徳島市の災害リスクと歴史|洪水・津波スコアがともに100、四国三郎が脅かす命

防災DBの統合リスクスコア:86/100(リスクレベル:極めて高い)

徳島市は、洪水リスクスコア100・津波リスクスコア100・高潮リスクスコア100・地震リスクスコア100——4つの主要ハザードすべてで最高値を記録した、日本でも屈指の複合災害リスク都市である。県庁所在地として約25万人が暮らすこの街を、「四国三郎」こと吉野川が日本最大級の洪水リスクにさらし続け、南海トラフ巨大地震による津波が数十分以内に沿岸部を襲うことが想定されている。

防災DB(bousaidb.jp)が保有する125mメッシュ解析データによれば、徳島市の洪水浸水想定区域は14万5,251メッシュ(約2,270km²相当)、津波・高潮の沿岸浸水リスクを持つメッシュは2万400に達する。この街に住む・働くすべての人が、複数のリスクを同時に考慮した防災対策を必要としている。


この街の災害リスクの特徴——なぜ徳島市はこれほど水害に弱いのか

「四国三郎」の河口に位置する地理的宿命

徳島市が洪水に脆弱である根本的な理由は、吉野川の河口デルタに街が築かれた歴史にある。吉野川は幹川流路延長194km・流域面積3,750km²を擁する四国最大の一級河川で、「坂東太郎(利根川)」「筑紫次郎(筑後川)」と並ぶ日本三大暴れ川「四国三郎」の異名を持つ。

流域の約7割を年間降水量2,000mm以上の山岳地帯が占め、台風が直撃するたびに上流で膨大な雨水が集中する。江戸時代には上流の土佐藩領(現・高知県)で降った雨が下流の阿波(徳島)で被害をもたらすことが多く、「阿呆水(あほうず)」「土佐水(とさすい)」と呼ばれ住民を苦しめた。雨が降っていなくても突然洪水になる——それが吉野川流域の住民が数百年にわたって向き合ってきた現実だ。

加えて徳島市は紀伊水道に面しており、南海トラフ地震が発生した際には大型津波が40数分以内に沿岸部に到達することが想定されている。洪水と津波という2種類の水害リスクを同時に抱える都市は全国でも稀であり、徳島市が「極めて高い」リスクに分類される理由はここにある。

防災DBが示すリスク数値(2024年時点)

ハザード種別 スコア 最大浸水深 浸水区域数(メッシュ)
洪水 100 20m 145,251
津波・高潮 100 10m 137,803(津波)
高潮 100 20,400(沿岸)
地震 100
土砂災害 50 138箇所(ハザード区域)
液状化 5

震度6弱以上の揺れが30年以内に発生する確率は市内平均で56.1%(最大地点で80.5%)——南海トラフ地震を視野に入れた数値としては想定の範囲内だが、それでも約2人に1人は今後30年で震度6弱以上を経験することを意味する。


過去の主要災害——繰り返された洪水と近代の台風被害

NIEDの災害事例データと公的記録を組み合わせると、徳島市(旧阿波国含む)の災害史は多くの痛ましい記録を残している。

江戸時代の大水害

1843年(天保14年)七夕水:勝浦川の堤防が決壊し、西須賀町では数十日間にわたり冠水が続いた。死者は約50人と伝えられる。

1849年(嘉永2年)酉の水:吉野川が大氾濫し城下一帯が浸水。山川町(現・吉野川市)の堤防が決壊して死者250人という大惨事となった。この規模の洪水が徳島市街地に到達した際、現在の都市構造ではどの程度の被害が出るかを想定しておくことが重要だ。

1857年(安政4年)八朔水:鈴江堤防が決壊し、川内町で家屋350戸が倒壊した。

1866年(慶応2年)寅の水:阿波国全体で「3万7,020人が溺れた」という記録が残る大洪水。人口規模を考えると当時の阿波国民の相当割合が被災したと推測される。

近代の主要災害

1934年(昭和9年)室戸台風:四国に直撃した室戸台風は、高潮によって2万3,158戸が水没し、4,272戸が全半壊・流出という壊滅的被害をもたらした。この台風は全国で3,000人以上が死亡した昭和初期最大の気象災害の一つであり、徳島市は沿岸低地という地理的特性からその直撃を受けた。

1976年(昭和51年)台風17号:死者10人、家屋全壊・流失187戸、床上・床下浸水2万155戸。高度経済成長を経た都市化にもかかわらず、吉野川の洪水リスクは変わらず市民生活を脅かし続けたことがわかる。

2020年(令和2年)台風10号・2019年(令和元年)台風19号:NIEDのデータには被害詳細が記録されているが、両台風は徳島市に影響を与えた(被害規模は記録上限定的)。

過去の災害年表

種別 主な被害
1843年 洪水(七夕水) 勝浦川決壊、西須賀町数十日冠水、死者約50人
1849年 洪水(酉の水) 吉野川氾濫、城下一帯浸水、死者250人
1857年 洪水(八朔水) 鈴江堤防決壊、家屋350戸倒壊
1866年 洪水(寅の水) 阿波国全体で溺死者3万7,020人
1934年 台風(室戸台風) 高潮で2万3,158戸水没、4,272戸全半壊・流出
1976年 台風17号 死者10人、浸水2万155戸
2019年 台風19号 影響あり(詳細被害は限定的)
2020年 台風10号 影響あり(詳細被害は限定的)

洪水リスク——6本の河川が市街地を包囲する

吉野川——最大10mの浸水深想定

防災DBの125mメッシュ解析によれば、吉野川の洪水浸水想定区域は市内で9,425メッシュ(約147km²相当)、最大浸水深は10m、平均浸水深は3.7mに達する。浸水深の目安として参考にしてほしいのが以下の数値だ:

  • 0.5m未満:歩行困難になる水位、高齢者や子どもは移動が難しい
  • 1m:一般的な乗用車が浮き始める水位
  • 2m:木造住宅1階が完全に水没する水位
  • 3m:1階天井まで水没し、2階が浸水し始める水位
  • 5m以上:2階床上まで水没、2階への垂直避難では生命の危険がある
  • 10m:3〜4階建て建物の3階部分まで水没する壊滅的な浸水深

「吉野川の最大浸水深10m」とは、特定地点において3〜4階建て建物の3階付近まで水没しうる事態を意味する。これは最悪シナリオだが、「氾濫が始まれば2階でも安全でない」エリアが市内に存在するという認識を持つことが防災の出発点だ。

那賀川・勝浦川・鮎喰川なども脅威

吉野川のみならず、那賀川(2,962メッシュ、最大10m)、勝浦川(2,417メッシュ、最大20m)、鮎喰川(730メッシュ、最大20m)、園瀬川(538メッシュ、最大10m)なども市内に洪水リスクをもたらす。勝浦川・鮎喰川の最大浸水深が20mという数値は、上流の急峻な地形を反映したものであり、下流の市街地部分においても甚大な洪水被害が想定される区間がある。

市内の主要洪水リスク河川(防災DBデータ、2024年時点)

河川名 浸水想定メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
吉野川 9,425 10m 3.7m 168時間(7日間)
那賀川 2,962 10m 2.9m 336時間(14日間)
勝浦川 2,417 20m 2.6m 168時間
旧吉野川 876 5m 1.0m 168時間
鮎喰川 730 20m 1.3m 168時間
園瀬川 538 10m 2.0m 168時間

那賀川の最大継続時間336時間(14日間)という数値は見逃せない。洪水が2週間続く可能性があるということは、避難生活が長期化するシナリオを想定した備えが必要であることを示している。

自宅や職場がどの河川の浸水想定区域内にあるかは、徳島市洪水・高潮ハザードマップで確認できる。


津波リスク——南海トラフ地震発生から40数分で到達

徳島市は紀伊水道に面した沿岸低地を多く含み、南海トラフ巨大地震(想定M9クラス)が発生した場合、大神子海岸から徳島阿波おどり空港(松茂町)にわたる広い沿岸地帯に、高さ5m級の大津波が複数回にわたって押し寄せると想定されている(徳島大学・馬場俊孝教授らの研究に基づく)。

第1波の到達は地震発生から約40数分後、吉野川や新町川などの河川を逆遡上する形で内陸部へも浸水が広がる。防災DBの分析では、津波浸水リスクを持つ市内メッシュ数は13万7,803、高潮を含む沿岸リスクメッシュは2万400に達する。

2025年9月に徳島県が公表した最新の津波浸水想定では、徳島市の浸水面積は40.1km²(旧想定の57.5km²から縮小)となっている。縮小の背景には最新の地形データ反映があるが、40km²超が浸水するという事実に変わりはない。

南海トラフ地震の後には、吉野川本川も揺れによる堤防損傷の可能性がある。津波と河川洪水が複合的に発生する「複合水害」を想定した避難計画を持つことが徳島市民には特に求められる。


土砂災害リスク——市内138箇所のハザード区域

山地が市域の南東部を占める徳島市では、土砂災害警戒区域(土砂災害ハザード区域)が市内に138箇所存在する(防災DBデータ)。防災DBの125mメッシュ解析では、土砂災害リスクを持つメッシュ数は6,268にのぼる。

土砂災害スコアは50(5段階中「中程度」)で、洪水・津波ほどの絶対的リスクではないものの、台風や集中豪雨の際に上流部の土砂崩れが下流の市街地に影響するケースが過去にも発生している。山裾に居住・通勤する方は徳島市土砂災害ハザードマップでの自宅位置の確認が必須だ。


地震リスク——中央構造線断層帯と南海トラフの二重リスク

徳島市の地震リスクを高める要因は二つある。一つはプレート境界型の南海トラフ巨大地震、もう一つは徳島県を縦断する活断層帯だ。

防災DBの地盤データ(2024年公表の確率論的地震動予測)によれば、徳島市内の震度6弱以上が30年以内に発生する確率は市内平均56.1%、最大地点で80.5%に達する。これは関東平野や東南海エリアと並ぶ国内最上位クラスの数値だ。

活断層リスクとして特に注目されるのが中央構造線断層帯だ。日本最長級の断層システムである中央構造線は徳島県を横断しており、同断層帯の複数区間が徳島市の近傍に位置する。なかでも「中央構造線赤石山地西縁断層帯(M7.7、30年確率0.18%)」や「中央構造線断層帯(五条谷区間、M6.8、30年確率0.31%)」は、単体断層としても無視できない活動確率を持つ。

市内の地盤の平均Avs30(地表から30mまでの地盤のS波速度)は437.8 m/s——これは沖積地(河川が運んだ堆積物)としては比較的硬い部類だが、吉野川デルタの充填堆積物が多い区域では局所的に軟弱な地盤も存在する。


主要避難施設一覧

防災DBが保有するデータでは、徳島市内の避難施設は333箇所(うち広域避難場所11箇所)が登録されている。以下に主要な広域避難場所を示す。

施設名 住所 種別
徳島中央公園 徳島市徳島町城内1番外 広域避難場所
城南高校 徳島市城南町二丁目2番88号 広域避難場所・避難所
ふれあい健康館 徳島市沖浜東2丁目16番地 広域避難場所
山城公園 徳島市沖浜東3丁目20番地 広域避難場所
津田小学校 徳島市津田西町二丁目5番27号 広域避難場所・避難所
富田中学校 徳島市中昭和町3丁目77番地 広域避難所(津波避難対応)
市立高校 徳島市北沖洲1丁目15-60 広域避難所
徳島大学総合運動場 徳島市北常三島町3丁目41-1 広域避難所
田宮公園 徳島市南田宮2丁目73-1 広域避難所
蔵本公園 徳島市庄町1丁目76番地の2 広域避難所・避難所
しらさぎ台中央グラウンド 徳島市上八万町西山 広域避難所

重要:津波避難については、「広域避難場所」が必ずしも津波安全圏とは限らない。津波避難は高台・頑丈な高層建物への垂直避難が基本となる。富田中学校や市内の津波避難ビル指定施設を事前に確認しておくこと。


今からできる備え

1. 自宅の浸水リスクを確認する

まず徳島市洪水・高潮ハザードマップで自宅・職場の浸水想定深を確認する。「河川が氾濫したとき何mの水が来るか」を知ることが避難判断の基礎だ。

2. 複数の避難シナリオを想定する

徳島市では「洪水のみ」「津波のみ」「洪水+津波の複合」という3つのシナリオが現実の脅威となる。それぞれの場合に「いつ・どこへ・どうやって逃げるか」を家族で事前に決めておくことが重要だ。南海トラフ地震の場合、電話・交通機関がすべてマヒする可能性があるため、集合場所と連絡手段をあらかじめ決めておく。

3. 公式防災情報を定期的に確認する

  • 徳島市防災マップ(総合): https://www.city.tokushima.tokushima.jp/smph/anzen/shoubo_bousai/disaster_prevention/bousai_map/index.html
  • 洪水・高潮ハザードマップ: https://www.city.tokushima.tokushima.jp/anzen/shoubo_bousai/disaster_prevention/bousai_map/kohzuitakashio.html
  • 土砂災害ハザードマップ: https://www.city.tokushima.tokushima.jp/anzen/shoubo_bousai/disaster_prevention/bousai_map/hazard_map/index.html
  • 徳島県防災・減災マップ: https://maps.pref.tokushima.lg.jp/bousai/

4. 早めの避難を心がける

吉野川の洪水は「上流で降った雨」が数時間後に下流の徳島市に到達する。気象警報が出る前から増水が始まる可能性があるため、台風接近時には気象庁・国土交通省の河川水位情報をこまめに確認し、避難判断を早めることが命を守る。

防災DBでは徳島市の全ハザードデータを無料で確認できる。自宅周辺のメッシュ単位のリスクデータを活用してほしい。


データ出典

出典 内容 URL
防災DB(bousaidb.jp) 統合リスクスコア、125mメッシュ浸水・地震・地盤データ https://bousaidb.jp/
国土数値情報(避難施設) 市内333箇所の避難施設データ 国土交通省
NIED自然災害データベース 過去の災害事例(2019年・2020年台風) 防災科研
四国地方整備局 吉野川河川事務所 江戸時代〜近代の洪水歴史(御国水・室戸台風等) https://www.skr.mlit.go.jp/tokushima/
徳島県 洪水遺産情報 江戸時代〜昭和の洪水被害記録 https://www.pref.tokushima.lg.jp/ippannokata/kendozukuri/kasen/7204515/
徳島県 津波浸水想定(2025年9月公表) 南海トラフ地震による徳島市の浸水面積40.1km² https://www.pref.tokushima.lg.jp/anshin/kinkyu/saigai-info/7247695/
地震調査研究推進本部(J-SHIS準拠) 活断層データ(中央構造線断層帯)・地盤情報 防災科研
徳島市防災マップ 市公式ハザードマップ(洪水・高潮・土砂災害) https://www.city.tokushima.tokushima.jp/smph/anzen/shoubo_bousai/disaster_prevention/bousai_map/index.html

本記事は2026年4月時点の公開データに基づいて作成しました。ハザードマップや被害想定は自治体・公的機関による改定が行われる場合があります。最新情報は各リンク先でご確認ください。

著者:防災DB編集部