佐伯市の災害リスクと過去の災害年表|洪水・津波・地震が三重に重なる大分県南部の要衝
著者: 防災DB編集部 | 更新: 2026年4月4日 | データ出典: 防災DB(bousaidb.jp)、NIED自然災害データベース、国土交通省
大分県南部に位置する佐伯市は、防災DBの統合リスク評価でスコア87(極めて高い)を記録する。洪水・津波・高潮・地震のスコアがいずれも100に達し、さらに10万を超える土砂災害ハザードメッシュを抱える。面積は大分県最大(903km²)でありながら、市街地の大半は番匠川河口の低地に集中。四方を急峻な山地と複雑なリアス式海岸に囲まれたこの地形が、複数の災害リスクを同時に増幅させている。
過去を振り返れば、南海地震(1946年)から日向灘地震の繰り返し、近年の令和2年7月豪雨・台風10号まで、佐伯市は何度も大規模災害の影響を受けてきた。本記事では、防災DBの125mメッシュ解析データと過去の記録を組み合わせ、この街が抱える災害リスクの全体像を明らかにする。
この街の災害リスクの特徴
なぜ佐伯市はこれほど多くのリスクを抱えるのか
佐伯市の地形は「三重苦」と呼べる構造を持つ。
① 番匠川の氾濫リスク
市の中心部は一級河川・番匠川の河口に形成された低地にある。九州屈指の清流として知られる番匠川だが、上流域は急峻な山地が連なり、集中豪雨時の増水が速い。防災DBの洪水浸水想定データでは、番匠川流域だけで1,416メッシュ(約22km²)が浸水想定区域に含まれ、最大浸水深5m・継続時間72時間を記録するメッシュも存在する。浸水深5mは2階の窓まで水が達する深さに相当する。
② リアス式海岸と津波・高潮の脆弱性
豊後水道に面したリアス式海岸は、津波の波高を増幅させる地形として知られる。防災DBの解析では津波・高潮スコアがともに100で、津波の最大浸水深は10m以上を想定するメッシュも確認されている。令和5年3月31日には大分県が津波災害警戒区域を新たに指定し、リスクの高さが改めて認識された。
③ 日向灘・南海トラフの地震頻発地帯
佐伯市は日向灘地震と南海トラフ巨大地震の両方の影響圏に入る。防災DBの地震確率データによると、震度6弱以上の30年確率は平均9.28%・最大78.67%に達する地点がある。日本の平均と比較して著しく高い数値だ。
過去の主要災害詳細
1946年12月21日|南海地震(M8.0)
昭和21年12月21日4時19分、和歌山県沖を震源とするM8.0の南海地震が発生した。死者・行方不明者は全国で1,362名、建物全壊が2万棟を超える昭和最大級の地震被害となった。豊後水道に面する佐伯市(当時・佐伯町を含む旧南海部郡各町村)には大きな津波が来襲。リアス式海岸の入り江では波高が増幅し、沿岸集落に甚大な被害をもたらした記録が残る。この地震は次の南海トラフ巨大地震(想定M9クラス)の先例として、現代の防災計画にも色濃く影響を与えている。
1996〜2002年|日向灘地震の連続
1996年10月・12月、1997年4月、2001年3月(芸予地震M6.7)、2001年4月・2002年11月と、日向灘を震源とする地震が繰り返し佐伯市に有感地震をもたらした。NIEDのデータには「★」印(内閣府記録)として複数件が収録されている。個別の被害数値は記録されていないが、震度4〜5相当の揺れが繰り返し発生したことが分かる。
2006年3・6月|大分県西部の地震
2006年には3月と6月の2回、「大分県西部の地震」がNIEDに記録されている。6月12日の地震は気象庁が「平成18年大分県西部の地震」と命名しており、M5.7(最大震度5弱)を観測した。
2019年7月3日|大雨警報(洪水)
令和元年7月3日、大雨警報が発令され洪水被害が発生。市内河川の水位が上昇し、河川氾濫の被害が記録されている。詳細な浸水棟数は最終報で「被害なし」とされているが、復旧対応が必要な状況となった。
2020年7月6日|令和2年7月豪雨
令和2年7月豪雨は九州一帯を席巻した長期豪雨で、佐伯市でも7月下旬に番匠川流域で流域平均雨量455mmを記録する大雨となった。国土交通省佐伯河川国道事務所の観測では番匠橋観測所の水位が洪水警戒水位を超過。市街地の複数地区で浸水被害が発生した。なおNIEDの本データセットには被害棟数の記録は限定的だが、内閣府の最終報告書によれば大分県全体での被害が確認されている。
2020年9月6日|令和2年台風第10号
「非常に強い台風10号」は2020年9月7日に鹿児島県に上陸したが、接近段階の9月6日から佐伯市は暴風域に入り始めた。NIEDの記録では一部損壊1棟・河川被害1件が計上されている。台風本体の接近前にこれだけの被害が出た点は、今後の強力台風への備えの重要性を示している。
過去の災害年表
| 年 | 月日 | 災害名 | 種別 | 主な被害 |
|---|---|---|---|---|
| 1946 | 12/21 | 南海地震 | 地震 | 津波、建物被害 |
| 1996 | 10/19 | 日向灘地震 | 地震 | 有感地震 |
| 1996 | 12/3 | 日向灘地震 | 地震 | 有感地震 |
| 1997 | 4/3 | 日向灘地震 | 地震 | 有感地震 |
| 2001 | 3/24 | 芸予地震(M6.7) | 地震 | 有感地震 |
| 2001 | 4/25 | 日向灘地震 | 地震 | 有感地震 |
| 2002 | 11/4 | 日向灘地震 | 地震 | 有感地震 |
| 2006 | 3/27 | 大分県西部の地震 | 地震 | 有感地震 |
| 2006 | 6/12 | 大分県西部の地震(M5.7) | 地震 | 最大震度5弱 |
| 2019 | 7/3 | 大雨警報 | 洪水 | 河川被害 |
| 2020 | 7/6 | 令和2年7月豪雨 | 風水害 | 河川水位超過・浸水 |
| 2020 | 9/6 | 令和2年台風第10号 | 暴風・洪水 | 一部損壊1棟、河川被害1件 |
出典:NIED自然災害データベース(2024年時点)
洪水・浸水リスク
番匠川|市街地を直撃するリスク
番匠川は三国峠付近(標高664m)を源流とし、急峻な山地を経て佐伯市街地を縦断し佐伯湾に注ぐ一級河川だ。独特の地形特性として、石灰岩層の伏流水によって渇水期には一部河床が干上がる区間があるが、豪雨時には逆に急激な水位上昇をもたらす。
防災DBの解析では、番匠川による浸水想定エリアは1,416メッシュ(約22km²)に及ぶ。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 浸水想定メッシュ数 | 1,416 |
| 最大浸水深 | 5.0m |
| 平均浸水深 | 2.28m |
| 最大継続時間 | 72時間 |
浸水深のイメージは次の通り。
- 0.5m:膝下まで浸水、歩行困難
- 1m:大人の腰まで浸水、車は水没・危険
- 2m:1階完全浸水、2階への避難が必須
- 5m:2階の窓に達する高さ——2020年7月豪雨でも河道内でこのレベルの水位上昇が記録された
北川・小川の注意点
市域内では北川(最大浸水深10m、平均4.32m)、小川(最大10m、平均5.9m)も高リスク河川だ。特に小川は平均浸水深が全河川中最大水準であり、流域の地区住民は注意が必要だ。
津波・高潮リスク
リアス式海岸が波高を増幅する
佐伯湾は豊後水道の南端に位置し、複雑に入り組んだリアス式海岸が広がる。湾奥に向かって海底が浅くなる地形は、沖合で発生した津波エネルギーを一点に集中させる「ファンネル効果」を生む。
防災DBの解析では、津波・高潮のリスクメッシュは32,452メッシュ(約508km²)に達し、最大浸水深10m以上を記録するメッシュが存在する。令和5年3月31日には大分県が佐伯市に対して津波災害警戒区域を指定しており、1946年南海地震の記憶と合わせて津波避難は最重要課題の一つだ。
浸水深10mは3階建て建物が完全に水没する高さ。沿岸集落では早期かつ垂直避難が不可欠だ。
土砂災害リスク
急峻な山地が抱える10万超のハザードメッシュ
大分県最大の面積を誇る佐伯市の市域の大部分は山地だ。急傾斜地の宅地や山間集落が多く、土砂災害警戒区域・特別警戒区域の数は大分県内でも上位に入る。防災DBの125mメッシュ解析では103,808メッシュ(約1,622km²)が土砂災害ハザード区域として把握されている。
台風や集中豪雨時は洪水と土砂災害が同時発生するケースが多く、2020年7月豪雨・台風10号もこのパターンだった。避難勧告が出た際は「河川が近い」「急傾斜地の近く」どちらの条件に当てはまっても、速やかな避難行動が求められる。
地震リスク
震度6弱以上の確率:最大78.67%
防災DBの地震確率データ(2024年時点)によると、今後30年以内に震度6弱以上の揺れを受ける確率は市域の平均で9.28%、最大地点では78.67%に達する。
| 指標 | 30年確率 |
|---|---|
| 震度5弱以上(平均) | 76.93% |
| 震度5弱以上(最大) | 99.45% |
| 震度6弱以上(平均) | 9.28% |
| 震度6弱以上(最大) | 78.67% |
震度5弱以上の確率が平均76.93%という数値は、「今後30年のうちに高い確率で震度5弱以上の揺れを経験する」ことを示す。
近隣の活断層
防災DBの断層データでは、佐伯市周辺に影響する活断層として日向峠-小笠木峠断層帯が確認されている(想定M6.7、30年発生確率0.1%)。ただし佐伯市の地震リスクは内陸断層よりも日向灘・南海トラフの海底地震がより支配的であり、1996〜2002年に繰り返した日向灘地震の系列と南海トラフ巨大地震への備えが優先課題だ。
南海トラフ巨大地震が発生した場合、佐伯市では強い地震動と大津波が同時に来襲する。1946年南海地震の教訓は、揺れが収まった直後に沿岸部からの避難を開始することの重要性を示している。
主な避難施設
佐伯市内には556か所の避難施設が整備されている(防災DB・国土数値情報より)。以下は代表的な施設の一部だ。
| 施設名 | 住所 | 種別 |
|---|---|---|
| 上堅田小学校体育館 | 佐伯市大字長谷9118 | 一次・二次避難所 |
| 上浦振興局 | 佐伯市上浦大字津井浦1400-3 | 一次・二次・公的避難所 |
| ふれあいセンターうめ | 佐伯市宇目大字小野市 | 一次・二次・公的避難所 |
| 上堅田地区公民館 | 佐伯市大字長谷9682番地11 | 一次・二次・公的避難所 |
| 上浦保健センター | 佐伯市上浦大字浅海井浦489-10 | 一次・二次避難所 |
沿岸部に住む場合、平常時から「高台への避難ルート」と「最寄りの津波避難場所」を確認しておくことが欠かせない。
→ 佐伯市公式 ハザードマップ一覧で最新の避難所・浸水区域を必ず確認すること。
今からできる備え
公式防災情報を入手する
- 佐伯市防災ポータル: https://www.city.saiki.oita.jp/bousai/
- 洪水ハザードマップ: https://www.city.saiki.oita.jp/bousai/list00718.html
- 津波ハザードマップ: https://www.city.saiki.oita.jp/bousai/list00717.html
- 土砂災害ハザードマップ: https://www.city.saiki.oita.jp/bousai/list00719.html
- 国土交通省わがまちハザードマップ(佐伯市): https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/index.html?citycode=44212
- 番匠川防災情報(国交省佐伯河川国道事務所): http://www.qsr.mlit.go.jp/saiki/banjoubousai/index.html
最低限の備え
- ハザードマップで自宅の浸水深・土砂災害リスクを確認する — 「佐伯市洪水ハザードマップ」で番匠川・主要河川の想定浸水区域を確認
- 津波避難場所と避難ルートを家族で確認する — 沿岸在住・勤務の方は複数のルートを想定
- 南海トラフ地震臨時情報の意味を知る — 「調査中」「巨大地震注意」「巨大地震警戒」の違いを事前に理解しておく
- 非常用持出品の点検 — 7日分の水・食料、医薬品、充電器
防災DBで詳細リスクを確認する
防災DB(bousaidb.jp)では、佐伯市内の任意の地点について125mメッシュ単位の洪水・津波・地震・土砂災害リスクを無料で確認できる。転居先の選択、BCP策定、不動産購入の判断材料として活用いただきたい。
データ出典
| データ | 出典 | 時点 |
|---|---|---|
| 統合リスクスコア、洪水・津波・地震・土砂災害メッシュ | 防災DB(bousaidb.jp) | 2024年時点 |
| 過去の災害記録 | 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース | 2024年時点 |
| 洪水浸水想定区域 | 国土交通省九州地方整備局佐伯河川国道事務所 | 最新版 |
| 津波・洪水・土砂ハザードマップ | 佐伯市防災サイト | 最新版 |
| 地震確率(地震動予測地図) | 防災科学技術研究所 全国地震動予測地図2024年版 | 2024年 |
| 活断層データ | 防災DB断層マスタ(地震調査委員会評価を元に整備) | 2024年時点 |
| 避難施設データ | 国土数値情報 避難施設データ(nlftp_p20) | 公開版 |
| 津波災害警戒区域指定 | 大分県 | 2023年3月31日 |
本記事は防災DB編集部が公的データに基づき作成しています。最新の避難情報・警戒情報は必ず自治体や気象庁の公式情報をご確認ください。誤りや最新情報のご提供は防災DB(bousaidb.jp)よりお寄せください。
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