新冠町の災害リスクと過去の主要災害|洪水・津波・地震すべてが最高リスクの太平洋沿岸の町

北海道日高振興局に属する新冠町(にいかっぷちょう)は、日高山脈を背後に太平洋に面した町です。防災DBの統合リスクスコアは79点(極めて高い)——洪水・津波・地震の3つのリスクスコアがすべて100を記録する、北海道内でも突出した災害リスクを抱える自治体です。

記録に残る過去の災害は21件。1955年7月の大洪水では死者27名、1981年の台風水害では死者3名・全壊105棟と、繰り返し甚大な被害を受けてきました。この記事では、BQデータと公的記録に基づき、新冠町のリスクの全体像を明らかにします。


この町の災害リスクの特徴

なぜ新冠町はこれほど高リスクなのか

新冠町のリスクが極端に高い理由は、地理的条件の「重なり」にあります。

北部は日高山脈の急峻な山岳地帯(日高山脈襟裳十勝国立公園)、南部は太平洋に直接面した低平地という地形です。山地から流れ出る新冠川が市街地を貫流して海に注ぎ、上流の急勾配が洪水時の流量を急激に増大させます。さらに、沿岸部は太平洋に開いているため、千島海溝や十勝沖を震源とする地震津波の直撃を受けやすい位置にあります。

リスク種別 スコア(0-100) 主な要因
洪水 100 新冠川・厚別川、最大浸水深20m
津波 100 太平洋沿岸、最大浸水深10m
地震 100 震度6弱以上30年確率最大66.4%
土砂災害 50 警戒区域1か所
液状化 40 沿岸低地部
高潮 0 データなし
統合スコア 79 極めて高い

出典:防災DB125mメッシュ解析(2024年データ)


過去の主要災害(詳細)

1955年7月の大洪水——27名が犠牲になった昭和最大の水害

新冠町の記録上で最大の被害をもたらしたのが、1955年(昭和30年)7月4日の洪水です。死者27名、家屋全壊14棟・半壊26棟という被害規模は、戦後の北海道日高地方における水害としても特筆されます。

詳細な経緯は一次資料の確認が困難ですが、この時期の北海道では複数の台風・大雨被害が重なっており、新冠川の大規模氾濫が中心市街地と農村集落に甚大な被害をもたらしたと考えられます(推測)。後に整備された新冠川水系のダム群(奥新冠ダム、新冠ダム、下新冠ダム、岩清水ダム)は、こうした大規模水害への対策として機能しています。

1981年8月3日——死者3名・全壊105棟

1981年(昭和56年)8月3日には、死者3名・全壊105棟という大規模な被害が発生しています(NIED「新冠町地域防災計画(資料編)」より)。被害規模は1955年を上回る家屋全壊数であり、市街地や集落に広範な浸水・損壊をもたらした台風・水害と推定されます(推測)。

2003年8月9日——台風第10号(平成15年)

2003年(平成15年)8月9日に上陸した台風第10号は、新冠町で死者1名、全壊8棟・半壊7棟、床上浸水10棟・床下浸水50棟の被害をもたらしました。1981年の大被害から約20年を経た後も、同じ台風・洪水リスクが現実のものとなった事例です。

2003年9月26日——十勝沖地震(M8.0)

同じ2003年、8月の台風被害から1か月余りの9月26日に、M8.0の十勝沖地震が発生しました。新冠町では半壊4棟・一部損壊23棟の被害が記録されています。同地震では浦幌町や釧路町で大きな被害が出たほか、十勝管内全体で大規模な液状化・地盤変動が発生しました。


過去の災害年表(全21件)

月日 種別 主な被害
2006 8/18 風水害 被害詳細なし
2003 9/26 地震 十勝沖地震 M8.0、半壊4・一部損壊23
2003 8/9 台風 台風第10号、死者1・全壊8・半壊7・床上浸水10・床下浸水50
2001 9/11 台風 台風第15号(被害詳細なし)
2001 8/23 台風 台風第11号(被害詳細なし)
2000 5/14 風水害 被害詳細なし
1998 9/8 風水害 床下浸水5棟
1997 11/26 風水害 被害詳細なし
1995 8/20 風水害 被害詳細なし
1995 8/9 風水害 全壊1棟
1992 8/9 台風 台風第10号、河川被害あり
1990 4/22 風水害 被害詳細なし
1984 7/17 風水害 被害詳細なし
1982 3/21 地震 浦河沖地震 M7.1、一部損壊1棟
1981 8/3 風水害 死者3・全壊105棟
1981 7/5 風水害 被害詳細なし
1976 10/20 風水害 被害詳細なし
1962 8 風水害 行方不明1名
1955 7/4 洪水 死者27・全壊14・半壊26棟
1952 3/4 地震 十勝沖地震、全壊1・半壊22
1935 9/26 風水害 河川被害あり

出典:NIED「新冠町地域防災計画(資料編)」、防災DB


洪水・浸水リスク

新冠川——最大浸水深20mという数字の意味

防災DBの125mメッシュ解析によると、新冠川氾濫時の想定浸水深は最大20m、平均5.6mに達します。浸水継続時間は最大336時間(14日間)

  • 浸水深0.5m未満:足首程度、歩行可能
  • 浸水深1〜2m:1階が完全水没、車も流される
  • 浸水深5m:2〜3階建て住宅が全壊レベル
  • 浸水深10m以上:建物構造に関わらず壊滅的被害

平均5.6mという数値は、新冠川沿いの市街地・農地の広範囲が「1〜2階の住宅ならほぼ全壊する水深」に達することを示しています。これは日本全国のリバーフロント自治体の中でも最高水準のリスクです。

流域の主要河川と浸水深

河川名 ハザードメッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
新冠川 1,518 10.0m 5.6m 336時間
厚別川 1,260 10.0m 2.6m 168時間
静内川 1,157 3.0m 0.6m 72時間
日高門別川 583 5.0m 2.1m
日高目名川 521 3.0m 0.4m 72時間
捫別川 457 3.0m 1.2m
貫気別川 396 3.0m 1.3m
沙流川 89 10.0m 3.9m 72時間

出典:防災DB 125mメッシュ洪水浸水想定(国土交通省データ基準)

注目すべきは浸水継続時間です。新冠川の最大336時間(14日間)という数値は、洪水が引くまで2週間近く町が孤立する可能性を示しています。山地から流れ込む大量の水が低平地に滞留する地形的条件が、長期浸水リスクを高めています。


地震リスク

震度6弱以上の30年確率——最大66.4%

防災DBが保有する地震確率データ(2024年版、地震調査研究推進本部)によれば、新冠町の震度6弱以上の30年発生確率は平均12.7%、最大で66.4%に達するメッシュが存在します。震度5弱以上の確率に広げると、平均79.6%・最大99.98%と、ほぼ確実に発生することが示されています。

地盤の硬さを示すAvs30(表層S波速度)の平均値は486m/sで、一般的な住宅地の基準(300m/s以上)を上回り、比較的固い地盤ではありますが、河川低地の沿岸部では液状化スコアが40を記録しており、注意が必要です。

過去の主要地震

  • 1952年3月4日 十勝沖地震:M8.0、全壊1棟・半壊22棟
  • 1982年3月21日 浦河沖地震:M7.1、一部損壊1棟
  • 2003年9月26日 十勝沖地震:M8.0、半壊4棟・一部損壊23棟

千島海溝沿いでは巨大地震(M8〜9クラス)の繰り返し発生が科学的に確認されており、地震調査研究推進本部は今後30年以内の発生確率を高く評価しています。


津波リスク

太平洋に開かれた沿岸——3,077メッシュが浸水想定域

防災DBの解析では、津波浸水想定域は3,077メッシュ(約47.7km²)にのぼります。津波スコアは最大値の100、最大浸水深は10mと記録されています。

新冠町は太平洋に面しており、千島海溝・十勝沖を震源とする津波が直接到達します。2003年十勝沖地震でも津波が観測されており、南岸集落への津波到達時間は地震発生後数十分程度と推定されます。

新冠町が整備した津波ハザードマップ公式サイト)では、最大クラスの津波が襲来した際の浸水区域と緊急避難場所が示されています。沿岸部に居住・勤務する方は必ず事前に確認することをおすすめします。


土砂災害リスク

防災DBの解析では、土砂災害ハザードメッシュ数は126メッシュで、土砂災害スコアは50(中程度)です。町域の北部は日高山脈に接しており、急峻な地形が土砂崩れ・土石流のリスクを生みます。大雨や地震に伴う斜面崩壊には注意が必要です。


避難施設一覧

新冠町内には43か所の避難施設が整備されています(国土数値情報 2024年データ)。うち広域避難場所の指定はなく、すべて1次避難所・2次避難所・津波避難場所として機能します。

主要避難施設(一部)

施設名 住所 施設種別
新冠小学校 新冠町字中央町20-1 1次・2次・津波避難
本町多目的交流センター 新冠町字本町44 1次・2次・津波避難
新冠町社会福祉協議会 新冠町字本町42-2 1次・2次・津波避難
にいかっぷホロシリ乗馬クラブ 新冠町字節婦町71-11 津波避難場所
判官館森林公園 新冠町字高江 津波避難場所
御野立所公園 新冠町 津波避難場所
共栄生活館 新冠町字共栄319-4 1次・2次避難所
大狩部生活館 新冠町字大狩部36-2 1次・2次避難所

出典:国土数値情報 避難施設データ(2024年)

津波警報発令時は、沿岸部から高台・指定避難場所へ速やかに移動してください。


今からできる備え

自治体の公式防災リソースを確認する

新冠町では防災メール・LINE登録サービスで気象情報・災害情報をリアルタイム配信しています。未登録の方は今すぐ登録することを強くおすすめします。

最低限確認しておくべき3点

  1. 最寄りの避難所の場所と経路:自宅・職場・学校それぞれから、徒歩で到達できる避難所を事前に把握しておく
  2. 洪水・津波ハザードマップの確認:自宅が浸水想定域に入っているかを確認し、浸水深に応じた行動計画を持つ
  3. 7日分の備蓄:内閣府指針では「最低3日・理想7日」の備蓄を推奨。新冠川の最大336時間(14日間)浸水継続を念頭に置けば、7日以上の備蓄が現実的な備えです

防災DBでは新冠町を含む全国市区町村の災害リスクを125mメッシュ単位で無料提供しています。住所を入力して、自分の土地の具体的なリスクを確認してみてください。


データ出典

データ 出典 備考
統合リスクスコア・洪水・津波・地震メッシュデータ 防災DB(125mメッシュ解析) 2024年データ基準
過去の災害事例 NIED「新冠町地域防災計画(資料編)」 自然災害情報室
地震確率(震度6弱以上30年確率) 地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図2024年版 防災DB経由
地盤データ(Avs30) 防災科学技術研究所 J-SHIS 防災DB経由
避難施設情報 国土数値情報 避難施設データ(2024年) 国土交通省
自治体防災情報 新冠町公式ウェブサイト 2025年4月確認

著者:防災DB編集部 / 最終更新:2026年4月
本記事のデータは各出典の最新版に基づきますが、最新の防災情報は必ず自治体公式ページをご確認ください。