水・津波・地震の3部門が全て満点(スコア100)という、全国でも極めて稀な複合高リスク都市だ。

なかでも深刻なのが地震・津波リスクだ。防災DBの125mメッシュ解析で計測した根室市内の震度6弱以上30年以内発生確率は平均83.68%、最大98.15%に達する。1973年に最後の大規模地震が発生してから半世紀が経過しており、次の千島海溝型巨大地震は「来るとすれば今」という段階にある。


この街の災害リスクの特徴

根室市は北海道最東端、根室半島の先端に位置する人口約2万1千人の都市だ。太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込む千島海溝(根室沖)に近接しており、海溝型巨大地震が繰り返し発生する地帯に立地している。

地盤も脆弱だ。防災DBの125mメッシュ解析では、根室市内の平均S波速度(Avs30)は199.5 m/s——軟弱地盤の目安とされる200 m/s前後の水準にあり、地震動が増幅されやすい。震度5弱以上が30年以内に起きる確率は市内平均99.96%、最大地点では100%に達する。

半島地形も被害を拡大させる。根室半島は三方を海に囲まれ、沿岸低地が広がるため津波・高潮への抵抗力が極めて低い。防災DBの解析では、根室市内で津波・高潮の浸水ハザードエリアにかかるメッシュ数は1万657にのぼる。

リスクスコア一覧(防災DB算出・2024年時点)

リスク種別 スコア(0-100) 主な指標
洪水 100 想定最大浸水深20m、区域数77万超
津波 100 想定最大浸水深10m、区域数58万超
地震 100 震度6弱以上30年確率 最大98.15%
土砂災害 50 ハザード区域4カ所
液状化 40
高潮 0
統合スコア 79(極めて高い)

なぜ根室市は地震・津波に弱いのか

千島海溝型地震は根室市最大のリスク要因だ。地震調査研究推進本部の評価によれば、根室沖では30年以内に90%の確率で大規模地震が発生すると見込まれており、全国の海溝評価の中でも最高水準に位置する。

平均活動間隔は65.1年とされるが、最後に大規模地震が発生したのは1973年(根室半島南東沖地震、M7.4)——2025年時点で52年が経過しており、次のサイクルはすでに射程圏内だ。さらに、内閣府が示す最大クラスの千島海溝型地震(M9クラス)では、根室市沿岸に10〜20mを超える津波が到達すると予測されている。

津波の到達時間は極めて短い。震源が根室沖に近いため、発生から数分〜10分程度で沿岸に津波が押し寄せる可能性がある。「揺れたら即逃げる」が、根室市民の鉄則だ。


過去の主要災害——1843年から現在まで

1994年北海道東方沖地震(最大建物被害)

1994年10月4日、根室沖約200kmを震源とするM8.2の北海道東方沖地震が発生した。根室市での最大震度は5、花咲港では173cm(1.73m)の津波が観測された。根室市内の建物被害は全壊17棟、半壊271棟、一部損壊1,533棟(出典:NIED自然災害データベース、根室市地域防災計画)。一部損壊が1,500棟を超えた被害は、根室市の建物ストックが地震動に対していかに脆弱かを示している。

1993年釧路沖地震

1993年1月15日、M7.5の釧路沖地震が発生。根室市では一部損壊130棟が記録されている。1994年の北海道東方沖地震と合わせると、わずか2年間で根室市内の建物が繰り返し被害を受けたことになる。

1908年12月の暴風(行方不明140人)

NIEDデータベースに残る根室市最大規模の人的被害は、1908年12月15日の暴風だ。行方不明者140人という記録は、明治時代の漁業集落が沿岸の暴風に対していかに無防備だったかを伝えている。根室沿岸の漁業者が海上で行方不明となったと「根室市地域防災計画」に記録されているが、詳細な経緯はそれ以上掘り下げられていない。

1924年11月の暴風(死者3人・行方不明1人)

1924年11月10日の暴風では死者3人、行方不明1人が記録されている。根室半島の東端という地理的条件が、太平洋からの暴風を直接受ける要因となっている。

1919年の大水害(床上浸水34棟)

1919年8月4日の洪水・暴風により、根室市内で床上浸水34棟、床下浸水78棟が発生した。西別川・風蓮川流域の低地が浸水したものと考えられる。

全災害年表(確認記録)

月日 種別 主な被害(NIEDデータベース・根室市地域防災計画より)
1843 4/25 地震 記録あり(詳細不明)
1875 3月 不明 記録あり(詳細不明)
1894 3/22 地震 記録あり(詳細不明)
1908 12/15 暴風 行方不明140人
1916 12/28 雪害 全壊3棟
1919 8/4 洪水・暴風 床上浸水34棟・床下浸水78棟
1924 11/10 暴風 死者3人・行方不明1人
1973 地震(根室半島南東沖M7.4) 道東全域に被害 ※Web調査情報
1989 8/16 台風 記録あり(詳細不明)
1990 11月 台風(2件) 一部損壊35棟
1991 2/16 雪害 一部損壊16棟
1991 9/27 台風第17〜19号 一部損壊16棟
1992 9/11 台風 記録あり(詳細不明)
1993 1/15 釧路沖地震(M7.5) 一部損壊130棟
1994 10/4 北海道東方沖地震(M8.2) 全壊17・半壊271・一部損壊1,533棟
1995 11/8 台風 一部損壊19棟
1998 8/30 洪水 記録あり(詳細不明)
1998 9/16 台風第5号 記録あり(詳細不明)
2000 1/28 根室半島南東沖地震 記録あり(詳細不明)

※NIEDデータベースの根室市分は1843年から計54件収録。上記は確認できた主な記録(中間の記録は省略)。


洪水・浸水リスク

根室市を流れる主要河川は西別川風蓮川だ。いずれも根室半島の中部から根室湾・風蓮湖に注ぎ込む大河川で、流域の平坦な低地は大雨時に広範囲が浸水する。

防災DBの125mメッシュ解析による洪水浸水想定区域は以下の通りだ。

河川名 浸水メッシュ数 最大想定浸水深 平均浸水深
西別川 2,502 5.0m 0.73m
風蓮川 1,333 5.0m 1.20m
清丸別川 506 3.0m 0.48m

浸水深5mは2階の床上まで達する高さだ。1階に残留することは生命の危険に直結する。風蓮川の平均浸水深が1.2mである点も重要——「自宅は低いリスク」と思い込まず、ハザードマップで具体的に確認してほしい。


地震・津波リスク

千島海溝型地震が生む最大クラスの津波

最大クラスの千島海溝型地震(M9クラス)が発生した場合、根室市沿岸への津波は最大10〜20m超に達する。防災DBの集計では、根室市内で津波・高潮の影響を受けるエリアのメッシュ数は1万657。市域の広大な沿岸部が浸水リスクに晒されている。

根室市中心部は根室湾に面した低地に位置しており、津波が湾内に入り込んだ場合の遡上距離は長くなりうる。市内の最大想定浸水深は10mで、2階建て家屋の屋根近くに達する水位だ。

地震発生確率(2024年時点)

防災DBが保有する全国地震動予測地図2024年版に基づく根室市内の地震リスクは以下のとおりだ。

指標 市内平均 市内最大値
震度6弱以上(30年確率) 83.68% 98.15%
震度5弱以上(30年確率) 99.96% 100%
平均S波速度(Avs30) 199.5 m/s

震度6弱は建物の倒壊が始まる揺れの強さだ。根室市の大部分のエリアで、30年以内に確率83%超でその揺れに見舞われる計算になる。


土砂災害リスク

防災DBが把握する根室市内の土砂災害ハザード区域は4カ所、土砂災害の影響を受ける125mメッシュは50だ。根室半島は比較的平坦な地形が多く、急峻な斜面が少ないため、他地域と比較すれば相対的に低いリスクだ。ただし台風・大雨時の崖崩れ警戒は引き続き必要だ。


避難施設一覧(主要施設)

根室市内の避難場所・避難所は計58カ所登録されている(国土数値情報・2024年時点)。広域避難場所の指定はない。

施設名 住所 種別
明治公園 北海道根室市牧の内 避難場所
根室西高等学校 北海道根室市西浜町4-1 避難所・避難場所
啓雲中学校 北海道根室市駒場町2-12 避難所・避難場所
光洋中学校 北海道根室市光洋町2-12 避難所・避難場所
成央小学校 北海道根室市光洋町1-25 避難所・避難場所
北斗小学校 北海道根室市北斗町3-5 避難所・避難場所
柏陵中学校 北海道根室市敷島町1-10 避難所・避難場所
厚床中学校 北海道根室市厚床1-218-1 避難所・避難場所
厚床小学校 北海道根室市厚床2-193 避難所・避難場所
共和小学校 北海道根室市友知388 避難所・避難場所
昆布盛小学校 北海道根室市昆布盛168-68 避難所・避難場所
別当賀夢原館 北海道根室市別当賀253番地 避難所・避難場所
図書館 北海道根室市弥生町2-5 避難所

千島海溝型地震・津波発生時は、地盤の高い場所・高い建物への即時避難が最優先だ。津波到達までの猶予は数分程度しかない可能性がある。


今からできる備え

自治体公式ハザードマップを確認する

根室市は洪水・津波・土砂災害・高潮の4種を電子地図上で重ね表示できるハザードマップを提供している。GPS現在地特定・住所検索・航空写真切替が可能で、自宅・職場の周辺リスクをすぐに確認できる。

  • 根室市防災ハザードマップ(公式):https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/soumubu/kikikanri/kiki_SONAE/10244.html
  • Webインタラクティブ版ハザードマップ:https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/section/hazardmap/flow_02.html

津波を前提にした備え

根室市では「揺れたら即避難」がすべての行動の出発点だ。千島海溝型地震では揺れが収まる前に津波が到達する可能性がある。今日中に以下を確認してほしい。

  • 自宅・職場から最寄りの避難場所までの徒歩ルート(2本以上)
  • 家族との集合場所と非常時の連絡手段
  • 非常持出袋の中身と賞味期限(飲料水3日分・食料3日分・常備薬・充電器)

データ出典

データ 出典 備考
統合リスクスコア・洪水・津波・地震確率 防災DB(bousaidb.jp) 2024年版125mメッシュ解析
過去の災害事例(54件) NIED自然災害データベース(根室市地域防災計画に基づく) 1843年〜2000年
地盤S波速度(Avs30) 防災科研・J-SHIS地盤モデル(防災DBに統合済み) 2024年時点
地震動発生確率 地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図2024年版(防災DBに統合済み)
避難場所 国土数値情報 避難施設データ(2024年)
千島海溝型地震・津波想定 内閣府中央防災会議 M9クラス最大想定
根室沖地震発生確率 地震調査研究推進本部 30年確率90%(2024年評価)
1994年北海道東方沖地震被害 NIED自然災害データベース(根室市地域防災計画) 根室市:全壊17・半壊271・一部損壊1,533
ハザードマップURL 根室市公式ウェブサイト 2025年4月確認
1973年根室半島南東沖地震情報 地震調査研究推進本部・Web調査 最終大規模地震、M7.4

著者:防災DB編集部 | 最終更新:2025年4月 | データ基準年:2024年

防災DB(bousaidb.jp)は日本全国の災害リスク情報を無料で提供しています。本記事のデータは防災DBのBigQuery解析基盤から生成されました。