千葉県多古町の災害リスクと過去の災害年表|698年から1,300年の被災記録

多古町では、698年から2019年までの1,300年間に92件の災害が記録されています。洪水・台風・地震・高潮——すべての災害カテゴリにおいてリスクが高く、防災DBの統合リスクスコアは89点(極めて高い)に達します。千葉県内でも突出してリスクが集中する自治体のひとつです。

2019年9月、令和元年房総半島台風(台風15号)が直撃した際、多古町では全世帯の75%にあたる4,500戸が停電、約80%の4,800世帯が断水するという壊滅的なインフラ被害が発生しました。住家被害は1,013棟。ブランド米「多古米こしひかり」の産地を直撃した台風は、農業にも深刻な打撃を与えました。

この記事では、防災DBが保有する125mメッシュ解析データと過去の災害記録をもとに、多古町の災害リスクを詳細に解説します。


なぜ多古町はすべての災害リスクが高いのか

多古町は千葉県北東部の香取郡に位置し、下総台地の縁辺部と栗山川沿いの低地が入り組んだ地形をしています。町の中央を栗山川(二級水系)が南北に貫流し、東縁には日本有数の大河利根川が流れます。台地と低地が隣接するこの地形的特性が、多様な災害リスクを生み出す根本的な要因です。

防災DBの分析によれば、多古町の各リスクスコアは以下の通りです:

災害種別 スコア(0-100) 評価
洪水 100 最大浸水深20m超
高潮 100 影響メッシュ5,722区画
津波(利根川遡上含む) 100 影響メッシュ221,842区画
地震 100 30年震度6弱確率 最大99.6%
土砂災害 50 ハザード区域34箇所
液状化 40 低地部で中程度のリスク
統合スコア 89 極めて高い

注目すべきは、通常は一部の災害種別に偏りが出る中、多古町では洪水・高潮・地震の3カテゴリが全て満点(100点)という点です。これは多古町が地形的に「すべての方向から災害にさらされている」ことを意味します。

(データ出典:防災DB 2024年時点データ)


地震リスク:関東全域でも上位水準の高確率

防災DBの125mメッシュ解析データ(2024年版)によれば、多古町における地震リスクは関東でも高水準です。

  • 震度5弱以上の30年確率:平均99.99%(最大100%)
  • 震度6弱以上の30年確率:平均67.55%(最大99.58%
  • 平均地盤速度(AVS30):255.6 m/s

震度6弱以上の30年確率が最大99.58%という数字は、「ほぼ確実に発生する」水準です。全国平均が約6%(地震調査研究推進本部の確率論的地震動予測地図より)であることを踏まえると、多古町の地震リスクの深刻さが浮かび上がります。

AVS30(表層地盤のS波速度)の平均値255.6 m/sは「やや軟弱」な地盤に分類されます。地盤が軟らかいほど地震動は増幅されるため、同じ規模の地震でも揺れが大きくなりやすい地域です。

歴史的地震の記録

多古町では古代から大地震の記録があります:

  • 698年10月16日:不明(古記録による)
  • 818年8月:関東諸国地震
  • 1854年12月23日:安政東海地震
  • 1855年11月11日:江戸地震(安政江戸地震)

(出典:多古町史(下巻)、NIEDデータセット)


洪水リスク:利根川と栗山川、2つの大河が生む「浸水の罠」

多古町の最大リスクは洪水です。防災DBの分析では、洪水スコア100(満点)、想定最大浸水深20m以上という数値が示されています。

主要河川と浸水リスク

防災DBの125mメッシュ解析(国土交通省浸水想定区域データに基づく)から、多古町に影響する主要河川の浸水リスクを示します:

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大浸水継続時間
利根川 3,397 5.0m 2.13m 336時間(14日間)
栗山川 3,223 10.0m 1.45m 336時間(14日間)
根木名川 1,019 10.0m 3.26m 168時間(7日間)
木戸川 1,069 3.0m 0.64m 168時間(7日間)
七間川 1,477 0.5m 0.46m

(出典:防災DB 125mメッシュ解析、国土交通省浸水想定区域データ)

浸水深のイメージ(目安)
- 0.5m以下:大人の膝下、歩行困難になる水位
- 1.0〜2.0m:大人の胸〜首まで。自力での脱出が困難
- 3.0m:1階の天井付近まで浸水。屋内に居残れば命が危険
- 5.0m:2階の床上まで浸水
- 10.0m:2〜3階建て建物の屋根近くまで浸水

根木名川沿いの地区では、想定最大浸水深10m・平均3.26mという特に深刻な数字が出ています。「最大浸水深10mの地区に住む」ということは、鉄筋コンクリートの2〜3階建て建物がまるごと水没しうることを意味します。

多古町洪水ハザードマップ(令和2年改定)の重要ポイント

多古町は2020年(令和2年)に洪水ハザードマップを大幅に改定しました。最大の変更点は想定降雨量の2.4倍引き上げです:

  • 改定前:261mm / 24時間(計画規模)
  • 改定後:615.1mm / 24時間(想定最大規模)

また、メッシュ精度も50mから5mに精緻化されており、従来のハザードマップより格段に詳細な浸水予測が可能になっています。古いハザードマップを参照している場合は、必ず改定版(令和2年版)を確認してください。


令和元年房総半島台風(2019年):多古町を直撃した前代未聞の被害

2019年9月9日未明、観測史上最強クラスの勢力で千葉県に上陸した台風15号は、多古町に壊滅的な被害をもたらしました。

被害の全体像

インフラ被害:
- 停電:4,500戸(町全体の約75%)、長期化
- 断水:4,800世帯(約80%)
- 住家被害:1,013棟

NIEDデータベース(消防庁資料)による記録:
- 半壊:7棟
- 一部損壊:1,490棟

農業被害(ブランド米「多古米こしひかり」):
- 強風による稲の倒伏(約20ヘクタール規模)
- 停電による乾燥機停止 → 収穫大幅遅延
- 品質・収量の双方に深刻な影響

特筆すべきは、町全体の4分の3以上が停電・断水という同時多発のインフラ崩壊が起きた点です。水がなければ生活できない、電気がなければ情報も得られない——という状況が長期間続きました。当時、多古町の被害は主要メディアでほとんど報道されなかったことも明らかになっており、地域の孤立した被災の実態が問題となりました。

同年の台風19号(令和元年東日本台風)

2019年10月には台風19号も上陸し、多古町でさらに7棟の一部損壊が発生しています(NIEDデータ)。


過去の主要災害年表(698年〜2019年)

多古町で記録された92件の災害から、主要なものを年表で示します。

地震・津波

年月日 災害名 被害 出典
698年10月16日 (古代地震) 記録のみ 多古町史(下巻)
818年8月 関東諸国地震 記録のみ 多古町史(下巻)
1854年12月23日 安政東海地震 記録のみ 多古町史(下巻)
1855年11月11日 江戸地震(安政江戸地震) 記録のみ 多古町史(下巻)

風水害・洪水

年月日 災害種別 被害概要 出典
1856年9月23日 台風(風水害) 全壊多数(-2は不詳の意) 多古町史(下巻)
1880年代〜1900年代 台風・洪水 毎年のように風水害記録 多古町史(下巻)
1903年10月2日 洪水 全壊1棟 多古町史(下巻)
1910年8月 台風(大洪水) 詳細記録 多古町史(下巻)
2019年9月9日 令和元年房総半島台風 半壊7棟、一部損壊1,490棟、停電4,500戸、断水4,800世帯 消防庁報告書
2019年10月11日 令和元年東日本台風 一部損壊7棟 消防庁報告書

多古町史(下巻)について

多古町のNIEDデータが1,300年にわたる記録を持つのは、「多古町史(下巻)」という地域史料が非常に詳細な災害記録を収録しているためです。698年から江戸時代末期にかけての災害は、日付・被害規模まで記された貴重な史料に基づいています。

(データ出典:防災DB(NIED自然災害データベース)、多古町史(下巻)、消防庁報告書)


土砂災害リスク:台地の縁辺部に分布する34の危険区域

多古町では土砂災害ハザード区域が34箇所確認されています(土砂災害スコア:50)。防災DBの125mメッシュ解析では、土砂災害影響メッシュが561区画に達します。

台地と低地が接する縁辺部には、急傾斜地崩壊の危険区域が点在しています。特に栗山川沿いの斜面部では、大雨時の崩壊リスクに注意が必要です。多古町では土砂災害ハザードマップも公開されており、対象地域にお住まいの方は必ず確認してください。

土砂災害ハザードマップ(多古町公式):
https://www.town.tako.chiba.jp/docs/2017121503004/file_contents/sediment_disaster_hazard_takomachi.pdf


高潮・浸水リスク:利根川流域に迫る海水

防災DBのデータでは、多古町の高潮スコアは100(満点)、高潮・浸水影響メッシュは5,722区画に達します。

多古町は海岸線を持たない内陸の農村ですが、利根川経由での高潮遡上や、低地部への浸水リスクが存在します。2011年の東日本大震災では、利根川を津波が遡上したことが確認されており、こうした「内陸の津波・高潮リスク」は見過ごされがちな脅威です。


避難場所一覧(12施設 / 全て広域避難場所)

多古町には12の広域避難場所が指定されています。全施設が広域避難場所に指定されているため、大規模災害時の避難拠点として機能します。

施設名 住所 種別
多古中学校 多古2920 広域避難場所・広域避難所
多古第一小学校 多古2547 広域避難場所
多古第二小学校 喜多305 広域避難場所・広域避難所
多古第二小学校一鍬田校舎跡地 多古町内 広域避難場所
中村小学校 南中349-2 広域避難場所・広域避難所
久賀小学校 多古町内 広域避難場所・広域避難所
久賀小学校跡地 多古町内 広域避難場所
十余三小学校跡地 多古町内 広域避難場所
常磐小学校 南玉造162 広域避難場所
県立多古高等学校 多古3236 広域避難場所・広域避難所
多古町民牛尾体育館(旧多古第三小学校体育館) 多古町内 広域避難場所・広域避難所
興新小学校跡地 多古町内 広域避難場所

(出典:国土交通省 国土数値情報 避難場所データ)

台風・大雨時の避難判断について:避難場所は必ずしも洪水安全な場所とは限りません。特に浸水リスクの高い区域にお住まいの方は、早期避難を検討してください。多古町のハザードマップで自宅の浸水想定深を確認し、避難ルートを事前に決めておくことが重要です。


今からできる備え

多古町の公式防災リソース

まず確認すべきは多古町の公式ハザードマップです:

  • 防災・災害トップページ:https://www.town.tako.chiba.jp/category/bunya/anshin/bosaigai/
  • 洪水ハザードマップ(令和2年改定版):https://www.town.tako.chiba.jp/docs/2021021200017/
  • 土砂災害ハザードマップ:https://www.town.tako.chiba.jp/docs/2017121503004/file_contents/sediment_disaster_hazard_takomachi.pdf
  • 地域防災計画(令和7年2月修正版):https://www.town.tako.chiba.jp/docs/2018011800173/

多古町の特性を踏まえた備え

令和元年台風15号の教訓から、多古町では以下の備えが特に重要です:

  1. 停電への備え:75%が停電した実績をふまえ、ポータブル電源・乾電池ラジオ・懐中電灯の準備は必須。特に停電が数日〜数週間続く可能性を想定してください。
  2. 断水への備え:80%が断水した実績をふまえ、飲料水の備蓄(1人1日3L × 7日分 = 21L)を確保してください。
  3. 早期避難の習慣化:洪水スコア100の地域では、ハザードマップで浸水想定区域を確認し、「気象警報が発令されたら即避難」を家族で決めておくことが命を守ります。
  4. ハザードマップの最新版確認:令和2年改定で想定降雨量が2.4倍に引き上げられています。古いマップを参照していた場合は必ず更新してください。

防災DB(bousaidb.jp) では、多古町を含む全国市区町村の詳細な災害リスクデータを無料で提供しています。125mメッシュ単位での詳細分析もご利用ください。


データ出典

本記事は以下のデータ・資料に基づいています:

出典 使用箇所
防災DB(bousaidb.jp)125mメッシュ解析 リスクスコア、洪水浸水深、地震確率、土砂災害・高潮メッシュ数
国土交通省 浸水想定区域データ 洪水浸水深・浸水継続時間
地震調査研究推進本部 全国地震動予測地図2024年版 震度別30年確率
NIED自然災害データベース 過去の災害事例92件
多古町史(下巻) 698年〜近代の災害記録
消防庁 令和元年台風第15号・19号報告書 2019年台風被害データ
国土交通省 国土数値情報 避難場所データ 避難施設一覧
多古町公式ウェブサイト ハザードマップURL、地域防災計画
国土地理院 わがまちハザードマップ 総合ハザードマップリンク

著者:防災DB編集部
更新日:2026年4月時点のデータに基づく
注意事項:本記事のリスクスコアは防災DBの独自算出値です。最新の被害状況は各自治体の公式情報をご確認ください。