東金市の災害リスクと過去の被害|洪水・地震・台風が重なる九十九里近郊の防災事情

千葉県中部に位置する東金市は、防災DBの統合リスクスコアで89点(極めて高い)という評価を受けている。洪水・津波・高潮・地震の4項目すべてで満点(スコア100)を記録する市町村は全国でも多くない。房総半島台風に直撃された2019年には990棟以上が一部損壊し、市内を流れる高崎川では最大20mという想定浸水深が計上される。「内陸の小都市だから安全」という思い込みは、このデータの前では通用しない。

東金市の地理と、なぜこれほどリスクが高いのか

東金市は千葉県の中東部、九十九里平野の西端に接するように広がる人口約5万7,000人の市だ。市域の大半は標高10〜40m程度の台地と谷津田(やつだ)地形で構成される。台地と谷津が複雑に入り組んだ地形は、複数の河川が市内を縦横に流れる原因であり、洪水ハザードの広がりにも直結している。

東側には九十九里浜が隣接しており、市の東端から海岸線まで数kmの距離しかない。このことが津波・高潮リスクを引き上げる要因になっている。また、千葉県全体が相模トラフ・南海トラフ・フィリピン海プレートの沈み込み帯の影響圏にあり、歴史的に大地震の繰り返し発生地域でもある。

防災DBの125mメッシュ解析によれば、東金市内の震度6弱以上の30年発生確率は平均64.78%、最大98.72%に達する。「30年以内に6割以上の確率で震度6弱以上の揺れを経験する」という数字は、地震大国の中でも群を抜いて高い部類に入る。

過去の主要災害

令和元年房総半島台風(2019年9月9日)

東金市が近年で最も深刻な被害を受けたのが、2019年9月9日未明に千葉県に上陸した台風15号(令和元年房総半島台風)だ。最大瞬間風速57.5m/s(千葉市、観測史上最高)を記録したこの台風は、九十九里地域を直撃し、東金市でも全壊1棟、半壊11棟、一部損壊990棟という住家被害をもたらした。

停電は広範囲にわたって長期化し、山武郡市環境衛生組合の施設も被害を受けた。自衛隊・市職員・ボランティアによる給水・生活支援活動が続いた。翌月の台風19号(令和元年東日本台風)でも市内に一部損壊が2棟発生している。

関東大震災(1923年9月1日)

1923年9月1日午前11時58分、マグニチュード7.9の関東地震が発生した。震源は神奈川県西部の相模湾で、東金市でも強い揺れが記録されている。千葉県内では家屋倒壊・津波被害が広範囲に及び、九十九里沿岸では津波による浸水が発生した記録が残っている。

千葉県東方沖地震(1987年12月17日)

マグニチュード6.7の地震が千葉県東方沖で発生。東金市を含む千葉県中部・東部で震度5を記録し、県内各地で建物被害が報告された。

元禄地震(1703年12月31日)

元禄16年に発生したマグニチュード8.0前後の巨大地震。相模トラフを震源域とし、九十九里沿岸では津波が押し寄せ、甚大な被害が生じた記録が伝わっている。この地震の再来は現代の南関東地震動予測においても想定シナリオの一つとなっている。

過去の災害年表

発生年月日 災害名 種別 主な被害(東金市)
1703年12月31日 元禄地震 地震・津波 九十九里沿岸の津波被害
1855年11月11日 安政江戸地震 地震 M6.9、首都圏広域に被害
1923年9月1日 関東大震災 地震・津波 県内広域の家屋倒壊・津波
1987年12月17日 千葉県東方沖地震 地震 M6.7、県中東部で震度5
2005年7月23日 千葉県北西部地震 地震 M6.0、県内広域に揺れ
2019年9月9日 令和元年房総半島台風 台風 全壊1・半壊11・一部損壊990棟
2019年10月11日 令和元年東日本台風 台風 一部損壊2棟

出典: 国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害情報室 NIEDデータセット、東金市公式発表

なぜ東金市は水害に弱いのか|11河川が重なる複合ハザード

東金市の洪水リスクが「スコア100」に達している最大の理由は、市内を流れる11本の河川すべてにわたって浸水想定区域が広がっているからだ。防災DBの125mメッシュ解析では、南白亀川・一宮川・高崎川・木戸川・真亀川・作田川・栗山川など主要河川が複合的に重なるハザード地帯を可視化している。

主要河川の浸水想定

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 最長浸水継続時間
南白亀川 4,526 5.0m 336時間(14日間)
一宮川 3,298 10.0m 168時間(7日間)
木戸川 2,352 3.0m 168時間(7日間)
真亀川 2,228 5.0m 168時間(7日間)
作田川 1,858 5.0m 168時間(7日間)
栗山川 1,473 10.0m 168時間(7日間)
高崎川 934 20.0m 336時間(14日間)
村田川 185 5.0m 72時間(3日間)
利根川 116 3.0m 336時間(14日間)

出典: 防災DB 125mメッシュ洪水浸水想定データ(千葉県管理河川浸水想定区域図に基づく)

特筆すべきは高崎川の最大浸水深20mという数値だ。浸水深の目安として「0.5m=膝下」「1m=床上1m」「3m=2階床付近」「5m=2階天井」「10m=3階建ての屋上付近」「20m=6〜7階建て相当」と考えると、この数値がいかに極端かがわかる。高崎川は主に市南部を流れており、谷津部分の地形が浸水を集中させる構造にある。

また、南白亀川と高崎川・利根川の浸水継続時間は最長336時間(14日間)と推計されている。洪水が発生した場合、2週間近く水が引かない可能性があるということだ。2019年の台風15号では東金市で大規模な河川氾濫は発生しなかったが、計画規模を超える豪雨が重なれば、長期間の孤立リスクが現実となりうる。備蓄の量を考えるうえで、この「14日間」という数字は重要な基準になる。

地震・液状化リスク

東金市内の震度5弱以上の30年発生確率は平均99.98%、最高値は100%だ。これは「30年以内に震度5弱以上を経験することが、ほぼ確実」であることを意味する。

震度6弱以上の30年確率も平均64.78%(最大98.72%)に達しており、市内のほぼ全域が高確率の揺れに曝される。地盤の硬さを示す表層地盤S波速度(Avs30)は市内平均253m/s程度で、一般に「やや軟弱〜標準的」な地盤帯に相当する。谷津部分や旧河道付近では特に軟弱地盤が予想される。

液状化リスクスコアは40(中程度)で、九十九里平野に近い東側低地や旧河道沿いで液状化の可能性が高まる。大きな地震の際に地盤が液状化すると、建物の傾斜・沈下・ライフラインの損壊が起きやすく、揺れ被害に加えてさらなるダメージが重なる。

なお、千葉県内を通る活断層については、プレート境界型地震(相模トラフ・南海トラフ等)の影響が引き続き大きく、特に相模トラフ沿いの地震は東金市の強震動に直接的な影響を与える。

津波・高潮リスク

東金市は直接的な海岸線を持たないが、東側の隣接エリアは九十九里浜に面している。防災DBの解析では、市内に9,766メッシュもの海岸関連リスク(津波・高潮想定)が分布しており、これは洪水を除く単体ハザードとしては非常に大きい数字だ。

千葉県の津波浸水想定(千葉県防災危機管理部)では、東金市周辺も浸水想定区域の対象に含まれている(千葉県津波浸水想定図 大網白里市・白子町・東金市・茂原市エリア)。九十九里海岸は遠浅の地形が続くため、遠方の津波源(東北・三陸沖や南海トラフ)からの津波も波高を保ったまま陸に向かいやすい特性がある。

高潮については、台風接近時に強風が海水を陸向きに押し寄せる現象が起きるリスクがあり、九十九里側の低地帯では過去にも浸水実績がある。

土砂災害リスク

市内の土砂災害危険箇所は38か所(ハザードゾーン)、125mメッシュ解析では245メッシュが土砂災害関連データとして登録されている。土砂災害リスクスコアは50(中程度)で、洪水や地震と比較すれば相対的に低い水準だが、台地と谷津が入り組む東金市の地形では、台地の法面(のりめん)が崩れる土砂崩れや崖崩れは無視できるリスクではない。

大雨や地震の揺れで台地の斜面が崩れる事象は千葉県内でも発生している。丘陵地に近接する住宅地では、土砂災害警戒区域への該当確認が必要だ。千葉県の土砂災害警戒区域指定情報は千葉県公式サイトで確認できる。

避難場所一覧

東金市内には90か所の避難場所が登録されている(2024年時点)。主要な施設を以下に示す。

施設名 所在地 備考
ふれあいセンター 田間421 第1開設避難収容所
城西国際大学 求名1 第3開設避難収容所
千葉学芸高等学校 田間1999 第3開設避難収容所
千葉県警察学校 士農田28-1 第3開設避難収容所
やすらぎの家 東中906 第3開設避難収容所
北中学校 日吉台1丁目20 第2開設避難収容所
丘山小学校 丹尾4-2 第2開設避難収容所
城西小学校 台方74-2 第2開設避難収容所
日吉台小学校 日吉台2丁目32-1 第2開設避難収容所
公平公民館 家之子885-3 第1開設避難収容所
大和公民館 田中784-1 第1開設避難収容所
丘山公民館 小野101-4 第1開設避難収容所

避難収容所は「開設フェーズ」が設けられており、第1開設から順次開設される仕組みだ。自分の自宅が浸水想定区域に含まれるかどうかは、東金市のWEB版ハザードマップで住所検索により確認できる。

今からできる備え

公式防災ページ・ハザードマップ

東金市の特性を踏まえた備えのポイント

1. 洪水ハザードマップを必ず確認する
11本の河川が市内を流れ、浸水想定区域が複雑に重なっている。自宅・職場が浸水想定区域に入るかどうかを、東金市WEB版ハザードマップの住所検索機能で事前に確認しておくこと。

2. 浸水が長期化する前提で備蓄量を増やす
南白亀川・高崎川・利根川の浸水継続時間は最長336時間(14日間)と推計されている。食料・飲料水・医薬品は最低7日分、可能なら14日分を準備したい。

3. 台風シーズン前に避難先を決めておく
2019年の台風15号では広域の停電が長期化し、多くの住民が不便を強いられた。洪水の場合と土砂災害の場合で避難先・避難ルートが異なることも確認しておく。

4. 地震対策として家具の固定を行う
震度6弱以上の30年確率が平均で6割を超える地域では、家具転倒による怪我は「もし」ではなく「いつ」の話だ。寝室と生活動線を中心に家具固定を進めてほしい。

データ出典

データ 出典 時点
統合リスクスコア・各種スコア 防災DB(bousaidb.jp) 2024年版
125mメッシュ洪水浸水想定 防災DB(千葉県洪水浸水想定区域図に基づく) 2024年版
125mメッシュ地震確率・地盤データ 防災DB(地震調査研究推進本部 J-SHIS等に基づく) 2024年版
125mメッシュ沿岸リスク 防災DB(国土数値情報等に基づく) 2024年版
過去の災害事例 国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害情報室 2024年版
避難場所データ 国土数値情報 避難施設データ(nlftp_p20) 2024年版
令和元年房総半島台風被害 東金市公式発表・内閣府防災白書令和2年版 2020年発行
津波浸水想定 千葉県防災危機管理部 2024年時点

著者: 防災DB編集部 | 最終更新: 2026年4月
本記事の数値データは防災DB(bousaidb.jp)の解析結果および公的機関の公表データに基づいています。被害想定は条件によって異なるため、各自治体の最新ハザードマップを必ず参照してください。