新ひだか町の災害リスクと過去の災害年表|洪水・津波・地震すべてが最高レベル

北海道日高郡新ひだか町は、静内川・新冠川・三石川など多数の一級・二級河川が日高山脈から太平洋へと流れ込む地形に立地する。防災DB(bousaidb.jp)が算出した統合リスクスコアは81点(リスクレベル:極めて高い)。洪水・津波・地震の3分野で満点スコア(100点)を記録した数少ない市区町村のひとつだ。

過去に記録された災害は211件(新ひだか町地域防災計画より)。1958年の狩野川台風では死者19名、2003年の十勝沖地震では負傷71名・全壊38棟と、規模の大きな被害が繰り返されてきた。これからこの町に住む人、すでに住んでいる人が知っておくべき災害リスクの全体像をデータとともに示す。


新ひだか町の災害リスクの特徴

3つのリスクが同時に最高レベル

防災DBの125mメッシュ解析によると、新ひだか町の各リスクスコアは以下のとおりだ。

リスク区分 スコア 評価
洪水 100 / 100 最高レベル
津波 100 / 100 最高レベル
地震 100 / 100 最高レベル
液状化 60 / 100 高い
土砂災害 50 / 100 中程度
高潮 0 / 100 低い
統合スコア 81 / 100 極めて高い

洪水・津波・地震の3つすべてで満点となるのは、全国的にも限られた自治体に留まる。これは「特定のリスクが高い」という話ではなく、複数の種類の自然災害が重なって発生しうる複合リスク地域であることを意味している。

地形が生み出す構造的な脆弱性

新ひだか町は東に日高山脈、南に太平洋という典型的な「山岳→河川→沿岸」の地形構造を持つ。町面積の約8割は森林で占められ、そこから複数の河川が急勾配で太平洋へと注ぐ。

静内川は日高山脈のカムイエクウチカウシ山方面を源流とし、高見ダム・静内ダム・双川ダムを経て旧静内町(現新ひだか町静内地区)の市街地を貫流する。市街地の多くがこの静内川の河口近くの沖積低地に形成されており、大雨のたびに洪水リスクにさらされる構造は今も変わっていない。


過去の主要災害

1958年9月29日 — 狩野川台風(死者19名)

新ひだか町(当時の静内町・三石町)における近代最大の気象災害だ。台風に伴う豪雨が日高地方を直撃し、静内川・三石川などの河川が一斉に氾濫。死者19名、負傷4名、住家全壊8棟、半壊1棟という被害が記録された(新ひだか町地域防災計画・資料5)。

「狩野川台風」といえば神奈川県・静岡県での大規模洪水(死者・行方不明者1,200名超)として知られるが、北海道日高地方でも深刻な被害が発生していたことは見逃せない。同年8月18日にも別の豪雨で床上97棟・床下135棟の浸水被害が生じており、1958年は単年で複数回の大水害に見舞われた年でもあった。

1952年3月4日 — 十勝沖地震(死者2名・全壊20棟)

昭和27年(1952年)3月4日に発生したマグニチュード8.2の十勝沖地震。新ひだか町地域では死者2名、負傷20名、住家全壊20棟、半壊599棟の被害が出た。半壊599棟という数字は、地域の住宅の相当数が被害を受けたことを示している。

この地震は津波も発生させており、太平洋沿岸の日高地方では津波被害も加わった。

1982年3月21日 — 浦河沖地震(負傷者64名)

昭和57年の浦河沖地震(M7.1)は、震源が日高地方の目前に位置した直下型に近い地震だった。新ひだか町地域では2つの集計合計で負傷64名、全壊6棟、半壊478棟の甚大な被害が記録された。

浦河沖地震は北海道での活断層型地震として地震学的にも注目され、日高地方の地震リスクを改めて認識させた出来事でもある。

2003年9月26日 — 平成15年十勝沖地震(負傷71名・全壊38棟)

平成15年(2003年)9月26日の十勝沖地震(M8.0)では、新ひだか町地域で負傷71名、全壊38棟、半壊16棟、一部損壊290棟の被害が発生した。この地震は津波も発生させており、沿岸部では避難も行われた。

同年8月9日には台風第10号による水害(床上26棟・床下133棟・河川被害78件)もあり、2003年は風水害と地震が同年に重なった稀な年だった。

近年の水害(2000〜2009年)

年月日 種別 主な被害
2003年8月9日 台風第10号 床上26棟・床下133棟・河川78件
2001年8月23日 台風第11号 河川14件
2000年5月15日 豪雨 死者1名・全壊1棟・河川18件
1998年5月2日 洪水 河川17件
1997年11月26日 豪雨 河川17件
1995年8月8日 豪雨 河川61件

1995年の豪雨では河川被害が61件に上った。近年も5〜9月の豪雨・台風シーズンになると複数の河川で被害が生じており、風水害は毎年のリスクと考えるべき状況だ。


洪水・浸水リスク — なぜ新ひだか町は水害に強くないのか

15本の河川が町内を流れる

防災DBの125mメッシュ洪水浸水想定データでは、新ひだか町内に15本の河川の洪水リスクエリアが確認されている。

河川名 浸水リスク区域数 最大想定浸水深 平均浸水深 継続時間(最大)
ケリマイ川 1,693メッシュ 5.0m 1.1m データなし
新冠川 1,518メッシュ 10.0m 5.6m 336時間(14日間)
元浦川 1,311メッシュ 5.0m 1.1m データなし
静内川 1,157メッシュ 3.0m 0.6m 72時間
三石川 927メッシュ 3.0m 1.2m データなし
厚別川 554メッシュ 10.0m 2.9m 72時間
日高目名川 521メッシュ 3.0m 0.4m 72時間
捫別川 489メッシュ 3.0m 1.2m データなし
その他7河川 〜360メッシュ 最大5.0m

特筆すべきは新冠川の平均浸水深5.6m・継続時間336時間(14日間)という数値だ。これは「3日で水が引く」ような水害とは質が異なる。2週間にわたる浸水が想定される地域では、避難が長期化し、建物や農地への被害も格段に大きくなる。

浸水深の具体的なイメージ

  • 0.5m未満: 床下浸水(壁や電気系統への被害)
  • 1.0m: 膝〜腰の高さ。歩行が困難になり始める
  • 3.0m: 1階の天井まで浸水。2階への避難が必須
  • 5.0m: 2階の床(約4〜5m)まで浸水。屋根上への避難が必要
  • 10.0m: 3階建て建物の屋上付近まで浸水。命に関わるレベル

新冠川で最大浸水深10mが想定されるエリアでは、早めの広域避難が唯一の生存手段となる。


地震リスク — 「十勝沖」「浦河沖」が繰り返す地震地帯

30年以内の震度6弱以上確率

防災DBの125mメッシュ地震確率データ(J-SHIS 2024年版)によれば、新ひだか町における震度6弱以上の30年確率は次のとおりだ。

  • 平均確率: 15.9%
  • 最大確率: 73.8%(特定の地点)

最大値73.8%という数字は「これからの30年間で、7割以上の確率で震度6弱以上の揺れが来る」ことを意味する地点が存在することを示している。これは全国的にみても高いリスク水準だ。

また震度5弱以上では最大確率が100%に達しており、「強い揺れが来ないかもしれない」という楽観は成立しない。

繰り返す十勝沖・浦河沖地震

過去の記録からも明らかなとおり、新ひだか町は10〜50年に1回程度、「十勝沖」か「浦河沖」の大型地震に見舞われている。

発生年 地震名 主な被害
1952年 十勝沖地震(M8.2) 死者2名・全壊20棟・半壊599棟
1968年 十勝沖地震(M7.9) 記録あり
1970年 地震 全壊5棟・半壊58棟
1982年 浦河沖地震(M7.1) 負傷64名・全壊6棟・半壊478棟
2003年 十勝沖地震(M8.0) 負傷71名・全壊38棟・半壊16棟
2008年 地震 記録あり

地震のたびに半壊・全壊が出ており、「耐震化の遅れた建物はリスクが高い」という教訓は何度も繰り返されている。


津波リスク — 太平洋に面した沿岸部の脆弱性

新ひだか町の太平洋沿岸部には、防災DBの解析で5,264メッシュ(約125m四方換算)にわたる津波・高潮浸水想定区域が広がっている。津波スコア100点、最大想定浸水深10mという数値は、2011年の東日本大震災に匹敵する規模の津波が到達した場合の想定値だ。

1952年の十勝沖地震では津波が発生し、日高沿岸でも浸水が記録されている。2003年の十勝沖地震でも津波警報が発令され、沿岸住民の避難が行われた。

海沿いや河口近くに住む場合は、強い揺れを感じたら揺れが収まるのを待たず、すぐに高台への避難を開始することが生命線となる。


土砂災害リスク

防災DBの125mメッシュ土砂災害データでは、新ひだか町内に184メッシュの土砂災害リスク区域が確認されている。土砂災害スコア50点・ハザード区域3件という数値は、町の大部分が平地・丘陵地帯であるため洪水・津波ほどの広域リスクではないが、山地・急傾斜地に近い地区では警戒が必要だ。


避難施設一覧

新ひだか町内には93か所の指定避難所が設置されている(国土数値情報より)。主要な施設は以下のとおりだ。

静内地区(旧静内町)

施設名 住所
新ひだか町体育館 静内古川町1丁目1番3号
新ひだか町公民館 静内古川町1丁目1番2号
山手体育館 静内山手町2丁目9番1号
山手小学校 静内山手町5丁目16-1
新ひだか女性センター「みらい」 静内青柳町2丁目2番1号
旧NTT静内営業所 静内本町2丁目
こうせい児童館 静内こうせい町2丁目8-14

三石地区(旧三石町)

施設名 住所
みついしふれあいプラザ 三石本町59番地の1
三石スポーツセンター 三石東蓬莱12番地の30
三石中学校 三石旭町96-1
三石小学校 三石本町222-1
新ひだか町福祉センター 三石本町210番地

注意: 新ひだか町の指定避難所には「広域避難場所」に分類された施設が現時点ではゼロとなっている(国土数値情報2024年版)。大規模災害時には、自治体が開設する臨時避難所の情報を町の公式サイトやハザードマップで必ず確認すること。


今からできる備え

公式ハザードマップの確認(最優先)

新ひだか町が提供しているハザードマップには、洪水浸水想定区域・津波避難マップ・土砂災害警戒区域が色別で示されている。自宅や職場の位置を地図上で確認し、避難経路を家族で共有しておくことが第一歩だ。

地震への備え

  • 築年数の古い建物は耐震診断・改修の検討を(1982年浦河沖地震では木造住宅に大きな被害)
  • 家具の固定と転倒防止(十勝沖地震でも多くの負傷が家具転倒によるもの)
  • 非常用持ち出し袋の準備(水・食料を最低3日分、できれば1週間分)

水害・津波への備え

  • 新冠川・静内川などの洪水リスクエリアでは「大雨特別警報」「氾濫危険情報」が出る前に自主避難の決断を
  • 太平洋沿岸や河口近くの場合は、強い揺れ(震度4以上)を感じたら津波を想定して即座に高台へ
  • 避難時の移動手段(車・徒歩)と最短ルートを事前にシミュレーション

データを活用した防災

防災DB(bousaidb.jp)では、新ひだか町を含む全国の125mメッシュ単位の浸水深・地震確率・地盤データを無料で参照できる。BCP策定・保険判断・不動産購入の際にも活用してほしい。


新ひだか町の主要災害年表

月日 種別 主な被害
1919 9月23日 風水害 死者1名
1920 8月19日 風水害 死者1名
1932 8月 風水害 死者1名・負傷1名
1952 3月4日 十勝沖地震 死者2名・負傷20名・全壊20棟・半壊599棟
1955 7月4日 豪雨 死者1名・負傷13名・床上243棟・床下559棟
1958 8月18日 豪雨 床上97棟・床下135棟
1958 9月29日 狩野川台風 死者19名・負傷4名・全壊8棟
1961 7月24日 豪雨 床上88棟・床下41棟・河川11件
1970 1月21日 地震 全壊5棟・半壊58棟
1971 9月12日 豪雨 死者1名・床上5棟・床下8棟
1972 台風 全壊計4棟・半壊計60棟
1981 8月5日 北海道豪雨 床上51棟・床下155棟
1981 8月23日 台風第15号 全壊13棟・半壊6棟
1982 3月21日 浦河沖地震 負傷64名・全壊6棟・半壊478棟
1992 8月9日 台風第10号 河川15件
1995 8月8日 豪雨 河川61件
1997 8月9日 豪雨 河川13件
1997 11月26日 豪雨 河川17件
1998 5月2日 洪水 河川17件
2000 5月15日 豪雨 死者1名・全壊1棟・河川18件
2001 8月23日 台風第11号 河川14件
2003 8月9日 台風第10号 床上26棟・床下133棟・河川78件
2003 9月26日 十勝沖地震 負傷71名・全壊38棟・半壊16棟・一部損壊290棟
2008 8月2日 豪雨 河川19件
2009 1月25日 風雪 半壊1棟・一部損壊3棟

(出典:新ひだか町地域防災計画 資料5 災害記録)


データ出典

データ 出典
統合リスクスコア・洪水浸水想定・津波浸水想定 防災DB(bousaidb.jp) — 国土交通省ハザードマップポータルの洪水浸水想定区域・津波浸水想定区域に基づく125mメッシュ集計
地震30年確率・地盤データ 防災DB — J-SHIS地震ハザードステーション(2024年版)に基づく125mメッシュ集計
土砂災害リスクメッシュ 防災DB — 国土交通省・都道府県が指定する土砂災害警戒区域に基づく集計
過去の災害事例 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース → 新ひだか町地域防災計画 資料5 災害記録
避難施設情報 国土数値情報(避難施設データ、2024年)
地形・河川情報 Wikipedia「静内川」「新ひだか町」、地理院タイル
公式防災情報 北海道新ひだか町公式ウェブサイト(shinhidaka-hokkaido.jp)

著者: 防災DB編集部
最終更新: 2026年4月
注意: 本記事のデータは掲載時点の公開データに基づきます。最新の洪水・津波浸水想定区域は自治体ハザードマップで必ずご確認ください。