千葉県富里市の災害リスクと過去の被害年表|洪水・地震・台風から命を守る

防災DB編集部 | 2024年時点のデータに基づく


千葉県富里市は、防災DBの統合リスク評価でスコア89(極めて高い)を記録する、千葉県内でも突出してリスクの高い自治体だ。利根川・根木名川・高崎川・栗山川という複数の河川に囲まれた低台地地形が洪水リスクを高め、南関東特有の高い地震確率が追い打ちをかける。2019年の房総半島台風では死者1名・一部損壊912棟の被害を受け、2011年の東日本大震災でも全壊11棟・一部損壊690棟が確認されている。この市で暮らし、働く人が把握しておくべき災害リスクの全体像を、公的データと過去の記録から整理した。


富里市の災害リスクの特徴

富里市(人口約5万人)は成田国際空港の南西に隣接する台地状の市域で、下総台地の緩やかな起伏が市内に複数の谷津(やつ)を形成している。この谷津地形が問題だ。台地面は比較的安定しているが、谷津の低地部は古来から水が集まりやすく、根木名川・高崎川といった中小河川の流域では繰り返し浸水が発生してきた。

さらに、市の北縁では利根川の洪水浸水想定区域が広がる。利根川は「坂東太郎」の異名をもつ日本最大級の河川であり、堤防決壊時の影響範囲は市域全体に及ぶ可能性がある。

地震リスクについては、防災DBの125mメッシュ解析によると、富里市全域で30年以内に震度5弱以上の揺れを経験する確率は平均99.99%(実質確実)、震度6弱以上でも平均60.61%、最大値では99.68%に達する。表層地盤のS波速度(AVS30)の市内平均は271.9 m/sで、やや軟弱な地盤が地震動を増幅させる傾向がある点も見逃せない。


過去の主要災害(詳細)

令和元年房総半島台風(2019年9月9日)― 未曾有の暴風と長期停電

台風15号は2019年9月9日未明に千葉県に上陸し、富里市でも最大瞬間風速が記録的な値を記録した。富里市が受けた主な被害:

  • 死者1名・重傷者1名
  • 全壊2棟・半壊19棟・一部損壊912棟
  • 広域停電(千葉県内最大約93万戸に及ぶ停電の一部)
  • 2019年9月14日〜26日まで災害救助法が適用

特に深刻だったのは停電の長期化だ。千葉県内全体で送電設備が甚大な被害を受け、富里市でも停電が数日〜数週間にわたって続いた地域があった。猛暑の中でエアコンが使えず、電動の医療機器が使えない市民が発生した。ふるさとチョイス災害支援 富里市

東日本大震災(2011年3月11日)― 液状化・建物被害

2011年3月11日のM9.0の地震では、富里市でも相当の揺れが生じた。記録された建物被害:

  • 全壊11棟・半壊7棟・一部損壊690棟

下総台地の縁辺部では液状化現象も報告されており、谷津の埋め立て地や旧河川沿いの軟弱地盤が被害を大きくした。

1991年の連続水害

1991年は特に水害が多発した年だった。

  • 1991年9月8日:床上浸水2棟・床下浸水3棟
  • 1991年9月19日(台風17・18・19号):床下浸水10棟・一部損壊3棟
  • 1991年10月6日:床上浸水9棟・床下浸水71棟・一部損壊2棟

10月の被害は1シーズンの中では最大規模で、台風の連続上陸と前線の刺激により根木名川・高崎川流域の低地が広範囲にわたって浸水した。

昭和期以降の水害の繰り返し

NIEDデータが示す通り、富里市(旧富里村・富里町時代を含む)は1989年から2013年にかけて毎数年のペースで浸水被害を経験している。その背景には「根木名川の蛇行と低地への流下」という地形的な宿命がある。根木名川流域の河川改修は昭和7年(1932年)から着手され、現在の治水能力は当初の約10倍に改善されているが、それでも浸水リスクはゼロではない。

歴史的な大地震の記録

富里市地域防災計画には、江戸時代・明治時代以降の地震記録も収録されている:

年月日 地震名 規模
1703年12月31日 元禄地震 推定M8.1〜8.2
1854年12月23日 安政東海地震 M8.4
1855年11月11日 安政江戸地震 M6.9
1923年9月1日 関東大震災 M7.9
1960年5月23日 チリ地震津波 遠地津波
1987年12月17日 千葉県東方沖地震 M6.7
2005年7月23日 千葉県北西部地震 M6.0
2011年3月11日 東日本大震災 M9.0
2012年3月14日 千葉県東方沖地震 M6.1

元禄地震・関東大震災といった巨大地震では千葉県内にも甚大な被害が及んだことが史料から確認されており、富里市域も揺れと津波の影響圏にあった。


過去の災害年表(全記録)

月日 種別 災害名 主な被害
1703 12/31 地震 元禄地震 (広域被害)
1854 12/23 地震 安政東海地震 (広域被害)
1855 11/11 地震 安政江戸地震 (広域被害)
1923 9/1 地震 関東大震災 (広域被害)
1960 5/23 地震 チリ地震津波 (遠地津波)
1987 12/17 地震 千葉県東方沖地震
1989 8/1 洪水 台風11・12・13号 床上1・床下4
1990 11/4 洪水 床上1
1991 9/8 洪水 床上2・床下3
1991 9/19 洪水 台風17・18・19号 床下10・一部損壊3
1991 10/6 洪水 床上9・床下71・一部損壊2
1993 8/26 台風 梅雨前線・台風7・11号 床下1
1995 5/15 台風 床下1
1996 7/5 台風 一部損壊6
2002 7/16 台風 台風7号 床上3・床下3
2002 10/1 台風 台風21号 一部損壊2
2004 9/4 台風 床下6
2004 10/9 台風 台風22号・前線 床下14
2004 10/20 台風 台風23号・前線 床下13
2005 4/11 地震 千葉県北東部地震
2005 7/23 地震 千葉県北西部地震
2005 8/25 台風 台風11号
2006 10/6 洪水
2011 3/11 地震 東日本大震災 全壊11・半壊7・一部損壊690
2012 3/14 地震 千葉県東方沖地震
2012 4/29 地震
2013 10/25 洪水 台風26号 床上5・床下29
2019 9/9 台風 房総半島台風 死1・全壊2・半壊19・一部損壊912
2019 10 台風 令和元年東日本台風 (広域被害)

なぜ富里市は洪水に弱いのか

富里市の水害リスクを理解するには、市内を流れる4本の河川の特性を把握する必要がある。

防災DBの洪水浸水想定データ(125mメッシュ、2024年時点)をもとにした主要河川別のリスク:

河川名 浸水面積(推計) 想定最大浸水深 継続時間
利根川 約2,270ha相当 5m以上 最大336時間(14日間)
根木名川 約1,210ha相当 20m以上 最大168時間(7日間)
高崎川 約600ha相当 20m以上 最大168時間
栗山川 約550ha相当 5m以上 最大168時間
木戸川 約430ha相当 3m以上 最大168時間
作田川 約220ha相当 5m以上 最大72時間

※ 根木名川・高崎川の「20m以上」は浸水想定の最上位区分。谷底の一部低地が深刻な浸水を想定している。

浸水深の具体的なイメージ:
- 0.5m以上:歩行困難・車は通行不能
- 1m(床上浸水):1階は水没、逃げ遅れると命の危険
- 3m:1階天井近くまで水没
- 5m:2階床上まで水没

利根川の「14日間浸水」という数値が示すように、大規模洪水時には長期間にわたって孤立する危険がある。高台への事前避難が絶対条件だ。

根木名川は下総台地を深く刻んで流れる一級河川で、古来から洪水を繰り返してきた。昭和7年(1932年)から河川改修が開始され、現在の治水能力は改修前の約10倍に向上しているが、市の防災計画では引き続き最重要リスク河川として位置づけられている。


地震リスク

富里市には市名を冠した活断層の記録はないが、周辺地域全体に南関東特有の高い地震確率が分布している。

防災DBの125mメッシュ地震確率データ(2024年版):

指標 市内平均 市内最大値
30年以内に震度5弱以上 99.99% 100%
30年以内に震度6弱以上 60.61% 99.68%
表層地盤AVS30 271.9 m/s

震度6弱以上の確率が市内平均で60%超というのは、「3人に1.5人が次の30年で震度6弱以上の揺れを経験する」水準だ。表層地盤のAVS30が低い(軟弱な)エリアでは、地盤増幅によってさらに強い揺れになる可能性がある。特に谷津低地や旧河川跡の埋め立て地では液状化リスクも高い。

東日本大震災では一部損壊690棟という建物被害が記録されている。次の大地震(首都直下地震・南海トラフ巨大地震の影響波及)では、老朽建物や谷津低地の液状化被害がより深刻になりうる。


土砂災害リスク

富里市内では土砂災害警戒区域等が28か所指定されており、防災DBの125mメッシュ分析では181メッシュ(約2.8km²)に土砂災害リスクが分布している。谷津の急斜面部分で集中しており、根木名川・高崎川沿いの谷壁が主なリスクゾーンだ。

台風・大雨時には洪水と土砂崩れが同時多発する危険がある。谷津沿いに立地する住宅は、ハザードマップで自宅の位置を必ず確認してほしい。


指定避難施設一覧

富里市には計58か所の指定避難施設がある。市内に広域避難場所の指定はなく、災害種別に応じて適切な施設への避難が必要だ。主要施設を以下に示す。

施設名 所在地
富里中学校 七栄652-226
富里北中学校 日吉倉1515-31
富里南中学校 十倉127-38
富里小学校 七栄720
富里第一小学校 中沢573-1
富里南小学校 御料4-1
七栄小学校 七栄132-7
ファミリータウン富里集会所 根木名1026-1

避難施設の完全な一覧・ハザードマップは 富里市公式防災マップ で確認できる。


今からできる備え

自治体の公式防災リソース

優先度の高い備え

  1. ハザードマップで自宅の浸水深・土砂リスクを確認:富里市防災マップで自宅・職場の位置を確認し、浸水深が1m以上の区域にある場合は早期避難の判断基準を家族で共有する。
  2. 洪水時は台風接近前に避難:根木名川・高崎川沿いの低地では「台風が接近する前」の先行避難が基本。増水してからでは手遅れになる。
  3. 停電対策:2019年の教訓から、富里市では停電の長期化を想定した備えが必須。充電バッテリー・ガスコンロ・水の備蓄(1人3日分×3日=9L)を用意する。
  4. 建物の耐震化:震度6弱以上確率60%という数値を前に、旧耐震基準(1981年以前)の建物は耐震診断・補強を検討する。
  5. 避難経路の事前確認:洪水・地震・台風ごとに最寄りの避難施設と経路を確認しておく。夜間・停電下でも辿り着けるルートを昼間に歩いて確認しておくこと。

データ出典

本記事は以下のデータに基づいて作成しました。

データ 出典 時点
統合リスクスコア・洪水浸水想定 防災DB(bousaidb.jp)(国土交通省・千葉県公開データを統合処理) 2024年
過去の災害記録 国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害情報室 富里市地域防災計画(平成29年3月修正)収録データ
地震確率(震度別30年確率) 防災DB(地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図2024年版」を統合) 2024年版
表層地盤AVS30 防災DB(J-SHISデータを125mメッシュ統合) 2024年時点
土砂災害警戒区域 防災DB(千葉県公開の土砂災害警戒区域データを統合) 2024年
避難施設 国土数値情報(nlftp_p20_evacuation_site)、富里市公式情報 2024年時点
令和元年台風15号被害 内閣府防災情報ページ・千葉県・ふるさとチョイス災害支援 2019年
根木名川・地形情報 富里市公式HP・Wikipedia(根木名川・高崎川記事)
富里市公式防災マップ https://www.city.tomisato.lg.jp/0000007583.html

本記事は公的データに基づき防災DB編集部が作成しました。データの性質上、実際の被害想定は現地の状況や気象条件によって異なります。最終的な避難判断は自治体の指示に従ってください。