山口県田布施町の災害リスク完全ガイド|洪水・津波・地震・高潮スコアが全て100の危機的状況【2024年版】

山口県熊毛郡田布施町は、岸信介元首相と佐藤栄作元首相を輩出した歴史ある小さな町だ。しかし防災の観点から見ると、この穏やかな瀬戸内の町は、洪水・津波・高潮・地震という主要4分野で全てリスクスコア100という、極めて危機的な状況にある。

防災DBが全国16万の125mメッシュを解析した結果、田布施町の統合リスクスコアは87点(リスクレベル:極めて高い)。洪水・津波・高潮・地震の4つが満点の100点を記録したのは、周防灘に面した平野地形と複数の河川が流れ込む地理的条件によるものだ。人口約1万5,000人(推計)が暮らすこの町で、今すぐ知っておくべき災害リスクの全容を解説する。


田布施町の地形が生む複合的な災害リスク

田布施町は山口県の南部、周防灘に面した熊毛半島の東側に位置する。北側は緩やかな丘陵地が広がり、南に向かって平野が開け、周防灘に注ぎ込む複数の河川が町を貫いている。島田川・田布施川・灸川・柳井川・土穂石川・大内川——計6本の河川が流れる低平地は、豊かな農業用地を生み出した一方で、洪水に対して根本的に脆弱な地形だ。

加えて、周防灘という半閉鎖的な海域に面していることが、津波・高潮の危険性を高める。周防灘は四方を陸に囲まれた形状から波浪エネルギーが集中しやすく、台風や地震に伴う高潮・津波が局所的に増幅するリスクがある。

防災DBの125mメッシュ解析では、町内の洪水浸水想定区域が21万9,377セル分(複数の計画規模・想定最大規模を合算)、津波・高潮の浸水想定が18万1,348セル分と、町の広大な面積が浸水リスクを抱えていることが分かる。


洪水・浸水リスク——島田川の5m浸水が最大の脅威

田布施町で最も深刻なのが洪水リスクだ(洪水スコア100)。防災DBの解析によると、主要6河川の浸水想定は以下の通りだ。

河川名 対象メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
島田川 443 5.0m 3.14m 72時間
田布施川 362 3.0m 0.81m 72時間
灸川 220 3.0m 0.59m 72時間
柳井川 205 5.0m 1.65m 72時間
土穂石川 144 3.0m 0.89m 72時間
大内川 107 3.0m 0.51m 72時間

データ出典:国土交通省 洪水浸水想定区域データ(防災DBが125mメッシュに集計、2024年時点)

特筆すべきは島田川だ。防災DBの想定最大規模降雨データでは、平均浸水深3.14mという数字が示す通り、浸水エリアの大部分が2階床上(3mで1階天井到達、5mで2階床上に達する)に及ぶ。山口県が公開する島田川(下流部)洪水浸水想定区域図でも、計画規模・想定最大規模それぞれの浸水域図が整備されており、田布施町の低地が広範囲に浸水することが示されている。浸水継続時間の最大72時間(3日間)という数字は、車による避難や物資輸送が長期にわたって困難になることを意味する。

田布施川と灸川のハザードマップは田布施町が独自に整備・公開しており、洪水時の避難の判断材料として活用できる(田布施町役場 防災ページ)。


津波リスク——南海トラフで5m、周防灘断層帯でも3.8m超

田布施町の津波リスクスコアは100。想定する浸水深は最大5m以上(防災DBの津波最大浸水深データより)だ。

南海トラフ巨大地震

30年以内の発生確率が約80%(令和7年1月時点)とされる南海トラフ巨大地震が発生した場合、隣接する柳井市では津波高5m、津波高1m到達まで約92分と山口県の被害想定が示している。田布施町は柳井市と隣接する位置にあり、ほぼ同等の到達時間・浸水深が想定される。山口県全体の南海トラフ被害想定死者数は502人で、うち津波による死者が474人と94%を占める。まさに津波への対応が人命に直結する問題だ。

周防灘断層帯

田布施町に最も近い活断層は周防灘断層帯(主部区間)だ。マグニチュード7.0、30年以内の発生確率2.93%(地震本部評価。確率論的地震ハザード上は「高いグループ」に分類)。なお地震本部が評価する周防灘断層帯全体では最大でM7.6を想定しており、柳井港・平生港周辺では最大津波高3.8mが想定されている。さらに最速20分(秋穂漁港)での到達が想定され、一部の地区では逃げる時間が非常に限られる。

防災DBの125mメッシュ解析によると、田布施町周辺では津波・高潮の浸水想定エリアが約6,186メッシュ分に及んでいる。


高潮リスク——周防灘の増幅効果(高潮スコア100)

田布施町の高潮スコアも100だ。周防灘は、東側に中国山地・四国山地、西側に九州が位置する半閉鎖海域で、台風通過時に海水が吹き込みやすく、高潮の増幅が起きやすい地形だ。加えて海岸線が比較的浅く平坦であることから、高潮波が内陸まで広がりやすい。2018年(平成30年)の西日本豪雨に伴って山口県南部でも高潮被害が報告された経緯がある。


地震リスク——30年以内に震度6弱以上の確率が最大39.96%

防災DBの125mメッシュ解析(2024年度版確率論的地震ハザード評価)によると、田布施町の地震リスクは以下の通りだ(地震スコア100)。

指標 平均値 最大値
30年以内に震度6弱以上が起きる確率 9.2% 39.96%
30年以内に震度5弱以上が起きる確率 71.48% 94.63%
地盤のS波速度(AVS30) 424.0 m/s

30年以内に震度6弱以上が起きる確率の全国平均は約6%とされており、田布施町の9.2%(平均)・39.96%(最大)は全国的に見ても高い水準だ。

周辺の活断層

防災DBが把握している田布施町周辺の主要活断層は以下の通り。

断層名 最大M 30年確率
周防灘断層帯(主部区間) 7.0 2.93%
周防灘断層帯(秋穂沖断層区間) 6.6 0.75%
広島湾-岩国沖断層帯 6.9 0.37%
岩国-五日市断層帯(岩国断層区間) 7.0 0.28%
岩国-五日市断層帯(己斐断層区間) 6.6 0.65%

出典:地震調査研究推進本部「長期評価」(防災DBが集計、2024年時点)

周防灘断層帯(主部区間)が30年確率2.93%を持つ最も切迫した脅威だ。この断層が動いた場合、田布施町では強い揺れと同時に津波が発生する可能性があり、「揺れが収まったらすぐに高台へ」という対応が極めて重要になる。


土砂災害リスク——山地・丘陵部の75箇所ハザード区域

田布施町の土砂災害スコアは50(中程度)だが、土砂災害警戒区域・特別警戒区域の合計は75箇所に上る。防災DBの125mメッシュ解析では、町内に1万4,583メッシュが土砂災害ハザード区域に近接している。

北部の丘陵地帯を中心に急傾斜地崩壊や土石流が想定されており、特に長雨・豪雨時には警戒が必要だ。田布施町では土砂災害ハザードマップを公開している(田布施町役場 防災ページ)。


過去の主要広域災害

NIED(防災科学技術研究所)の田布施町固有の災害被害データは現時点では同データベースに未収録だが、田布施町が位置する周防灘沿岸は歴史的に以下の広域災害の影響を受けてきた。

平成30年7月豪雨(西日本豪雨)/2018年7月

2018年7月5日から14日にかけて発生した記録的な豪雨で、岡山・広島・愛媛を中心に甚大な被害をもたらした。山口県も被災対象地域として指定され、柳井市・周防大島町を含む熊毛地域でも浸水・土砂災害が発生した。山口県の被害報告(山口県 平成30年7月豪雨 被害状況)によると、県下全体で広範囲な被害が記録されている。

平成25年7月豪雨/2013年7月

2013年7月28日、山口市付近で1時間雨量143mmという観測史上最大級の豪雨が発生し、山口県全体で死者・行方不明者4人、損壊・浸水家屋約1,500棟の被害が出た。島田川を含む山口県南部の河川流域はこの豪雨の影響圏に位置している。

これらの被害記録は、田布施町が「過去に大きな被害を受けなかった」のではなく、「個別市町村単位の詳細な記録が十分に公開されていない可能性がある」ことを示唆している。防災DBのリスクスコアが全分野で100という数字は、地形・地質・気候データに基づいた客観的な潜在リスクであり、過去の被害実績に関わらず重く受け止める必要がある。


田布施町の避難施設一覧

防災DBが把握している田布施町の避難場所は計31箇所だ。(国土数値情報 避難施設データより、2024年時点)

施設名 住所 種別
田布施中央公民館 下田布施3430番地1 避難場所
田布施中学校 下田布施1050番地4 避難場所
田布施西小学校 下田布施2150番地2 避難場所
田布施工業高校 麻郷奥127 避難場所
田布施農業高校 波野195 避難場所
城南小学校 宿井1039番地1 避難場所
東田布施小学校 大波野152番地1 避難場所
麻郷小学校 麻郷2258番地 避難場所
田布施スポーツセンター 田布施町内 避難場所
田布施町図書館 中央南11番地1 避難場所
田布施近隣公園 下田布施3400番地2 避難場所
城南公民館 宿井1066番地1 避難場所
西田布施公民館 下田布施2210番地1 避難場所
東田布施公民館 波野2208番地7 避難場所
麻郷公民館 麻郷1512番地1 避難場所
麻里府公民館 別府1610番地 避難場所
馬島集会所 田布施町(馬島) 避難場所

(上記は主要施設の一部。全31箇所の最新情報・各施設が対応する災害種別は田布施町役場 避難所一覧で確認すること)

注意:防災DBのデータでは、町内には広域避難場所として指定された施設は確認されていない(2024年時点)。低地の施設は洪水・津波時に使用できない場合があるため、各施設の対応災害種別を必ず事前に確認してほしい。


今からできる備え

1. ハザードマップで自宅のリスクを確認する

田布施町は以下のハザードマップを整備・公開している。

  • 洪水ハザードマップ(田布施川・灸川)
  • 津波・高潮ハザードマップ
  • 土砂災害ハザードマップ
  • 地震ハザードマップ
  • ため池ハザードマップ

全て田布施町役場 防災ページからアクセスできる。島田川の洪水浸水想定区域図については山口県の洪水浸水想定区域図公開ページも参照のこと。

2. 避難経路を事前に確認する

田布施町では洪水・津波・高潮・地震という複合的な災害が考えられる。特に周防灘断層帯が動いた場合は「揺れ→すぐ津波」という最悪のシナリオが現実となる。最短の高台避難ルートを、車なし・夜間・道路が壊れた状況を想定して事前に歩いておくことが重要だ。

3. 72時間分の備蓄を用意する

洪水による浸水継続時間が最大72時間(3日間)に及ぶデータを踏まえると、72時間分(3日分)の食料・水・医薬品の備蓄が最低限必要だ。特に島田川流域の低地に居住している場合は、早期避難を前提として備蓄を分散保管することも検討してほしい。

4. 防災DBで自宅周辺のリスクを詳しく調べる

防災DB(bousaidb.jp)では、住所・地点を指定した125mメッシュ単位の詳細な災害リスク情報を提供している。「田布施町のリスクが高いのは分かった。では自宅の真下は?」という問いに答えるツールとして活用してほしい。


データ出典

出典 URL
防災DB 市区町村別リスク・125mメッシュ解析 https://bousaidb.jp/
国土交通省 洪水浸水想定区域データ(防災DBが集計) https://bousaidb.jp/
地震調査研究推進本部 J-SHIS 地震確率データ(防災DBが集計) https://bousaidb.jp/
地震調査研究推進本部「長期評価」断層データ https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/suonada/
国土数値情報 避難施設(国土交通省) 国土交通省
山口県 島田川(下流部)洪水浸水想定区域図 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18600/bousai/201901150001.html
山口県 津波浸水想定図(瀬戸内海沿岸) https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/6/12639.html
山口県 南海トラフ地震被害想定 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/press/341936.html
山口県 平成30年7月豪雨 被害状況 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a10900/index/201807070001.html
田布施町役場 防災ページ https://www.town.tabuse.lg.jp/www/genre/1000000000108/index.html

著者:防災DB編集部 | 最終更新:2024年