愛媛県西条市の災害リスクと過去の被害年表【防災DB調査】

西条市に住む人が知っておくべきことが、数字として突きつけられる。防災DBが集計した統合リスクスコアは81点(極めて高い)——これは中山川・蒼社川・加茂川をはじめとする7本の河川が市街地を分断し、南に屹立する石鎚山(標高1,982m)から瀬戸内海まで約30kmという急峻な地形が、雨水を容赦なく平野部へ流し込む構造に由来する。

過去の記録を掘り起こすと、1946年の南海地震では死者10名・全壊659棟、2004年台風第21号では死者5名・床上浸水489棟に上る。NIEDデータベースで確認できる被害記録は1905年から2020年までで74件。洪水スコア・地震スコア・津波スコアがいずれも満点の100という市区町村は、全国でも極めて稀だ。


なぜ西条市はこれほど水害に弱いのか

西条市の地形を一言で表すと「急流と扇状地の街」だ。石鎚山系に降った雨は、標高差1,900m以上を直線距離30km足らずで瀬戸内海まで駆け下りる。河川勾配は他の平野河川とは比べものにならず、梅雨前線や台風が石鎚山系に雨を集中させると、数時間で平野部の河川が溢れる。

市内を流れる主要河川は加茂川・中山川・蒼社川・国領川・渦井川・新川・大明神川の7本。これらが形成する西条平野と周桑平野は典型的な扇状地地形で、市街地のかなりの部分が洪水浸水想定区域と重なる。

「うちぬき」として知られる西条の自噴水は、この扇状地地形が生み出した産物でもある。地下水が豊富な一方で、地盤が低く軟弱な区域が広がり、洪水時の浸水深が深くなりやすい構造を持つ。


防災DBが示す西条市のリスクデータ(2024年時点)

防災DBの125mメッシュ解析に基づく最新データ。

リスク区分 スコア(0-100) 主な指標
洪水 100 最大浸水深20m超の想定区域あり、浸水メッシュ269,116区画
津波 100 最大浸水深20m超、浸水メッシュ175,721区画
地震 100 震度6弱以上30年確率 平均22.6%、最大75.5%
土砂災害 50 ハザード区域41か所、影響メッシュ74,934区画
液状化 60 扇状地・低地部での液状化リスク
統合スコア 81(極めて高い)

震度6弱以上30年確率「最大75.5%」という数値は見逃せない。これは30年以内に市内のある地点で震度6弱以上の揺れが発生する確率が75%を超えていることを意味する。


中央構造線が市内を通る——地震リスクの構造的背景

西条市の地震リスクが極めて高い最大の理由は、中央構造線断層帯が市の真下を走っていることだ。丹原町湯谷口では中央構造線が地表に露出しており、地質学的にも重要な地点として知られる。

防災DBのデータでは、西条市周辺の活断層として「中央構造線断層帯(石鎚山脈北縁西部区間)」が確認されており、単独活動時の想定マグニチュードはM6.9、30年発生確率は0.035%(2024年時点)とされている。

ただし、中央構造線断層帯は複数区間が連動して活動するケースも想定されており、連動時の最大想定規模はM7.8に達する。さらに南海トラフ巨大地震の発生確率は30年以内で70〜80%(政府発表)とされ、愛媛県西条市は南海トラフの津波到達域でもある。複数の地震リスクが重なる地点にあることを理解しておく必要がある。


河川別・洪水浸水深の詳細(防災DB 125mメッシュ解析)

洪水浸水想定区域は愛媛県が指定した値を125mメッシュに集計したもの。以下は西条市域での河川別データ(2024年時点)。

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
中山川 1,731区画 5.0m 1.72m 168時間
蒼社川 1,202区画 5.0m 0.86m 72時間
加茂川 1,075区画 5.0m 1.23m 72時間
新川 904区画 5.0m 0.64m 72時間
国領川 815区画 5.0m 0.65m 72時間
渦井川 614区画 5.0m 0.59m 72時間
大明神川 276区画 5.0m 1.10m 72時間

浸水深の具体的なイメージとして: 0.5m = 腰まで浸水、1m = 成人の腰〜胸まで、3m = 2階床上、5m = 2階天井以上。中山川流域では平均1.72m(成人の胸〜首の高さ)が想定されており、浸水が続く時間は最長168時間(7日間)に及ぶ。浸水が7日間続くということは、立ち退き避難が完了するまでの猶予がほとんどないことを意味する。

特に中山川の「暴れ川」としての歴史は古く、1624年頃には左岸堤防が大崩壊したとの記録が西条市水の歴史館に残っている。現代の治水工事で状況は改善されているが、構造的なリスクは変わっていない。


過去の主要災害(詳細)

1946年12月21日 昭和南海地震 ——全壊659棟の衝撃

昭和21年(1946年)12月21日午前4時19分、南海地震(M8.0)が発生。西条市(当時は西条町・氷見村等の各自治体)では死者10名・負傷者25名・全壊659棟という甚大な被害を記録した。

南海地震は四国の沖を震源とするため、愛媛県は強い揺れに加えて津波にも見舞われた。現在の科学的評価では、次の南海トラフ巨大地震(M8〜9クラス)の30年以内の発生確率は70〜80%とされており、1946年の記憶は今もリスク評価の基点となっている。

出典: 西条市地域防災計画 資料編(NIEDデータベース収録)

2004年9月29日 台風第21号 ——死者5名・全壊23棟

平成16年(2004年)は、台風が相次いで上陸した「台風災害の年」だった。西条市でも台風第16号(8月)・台風第18号(9月6日)・台風第21号(9月29日)・台風第23号(10月)と連続して被害を受けた。

なかでも台風第21号(秋雨前線を伴う)は最も深刻で、死者5名・床上浸水489棟・床下浸水2,121棟・全壊23棟・半壊91棟・一部損壊8棟・河川被害24か所という記録を残した。市内を流れる複数の河川が同時に氾濫したとみられ、住宅地への被害が広域に及んだ。

出典: 西条市地域防災計画 資料編(NIEDデータベース収録)

2001年3月24日 平成芸予地震 ——一部損壊809棟

平成13年(2001年)3月24日15時27分、芸予地震(M6.7)が発生。震源は広島県北部から愛媛県にかけての中央構造線沿いで、西条市では死者は記録されていないが、一部損壊83棟・726棟(計809棟)という建物被害が確認されている。

この地震は「中央構造線が動いた」事例として重要で、現在も中央構造線断層帯の評価に引用される。

出典: 西条市地域防災計画 資料編(NIEDデータベース収録)

1976年9月8日 台風第17号 ——床下浸水6,693棟

昭和51年(1976年)の台風第17号では、死者1名・床上浸水542棟・床下浸水6,693棟・全壊9棟・半壊17棟・河川被害104か所という記録的な洪水被害が発生した。河川被害箇所104か所は、市内の主要河川がほぼ全面的に氾濫したことを示している。

出典: 西条市地域防災計画 資料編(NIEDデータベース収録)

2020年7月5日 令和2年7月豪雨 ——死者1名

令和2年(2020年)7月5日の大雨警報(最終報)では、西条市で死者1名・負傷者1名の被害が記録されている。全国規模の令和2年7月豪雨(死者84名)の一部として発生したもので、局地的な集中豪雨が原因とみられる。

出典: 大雨警報による被害状況(最終報)(NIEDデータベース収録)


西条市 過去の災害年表(NIEDデータ 1905〜2020年)

NIEDデータベースに収録された西条市の災害記録(74件)のうち、主要なものを年表形式で掲載する。

年月 災害名 死者 負傷者 全壊 半壊 床上浸水 床下浸水
1905年6月 芸予地震
1946年12月 南海地震 10 25 659
1968年4月 日向灘地震
1976年9月 台風第17号 1 9 17 542 6,693
1979年10月 台風第20号(昭和54年) 45 1,133
1980年9月 洪水 2 1 69
1982年9月 台風 146
1987年10月 台風第19号 19 1,119
1989年8月 台風第17号(平成元年) 92
1990年9月 台風第19号・前線 1 90
1997年9月 台風第19号(平成9年) 1 42
1998年10月 台風第10号・前線 1 42 1,119
1999年9月 台風第16号・前線 28 285
2001年3月 平成芸予地震
2004年8月 台風第16号 1
2004年9月 台風第18号 41
2004年9月 台風第21号・秋雨前線 5 23 91 489 2,121
2004年10月 台風第23号・前線 33 311
2011年9月 台風第12号 10 53
2020年7月 令和2年7月豪雨 1 1

※一部の記録は重複データが含まれており、集計値として統合して記載。出典: NIEDデータベース(西条市地域防災計画 資料編等)。


津波リスク——南海トラフ巨大地震に備える

西条市は瀬戸内海沿岸に位置し、津波リスクも「極めて高い」評価だ。防災DBの125mメッシュ解析では175,721区画が津波浸水想定区域に含まれ、最大浸水深は20mを超える想定がある。

これは南海トラフ巨大地震の最大クラス(M9程度)を想定した値であり、瀬戸内海という地形上、太平洋側ほど到達時間は短くないものの、複数の波が繰り返し来襲する可能性がある。

津波警報が発令されたら、海岸・河川沿いからすぐに高台へ避難することが原則だ。特に夜間や就寝中に地震が発生した場合、揺れで移動が困難になる前に避難を始める必要がある。


土砂災害リスク

防災DBの解析では、西条市域の土砂災害メッシュ数は74,934区画に及ぶ。石鎚山系の急峻な斜面が迫る市南部(丹原町・小松町山間部)では、土砂災害特別警戒区域が点在する。愛媛県の土砂災害警戒区域の指定状況は愛媛県公式ページ(https://www.pref.ehime.jp/page/10259.html)で確認できる。


主要避難施設一覧

防災DBに収録された西条市内の避難施設は151か所。主要な収容避難施設を以下に示す。

施設名 住所 種別
ひうち会館 西条市ひうち1-16 避難収容施設
ひうち体育館 西条市ひうち1-3 避難収容施設
三芳公民館(東予農村環境改善センター) 西条市三芳1027-2 避難収容施設
中央公民館 西条市周布401-1 避難収容施設
丹原体育館 西条市丹原町久妙寺288-1 避難収容施設
丹原公民館 西条市丹原町池田1863-1 避難収容施設
丹原文化会館 西条市丹原町田野上方2131-1 一時避難場所・収容避難施設
北星会館 西条市壬生川682-1 避難収容施設
三芳小学校 西条市三芳1217 一時避難場所・収容避難施設
丹原小学校 西条市丹原町池田1778-1 一時避難場所・収容避難施設

各施設の詳細位置・対応災害種別は、西条市公式の防災マップ(https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/kikikanri/bousaimap.html)で必ず確認してほしい。


今からできる備え

公式ハザードマップで自宅のリスクを確認する

西条市が公開している各種ハザードマップは以下から確認できる。

  • 西条市防災マップ(総合): https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/kikikanri/bousaimap.html
  • 洪水ハザードマップ: https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/kikikanri/kouzuihm.html
  • 防災関係マップ一覧: https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/kikikanri/map.html

上記マップで「自宅が洪水浸水想定区域内かどうか」「最寄りの避難所の場所」「土砂災害警戒区域の範囲」を必ず確認しておく。

また、防災DBでは西条市の住所や施設名で詳細なハザード情報を検索できる。

具体的な備えのポイント

西条市のリスク構造を踏まえると、特に優先すべき備えは次の3点だ。

1. 洪水・台風時の早期避難の徹底
中山川などの主要河川は「急流」の特性から、氾濫情報が出てからでは遅い場合がある。大雨警報・洪水警報が発令されたら、「危険な状況になる前」に避難を完了する早期行動が命を救う。

2. 南海トラフ地震への備え
家具の固定・耐震診断・備蓄(水7日分以上)は最低限の準備。さらに、地震発生直後に津波警報なしでも高台へ向かう習慣をつける(地震直後は通信が乱れ正確な情報が届かないため)。

3. 夜間就寝中の地震・洪水への備え
過去の南海地震(1946年)は深夜4時台に発生している。就寝時の靴・懐中電灯の手元配置と、寝室周辺の避難経路の確保は欠かせない。

問い合わせ先: 西条市危機管理課危機管理係 TEL 0897-52-1282


データ出典

本記事は以下のデータソースに基づいて作成した。

データ 出典 時点
統合リスクスコア・メッシュ解析 防災DB(bousaidb.jp) 2024年
洪水浸水想定区域 愛媛県・国土交通省公開データ(防災DB集計) 2024年
土砂災害・津波浸水想定 国土数値情報等(防災DB集計) 2024年
活断層データ 地震調査研究推進本部 2024年
地震動確率 地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図 2024年
過去の災害記録 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース(西条市地域防災計画 資料編等) 1905〜2020年
避難施設 国土数値情報 指定緊急避難場所データ 2024年
西条市の地形・地質 西条市水の歴史館、Wikipedia(加茂川・中山川・西条市各記事)
防災ページ 西条市公式ウェブサイト(危機管理課) 2024年確認

著者: 防災DB編集部
公開日: 2026年4月
更新日: 2026年4月

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