十和田市の災害リスクと歴史|1968年十勝沖地震・洪水が繰り返す内陸盆地の防災ガイド

青森県南部に位置する十和田市は、十和田湖と奥入瀬渓谷で知られる内陸の都市だ。観光地としての顔とは裏腹に、防災DBの統合リスクスコアは83点(極めて高い)に達する。過去の記録をさかのぼると、1935年から1999年の間に少なくとも56件の風水害・地震被害が記録されており、特に1968年の十勝沖地震では市内で死者4名、全壊301棟、一部損壊7,000棟超という壊滅的な被害を受けた。奥入瀬川・馬淵川・高瀬川という3本の主要河川が市街地を取り囲む地形は、大雨のたびに広域浸水を引き起こすリスクを抱えている。


十和田市の災害リスクの特徴——なぜ内陸都市でスコアが高いのか

十和田市の面積は724.3km²。市の南西部に十和田湖・八甲田山系の山地が広がり、市街地(三本木地区)は北側の低地に展開する。この地形が、大雨時の洪水リスクを増幅させている。

防災DBが125mメッシュ単位で解析した結果によれば、市内には以下の数値が記録されている。

リスク種別 スコア 主な根拠
洪水 100/100 奥入瀬川・馬淵川等で最大10m浸水想定
地震 85/100 震度6弱以上30年確率 最大45.4%
土砂災害 50/100 土砂災害ハザード区域 100カ所
液状化 20/100 低地部に分布

洪水スコアが満点(100点)なのは、市内を流れる複数の河川の氾濫想定が非常に大きいためだ。防災DBのデータでは、高瀬川・奥入瀬川・馬淵川・五戸川・赤川の5河川が市域にハザードエリアを持ち、中でも馬淵川の浸水想定は市内252,000メッシュ(125m四方換算)に及ぶ。

また市街地の地盤(平均Avs30 = 379 m/s)は比較的軟弱な部分を含んでおり、大きな地震が起きた際の揺れの増幅が懸念される。


過去の主要災害——記録された被害を振り返る

1968年十勝沖地震(M7.9)——市内最大の被害

十和田市が経験した最大の災害は、1968年5月16日に発生した十勝沖地震(気象庁Mw8.2)だ。三八上北地方に深刻な被害をもたらしたこの地震では、青森県全体で死者52名、全壊673棟という被害が生じた(Wikipediaおよび青森県防災ホームページより)。

十和田市地域防災計画資料編(NIEDデータベース収録)によれば、十和田市単独での被害は死者4名、全壊301棟、半壊1,619棟、一部損壊7,000棟。旧三本木市域を含む当時の市全域が揺れに曝され、建物の多くが大正〜昭和初期の古い木造構造だったことが被害を拡大させたとされる。また同地震はNIEDデータベースでは「地震による振動および地盤被害(saigai_syurui=1)」として分類されており、地滑りや盛土の崩壊による死亡も含まれる。

地震後、十和田市は耐震基準の見直しや建物強化を進めたが、1994年12月28日の三陸はるか沖地震(M7.6)でも半壊12棟・一部損壊103棟の被害が記録されている。

1958年狩野川台風——洪水で死者2名

1958年9月26日〜27日の狩野川台風(台風22号)は、東日本を中心に記録的な豪雨をもたらした。十和田市でも奥入瀬川・高瀬川等が氾濫し、死者2名、床上浸水190棟、床下浸水75棟の被害が発生している(NIEDデータベース)。同台風は狩野川(静岡県)での甚大な被害でよく知られるが、東北・青森県にも遡上した前線との複合降雨が十和田地域を直撃した。

1991年台風17・18・19号——家屋被害176棟超

1991年9月28日の複合台風(平成3年台風)による被害では、市内で全壊1棟・半壊31棟・一部損壊176棟(2記録の合計)が記録されている。浸水被害には至らなかったものの、強風と長雨による家屋への打撃は無視できない。

1999年10月洪水——床上36棟・河川被害44箇所

1999年10月28日の洪水(台風・前線性豪雨)では、床上浸水36棟・床下浸水65棟・一部損壊5棟、河川被害44箇所が報告されている。この記録は十和田市地域防災計画資料編に収録されており、市内各所の排水施設・護岸が被害を受けた。

過去災害年表(主要記録)

以下は、NIEDデータベースに収録された十和田市の主要な災害記録の一覧だ(1958年以降)。

災害名・種別 主な被害
1958 9 狩野川台風(洪水) 死者2名, 床上190, 床下75
1963 8 火災(saigai=36) 死者1名, 床上2, 床下4
1968 5 十勝沖地震(M7.9) 死者4名, 全壊301, 半壊1,619, 一部損壊7,000
1975 8 台風5・6号 床上34, 床下245, 全壊1, 半壊5
1986 8 台風10号 床下6, 河川21
1990 10 洪水 床上20, 床下62, 一部損壊15, 河川63
1991 9 台風17・18・19号 全壊1, 半壊31, 一部損壊176
1994-95 12-1 三陸はるか沖地震(M7.6) 半壊12, 一部損壊104
1998 9 台風第5号 床下6, 河川3
1999 10 豪雨・洪水 床上36, 床下65, 一部損壊5, 河川44

出典: NIED自然災害データベース(十和田市地域防災計画-資料編)


洪水・浸水リスク——奥入瀬川と馬淵川に挟まれた市街地

十和田市市街地(三本木地区)は、北東を奥入瀬川、南東を馬淵川に囲まれた低地に広がる。防災DBの125mメッシュ解析では、市内の主要河川の浸水想定は以下の通りだ(2024年時点のハザードマップ反映値)。

河川名 浸水ハザードメッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大浸水継続時間
高瀬川 2,102 5.0m 1.0m 336時間(14日)
奥入瀬川 1,801 10.0m 1.4m 72時間(3日)
馬淵川 1,665 10.0m 4.6m(平均) 168時間(7日)
五戸川 853 5.0m 2.7m 168時間
赤川 271 10.0m 1.8m 336時間
浅水川 267 5.0m 1.3m 72時間

特に見逃せないのは馬淵川の平均浸水深4.6mという数値だ。浸水深4〜5mは2階の窓際に達する水深を意味する。馬淵川は上流から大量の水を集める大規模河川で、岩手・青森両県を流れ太平洋に注ぐ。計画規模の降水(100年に1回程度)が起きれば、馬淵川沿いの低地部は広域にわたって深刻な浸水に見舞われる可能性がある。

浸水深の目安:
- 0.5m以下: 膝丈程度、歩行は可能
- 1m: 腰丈、歩行困難
- 3m: 1階天井まで、屋外脱出は不可
- 5m: 2階の窓際まで
- 10m: 3階建て建物の屋根に達する

奥入瀬川についても、10m想定のメッシュが1,800カ所超に存在する。奥入瀬川は十和田湖を水源とするため、通常は水量が安定しているが、流域で集中豪雨が発生した場合の外水氾濫リスクは高い。


土砂災害リスク——八甲田山麓と山間集落

市内の土砂災害ハザード区域数は100カ所(防災DB集計)。防災DBの125mメッシュ解析では、市内の土砂災害リスクエリアは3,820メッシュにのぼる。

市域の南西部に広がる八甲田山麓・十和田湖周辺の急峻な地形が、土砂災害の主要リスクゾーンだ。特に、奥入瀬渓谷沿いの集落(奥瀬地区)は急斜面に面した立地であり、大雨時の土石流・地滑りに注意が必要だ。

十和田市は「土砂災害ハザードマップ」を作成しており、各地区の土砂災害警戒区域(イエローゾーン)・特別警戒区域(レッドゾーン)を確認できる(公式ページ参照)。


地震リスク——十勝沖地震が繰り返す三八上北地方

十和田市が位置する三八上北(さんぱちかみきた)地方は、過去に繰り返し太平洋沖の地震(三陸沖・十勝沖)の強い揺れに見舞われてきた。

防災DBの125mメッシュ解析による市内の地震確率(全国地震動予測地図2024年版ベース)は以下の通りだ。

指標 市内平均 市内最大
震度6弱以上(30年確率) 6.1% 45.4%
震度5弱以上(30年確率) 68.5% 99.6%

震度6弱以上の30年確率が最大45.4%というエリアが市内に存在する。これは「30年間で約2回に1回、震度6弱以上の揺れが起きる可能性がある」という意味だ。市の地盤の平均Avs30(表層地盤S波速度)は379 m/sだが、低地部では軟弱な沖積層が分布しており、揺れの増幅が起きやすい。

近傍の活断層(主要なもの)

断層名 想定M 30年確率
岩木山南麓断層帯 M6.6 0.85%
青森湾西岸断層帯 M6.8 0.66%
津軽山地西縁断層帯南部 M6.6 データなし

岩木山南麓断層帯・青森湾西岸断層帯はいずれも青森西部に位置するが、十和田市への影響も否定できない。また、1968年の十勝沖地震・1994年の三陸はるか沖地震のような海溝型の大規模地震は、これらの活断層とは別のメカニズムで周期的に発生することが知られている。


避難施設一覧(主要67箇所から抜粋)

十和田市内には67の避難施設が指定されている(指定避難所。2024年時点)。以下は市街地中心部および十和田湖周辺の主要施設の一部だ。

施設名 住所 施設種別
中央公民館 西十三番町1番1号 避難所
三本木小学校 東三番町36-1 避難所
三本木中学校 西十三番町5-24 避難所
三本木高等学校 西五番町7-1 避難所
保健センター 西十三番町4-37 避難所
北園小学校 西十一番町50-18 避難所
十和田湖小学校 奥瀬十和田16 避難所
十和田湖体育館 大字奥瀬字生内101番28 避難所
十和田湖公民館 大字奥瀬字下川目126番地 避難所

十和田湖周辺の3施設は市街地から約30〜40km離れており、十和田湖地区の住民にとって重要な一次避難先となっている。

なお現時点では、市内に「広域避難場所」は設定されていない(防災DBデータ)。自治体のハザードマップで最新の避難所情報を確認することを強く推奨する。


今からできる備え

1. ハザードマップで自宅のリスクを確認する

十和田市は洪水・土砂災害・地震・火山の統合防災ハザードマップを公開している。

ハザードマップを開いたら、まず自宅の住所を確認し、洪水浸水深の色区分(黄=0.5m〜、橙=3m〜、赤=5m〜)を把握することから始めよう。

2. 避難経路を事前に歩いて確認する

馬淵川・奥入瀬川の氾濫は「夜間の急激な増水」という形で発生することが多い。暗闇でも迷わず避難できるよう、昼間に避難経路を歩いて確認しておくことが重要だ。特に河川沿いの低地に住む方は、浸水前に安全な高台へ向かうルートを2〜3通り用意しておくとよい。

3. 備蓄と防災グッズの準備

1968年十勝沖地震の際、市内では建物被害が7,000棟超に達し、インフラが長期間機能しない状況に追い込まれた。食料・水(1人1日3リットル×最低3日分)、医薬品、懐中電灯、充電器の準備は最低限の備えだ。

4. 防災DBで詳細データを確認する

防災DB(bousaidb.jp)では、十和田市の125mメッシュ単位の洪水・地震・土砂災害リスクを地図上で確認できる。自宅の座標を入力することで、より精緻なリスク評価が可能だ(登録不要・完全無料)。


データ出典

本記事は以下のデータソースに基づいて作成されている。

データ 提供元 内容
統合リスクスコア・洪水・地震・土砂ハザードデータ 防災DB(125mメッシュ解析) 2024年時点
災害事例(56件) 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース 十和田市地域防災計画-資料編より収録
市区町村マスタ 国土数値情報(国土交通省) 市区町村コード02206
避難場所データ 国土数値情報 P20(指定緊急避難場所) 67箇所
活断層データ 全国活断層帯情報(地震調査研究推進本部) fault_master収録
地震確率 全国地震動予測地図2024年版(地震調査研究推進本部) 30年確率
1968年十勝沖地震被害 Wikipedia、青森県防災ホームページ 青森県全域の被害数値
ハザードマップURL 十和田市公式ホームページ 2026年4月確認

著者: 防災DB編集部 / 最終更新: 2026年4月

本記事は公開データに基づく情報提供を目的としています。避難判断や防災対策の最終確認は、十和田市の公式ハザードマップおよび地域防災計画を参照してください。