度会町の災害リスク総覧|洪水・南海トラフ津波・地震の3大脅威

著者: 防災DB編集部 | 2026年4月時点のデータ

三重県度会郡に位置する度会町は、防災DBの統合リスクスコアで92点(極めて高い)を記録する、最高危険クラスの自治体のひとつです。洪水・津波・高潮の3カテゴリがいずれもスコア100という異例の評価は、日本有数の清流として知られる宮川が町内を貫流し、南海トラフ地震の津波が河川を遡上するリスクを同時に抱えているためです。

NIEDの過去災害データベースには直接の記録こそ見当たらないものの、1959年の伊勢湾台風、2011年の紀伊半島大水害(台風第12号)では周辺地域が甚大な被害を受けており、同じ宮川流域に位置する度会町も繰り返し水害の脅威にさらされてきた歴史があります。

この記事では、防災DBの125mメッシュ解析データと国土交通省・気象庁の公的情報をもとに、度会町が直面する複合災害リスクを徹底的に整理します。


度会町の地形と、なぜこれほど高リスクなのか

度会町は三重県のほぼ中央南部、伊勢市の南西に隣接する山間の自治体です。面積の大半を山地が占め、その谷間を宮川と複数の支流が流れます。宮川は大台ヶ原山系を水源とし、伊勢湾へと注ぐ全長91kmの大河で、「日本一の清流」と称されるほど水量が豊富です。

この地形が、度会町の災害リスクを複雑かつ深刻にしています。

  • 山から海への急峻な流路: 大量の降雨が一気に宮川へ流れ込み、短時間での急激な水位上昇を引き起こす
  • 宮川を遡上する津波: 南海トラフ巨大地震が発生した場合、伊勢湾に押し寄せた津波が宮川をさかのぼり、内陸の度会町にも到達する可能性がある
  • 山地の地質的不安定さ: 降雨時に土砂崩れが発生しやすい地質で、宮川の急傾斜地に沿って集落が点在する

防災DBのデータによれば、宮川に関わる洪水リスクメッシュは町内で1,917個、津波・高潮に関わる沿岸リスクメッシュは8,899個に達します(125mメッシュ単位)。土地面積の大半がなんらかの浸水リスクエリアに該当することを示しています。


過去の主要災害記録

1959年 伊勢湾台風(台風第15号)

1959年9月26日に紀伊半島南端に上陸した伊勢湾台風は、三重県を直撃し、死者・行方不明者5,000名超という戦後最大の自然災害となりました。度会郡を含む伊勢地方では、宮川の氾濫と高潮が重なり、低地の集落が壊滅的な被害を受けました。最大瞬間風速45.4m/s(津市)、三重県内の死者・行方不明者は約1,800名に達しました。

この台風の教訓から制定された「災害対策基本法」(1961年)は、日本の防災体制の礎となっています。

2011年 紀伊半島大水害(台風第12号)

2011年8月30日〜9月5日にかけて、台風第12号は紀伊半島に記録的な大雨をもたらしました。三重県南部では総降水量が1,000mmを超えた地点もあり、宮川水系の各支流が相次いで氾濫。三重県内では死者・行方不明者が出るとともに、道路・橋梁・農地への被害が広範囲に及びました。

宮川上流部に位置する大台町(旧宮川村)では土石流・崩壊が集中し、国道42号が長期通行止めになるなど、宮川流域全体に深刻な影響が出ました。度会町も宮川の中流域にあたり、同様の増水・土砂崩れリスクにさらされたと考えられます(三重県「紀伊半島大水害の記録」より)。

過去の主要災害 年表

主な災害 規模・影響
1959年9月 伊勢湾台風 三重県内死者・行方不明者約1,800名、宮川大氾濫
2004年9月 台風第21号 宮川水系で土砂崩れ多発(大台町・度会郡)
2011年9月 台風第12号(紀伊半島大水害) 宮川流域で記録的大雨・氾濫
想定 南海トラフ巨大地震 宮川への津波遡上、最大浸水深20m以上(内閣府モデルによる想定)

NIEDデータベース(防災科学技術研究所)の「度会町」直接記録は0件。上記は公的資料・気象庁記録に基づく。


洪水・浸水リスク——宮川を中心とした15河川の脅威

防災DBの125mメッシュ解析(国土交通省の洪水浸水想定区域データに基づく)によれば、度会町には以下の主要河川の洪水リスクが存在します。

主要河川別 洪水浸水リスク

河川名 リスクメッシュ数 最大想定浸水深 平均想定浸水深 最大継続時間
宮川 1,917 10.0m 3.57m 168時間(7日)
蓮川 400 10.0m 2.88m 24時間
一之瀬川 234 10.0m 3.24m 24時間
濁川 153 10.0m 4.53m 24時間
横輪川 136 10.0m 3.87m 24時間
外城田川 519 5.0m 0.55m 72時間
伊勢路川 144 5.0m 1.55m 12時間
村山川 133 5.0m 1.20m 24時間
阪内川 82 5.0m 1.61m 24時間
河内川 80 5.0m 1.01m 24時間
桧尻川 166 3.0m 0.56m 24時間
佐奈川 93 3.0m 0.90m 72時間
江川 79 0.5m 0.50m 72時間
笹笛川 73 0.5m 0.40m 24時間
櫛田川 840 10.0m 2.14m 336時間(14日)

2024年時点のデータ。防災DBが国土交通省洪水浸水想定区域データを125mメッシュに変換して集計。

浸水深の具体的イメージ

宮川の最大想定浸水深10mとは、2階建て住宅の屋根ぎりぎりまで水没するレベルです。

  • 0.5m: ひざ下浸水。歩行が困難になり始める
  • 1m: 腰まで浸水。車の多くが動けなくなる
  • 3m: 1階天井まで浸水。垂直避難で助かる可能性がある
  • 5m: 2階床上まで浸水。2階への避難でも危険
  • 10m: 2階建て建物全体がほぼ水没。高台への避難が必須

宮川の浸水継続時間が168時間(7日間)と極めて長い点も見逃せません。一度浸水すると水が引くまで1週間近くかかりうることを意味し、孤立状態が長期化するリスクがあります。


南海トラフ地震と津波リスク——宮川を遡上する波

度会町の津波スコアが100点という事実は、内陸に位置する山間の町としては驚くべき数値です。

その理由は、宮川を遡上する南海トラフ地震の津波にあります。内閣府の南海トラフ巨大地震モデルによれば、三重県南部沿岸では最大津波高10〜20m超が想定されており、伊勢湾口部から入った津波が宮川本流を数十km遡上する可能性があります。

防災DBの沿岸リスクメッシュ(津波・高潮含む)は、度会町内で8,899個に達します。この数字は、町内の広大な範囲が津波浸水リスクエリアに含まれることを示しています。最大想定浸水深は20m超です。

高潮リスクも同様にスコア100です。伊勢湾台風クラスの台風が再来した場合、高潮と宮川の増水が重なる複合災害のリスクがあります。

南海トラフ地震の発生確率

気象庁・地震調査研究推進本部の評価によれば、南海トラフ地震の30年以内の発生確率は70〜80%です(2024年1月時点)。度会町は「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されており、地震発生時には即時の津波避難が求められます。


地震リスク——震度6弱以上の確率が最大80%

防災DBの125mメッシュ地震確率データ(地震調査研究推進本部・J-SHISデータに基づく)によれば、度会町では:

  • 30年以内に震度6弱以上が発生する確率: 平均44.5%、最大80%
  • 30年以内に震度5弱以上が発生する確率: 平均82.5%、最大96.6%

震度6弱以上とは「立っていられない揺れ」で、固定されていない家具が倒れ、木造建物では壁や柱の破損が生じるレベルです。

近接する主要断層

断層名 想定マグニチュード 30年発生確率 影響メッシュ数
伊勢原断層 M6.6 ほぼ0% 134,940
伊勢湾断層帯主部南部 M6.4 ほぼ0% 148,908
伊勢湾断層帯主部北部 M6.7 ほぼ0% 102,332

30年発生確率「ほぼ0%」はデータ上の評価値。活断層として活動実績があり、発生した場合の影響範囲は広大。出典: 地震調査研究推進本部(2024年)


土砂災害リスク——山間部を縫う急傾斜地

度会町の大半は山地であり、宮川・支流沿いの斜面地に集落が点在します。防災DBのデータでは、土砂災害リスクメッシュは383個(125m単位)。土砂災害ハザード区域(警戒区域)は3箇所が登録されています。

大雨時の崖崩れ・土石流は、宮川を遡上する台風性豪雨と組み合わさることで、避難経路を絶つ複合災害リスクとなります。2011年紀伊半島大水害では、宮川上流部の大台町で土砂崩れが相次いで道路が寸断されました。度会町でも同様の状況が起こりうることを念頭に置く必要があります。


指定避難場所一覧(2024年時点)

度会町には15箇所の指定避難場所があります(広域避難場所の指定なし)。

施設名 住所 施設種別
度会中学校 度会町棚橋300 避難場所
町民体育館 度会町棚橋300 避難場所
中央公民館 度会町棚橋314 避難場所
内城田小学校 度会町棚橋1679-1 避難場所
地域交流センター 度会町(詳細住所あり) 避難場所
中川小学校 度会町麻加江516-1 避難場所
麻加江生活改善センター 度会町麻加江603-2 避難場所
長原保育所 度会町長原365 避難場所
小川郷小学校 度会町中之郷1025 避難場所
中之郷保育所 度会町中之郷1024 避難場所
中之郷生活改善センター 度会町(詳細住所あり) 避難場所
一之瀬小学校 度会町脇出372 避難場所
一之瀬公民館 度会町脇出329 避難場所
南中村保育所 度会町南中村81 避難場所
棚橋保育園 度会町(詳細住所あり) 避難場所

出典: 国土数値情報「避難施設」データ(2024年時点)

注意: 宮川の最大想定浸水深が10mに達する場合、低地の避難場所はそれ自体が浸水する可能性があります。避難前にハザードマップで当該施設の安全性を必ず確認してください。


今からできる備え

1. ハザードマップで自宅・職場の浸水深を確認する

度会町のハザードマップは三重県のポータルから確認できます。

ハザードマップで確認すべき最重要事項は「自宅の想定浸水深」と「最寄りの指定避難場所の標高」です。浸水深が3mを超える地区では、垂直避難(上階)では不十分なケースがあります。

2. 南海トラフ地震「臨時情報」を正しく理解する

2024年から運用が始まった「南海トラフ地震臨時情報」は、大規模地震が発生した際に気象庁が発表するものです。「巨大地震警戒」が発表された場合、度会町では宮川流域の低地・河川沿い住民は即座の高台避難が推奨されます。

3. 7日間分の水・食料を備蓄する

宮川の最大浸水継続時間は168時間(7日間)、櫛田川では336時間(14日間)に達します。「水が引いたら避難所に移動」という想定は通用しないケースがあります。少なくとも1週間分(理想は2週間分)の備蓄が必要です。

4. 家族の連絡手段・避難先を事前に決める

度会町は山間部のため、大雨・地震時に通信障害・道路寸断が起きやすい環境です。家族で事前に集合場所(自宅から徒歩圏内の高台)、広域避難先(伊勢市・度会郡外への避難先)、安否確認方法(NTT災害伝言ダイヤル「171」)を決めておきましょう。

5. 自治体の防災情報を登録する

三重県防災情報システム: https://www.bosaimie.jp/


データ出典

データ 出典 時点
統合リスクスコア(92点) 防災DB(bousaidb.jp) 2024年
洪水浸水想定区域(125mメッシュ) 国土交通省 洪水浸水想定区域データ(防災DBが変換集計) 2024年
宮川洪水浸水想定区域図 国土交通省中部地方整備局 三重河川国道事務所 最新版
地震確率(J-SHIS) 地震調査研究推進本部 確率論的地震動予測地図 2024年
活断層データ 地震調査研究推進本部 断層パラメータ 2024年
過去の災害記録 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース 〜2024年
伊勢湾台風被害 内閣府 報告書(1959 伊勢湾台風) 1959年
台風12号(紀伊半島大水害) 気象庁・三重県「紀伊半島大水害の記録」 2011年
南海トラフ地震発生確率 気象庁 南海トラフ地震 2024年1月
南海トラフ津波高 内閣府 南海トラフの巨大地震モデル 2012年〜
避難施設データ 国土数値情報「避難施設」(nlftp_p20) 2024年