新富町の災害リスクと防災情報|宮崎県児湯郡の水害・地震・津波対策

著者: 防災DB編集部 | 最終更新: 2026年4月


新富町は「災害リスク極めて高い」町 — まず知るべき5つの事実

宮崎県児湯郡新富町。日向灘に面したこの沿岸農業の町は、防災DBの125mメッシュ解析による統合リスクスコアが87点(極めて高い)を記録している。全国1,700超の市区町村の中でも最上位グループに位置する数値だ。

リスクを端的に言えば、この町には「満点(スコア100)」が4つある。洪水・津波・高潮・地震、いずれも100点。つまり、想定しうる主要な自然災害のほぼ全てにおいて、国内最高水準のリスクにさらされているということだ。

まず知っておくべき5つの事実を挙げる。

  1. 一ツ瀬川が氾濫した場合、想定最大浸水深は20メートルに達する区域がある
  2. 日向灘地震(南海トラフ連動含む)による津波浸水想定深は最大10メートル以上
  3. 震度5弱以上の30年発生確率は最大99.77%(平均71.94%)
  4. 土砂災害警戒区域・特別警戒区域が町内に54か所存在する
  5. 高潮リスクも100点満点 — 台風接近時は複合災害の危険がある

この記事では、防災DBが収集・分析した公的データをもとに、新富町の災害リスクを包括的に解説する。「自分が住む地域の正確なリスク」を把握し、具体的な備えに繋げてほしい。


この町の地形が生む複合リスク

新富町は宮崎県の沿岸中部、児湯郡(こゆぐん)に属する。東は日向灘(太平洋)に直接接し、西から東へ流れる一ツ瀬川が町の南部を貫流して海に注ぐ。北側では小丸川(こまるがわ)が隣接する高鍋町・川南町方面を流れており、両河川に挟まれた低地に集落・農地が広がる地形だ。

地形的な特徴は「広大な沖積低地と長い海岸線の組み合わせ」にある。町の大部分を占める沖積低地は、長年にわたる河川の堆積物が積み重なった地盤であり、軟弱な地質が地震動を増幅させる。防災DBの125mメッシュ解析では、町域の平均地盤S波速度(Avs30)が518.5 m/sと計測されており、硬質な岩盤(Avs30 = 600〜800 m/s)と比べて揺れやすい地盤であることがわかる。

海岸線から内陸にかけて標高が低く、以下の3種類のリスクが「同時に」作用する地形だ。

  • 河川氾濫による浸水(一ツ瀬川・小丸川)
  • 日向灘からの津波遡上・高潮浸水
  • 台風時の強雨による土砂災害

この地形条件の組み合わせが、統合リスクスコア87点という数値の直接の背景にある。


洪水リスク — なぜ一ツ瀬川は「20メートル」を超えるのか

一ツ瀬川:宮崎屈指の大河川

一ツ瀬川は宮崎県西臼杵郡に源を発し、九州山地を横断して宮崎平野を東流、新富町南部で日向灘に合流する全長73kmの一級河川だ。流域面積は1,050km²超、九州でも有数の大河川のひとつである。源流から河口まで標高差が大きく、上流の大雨が急激に下流へ到達するため、台風や集中豪雨時に急激な水位上昇が起きやすい構造を持つ。

防災DBの洪水浸水解析によれば、一ツ瀬川の氾濫想定区域は3,946メッシュ(125mメッシュ換算で約61km²)に達し、想定最大浸水深は20メートルに及ぶ。「20メートル」は1,000年に一度規模の極端な想定だが、現実的な範囲である数十年〜百年規模の洪水でも、河口低地部では5m以上の浸水が発生する。

浸水深と実際の高さの対応を示す。

浸水深 建物・人体への影響
0.5m未満 膝下程度。歩行は困難になる場合がある
0.5〜1.0m 大人の腰〜胸。車の走行が不可能になる
1.0〜2.0m 1階がほぼ水没。2階への避難が必要
2.0〜5.0m 2階床上まで浸水。建物倒壊リスク増大
5.0m以上 2階天井以上。木造建物の倒壊が起きやすい

一ツ瀬川の河口低地に広がる新富町市街地は、想定規模によっては1〜5m超の浸水域が広がると予測される。これは「2階に逃げても助からない可能性がある」水位であり、早期避難が不可欠だ。

小丸川:北部を覆う追加リスク

町の北側に近接する小丸川も、防災DB解析で最大浸水深20メートルを記録している(影響メッシュ数1,425、平均浸水深2.39m)。小丸川の洪水は高鍋町・川南町方面に最も強く影響するが、新富町北部の一部地区が氾濫域に含まれる可能性がある。

さらに、防災DBのデータには大淀川(6,166メッシュ、最大10m)も登録されているが、これは同一の広域bboxに含まれる宮崎市方面のデータであり、新富町への直接の影響は限定的だ。

台風と洪水の複合災害

宮崎県は年間を通じて台風が接近・上陸する頻度が高く、一ツ瀬川流域の大雨と日向灘からの高潮が「同時発生」する複合災害リスクが存在する。河川水位の上昇中に高潮が加わると、河口からの逆流(背水)で浸水域が大幅に拡大する。これが高潮スコアが100点を示す主な理由の一つだ。


地震リスク — 日向灘は「いつ大地震が起きてもおかしくない」海域

日向灘:南海トラフとフィリピン海プレートの境界

新富町が面する日向灘は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む南海トラフの東端付近に位置する。このプレート境界では過去から繰り返し大地震が発生しており、地震調査研究推進本部(地震本部)も「日向灘での将来の大地震発生可能性」を継続的に評価している。

2024年8月8日、マグニチュード7.1の日向灘地震が発生した(最大震度6弱)。この地震は気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発令するきっかけとなり、宮崎県全域で津波注意報が出された。同地震による被害は相対的に軽微だったが、M8〜9規模の「本番」の地震がいつ来てもおかしくない状況であることを、改めて全国に示した事例だ(出典:国土交通省 被害状況等について、2024年8月)。

歴史的には、1662年(寛文2年)の日向灘地震(推定M7.6)が宮崎・鹿児島の沿岸を津波で直撃し、多数の死者と家屋流失が記録されている(出典:東北大学 災害科学国際研究所)。また2025年1月13日にも日向灘を震源とするM6.9の地震が発生(最大震度5弱)、宮崎県沿岸部に津波注意報が出されるなど、日向灘での地震活動は現在も活発だ(出典:気象庁、2025年1月)。

防災DBの地震確率データ(新富町エリア)

防災DBの125mメッシュ解析(J-SHIS 2024年版)による新富町エリアの地震発生確率は以下の通りだ。

指標 平均値 最大値
震度6弱以上(30年確率) 9.15% 70.95%
震度5弱以上(30年確率) 71.94% 99.77%
地盤S波速度(Avs30) 518.5 m/s

特筆すべきは最大値だ。町内の一部メッシュでは、30年以内に震度6弱以上の揺れが到達する確率が70.95%に達する。これは「今後30年間で大きな揺れが来る可能性が7割超」を意味し、日本の主要都市の中でも高い水準だ。また震度5弱以上では平均71.94%、最大99.77%という数字は、町内のほとんどの場所で30年以内に一度は震度5弱以上の揺れを経験することを示唆している。

近隣の活断層

陸域の活断層として、防災DBに登録された断層のうち、新富町周辺に影響するものを以下に示す。

断層名 想定マグニチュード 30年発生確率
日南湖断層 M6.4 1.23%
日向峠-小笠木峠断層帯 M6.7 0.10%

これらは海域の日向灘(プレート境界)と比較すると発生確率は低いが、陸域直下型の地震が起きた場合は震源に近い分、揺れが特に大きくなりやすい。M6〜7クラスの直下型地震は、木造住宅に甚大な被害を与える可能性がある。


津波・高潮リスク — 「揺れたらすぐ高台へ」が命を救う

想定浸水深:最大10メートル以上

防災DBの津波・高潮データによれば、新富町周辺の津波影響メッシュ数は約24,592に達し、津波リスクスコアは100点(最高値)だ。tsunami_max_depth_lower_mが10.0mを示しており、沿岸部の低地は最悪の場合10m以上の浸水が想定される。

宮崎県沿岸は日向灘の性質上、南海トラフ巨大地震(M9クラス)が発生した際には数分〜十数分で津波が到達するとされている。「大きな揺れを感じたら、津波警報の発令を待たずに高台または頑丈な高層建物の上層階へ移動する」ことが、沿岸住民に求められる最も重要な行動だ。

新富町では公式の津波ハザードマップを公開している。自宅の浸水想定を事前に確認しておくことを強く推奨する。
新富町津波ハザードマップ(公式)

高潮:台風接近時のもうひとつの津波リスク

高潮は台風の低気圧による「吸い上げ効果」と強風による「吹き寄せ効果」が組み合わさって海面が上昇する現象で、津波とは異なる要因で発生する。新富町の高潮スコアは100点であり、台風が日向灘を北上する際には、一ツ瀬川河口周辺から沿岸低地にかけて大規模な高潮浸水が発生しうる。

台風シーズン(7〜10月)には洪水と高潮が同時に発生する「複合災害」に特に注意が必要だ。


土砂災害リスク

54か所の警戒区域

新富町内には土砂災害警戒区域・特別警戒区域が54か所指定されている(国土交通省データ、防災DBより)。山地・丘陵地に面した西側の地区では、台風や集中豪雨時に土石流・崖崩れ・地すべりが発生するリスクがある。土砂災害特別警戒区域(いわゆる「レッドゾーン」)内に住宅がある場合は、早めの移転相談も選択肢のひとつだ。

地形上、土砂災害は河川氾濫・津波と同時進行する可能性がある。大雨特別警報や土砂災害警戒情報が発令された際は、夜間や雨天中でも躊躇せずに避難することが求められる。

新富町洪水・土砂ハザードマップでは、土砂災害警戒区域の詳細な位置と種別を確認できる。


避難施設一覧

新富町内には80か所の避難施設が登録されている(国土交通省 国土数値情報P20)。主要な二次・一次避難所を以下に示す。

施設名 住所 種別
上新田中学校 大字新田17053-8 二次避難所
上新田小学校 大字新田16416 二次避難所
中央公民館 上富田7485-14 一次避難所
北畦原地区集会所 新富町 一次避難所
三財原地区集会所 新富町 一次避難所
十文字地区集会所 新富町 一次避難所
上新田運動広場 新富町 避難場所
三納代運動広場 新富町 避難場所

重要な注意点: 津波・高潮の発生が想定される場合、海岸低地にある施設は避難場所として不適切になりうる。各施設の「対応している災害の種別」は新富町防災マップ(WEB版)で事前に確認しておくこと。津波の際は高台や頑丈な高層建物への「垂直避難」も選択肢になる。


今からできる備え

ステップ1: ハザードマップで自宅リスクを確認する

まずやるべきことは、自宅・職場・子どもの学校が「どのハザード区域に含まれるか」を確認することだ。

ステップ2: マイ・タイムラインを作る

新富町は「マイ・タイムライン」(個人の防災行動計画)の策定を推奨している。台風接近時・大雨警報発令時に「いつ・どこへ・どうやって避難するか」を事前に決めておくことで、実際の危機時に迷わず動けるようになる。特に夜間・就寝中の避難は想像以上に困難であり、早期避難が生死を分ける場面が多い。

ステップ3: 家族の備蓄と連絡手段を整備する

  • 飲料水: 1人1日3L × 最低3日分(推奨7日分)
  • 非常食: 3〜7日分(アレルギーに配慮した内容で)
  • 持出品: 携帯トイレ、常備薬、モバイルバッテリー、現金
  • 家族の集合場所・安否確認方法をあらかじめ決めておく(NTT災害用伝言ダイヤル171など)

詳細な防災情報・避難情報の発令基準は新富町 公式防災ページを参照してほしい。


データ出典

データ種別 出典 時点
統合リスクスコア・洪水浸水解析 防災DB(bousaidb.jp)(国交省・都道府県ハザード情報を基に集計) 2024年
市区町村マスタ 総務省 全国地方公共団体コード 2024年
地震確率・地盤データ J-SHIS(防災科学技術研究所)2024年版 2024年
活断層データ 地震調査研究推進本部(地震本部) 2024年
避難場所データ 国土数値情報 P20(国土交通省) 2023年
土砂災害警戒区域数 国土交通省 砂防部 2024年
2024年8月日向灘地震の記録 国土交通省 被害状況等について 2024年8月
歴史地震(1662年日向灘) 東北大学 災害科学国際研究所
2025年1月日向灘地震 気象庁 2025年1月
新富町ハザードマップ 新富町公式サイト 最新版

本記事は防災DB編集部が公的データに基づいて作成しました。データに誤りがある場合や、追加情報をお持ちの場合はお知らせください。防災DBは日本全国の市区町村の災害リスク情報を無料で提供しています。