西都市の災害リスク完全ガイド|一ツ瀬川流域の水害と複合リスクの実態

西都市は、宮崎県のほぼ中央に位置し、「花の都」として知られる歴史ある城下町です。しかし、その美しい景観の裏には深刻な災害リスクが潜んでいます。防災DBの解析では、西都市の統合リスクスコアは89点(100点満点・リスクレベル「極めて高い」)——九州・沖縄エリアでも最上位クラスの危険度です。

一ツ瀬川の氾濫では最大浸水深20メートルという想定が示されており、津波・高潮・土砂災害・地震のすべてのリスクが「高い」水準にあります。過去には1963年(昭和38年)に死者3名・床上浸水448棟・床下浸水3,088棟という大規模被害を記録し、2005年の台風14号でも255棟の半壊被害が生じています。

この記事では、防災DBの125mメッシュ解析データと公的機関の記録をもとに、西都市の災害リスクの全体像と、いま住民が取るべき行動を解説します。


西都市はなぜ水害に弱いのか——地形と河川の構造

西都市の地形を理解することが、リスク把握の出発点になります。市域の中央を一ツ瀬川が東西に貫通し、三財川・三納川などの支流が合流しながら日向灘へ注いでいます。市街地の多くは、これらの河川が侵食してできた沖積平野と洪積台地の境界付近に広がっており、台地上は比較的安全ながら、平野部は繰り返し水害に見舞われてきた地域です。

一ツ瀬川は九州山地を源流とする二級河川で、上流域の山地に台風や前線が停滞すると短時間で大量の雨水が集中します。河川の勾配が急で、降雨から増水までの時間が短い——これが西都市における洪水リスクを高める根本的な地形的要因です。

防災DBの分析では、一ツ瀬川の想定最大浸水深は20メートルに達します。これは3階建て建物の屋根付近まで水没する深さです。こうした極端な浸水想定が生じる背景には、この急峻な集水構造があります。


過去の主要災害と年表

西都市(旧・妻町・都於郡町・三財町・三納村・東米良村)では、江戸時代から現代にかけて台風・豪雨・地震によって繰り返し大きな被害が生じてきました。NIEDの防災科学技術研究所データベースには63件の災害記録があります(1963年以降)。

最大被害:昭和38年(1963年)の豪雪・豪雨災害

1963年2月11日(昭和38年)は、西都市の記録史上で最大規模の被害を記録しています。このときの災害は死者3名、床上浸水448棟、床下浸水3,088棟、全壊28棟、半壊19棟、一部損壊20棟に及びました。

この時期は全国的な38豪雪(サンパチ豪雪)と同時期にあたり、九州南部では大雨・洪水が重なりました。3,088棟という床下浸水数は、当時の妻町全域の半数以上の家屋が被害を受けた規模と推定されます。一ツ瀬川の流量が一気に増大し、三財川・三納川の合流点付近での氾濫が市街地全体に波及したものとみられています。

平成17年(2005年)台風第14号——現代最大の被害

2005年9月5日から7日にかけて上陸した台風14号(アジア名「ナービー」)は、宮崎県に総雨量1,000mmを超える記録的な降水をもたらしました。南郷村(現・美郷町)の神門観測点では最大1,322mmを記録しています。

西都市では死者1名、床上浸水150棟、床下浸水286棟、全壊4棟、半壊255棟の被害が生じました。一ツ瀬川の支流・三財川と三納川で計7箇所・延長約800メートルにわたる堤防の越流・決壊が発生し、三財地区・三納地区を中心に広範囲が浸水しました。自衛隊による給水支援要請が行われるほどのライフライン被害でもありました。

昭和46年(1971年)・昭和57年(1982年)の水害

1971年8月4日の水害では死者3名、1982年8月には死者2名の被害記録があります。いずれも台風・梅雨前線による洪水で、一ツ瀬川・大淀川流域での被害が中心です。1966年8月にも床上浸水242棟・床下浸水763棟という記録が残っています。

西都市 過去の主要災害年表

年月 災害名 死者 床上浸水 床下浸水 全壊 半壊
1963年2月 豪雨・洪水 3名 448棟 3,088棟 28棟 19棟
1966年8月 豪雨 242棟 763棟 2棟 3棟
1971年8月 台風・豪雨 3名 1棟
1970年8月 台風・豪雨 2名
1982年8月 豪雨 2名 6棟
1997年9月 台風第19号 17棟 18棟
2004年8月 台風第16号 17棟 31棟
2005年9月 台風第14号 1名 150棟 286棟 4棟 255棟
2020年7月 令和2年7月豪雨

※NIEDデータベース(防災科学技術研究所)による。一部データは自治体防災計画資料に基づく。

60年以上の記録を通じて、西都市では死者が繰り返し出ていることが分かります。これは単なる「過去の出来事」ではなく、現在も同じ地形・同じ河川が存在しているという意味で、今後の被害リスクと直結しています。


洪水・浸水リスク——一ツ瀬川の衝撃的な浸水想定

防災DBの125mメッシュ解析で得られた西都市内の洪水リスクデータを見ると、リスクの大きさが明確になります。

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
一ツ瀬川 3,596メッシュ 20.0m 2.44m 72時間
大淀川 901メッシュ 10.0m 2.13m 72時間
小丸川 359メッシュ 5.0m 1.16m 72時間
石崎川 214メッシュ 5.0m 1.24m 72時間
本庄川 56メッシュ 3.0m 0.59m 72時間
深年川 55メッシュ 5.0m 1.54m 72時間
綾北川 49メッシュ 5.0m 1.26m 72時間

一ツ瀬川の最大浸水深20メートルという数値は一見すると非現実的に感じられますが、これは国土交通省の「想定最大規模」(数千年に一度レベル)の降水量を想定した場合の値です。平均浸水深が2.44メートルという点も見逃せません。2.44メートルは2階床上まで浸水する深さで、1階にいれば命の危険があります。

浸水深の目安として:
- 0.5m以下:子どもは歩行困難
- 1.0m:大人でも歩行困難・自動車水没
- 2.0m:1階天井付近
- 3.0m:2階床付近
- 5.0m:2階天井付近

西都市の市街地(妻地区)は一ツ瀬川・石崎川・三財川に囲まれており、複数方向から浸水が進む可能性があります。早期避難が生死を分けます。


土砂災害リスク——市域の61,749メッシュが危険域

西都市は宮崎県でも有数の土砂災害リスクを抱えています。防災DBの125mメッシュ解析では、市内に61,749メッシュ(約96平方キロメートル)が土砂災害影響域に含まれています。市の総面積が438平方キロメートルであることを考えると、市域の約22%が土砂災害リスクエリアということになります。

市域の西側・北側は九州山地の山間部が広がり、急傾斜地崩壊危険箇所や土石流危険渓流が多数分布しています。土砂災害警戒区域数は54か所(防災DBデータ)で、東米良地区・三納地区・都於郡地区の山間部が特に高リスクです。

2005年台風14号の際は、宮崎県内全域で土石流・地すべりが多発しました。急峻な山地を上流に持つ西都市でも、支流の谷部での土砂流入が複数発生しています。台風・集中豪雨の際は河川の氾濫と土砂災害が同時多発する点が、西都市の水害対応を難しくしています。


地震リスク——震度6弱以上が64%の地域も

西都市の地震リスクは、宮崎県内でも高い水準です。防災DBのメッシュ別地震確率データによると:

  • 震度6弱以上30年確率:市内平均10.3%、最大部分では64.5%
  • 震度5弱以上30年確率:市内平均76.6%、最大部分では99.7%

震度5弱以上の揺れが30年以内にほぼ確実(99.7%)に来る地域が存在するということです。これは南海トラフ地震の影響が主な要因です。

市内には日向峠-小笠木峠断層帯(想定マグニチュード6.7、30年発生確率0.1%)が存在します。発生確率は低めですが、直下型地震は揺れが局所的に強く、建物被害・土砂崩れ誘発の危険があります。

地盤の平均S波速度(Avs30)は514.7m/s(市内平均)と比較的硬い地盤ですが、沖積平野部では軟弱地盤が分布しており、液状化スコアは40(低〜中程度)。河川沿いの低地では揺れの増幅と液状化に注意が必要です。


津波・高潮リスク——日向灘に面した沿岸部の脅威

西都市の沿岸部(南東部)は日向灘に面しており、津波・高潮リスクが非常に高い地域です。

  • 津波スコア:100(最高値)
  • 津波想定最大浸水深:10.0m
  • 高潮スコア:100(最高値)
  • 沿岸影響メッシュ数:5,166メッシュ

南海トラフ巨大地震では、宮崎県沿岸に最大10m以上の津波が到達すると想定されています。西都市の南東部・一ツ瀬川河口付近は津波遡上の影響を受けやすく、川沿いに内陸深くまで浸水が進む可能性があります。

津波発生時は揺れを感じたら即座に高台へ避難することが原則です。「揺れが収まってから」「家族を集めてから」では遅い——津波到達まで数分〜十数分しかない場合があります。


避難施設一覧

西都市内には市が指定する避難場所が67か所あります(防災DBデータ)。主な施設を以下に示します。

施設名 住所 種別
コミュニティセンター 西都市聖陵町2丁目26 避難場所
妻中学校 西都市大字右松2534 避難場所
妻北小学校 西都市大字右松2688 避難場所
妻南小学校 西都市大字三宅166 避難場所
妻高等学校 西都市大字右松2330 避難場所
三納中学校 西都市大字三納3256 避難場所
三納小学校 西都市大字三納3231-5 避難場所
三財中学校 西都市大字下三財8242 避難場所
三財小学校 西都市大字下三財8195 避難場所
勤労青少年ホーム 西都市大字右松2534-1 避難場所

避難場所に指定されている施設でも、洪水浸水想定区域内にある場合は浸水時に使えないケースがあります。事前に西都市の防災マップで、自宅周辺の避難場所が浸水区域外かどうか確認することが必須です。


今からできる備え

1. ハザードマップで自宅のリスクを確認する

西都市は地区ごとに詳細な防災マップを作成しています。自宅が洪水浸水想定区域・土砂災害警戒区域・津波浸水想定区域のどこに位置するかを確認してください。

西都市公式防災情報ページ
https://www.city.saito.lg.jp/kurashi/0111_1703310000000001.html

西都市防災マップ(地区別ハザードマップ)
https://www.city.saito.lg.jp/kurashi/0111_1703310000000026.html

2. 早期避難を徹底する

西都市の水害の特徴は「増水が速い」こと。一ツ瀬川上流域に大雨が降っているとき、西都市市街地ではまだ晴れていることがあります。気象警報・避難指示が出たら「まだ大丈夫」と思わず、即座に避難所へ移動することが命を守ります。

3. 7日分の備蓄を用意する

2005年台風14号では、自衛隊による給水支援が必要なほどのライフライン被害が発生しました。飲料水(1人1日3リットル)、食料、医薬品の7日分備蓄を目安としてください。

4. 防災DBで自宅のリスクを数値で確認する

防災DB(bousaidb.jp)では、住所を入力するだけで125mメッシュ単位の洪水・地震・津波リスクを確認できます。引越し検討時や、子どもに「なぜ避難が必要か」を説明する際にも活用できます。


データ出典

項目 出典
統合リスクスコア・洪水浸水・津波・地震確率 防災DB(bousaidb.jp)125mメッシュ解析データ(2024年版)
過去の災害事例・被害数 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース
西都市の地形・河川特性 国土地理院、一ツ瀬川(Wikipedia)
平成17年台風第14号の被害 消防庁被害報告、国土交通省九州地方整備局、土木学会調査報告(2005年11月)
活断層データ 産業技術総合研究所 活断層データベース(防災DB収録)
地震確率 J-SHIS(地震ハザードステーション)2024年版確率論的地震動予測地図
避難場所データ 国土交通省 国土数値情報 避難施設データ(nlftp_p20)
西都市防災情報・ハザードマップ 西都市公式ウェブサイト

本記事は防災DB編集部が作成しました。データの誤り・更新情報のご指摘は防災DB(bousaidb.jp)のフィードバックフォームからお寄せください。

著者:防災DB編集部
最終更新:2026年4月
データ基準日:2024年(リスクスコア)、2026年4月(記事公開)