多賀城市の災害リスク|東日本大震災で市域の3分の1が浸水した津波・洪水の危険地帯
宮城県多賀城市は、2011年3月11日の東日本大震災で市域の約33%(660ヘクタール)が津波に飲み込まれた。海抜5メートル未満の低地が広がり、七北田川・砂押川が市内を貫流する地形は、津波だけでなく洪水・地震にも根本的な脆弱性を抱えている。防災DBの統合リスクスコアは79点(極めて高い)。洪水・津波・地震の3リスクがそれぞれ満点の100点を記録している。
この街の災害リスクの特徴
多賀城市は仙台市の北東、松島湾の南岸に位置する都市型コンパクト市(面積19.69km²)だ。平地の大半は海抜5メートル以下の沖積低地であり、南側を仙台湾に向けて開いている。
地形上の最大の問題は3本の河川が重なるように市内を流れている点だ。北部から七北田川(流域面積229km²)、中央部を砂押川(七北田川の旧流路)、さらに広瀬川・阿武隈川の影響域も重なる。これらの河川は大雨時に仙台湾へ排水が集中するため、洪水時に内水氾濫が起きやすい。
防災DBの125mメッシュ解析では、市内に4,757メッシュ(約7.4km²)の沿岸浸水リスク域が確認されており、市総面積の37%超が津波・高潮の影響圏に入る計算になる。
また地盤は柔らかい沖積低地が中心で、平均表層S波速度(Vs30)は248.7m/s。地震動が増幅しやすい地盤であり、液状化スコアも40点を記録している。
過去の主要災害
2011年3月11日 東日本大震災(NIEDデータセット未収録・公式記録より)
多賀城市の近現代史において他の全ての災害を上回る被害をもたらした。
マグニチュード9.0の本震から約40分後、津波は3方向から市内に流れ込んだ。仙台港(高松埠頭・中野埠頭)方向からの正面衝突、砂押川を遡上した流れが陸上自衛隊多賀城駐屯地付近の土手を破壊して市街地へ流入、さらに貞山運河を経由した津波が加わった。
- 浸水面積: 約660ヘクタール(市域の約33%)
- 津波最大高さ: 約4.6メートル
- 死者数: 185人(市内居住者92人・市外居住者93人以上)
市民が「海の街」という意識を持っていなかったことが犠牲者増加の一因とされる。国道45号や産業道路では渋滞中の車両に津波が直撃し、車内での犠牲が多数発生した。仙台港に最も近い宮内地区では家屋がなぎ倒されるほどの激烈な浸水となった。
出典:多賀城市公式資料「東日本大震災被害状況概要」、東北大学防災・減災アーカイブ(たがじょう見聞憶)
1986年8月4日 台風第10号及びその後の低気圧(風水害)
- 床上浸水: 2,817棟
- 床下浸水: 1,468棟
- 一部損壊: 1棟
台風本体と続く低気圧による記録的豪雨で、七北田川・砂押川流域が氾濫。市内低地が広域浸水した。1986年当時は現在より治水施設が整備されておらず、5,000棟超の住家が被害を受けた。
1978年6月12日 宮城県沖地震(M7.4)
- 全壊: 10棟
- 半壊: 16棟
- 一部損壊: 329棟
宮城県全体で27人が死亡した(多賀城市での死者記録なし)。地震動による建物被害と、軟弱地盤での液状化被害が重なった。この地震を契機に宮城県では防災対策が大幅に見直された。
過去の津波被害年表
| 年 | 地震・災害名 | 種別 |
|---|---|---|
| 1897年2月 | 仙台沖地震 | 地震・津波 |
| 1933年3月 | 昭和三陸地震 | 地震・津波 |
| 1960年5月 | チリ地震津波 | 遠地津波 |
| 1978年6月 | 宮城県沖地震 | 地震 |
| 1986年8月 | 台風10号 | 洪水 |
| 1994年9月 | 台風(風水害) | 洪水 |
| 2003年5月 | 三陸南地震 | 地震 |
| 2003年7月 | 宮城県北部連続地震 | 地震 |
| 2011年3月 | 東日本大震災 | 地震・津波(甚大) |
| 2019年10月 | 令和元年台風19号 | 洪水 |
出典:防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース、多賀城市公式記録
なぜ多賀城市は洪水に弱いのか
防災DBの125mメッシュ解析によると、多賀城市の洪水リスクはスコア100点(最大値)を記録している。その背景には地形と河川の組み合わせがある。
市内を流れる主要河川の想定浸水深:
| 河川名 | 影響メッシュ数 | 最大浸水深 | 平均浸水深 | 継続時間(最大) |
|---|---|---|---|---|
| 七北田川 | 2,174 | 5.0m | 1.17m | 168時間(7日) |
| 広瀬川 | 836 | 5.0m | 0.44m | 168時間 |
| 砂押川 | 816 | 5.0m | 0.83m | 72時間 |
| 阿武隈川 | 471 | 3.0m | 1.20m | 168時間 |
浸水深の目安: 1m=大人が立てなくなる水深、3m=2階床上まで水没、5m=2階がほぼ水没。七北田川・砂押川の最大浸水深5mは、木造2階建ての2階がほぼ水没する深さに相当する。
七北田川は1986年の台風で市内広域浸水をもたらし、砂押川は2011年の東日本大震災で津波の遡上経路となった。2019年の台風19号でも砂押川周辺で床上浸水16棟・床下浸水102棟の被害が記録されている。
津波リスク
多賀城市の津波スコアは100点(最大値)。沿岸浸水リスクを持つメッシュは市内に4,757箇所確認されている(防災DB、2024年時点データ)。
2011年の実績では最大津波高約4.6mを記録。宮城県の最新津波浸水想定(2023年改訂版)では、想定最大津波により市の南部・東部を中心に広域浸水が見込まれている。
市は2023年3月にハザードマップを改訂し、想定最大規模の津波浸水区域を新たに公開している。
地震リスク
多賀城市の地震スコアも100点(最大値)だ。
防災DBの解析では、30年以内に震度6弱以上が発生する確率は平均28.68%・最大61.7%(地震調査推進本部2024年版データに基づく)。震度5弱以上の確率は平均96.1%・最大99.97%に達し、30年以内の体感を揺らすような地震はほぼ確実と言える水域にある。
平均Vs30が248.7m/sと低く(一般に300m/s未満は軟弱地盤の目安)、地震動が増幅しやすい地盤特性が地震スコアを押し上げている。液状化スコアは40点で、沿岸低地では液状化リスクも存在する。
活断層に関しては市直下に主要断層は確認されていないが、宮城県沖(日本海溝型)の大規模地震が繰り返し発生しており、1897年・1933年・1960年・1978年・2011年と連続している。この海溝型地震サイクルが多賀城市の地震スコアを高水準に保っている。
土砂災害リスク
土砂災害スコアは50点(中程度)。市内の土砂災害警戒区域等の数は24箇所、125mメッシュ解析では612メッシュが土砂災害リスク域に分類されている。多賀城市は基本的に平坦地であるため、他リスクと比較すると土砂災害の脅威は限定的だが、市北部の丘陵部(笠神地区周辺)に警戒区域が集中している。
避難施設一覧
多賀城市には44箇所の避難施設が指定されている(2024年時点、防災DBデータ)。
大規模災害時指定収容避難所(学校施設等)
| 施設名 | 住所 |
|---|---|
| 多賀城小学校 | 伝上山1-1-1 |
| 多賀城中学校 | 鶴ヶ谷1-9-1 |
| 天真小学校 | 鶴ヶ谷2-21-1 |
| 多賀城八幡小学校 | 八幡字六貫田172 |
| 多賀城東小学校 | 笠神5-8-1 |
| 城南小学校 | 城南1-17-1 |
| 山王小学校 | 新田字北320 |
| 文化センター | 中央2丁目27番1号 |
その他公共施設(収容避難所)
| 施設名 | 住所 |
|---|---|
| 市役所 | 中央2-1-1 |
| 八幡公民館 | 八幡2丁目8-7 |
| 大代地区公民館 | 大代五丁目1-46 |
| 山王地区公民館 | 南宮字毛上28 |
| 新田公民館 | 新田字北安楽寺88-3 |
| 市民プール | 伝上山2丁目6番6号 |
注意: 低地の施設は津波・洪水時には使用不可となる場合がある。事前に多賀城市が公開するハザードマップで各施設の浸水リスクを確認すること。
今からできる備え
多賀城市公式防災情報
まず確認すべきは自治体公式の防災情報だ:
- 多賀城市 防災情報: https://www.city.tagajo.miyagi.jp/kurashi/bosai/bosai/index.html
- 多賀城市 地震防災マップ: https://www.city.tagajo.miyagi.jp/toshisomu/kurashi/bosai/bosai/map.html
- 多賀城市 内水ハザードマップ: https://www.city.tagajo.miyagi.jp/jigyokanri/kurashi/suido/gesuido/naisuihazadomap.html
- 国土地理院 ハザードマップポータル(多賀城市): https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/index.html?citycode=04209
多賀城市の住民が特に確認すべき事項
- 自宅・職場の海抜を確認する — 市内の低地(特に海抜5m未満の地域)は津波・洪水の第一波到達域に入る可能性がある
- 避難ルートを3方向考える — 2011年の教訓として、道路渋滞による車避難の危険性が証明された。徒歩での高台避難ルートを必ず把握する
- 津波警報と洪水警報の違いを理解する — 砂押川と七北田川では洪水氾濫のタイムラグが異なる
- ハザードマップを定期的に更新確認する — 多賀城市は2023年3月にハザードマップを改訂している
備蓄と避難計画
2011年の東日本大震災では、浸水により道路が寸断されて支援物資の輸送が数日間困難になった。多賀城市は人口密集地域であるため、最低7日分(推奨)の食料・飲料水・医薬品の備蓄が望ましい。
データ出典
| データ種別 | 出典 |
|---|---|
| 統合リスクスコア・各リスクスコア | 防災DB(bousaidb.jp)、2024年時点データ |
| 125mメッシュ洪水・津波解析 | 国土交通省浸水想定データ(防災DBにて加工) |
| 震度確率(2024年版) | 地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図2024 |
| 過去の災害事例 | 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース |
| 2011年東日本大震災被害 | 多賀城市公式資料「東日本大震災被害状況概要」 |
| 2011年東日本大震災(補足) | 東北大学防災・減災アーカイブ「たがじょう見聞憶」 |
| 避難施設データ | 国土数値情報(nlftp p20)、多賀城市指定避難所一覧 |
| 地形・地質情報 | 国土地理院地形分類、七北田川・砂押川流域資料 |
| ハザードマップ | 多賀城市公式ハザードマップ(2023年3月改訂) |
本記事は防災DB(bousaidb.jp)が公開するオープンデータおよび公的機関の公表資料をもとに、防災DB編集部が作成しました。データの時点は各出典に記載のとおりです。誤りや情報の更新にお気づきの場合は、防災DBまでご連絡ください。
防災DB編集部 | 最終更新:2026年4月
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