浦安市の災害リスクと歴史|液状化・洪水・高潮が重なる「三重リスク地帯」

東京ディズニーリゾートの街として知られる千葉県浦安市。人口約17万人、首都圏有数の住宅都市でありながら、この市は洪水・津波・高潮・地震・液状化のすべてにおいて最高水準のリスクを抱える。防災DBの統合リスクスコアは100点満点中91点(極めて高い)——関東地方でも最上位の危険度だ。

市面積の約75%が東京湾の埋立地で構成され、江戸川・荒川・利根川という一級河川の下流域に位置する。過去320年の記録には、繰り返し壊滅的な被害をもたらしてきた地震と台風の歴史が刻まれている。とりわけ2011年の東日本大震災では、液状化が市面積の86%に及ぶという前例のない被害が発生した。

この記事では、防災DBの125mメッシュ解析データ・NIEDの災害事例データ・浦安市公式記録をもとに、浦安市が抱える多層的な災害リスクを解説する。


なぜ浦安市は「日本有数の高リスク地帯」なのか

市面積の75%が埋立地という地盤の弱点

浦安市の原型は、旧江戸川河口に広がる漁業の町「元町」だった。1964年から始まった大規模な公有水面埋立によって市域は約4倍に拡大。現在の中町・新町エリアはすべて東京湾の埋立地であり、元の地盤(元町地区)は市面積のわずか25%にすぎない。

この地形的特徴が、あらゆる災害リスクを増幅させている。

防災DBの125mメッシュ地盤データによると、浦安市の平均S波速度(Avs30)は123.2 m/s——一般的な住宅地の目安である200 m/s前後を大きく下回り、地震動増幅率の平均は1.81倍に達する。これは揺れが約1.8倍に増幅されて地表に伝わることを意味する。

地区 地盤の性質 液状化リスク
元町 旧来の沖積地盤 比較的低い
中町 1960〜70年代埋立 高い
新町 1970〜80年代埋立 最も高い

埋立時期が新しいほど地盤が軟弱で液状化リスクが高い——これは2011年の東日本大震災被害が証明した事実である。

三方を囲む洪水リスク

浦安市の西を旧江戸川が流れ、北側(市川市越し)には江戸川・荒川・利根川という関東有数の大河川が控える。防災DBの洪水浸水想定データでは、市内の洪水リスクメッシュは江戸川由来が647メッシュ(最大浸水深3m)、荒川由来が573メッシュ(最大浸水深5m)に及ぶ。

荒川が決壊した場合、浦安市の広範囲が最大5mの浸水に見舞われると想定されている。5mとは2階の床上に相当する水位だ。

さらに市の東・南は東京湾に直接面しており、高潮・津波の影響を受ける沿岸メッシュは2,706メッシュ——市全域に匹敵する面積が津波・高潮浸水想定区域に含まれる。


主要災害の記録

2011年3月11日 東日本大震災による液状化(NIEDデータ未収録)

浦安市史上最大の被害をもたらしたこの災害は、国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)の当データセットには未収録だが、浦安市公式記録をもとに以下を記す。

2011年3月11日14時46分、三陸沖を震源とする東日本大震災(Mw9.0)が発生。東京湾奥の浦安市は震度5強の揺れを観測したが、地震そのものよりも壊滅的だったのが液状化現象だった。

軟弱な埋立地盤に地震動が加わり、地中の砂が液体状になって地表に噴き出した。公式記録が示す被害規模は以下の通り(浦安市「東日本大震災 浦安市の記録」より):

  • 液状化面積: 約1,455ha(市面積の約86%)
  • 住宅被害棟数: 9,154棟
  • うち半壊以上(傾斜1/100以上): 約3,700棟
  • 被災世帯数: 37,023世帯(全世帯の約52%)
  • 被災者数: 96,473人
  • 道路被害延長: 111.8km
  • 断水世帯: 約35,000世帯(全体の約46%)
  • 下水道使用停止・制限: 約37,000世帯

元町地区では地盤被害がほとんど発生しなかった一方、中町・新町の埋立地では建物が傾き、道路は波打ち、マンホールが地表に突き出す光景が広がった。上水道の応急復旧には震災から27日を要した。

浦安市はこの教訓を受け、液状化対策技術検討委員会を設置。市が関与した格子状改良工法など液状化対策の研究が進んだが、私有地の対策費用をめぐる費用負担問題は長期的な課題となった。

1949年8月 キティ台風(罹災率93%)

「キティ台風」は1949年8月31日に東京湾を直撃した台風で、満潮と重なった高潮が低地の浦安を飲み込んだ。

浦安市の記録によれば、当時の人口15,260人のうち14,182人が罹災(罹災率93%)。3,240戸のうち2,419戸が被害を受け(約75%)、浦安の7割以上が床上浸水した。埋立以前、浦安は東京湾沿岸の標高の低い漁村であり、高潮に対して極めて無防備だった。この災害が、後の堤防整備を促す契機のひとつとなった。

1923年9月1日 関東大震災

1923年9月1日11時58分、相模トラフを震源とするM7.9の関東地震が発生。現在の浦安市域(当時は千葉県香取郡浦安町)でも強い揺れが記録されている。東京湾沿岸一帯に甚大な被害をもたらした大災害として記録に残る。

1987年12月17日 千葉県東方沖地震

1987年12月17日、千葉県東方沖を震源とするM6.7の地震が発生。NIEDデータに浦安市での記録が残る。詳細な建物被害数値は記録されていないが、埋立地で液状化の前兆とも見られる地盤変動が確認されており、2011年の大規模液状化を予見させる事例として研究者の注目を集めた。

2019年9月 令和元年台風第15号(房総半島台風)

2019年9月9日、台風15号(房総半島台風)が千葉県に上陸。浦安市では一部損壊が27棟記録された(出典:NIED)。千葉県内では最大瞬間風速57.5 m/sを記録した場所もあり、広域停電が長期化したことで知られる。


浦安市 過去の主要災害年表

月日 災害名 種別 主な被害(浦安市)
1703 12月31日 元禄地震 地震(M8.0-8.2) 記録あり
1855 11月11日 江戸地震(安政江戸地震) 地震(M7.0-7.4) 記録あり
1894 6月20日 明治東京地震 地震(M7.0) 記録あり
1923 9月1日 関東大震災 地震(M7.9) 強振動
1949 8月31日 キティ台風 台風・高潮 罹災率93%・床上浸水約75%
1987 12月17日 千葉県東方沖地震 地震(M6.7) 地盤変動記録
2011 3月11日 東日本大震災 地震(Mw9.0)・液状化 液状化面積86%・被災世帯37,023世帯
2019 9月 令和元年台風15号 台風 一部損壊27棟

出典:NIED自然災害データベース・浦安市公式記録・防災DB


洪水・浸水リスク:多重の河川に挟まれた低地

浦安市は河川氾濫に対して多方向からのリスクにさらされている。

防災DBの洪水浸水想定データ(125mメッシュ解析)によると、主要河川別の浸水リスクは以下の通りだ:

河川名 想定浸水メッシュ数 最大浸水深 浸水継続時間(最大)
江戸川 647メッシュ 3.0m 336時間(約14日)
荒川 573メッシュ 5.0m 336時間(約14日)
利根川 63メッシュ 3.0m 336時間(約14日)
見明川 57メッシュ 3.0m
猫実川 47メッシュ 5.0m 168時間(約7日)

浸水深のイメージ:
- 1m:腰まで浸水。歩行困難
- 3m:1階天井まで浸水。2階に垂直避難が必要
- 5m:2階の床上まで浸水。建物の倒壊リスクも高まる

特に荒川が決壊した場合、浦安市の広範囲が最大5mの浸水に見舞われると想定されている。しかも継続時間が最大336時間(約14日間)——水が引くまで2週間近くかかる可能性がある。浦安市は江戸川の洪水ハザードマップを公式サイトで公開しており、自宅の浸水深は事前に確認しておくべきだ。


高潮・津波リスク:東京湾の沿岸全域が浸水想定区域

浦安市の東・南は東京湾に面しており、防災DBの解析では高潮・津波の影響を受ける沿岸メッシュが2,706メッシュに上る。これは市の陸域メッシュのほぼ全域にあたる規模だ。

1949年のキティ台風は、満潮時に台風が東京湾を直撃する最悪のシナリオが実際に起きたケースだった。現在の堤防整備は当時より大幅に強化されているが、埋立地の地盤高は海面からわずか数mしかなく、大型台風・高潮・海面上昇の組み合わせによるリスクは排除されていない。

浦安市は高潮ハザードマップを作成・公開している。確認は浦安市水害ハザードマップから。


地震リスク:30年以内に震度6弱以上が84%の確率

防災DBの地震確率データ(地震調査研究推進本部・2024年版)によると、浦安市の地震リスクは以下の通りだ:

指標 平均値 最大値
30年以内に震度5弱以上となる確率 100% 100%
30年以内に震度6弱以上となる確率 84.6% 93.4%
表層地盤S波速度(Avs30) 123.2 m/s
地震動増幅率 1.81倍

震度5弱以上は「ほぼ確実」、震度6弱以上は「10回のうち8〜9回は起きる」という水準だ。

軟弱な地盤のため遠方の地震でも揺れが増幅される。液状化リスクスコアは60点——2011年の対策工事が進んでいるとはいえ、新町エリア等では依然としてリスクが残る。東京湾内や内陸に伏在する活断層・海溝型地震(関東地震)のリスクも常に意識すべきだ。


避難場所一覧

浦安市内の主要な避難場所(国土数値情報・避難施設データより)。

施設名 住所
了徳寺大学 明海5-8-1
明海大学 明海1-2-1
東海大学付属浦安高等学校 東野3-11-1
東京学館浦安高等学校 高洲1-23-1
中央公園 富岡4-25
富岡中学校 富岡1-23-1
富岡小学校 富岡1-1-1
入船中学校 入船3-66-3
入船北小学校 入船5-45-1
入船南小学校 入船3-66-1
北部小学校 北栄3-20-1
東小学校 猫実1-11-1
南小学校 堀江5-4-1
堀江中学校 富士見2-19-1
日の出中学校 日の出3-1-2
明海中学校 明海5-5-1
当代島公民館 当代島2-14-1

浦安市の登録避難場所は51か所

⚠️ 重要:高潮・津波・洪水時は、低地にある避難場所が使用できない場合があります。浦安市の洪水・高潮ハザードマップで自宅周辺の浸水域を確認し、安全な場所への垂直避難・水平避難を事前に計画してください。


今からできる備え

1. ハザードマップで自宅リスクを確認する

浦安市は複数のハザードマップを公開している。

2. 液状化リスクを地区別に把握する

自宅が中町・新町エリア(埋立地)にある場合、液状化リスクは元町より高い。浦安市の地区液状化マップや防災DBの液状化データで、自宅周辺の詳細なリスクを確認できる。

3. 地震時の垂直避難を計画する

高潮・津波の浸水リスクがあるため、自宅や周辺の建物で「垂直避難できる高層階」を事前に把握しておくことが重要だ。液状化が発生した場合、道路が歩行困難になる可能性もある。

4. 72時間分以上の備蓄を確認する

2011年の東日本大震災では断水が約27日間続いた。浦安市の公式推奨は7日分以上の飲料水・食料備蓄。ポリタンク・給水袋の準備も有効だ。

問い合わせ先: 浦安市危機管理課 TEL: 047-712-6897


データ出典

データ 出典
統合リスクスコア・125mメッシュ解析 防災DB(bousaidb.jp)/地震調査研究推進本部・国土交通省ハザードマップポータル等の公開データをもとに独自集計
過去の災害事例 国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース
2011年東日本大震災液状化被害 浦安市「東日本大震災 浦安市の記録」(https://www.city.urayasu.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/034/330/1-4.pdf)
1949年キティ台風 浦安市「浦安を襲った水害の記録」(https://www.city.urayasu.lg.jp/todokede/anzen/bousai/1030670/joho/1002113.html)
避難場所データ 国土数値情報 避難施設データ(nlftp_p20)
ハザードマップURL 浦安市公式サイト(https://www.city.urayasu.lg.jp/todokede/anzen/bousai/1030669/index.html)

本記事は2026年4月時点のデータに基づいています。データの更新・詳細確認は各出典をご参照ください。


著者:防災DB編集部|防災DB(bousaidb.jp)