野辺地町は、青森県下北半島の付け根に位置する人口約1万2千人の町である。北は陸奥湾に面し、町の中心部を野辺地川が貫流して陸奥湾に注ぐ。背後には八甲田山系の丘陵地帯が控え、特別豪雪地帯に指定されるほど降雪量が多い。JR大湊線と青い森鉄道の結節点であり、下北半島への交通の要衝でもある。

防災DBの統合リスクスコアは89点(極めて高い)。地震スコア100、洪水スコア100と複合的なリスクを抱える。NIEDデータベースには15件の災害が記録されており、そのうち13件が風水害・洪水である。1973年の集中豪雨では床下浸水335棟という大規模な浸水被害を経験している。

この町の災害リスクの特徴――洪水と地震の町

野辺地町の災害リスクは、繰り返す河川氾濫三陸沖地震の揺れの二つに集約される。

野辺地川は町の中心市街地を貫流しており、上流の山地から短い距離で陸奥湾に注ぐ。流域面積が小さい割に急峻な地形のため、集中豪雨時に一気に増水する特性がある。防災DBの125mメッシュ解析では、野辺地川沿いの234メッシュで最大浸水深5.0m(2階床上に達する水位)が想定されている。平均浸水深も1.55mと高く、1階が完全に水没する水準だ。浸水継続時間は最大72時間に及ぶ。

NIEDの災害記録を見ると、1973年(床上30棟・床下335棟)、1977年(床上8棟・床下127棟)、1979年(床上26棟)、1990年(床上53棟)、1994年(床上16棟・床下73棟)と、ほぼ数年おきに大規模浸水が発生していることがわかる。河川氾濫は野辺地町にとって最も頻発する災害である。

地震については、1968年十勝沖地震(M7.9)で負傷者26名、全壊13棟、半壊78棟、一部損壊575棟と甚大な被害を受けた。30年以内に震度5弱以上の確率は76.53%で、大規模地震への備えは不可欠である。

さらに注目すべきは、野辺地断層帯(想定マグニチュード7.0、30年発生確率0.47%)が町の直下に存在する点である。海溝型地震だけでなく、内陸直下型地震のリスクも抱えている。

土砂災害ハザード区域は28か所(125mメッシュで83メッシュ)。八甲田山系に連なる丘陵地帯では、大雨時のがけ崩れ・土石流に警戒が必要だ。

過去の主要災害

十勝沖地震(1968年5月16日)――負傷26名、666棟が損壊

野辺地町の災害史上、最大の人的・建物被害をもたらしたのが1968年十勝沖地震である。青森県東方沖を震源とするマグニチュード7.9の巨大地震で、北海道・青森・岩手で震度5を観測した。

野辺地町では負傷者26名、全壊13棟、半壊78棟、一部損壊575棟の被害が発生した(出典:野辺地町地域防災計画 地震編)。町内の建物の相当数が何らかの損壊を受けたことになる。

1973年9月 集中豪雨――床下浸水335棟

1973年9月23日の集中豪雨は、野辺地町に記録上最大の浸水被害をもたらした。床上浸水30棟、床下浸水335棟という被害規模は、町の人口規模を考えると全世帯の数割に影響が及んだ計算になる(出典:野辺地町地域防災計画 風水害編)。野辺地川の氾濫が主因とみられる。

1977年8月 洪水――負傷1名、床下浸水127棟

1977年8月5日の洪水では、負傷者1名、床上浸水8棟、床下浸水127棟の被害が記録されている(出典:野辺地町地域防災計画 風水害編)。1973年からわずか4年後の再来であり、野辺地川流域の洪水リスクの高さを改めて示した。

1990年10月 風水害――床上浸水53棟

1990年10月26日の風水害では、床上浸水53棟、床下浸水7棟の被害が発生した(出典:野辺地町地域防災計画 風水害編)。床上浸水の比率が高く、浸水深が大きかったことを示唆する。

1991年9月 台風第17・18・19号――全壊2棟

1991年9月27日、前線と台風の複合的な影響で全壊2棟、一部損壊45棟の被害が発生した(出典:野辺地町地域防災計画 風水害編)。強風による建物被害が中心だった。

三陸はるか沖地震(1994年12月28日)

1994年12月28日のマグニチュード7.6の地震では、一部損壊6棟の被害を記録している(出典:野辺地町地域防災計画 地震編)。1968年の十勝沖地震と比べると軽微だが、三陸沖の地震が繰り返し野辺地町に影響を与えることを示している。

災害年表

年月日 災害名 種別 主な被害 出典
1968年5月16日 十勝沖地震 地震 負傷26名、全壊13、半壊78、一部損壊575棟 野辺地町地域防災計画 地震編
1973年9月23日 集中豪雨 洪水 床上浸水30棟、床下浸水335棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1977年8月5日 洪水 洪水 負傷1名、床上浸水8棟、床下浸水127棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1979年10月1日 台風第16号・豪雨 洪水 床上浸水26棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1981年8月22日 台風第15号 洪水 床上浸水2棟、床下浸水35棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1990年9月20日 台風第19号 風水害 床下浸水4棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1990年10月26日 風水害 風水害 床上浸水53棟、床下浸水7棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1991年9月27日 台風第17・18・19号 風水害 全壊2棟、一部損壊45棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1994年9月23日 風水害 風水害 床上浸水16棟、床下浸水73棟 野辺地町地域防災計画 風水害編
1994年12月28日 三陸はるか沖地震 地震 一部損壊6棟 野辺地町地域防災計画 地震編

洪水・浸水リスク――野辺地川の脅威

防災DBの125mメッシュ解析による野辺地川の洪水リスクデータは以下の通りである。

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
野辺地川 234 5.0m 1.55m 72時間

最大浸水深5.0mは2階床上に達する水位であり、垂直避難では対応できない深さだ。平均浸水深1.55mでも成人の胸の高さに相当し、歩行での避難は極めて困難になる。

過去の記録を見ると、1973年から1994年の約20年間に5回の大規模浸水が発生している。平均すると4年に1回のペースで床上浸水を伴う洪水が起きている計算だ。野辺地川沿いの低地に住む住民にとって、洪水は「いつ起きてもおかしくない」災害といえる。

地震リスク――直下に活断層

防災DBの125mメッシュ解析による地震リスクデータ(2024年時点)は以下の通りである。

指標 平均値 最大値
30年以内 震度6弱以上確率 7.71% 37.86%
30年以内 震度5弱以上確率 76.53% 99.05%
表層地盤S波速度(Avs30) 328.3m/s

震度5弱以上の確率は76.53%で、今後30年間に高い確率で強い揺れを経験する。1968年十勝沖地震では町内666棟が損壊した実績がある。

野辺地町周辺には二つの主要な活断層帯が存在する。

断層名 想定M 30年発生確率
青森湾西岸断層帯 6.8 0.66%
野辺地断層帯 7.0 0.47%

野辺地断層帯は町名を冠する活断層であり、町の直下に位置する。想定マグニチュード7.0の地震が発生した場合、直下型であるため揺れの強さは海溝型地震を上回る可能性がある。液状化スコアは40で、野辺地川沿いの沖積低地では液状化にも注意が必要だ。

土砂災害リスク

土砂災害ハザード区域は28か所(125mメッシュで83メッシュが影響域)。八甲田山系に連なる町西部の丘陵地帯を中心に、がけ崩れ・土石流の危険箇所が分布している。特別豪雪地帯のため、春先の融雪期には地盤が緩み、土砂災害のリスクが高まる点にも留意が必要である。

避難施設一覧

野辺地町には8か所の避難施設が指定されている。

施設名 住所 種別
中央公民館 野辺地1-15 避難所
町立体育館 観音林脇10 避難所
野辺地小学校 寺ノ沢42-4 避難所
野辺地中学校 浜掛79-6 避難所
若葉小学校 石神裏16 避難所
馬門小学校 家ノ上6-6 避難所
有戸地区学習等供用センター 小沢平10-8 避難所
木明地区農作業管理休養施設 有戸鳥井平158-6 避難所

今からできる備え

ハザードマップの確認 — 野辺地町は洪水・土砂災害ハザードマップ(令和3年2月作成)と地震・津波ハザードマップ(令和5年2月作成)を公開している。
野辺地町防災ハザードマップ
野辺地町 地震・津波ハザードマップ

浸水への備え — 野辺地川沿いの低地に居住する場合、大雨時の早期避難が最も重要な対策である。浸水継続時間が最大72時間に及ぶため、最低3日分の備蓄は必須。浸水深5mの区域では2階への垂直避難でも不十分な可能性がある。

建物の耐震化 — 1968年十勝沖地震では666棟が損壊した。野辺地断層帯(M7.0)が直下に存在するため、旧耐震基準の建物は耐震診断・補強を強く推奨する。

冬季の備え — 特別豪雪地帯のため、暴風雪による停電・孤立リスクも高い。冬季は暖房手段(石油ストーブ・灯油の備蓄)の確保が不可欠である。

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