横浜市の災害リスクと過去の被害年表|洪水・地震・津波を徹底解説

横浜市では1923年の関東大震災で2万6,000人超が死亡し、今もなお日本最大の都市型巨大災害の記憶が刻まれています。人口376万人(2024年)を擁する政令指定都市でありながら、洪水・津波・高潮・土砂災害・地震と多種類の災害リスクが重なる。防災DB(bousaidb.jp)の2024年データによれば、横浜市の統合リスクスコアは92点(極めて高い)。これは全国最高水準のリスクを意味します。

この記事では、防災DBの125mメッシュ解析データ・NIEDの災害事例データ・横浜市公式の防災情報をもとに、横浜市の災害リスクと歴史的被害を詳述します。


横浜市の災害リスク概要

防災DBの統合評価(2024年時点):

リスク種別 スコア 評価
統合リスクスコア 92点 極めて高い
洪水リスク 100点 最大浸水深20m超、想定浸水エリア22万4,396メッシュ
津波リスク 100点 最大浸水深20m超、浸水想定エリア13万5,395メッシュ
高潮リスク 100点 臨海低地・埋立地が広範に存在
土砂災害リスク 50点 ハザード区域1,881箇所

洪水・津波・高潮の3種類がいずれも満点の100点という組み合わせは、横浜が「陸と海の両方からの水害リスク」を抱える都市構造を端的に示しています。


なぜ横浜市はこれほど多様な災害に弱いのか

横浜市の地形は大きく3つに分けられます。①鶴見・神奈川・中区等の臨海低地②関内・西区等の帷子川・大岡川流域の谷底低地、そして③内陸の多摩丘陵・三浦半島丘陵の斜面地です。

後氷期(約6,000年前)の海進により、帷子川は横浜駅周辺の3.5km上流まで、大岡川は関内から6km上流まで海水が入り込んでいた「溺れ谷」地形でした(慶應義塾大学の地質研究より)。この時代に堆積した軟弱な海成堆積物が、現在も横浜市低地部の地盤の不安定さの根本原因です。

さらに、戦後の宅地開発で谷戸(やと)と呼ばれる小さな谷を埋めた「盛土地」が市内各所に存在し、これらは液状化と土砂災害の両方のリスク地点になっています。


過去の主要災害

1923年 関東大震災(死者約2万6,623人)

1923年9月1日午前11時58分、相模湾北西部を震源とするマグニチュード7.9の地震が発生。横浜市は震源に最も近い大都市として壊滅的な被害を受けました。

横浜市の被害(神奈川県報告書より)
- 死者:約2万6,623人
- うち火災死:約2万4,646人(死者の約92%)
- 焼失面積:約10km²
- 確認出火地点:289カ所

東京と横浜の2都市だけで、関東大震災全体の死者・行方不明者(約10万5,000人)の約90%が集中しました。横浜公園に集結した約6万人の避難民のうち、53人がその場で命を落とすなど、都市機能が完全に停止しました。なお、本件はNIEDの当データセットには未収録のため、神奈川県公式報告書・内閣府資料をもとに記載しています。

この大震災が、現在の横浜市の「木造密集市街地の解消」「臨海部の防潮堤整備」「地震防災への注力」を行政施策として位置づける原点となりました。


2019年 台風第19号(令和元年東日本台風)

2019年10月12日、日本に上陸した台風第19号は横浜市各地に深刻な被害をもたらしました。

横浜市の被害(NIEDデータより)
- 半壊:25棟
- 一部損壊:443棟
- 床上浸水:2件
- 床下浸水:2件

特に鶴見川・恩田川・柿生川流域での浸水被害が目立ちました。鶴見川は観測史上最高水位を記録し、流域の住宅地に浸水が発生。防災DBのデータによれば、鶴見川流域には最大10m超の浸水想定域が存在し、その継続時間が最大336時間(14日間)にも及ぶ可能性があります。


2019年 台風第15号(令和元年房総半島台風)

2019年9月の台風第15号でも横浜市は被害を受けました。

横浜市の被害(NIEDデータより)
- 一部損壊:831棟
- 半壊:7棟
- 床上浸水:10件
- 床下浸水:4件


2001年7月 大雨(床上浸水107件)

2001年7月25日の大雨では、床上浸水107件、床下浸水144件が発生しました。NIEDデータには1991年以降だけで178件の横浜市関連災害記録があり、毎年のように台風・集中豪雨による浸水・建物被害が繰り返されています。


過去の主要災害年表

NIEDの「横浜市で発生した風水害・地震一覧」データをもとに作成。

発生年月 種別 被害概要
1923年9月 地震(関東大震災) 死者2万6,623人(火災92%)。市街地焦土化
2001年7月 風水害 床上浸水107、床下144
2003年3月 風水害 床上浸水63、床下147
2004年10月 台風22号 床下浸水190
2019年9月 台風15号 一部損壊831、半壊7
2019年10月 台風19号 一部損壊443、半壊25
2020年7月 令和2年7月豪雨 一部損壊1

洪水リスク:市内5水系が抱える危険

横浜市には鶴見川・帷子川・大岡川・境川・境川支流など複数の水系が流れています。防災DBの125mメッシュ解析(2024年時点)によれば、市内で浸水リスクのある主要河川は以下のとおりです。

河川名 リスクメッシュ数 想定最大浸水深 平均浸水深 想定最大継続時間
呑川 5,540 5.0m 0.32m 336時間(14日間)
鶴見川 4,365 10.0m 1.35m 336時間
丸子川 3,998 5.0m 0.37m 72時間
多摩川 3,331 10.0m 1.68m 336時間
境川 3,141 10.0m 2.27m 24時間
帷子川 531 5.0m 1.25m 24時間

浸水深のイメージ
- 0.5m未満 → 車が浸水し動けなくなる
- 1m前後 → 大人が立って歩くことが困難
- 2m超 → 1階が完全に水没(2.27mは1階天井高さを超える)
- 5m超 → 2階以上が水没(2階への避難でも命を落とす危険)
- 10m超 → 3〜4階相当が浸水(多くの住宅で命の危険)

境川(大和市から藤沢市・横浜市に流れる)は平均浸水深2.27m、つまり標準的な1階天井(2.2〜2.4m)を超える浸水が平均的に発生するという計算です。これは数ある横浜市内の河川のなかでも特に危険な水準です。


地震リスク:相模トラフと三浦半島断層群

横浜市の地震リスクは2つの軸から考える必要があります。①活断層による直下型地震②相模トラフを震源とする海溝型地震です。

地震発生確率(防災DBのデータより、2024年公表値)

指標 数値
市域内の平均震度6弱以上30年確率 48.4%
市域内の最大震度6弱以上30年確率 94.8%
市域内の平均震度5弱以上30年確率 99.6%
平均表層地盤S波速度(Avs30) 262 m/s(軟弱地盤基準値の約1.7倍)

市域の平均で見ても「震度6弱以上が30年以内に起きる確率が48.4%」というのは非常に高い水準です。さらに、最もリスクの高い地点では30年確率が94.8%に達します。これは「横浜市に居住し続ける人の多くが、震度6弱以上の地震を経験する可能性が極めて高い」ことを意味します。

近隣の活断層(防災DBデータより)

断層名 想定M 30年発生確率
三浦半島断層群主部 武山断層帯 M6.5 8.39%
三浦半島断層群 南部 M7.0 0.59%
三浦半島断層群主部 衣笠・北武断層帯 M6.7 0.006%

三浦半島断層群の武山断層帯は、30年以内の発生確率8.39%という高い確率を示しています。この断層群が活動した場合、横浜市南部(金沢区・磯子区など)を中心に強い揺れが想定されます。

また、相模トラフを震源とする「大正型関東地震」(関東大震災の再来型)は、政府の地震調査委員会によれば30年以内の発生確率が0〜6%と評価されています(不確実性が大きく幅がある)。1923年の関東大震災から100年以上経過しており、地震の再発に備えた対策は不可欠です。


津波・高潮リスク:臨海都市の宿命

横浜市は東京湾に面しており、津波・高潮リスクが集中しています。防災DBのデータによれば、津波・高潮に関連するリスクメッシュ数は37,694メッシュ。これは市域の相当な割合を占めます。

金沢区・磯子区・中区・神奈川区・鶴見区の臨海エリアは、大規模地震発生時の津波浸水想定区域に含まれます。神奈川県の公表する津波浸水想定では、相模トラフ巨大地震の場合、横浜市沿岸部で最大浸水深が数メートルに及ぶ区域があります。

また、台風接近時の高潮リスクも深刻です。東京湾は湾口が南向きに開いているため、南風を伴う台風接近時に湾内水位が上昇しやすい地形的特性があります。


土砂災害リスク:丘陵地帯の危険

横浜市の内陸部は多摩丘陵・三浦半島北部の丘陵地帯で、急傾斜地が多く分布しています。防災DBのデータでは、市域内の土砂災害リスクメッシュ数は4,557メッシュ、土砂災害ハザード区域数は1,881箇所

特に保土ケ谷区・港南区・栄区・戸塚区・旭区などの内陸丘陵部では、台風・集中豪雨時の崖崩れ・土石流リスクが高い地区が点在しています。横浜市が公表する「土砂災害ハザードマップ」では、これらの警戒区域・特別警戒区域が詳細に示されています。


横浜市の避難施設一覧(一部)

防災DBのデータによれば、横浜市内には664の避難施設が登録されています(2024年時点)。主要施設の一部を以下に示します。

施設名 所在区 施設種別
あざみ野中学校 青葉区あざみ野1-29-1 避難所
あざみ野第一小学校 青葉区あざみ野4-6-1 避難所
いずみ野中学校 泉区和泉町6201 避難所
いぶき野小学校 緑区いぶき野14-1 避難所
くぬぎ台小学校 保土ヶ谷区川島町1374-1 避難所

自分の自宅から最寄りの避難施設を確認するには、横浜市が公開するわいわい防災マップ(https://www.city.yokohama.lg.jp/bousai-kyukyu-bohan/bousai-saigai/map/)を活用してください。地区を選択するだけで避難場所・震度分布・液状化危険域が確認できます。


今からできる備え

まず確認すべき公式防災リソース

横浜市が整備する防災情報は国内でも充実した部類に入ります。以下のリソースを今すぐブックマークしておきましょう。

リソース URL
横浜市 防災の地図(総合) https://www.city.yokohama.lg.jp/bousai-kyukyu-bohan/bousai-saigai/map/
浸水ハザードマップ https://www.city.yokohama.lg.jp/bousai-kyukyu-bohan/bousai-saigai/map/shinsui/sinsuiHM.html
土砂災害ハザードマップ https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/bosai/gake/hmap.html
液状化マップ https://www.city.yokohama.lg.jp/bousai-kyukyu-bohan/bousai-saigai/map/ekijioka/ekijouka-map.html
横浜市 水防災情報ポータル https://mizubousai.city.yokohama.lg.jp/

横浜市民が特に確認すべき3点

  1. 自宅の浸水深を確認する — 鶴見川・境川流域に住んでいる場合、浸水深2m超の可能性があります。2階への垂直避難計画を今すぐ立ててください。
  2. 液状化リスクを確認する — みなとみらい・臨海埋立地・谷戸盛土地に住んでいる場合、地震時に地面が液状化し建物が傾く恐れがあります。
  3. 最寄りの避難所を複数確認する — 災害種別によって適切な避難所が異なります(洪水なら垂直避難、土砂災害なら早期水平避難等)。

データ出典

データ種別 出典
統合リスクスコア・洪水浸水メッシュ・津波メッシュ・土砂災害メッシュ・活断層データ 防災DB(bousaidb.jp)(国土交通省・内閣府等オープンデータを統合処理、2024年時点)
地震発生確率(震度6弱以上30年確率) 地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図2024年版」をもとに防災DBが集計
過去の災害事例(被害件数) 防災科学技術研究所(NIED)自然災害事例データベース
関東大震災被害数値 神奈川県「関東大震災被害報告書」・内閣府「令和5年版防災白書」
地形・地質情報 慶應義塾大学地質研究(横浜市中心部の地形と地質)・横浜市公式サイト
避難施設データ 国土数値情報「指定緊急避難場所データ(nlftp_p20)」2024年版
ハザードマップURL 横浜市公式サイト(2025年時点でアクセス確認済み)

著者:防災DB編集部 / 最終更新:2026年4月

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