帯広市の災害リスクと歴史:十勝平野を流れる河川が生み出す水害の脅威と地震被害の記録

北海道帯広市は、十勝平野の中心都市として農業と観光で知られる。しかしその「広大な平野」という地形は、河川の氾濫水を受け止めやすい地形でもある。防災DB(bousaidb.jp)の分析では、帯広市の統合リスクスコアは79点(極めて高い)。洪水・地震・津波の3リスクが同時にスコア最高水準に達している市区町村は、全国でも数少ない。

1922年の大洪水から2016年の台風10号まで、帯広市は繰り返し水害に見舞われてきた。そして1952年と2003年には、二度にわたって十勝沖地震が直撃した。この記事では、防災DBの125mメッシュ解析データとNIED自然災害データベース、国土交通省の記録をもとに、帯広市の災害リスクを具体的な数値で解説する。


なぜ帯広市は洪水に弱いのか:十勝平野の地形的宿命

帯広市は十勝川の支流・帯広川と札内川に挟まれた低平地に広がる。標高は概ね60〜80m程度と低く、周囲を日高山脈や十勝山地が囲む盆地状の地形だ。大雨が降るたびに山地からの水が平野部に集中し、複数の河川が同時に水位を上げる。

防災DBの125mメッシュ解析によると、帯広市内に影響を与える洪水ハザードエリアは主要13河川にわたり、総計2万メッシュ以上に及ぶ。浸水継続時間が最長336時間(14日間)に達する河川もあり、一度氾濫すれば長期間にわたって水が引かない可能性がある。


河川別洪水リスク:帯広川の最大浸水深は10メートルを超える

河川名 浸水エリア(メッシュ数) 最大浸水深 浸水継続時間(最長)
売買川 4,312 5.0m 336時間(14日間)
札内川 3,698 5.0m 336時間
十勝川 2,751 5.0m 336時間
途別川 2,546 5.0m 72時間
帯広川 2,461 10.0m 336時間
サラベツ川 2,390 3.0m
美生川 1,763 5.0m 168時間
戸蔦別川 1,108 5.0m 24時間
音更川 901 5.0m 168時間
芽室川 800 5.0m 168時間

(出典:防災DB 125mメッシュ解析、国土交通省浸水想定データ)

特筆すべきは帯広川の最大浸水深10メートル超という数値だ。浸水深10mは2階建て住宅の屋根をすっぽり覆う深さに相当する。帯広川は市街地を貫流する都市河川であり、沿川エリアの住民は最高水準の注意が求められる。

十勝川は平均浸水深1.67mと、主要河川の中で最も深い平均値を記録している。浸水深1.5mは大人が自力で歩行困難になる深さであり、浸水が始まったら避難は事実上不可能になる。

売買川は浸水エリアの広さでは最大(4,312メッシュ)。帯広市の中心部に沿って流れるため、市街地への影響が特に大きい。


過去の主要災害:繰り返す洪水と2度の十勝沖地震

1952年3月4日:十勝沖地震(Mw8.1)— 戦後最大の建物被害

指標 数値
死者数 5名
全壊 1,684棟
半壊 3,141棟
一部損壊 6,088棟

(出典:帯広市地域防災計画 地震災害対策編)

十勝沖を震源とするM8.1の巨大地震が発生し、帯広市内で住宅1万棟以上が被害を受けた。全壊1,684棟という数値は、当時の市内住宅数から見ても壊滅的な被害だった。津波も発生したが、内陸に位置する帯広市への直接的な津波被害は限定的で、主な被害は強い揺れによる建物倒壊だった。

1981年8月:戦後最大規模の洪水

指標 数値
床上浸水 11棟
床下浸水 70棟
一部損壊 205棟(台風15号)

(出典:帯広市地域防災計画 一般災害対策編)

1981年8月は二度の大規模災害が重なった。8月上旬の北海道豪雨では十勝地域全体で大規模な浸水が発生。国土交通省の記録では、この年の洪水は「戦後最大規模」とされ、北海道全域で氾濫面積614km²、被害家屋約3万棟に及んだ。帯広市でも同月23日の台風15号で建物205棟が損壊している。

2003年9月26日:十勝沖地震(M8.0)— 震度5強を観測

2003年9月26日午前4時50分、十勝沖でM8.0の地震が発生し、帯広市は震度5強を観測した。北海道全体の死者は1名、負傷者は849名に上り、住宅全壊116棟・半壊368棟が発生した。死者は十勝川河口付近での津波によるもので、内陸の帯広市中心部での人的被害は比較的少なかった。ただし、同地震では釧路港のLNG基地火災など産業インフラへの大きな被害が生じた。(出典:気象庁、内閣府防災白書H16年版)

2016年8月30日:台風10号による記録的大雨

2016年台風10号は北海道に接近・上陸し、十勝川水系で6河川12か所が観測史上最高水位を記録した(十勝毎日新聞)。帯広市内では札内川の南帯橋地点で計画高水位を超え、堤防が損傷。市内各地で道路冠水や床下浸水が相次いだ。十勝川水系の音更川(音更町)では堤防が決壊し、十勝地域全体に甚大な被害をもたらした。

災害年表(データあり)

月日 種別 主な被害
1922 8月25日 風水害 床上浸水321棟、河川被害7件
1952 3月4日 地震 死者5名、全壊1,684棟、半壊3,141棟
1975 8月24日 台風5・6号 床上浸水45棟、床下140棟
1976 10月20日 風水害 負傷者1名
1979 10月19日 台風20号 床上浸水1棟、床下17棟
1981 8月4日 豪雨 床上浸水11棟、床下70棟
1981 8月23日 台風15号 一部損壊205棟
1988 11月24日 風水害 床上浸水7棟、床下99棟
2000 4月22日 風水害 床上浸水1棟
2002 1月21日 雪害 負傷者1名
2003 9月26日 十勝沖地震M8.0 震度5強、住宅損壊多数(NIEDデータセット未収録、気象庁・防災白書より)
2016 8月30日 台風10号 札内川計画高水位超過・堤防損傷(NIEDデータセット未収録、国交省記録より)

(出典:NIED自然災害データベース「帯広市地域防災計画」、気象庁、国土交通省帯広開発建設部)


地震リスク:30年以内に震度6弱が最大66%の地点も

防災DBの125mメッシュ解析による帯広市の地震確率(2024年版):

指標 市内平均 市内最大値
30年以内に震度6弱以上の確率 20.5% 66.8%
30年以内に震度5弱以上の確率 92.3% 99.9%
表層地盤S波速度(Avs30) 389.7 m/s

(出典:防災DB 125mメッシュ解析、J-SHIS地震ハザードステーション2024年版)

震度5弱以上の確率が市内平均で92.3%という数値は、30年以内に実質的に確実な揺れを経験することを意味する。震度5弱でも固定されていない家具が転倒し始め、身の安全を確保できないリスクがある。

最大値66.8%という地点は、軟弱地盤が分布する低地エリアに集中しているとみられる。平均Avs30が389.7 m/sというのは国内平均よりやや硬い地盤だが、局所的には軟弱地盤も存在する。

帯広市周辺の主要地震リスクは十勝沖・根室沖の海溝型地震。1952年と2003年にM8クラスの地震が50年以内に2度発生しており、今後も同様の地震が繰り返される可能性が高い。内閣府の北海道太平洋沖地震の想定では、最大M9クラスの巨大地震リスクも指摘されている。


土砂災害・液状化リスク

防災DBの125mメッシュ解析では、帯広市内の土砂災害エリアは8メッシュと比較的少ない。NIEDデータベースでも土砂災害ハザード区域数は6か所にとどまる。帯広市の地形は平坦な平野部が主体のため、急傾斜地崩壊や土石流のリスクは市南部の日高山麓エリアに限定される。

液状化スコアは40(5段階中「中程度」)。十勝川沿いの沖積低地では液状化が発生しやすい地盤分布が見られ、大地震の際には道路・インフラへの影響が懸念される。


「津波スコア100」の意味:内陸都市でなぜ高スコアか

防災DBで帯広市の津波スコアが100点となっている点は、一見不思議に映る。帯広市は太平洋から直線距離で80km以上離れた内陸都市だ。このスコアには、十勝川を逆流する津波(河川遡上津波) と、行政区域内の農村部エリアにおける浸水想定エリアが含まれている可能性がある。

2003年十勝沖地震では十勝川河口付近で津波被害が発生した。帯広市域が十勝川の上流部まで広がる広大な行政区域であることを踏まえると、市内の一部地域では津波遡上リスクが存在する。帯広市公式のハザードマップで各地点のリスクを確認することを強く推奨する。


帯広市の主な避難施設

帯広市には合計114か所の避難施設(広域避難場所11か所を含む)が整備されている。

広域避難場所(主要11か所)

施設名 住所 収容規模
帯広競馬場 西13南9 広域(大規模)
緑ヶ丘公園 緑ヶ丘2 広域
中央公園 西3南6 広域
大通公園 大通南20 広域
グリーンパーク 公園東町5 広域
あづさ公園 西16北3 広域
南公園 西4南13 広域
柏林台公園 柏林台中町5丁目 広域
白樺公園 西16南4 広域
南町野球場 南町南9線 広域
西町公園 西16南2 広域

(出典:国土数値情報 避難施設データ)

最寄りの避難所はWEB版ハザードマップ(https://city-obihiro-bousai.com/)でリアルタイムに確認できる。


今からできる備え

帯広市の災害リスクは「洪水」「地震」「大雪」の3つが核心だ。それぞれに対応した備えを今から始めることが重要だ。

① 自分の家のリスクを確認する
帯広市公式のWEB版ハザードマップ(https://city-obihiro-bousai.com/)で、自宅周辺の洪水・土砂災害リスクを確認しよう。帯広市は令和5年3月に「おびひろ防災ガイド」改訂版を全戸配布済み。手元にある場合は必ず読み返してほしい。

  • 帯広市防災情報:https://www.city.obihiro.hokkaido.jp/kurashi/bousai/index.html
  • WEB版ハザードマップ:https://city-obihiro-bousai.com/
  • 内水浸水想定区域図:https://www.water-sewage-obihiro.jp/disaster/details/disaster_06.html

② 洪水避難の「早期行動」を習慣化する
帯広川の最大浸水深10m超というデータは、「水が来てから逃げる」では手遅れになることを示している。大雨警報や河川水位情報(十勝川水系リアルタイム水位:国土交通省川の防災情報)を事前にブックマークし、氾濫注意水位に達する前の自発的避難を心がけること。

③ 地震への備え:家具固定と食料3日分
30年以内に震度5弱以上がほぼ確実(確率92.3%)な帯広市では、家具固定は「やって当然」の対策だ。食料・水の3日分備蓄(1人あたり水9L)、非常用持ち出し袋の準備を済ませておくこと。


データ出典

出典 内容
防災DB 125mメッシュ解析 洪水・地震・土砂・津波スコア、浸水エリア分析
NIED自然災害データベース(帯広市地域防災計画) 1922〜2004年の災害記録
気象庁 2003年十勝沖地震情報 2003年地震被害概要
内閣府防災白書 平成16年版 2003年地震全国被害集計
国土交通省帯広開発建設部 十勝川洪水年表 十勝川水系洪水履歴
十勝毎日新聞(2016年9月) 台風10号による十勝川水系最高水位情報
帯広市防災情報 公式防災ページ
帯広市WEB版ハザードマップ 洪水・土砂災害ハザード情報
国土数値情報 避難施設(p20) 避難場所一覧
J-SHIS地震ハザードステーション(2024年版) 地震発生確率・地盤データ

記事作成日: 2026年4月5日 / 著者: 防災DB編集部 / データ基準時点: 2024年版J-SHIS、2023年版国土数値情報