大分市の災害リスクと過去の被害年表|洪水・津波・地震すべてが「最高レベル」の九州中枢都市

大分市は、人口約47万人を擁する九州第5の都市でありながら、防災DBが算出した総合リスクスコアは100点満点中83点(リスクレベル:極めて高い)に達する。洪水スコア・津波スコア・高潮スコアの3項目がそろって満点(100点)を記録した市は、全国でも極めて少ない。「大分市は安全」という感覚を持っている人がいるとすれば、今すぐデータと向き合うべきだ。

防災DB(bousaidb.jp)の125mメッシュ解析によれば、市内には洪水浸水想定区域が168,386メッシュ、津波浸水想定区域が145,487メッシュ存在する。最大浸水深は洪水・津波ともに10m超の区域が確認されており、これは3〜4階建て建物の屋上まで水が達する水準に相当する。

大分市はなぜ複合的な災害リスクを抱えるのか

地形的な弱点:大野川・大分川が刻む低平地

大分市の市街地は、大野川大分川が形成した沖積平野の上に広がる。大野川は熊本・宮崎県境の祖母山系を源流とし、大分市中心部の南を流れて別府湾に注ぐ。大分川は由布岳南西麓を源とし、由布盆地を経て大分平野を東西に貫く。この2大河川が平野を形成したことで広大な市街地が生まれた一方、台風や豪雨の際には上流からの増水が低平地に集中する構造になっている。

加えて、大分市は別府湾に北向きに開口した地形をとる。南海トラフ巨大地震発生時には、太平洋側を迂回した津波が別府湾に侵入する可能性があり、湾の形状が波のエネルギーを集中させるリスクが指摘されている。

活断層:「いつ動いてもおかしくない」別府−万年山断層帯

地震リスクという点では、大分市は別府−万年山断層帯の直上に位置する。この断層帯は大分市佐賀関沖から豊予海峡・別府湾・玖珠町方向に延びる全長約76kmの大規模断層で、想定最大規模はM7.2〜M7.9。地震調査研究推進本部(地震本部)の評価では、地震後経過率が1.0を超えており「いつ地震が発生してもおかしくない状態」とされている。過去の活動事例として、後述する1596年の慶長豊後地震がこの断層帯の活動によるものと考えられている。

防災DBのデータによれば、大分市域(125mメッシュ)における30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の最大値は75.87%、平均値は10.72%に達する。震度5弱以上に限ると最大99%、平均77.88%という驚異的な数値だ。市内のどこに住んでいても、30年以内に強い揺れを経験する確率は非常に高いといえる。


大分市の主要災害記録

1596年9月1日 — 慶長豊後地震(死者708人)

大分市が経験した歴史上最大の地震災害は、今から430年前の慶長豊後地震(1596年9月)だ。現在の推定規模はM7.0〜7.5とされ、別府−万年山断層帯の活動によるものと考えられている。大分市地域防災計画資料編に記録された死者数は708人にのぼる。この数字の重さは、当時の大分の人口規模を考えると壊滅的な被害を意味する。ほぼ同時期に発生した慶長伏見地震(9月4日)と並び、日本史上の大地震群の一つとして記録されている。

1854年12月24日 — 安政南海地震(死者18人・全壊4,546棟)

江戸末期の1854年12月24日、安政南海地震(M8.4)が発生した。大分市地域防災計画震災対策編によれば、大分市内で死者18人、全壊4,546棟の被害が記録されている。全壊4,000棟超という数字は、当時の大分の建物ストックをほぼ壊滅させるほどの規模だ。翌日12月26日にも別の地震記録が残っており、連続する揺れが被害を拡大させたとみられる。

1974年9月7日 — 台風第14号(死者2人・床上浸水1,355棟)

昭和49年の台風第14号は、大分市に深刻な浸水被害をもたらした。大野川・大分川流域を中心に床上浸水1,355棟・床下浸水4,917棟、全壊27棟・半壊21棟という被害が記録されている。死者2人も確認されており、大分市の近代水害史の中でも特に被害規模が大きかった台風の一つだ。河川被害箇所数は112か所に達し、大野川・大分川の治水整備が本格化するきっかけの一つとなった。

1976年9月7日 — 台風第17号(死者2人・床上浸水1,102棟)

1974年の2年後、再び大型台風が大分市を直撃した。1976年台風第17号では床上浸水1,102棟・床下浸水5,078棟、全壊4棟・半壊5棟、死者2人の被害が発生。河川被害箇所数は107か所に達した。昭和50年代を通じて、大分市は繰り返し大規模水害に見舞われており、河川改修の必要性が強く認識された時期だ。

1993年9月3日 — 台風第13号(死者1人・床上浸水901棟)

平成5年台風第13号では大分市内で床上浸水901棟・床下浸水2,713棟、全壊6棟・半壊38棟、死者1人の被害が記録されている。低平地に広がる市街地では、河川の越水だけでなく排水が追いつかない内水氾濫も発生しやすく、この台風でもその傾向が顕著だったとみられる。

2020年7月6日 — 令和2年7月豪雨(床上浸水35棟・河川被害6か所)

2020年7月の豪雨では、大分川が由布市内で越水。大分市内でも江池・郭・赤住・光吉・宮崎地区などで内水氾濫が発生し、床上浸水35棟・床下浸水143棟、半壊7棟、河川被害6か所が確認された。大分川の水位は観測史上最高を記録した地点もあり、上流の雨量変化が短時間で市街地に影響することを改めて示した事例だ。


大分市の水害リスク詳細:大野川・大分川の脅威

防災DBの125mメッシュ解析によれば、大分市内の洪水浸水想定区域の大部分は以下の主要河川の氾濫を想定している。

河川名 影響メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最長浸水継続時間
大野川 2,995 20m超 3.46m 72時間
大分川 2,313 20m超 2.89m 72時間
七瀬川 102 5.0m 3.21m 72時間
宮川 179 5.0m 2.59m 24時間
熊崎川 148 5.0m 1.95m 24時間

大野川・大分川の最大浸水深20mという数字は、想定しうる最悪シナリオ(堤防決壊等)を示している。これは6〜7階建てビルが完全に水没する水深だ。浸水継続時間が72時間(3日間)に及ぶ区域では、孤立・脱出困難のリスクも高まる。

「うちは2階建てだから大丈夫」は成立しない。大野川・大分川沿いの低地では、2階も3階も水没する可能性があることを、ハザードマップで具体的に自宅の浸水深を確認してほしい。

大分市洪水ハザードマップ(大分市公式)


大分市の地震リスク:別府−万年山断層帯

地震本部の評価によれば、大分市の地震リスクで特に注目すべき活断層は別府−万年山断層帯(豊予海峡−由布院区間)だ。この断層帯の主な特徴:

  • 延長: 約76km(佐賀関沖〜豊予海峡〜別府湾〜玖珠町方向)
  • 想定規模: M7.2(豊予海峡-由布院区間単独)〜M7.9(中央構造線連動)
  • 評価: 地震後経過率1.0超(「いつ動いてもおかしくない」)
  • 直近の活動: 1596年慶長豊後地震(死者708人)

断層帯通過市町村の総人口は50万人以上。大分市の市街地は断層から数kmの範囲に広がっており、地震発生時の揺れ・液状化・崖崩れが市内全域に及ぶ可能性がある。

中央構造線断層帯(豊予海峡-由布院区間)はM7.2〜7.9と想定されており、日出生断層帯(M6.9)と組み合わさると大分市周辺は複数の大規模断層に囲まれた状況だ。

防災DBの地盤データによれば、大分市の平均Vs30(表層地盤S波速度)は511.3 m/s。これは比較的硬い地盤を示しているが、沖積平野の低地では軟弱地盤が広がる箇所もあり、液状化リスクには地点ごとの差が大きい。

大分市津波・地震ハザードマップ(大分市公式)


大分市の津波・高潮リスク

防災DBの解析では、大分市の津波スコアは100(最高値)、市内に145,487メッシュの津波浸水想定区域が存在する。最大浸水深は10m以上に達する区域もあり、沿岸部では3階建て建物の屋上まで浸水する可能性がある。

高潮スコアも100(最高値)。別府湾に面した大分市は、南から北に進行する大型台風の際に高潮が集中しやすい地形的条件を持つ。台風の直撃時には、強風による波浪と潮位の上昇が重なり、沿岸低地の浸水リスクが急激に高まる。

津波避難ビルの分布

大分市内には352か所の指定避難施設があり、うち多数が津波避難ビルとして指定されている。沿岸部の住民は、地震発生後ただちに最寄りの津波避難ビルへの垂直避難を優先すること。「大きな揺れ=すぐに高い場所へ」を体に覚えさせておく必要がある。

主な津波避難ビル(大分市):
- イオン高城店(大分市高城西町28番1号)
- アーバングリーン泉(大分市泉町13-10)
- さくらビル(大分市原新町6-15)
- オーシャンCITY(大分市寺崎町2-2-1)

大分市津波・地震ハザードマップ(大分市公式)


大分市の土砂災害リスク

防災DBの解析では、大分市の土砂災害リスクメッシュは62,578メッシュ。市周辺部の山間丘陵地には急傾斜地が多く、大雨時には土石流・崖崩れ・地すべりのリスクが高まる。市南部の山地(大野川上流域)や西部丘陵地帯が特に注意が必要なエリアだ。

大分市土砂災害ハザードマップ(大分市公式)


大分市の過去の災害年表(全記録)

年月日 災害名 種別 死者 床上浸水 全壊 主な被害
1596年9月1日 慶長豊後地震 地震 708 別府湾断層帯活動、甚大な揺れ被害
1707年10月28日 宝永地震 地震 南海トラフ地震、M8.6
1769年8月29日 (地震) 地震 271
1854年12月24日 安政南海地震 地震 18 4,546 南海トラフM8.4、家屋壊滅的被害
1966年9月 (台風・豪雨) 風水害 983 5 河川被害38か所
1968年4月1日 日向灘地震 地震
1971年8月 (台風) 風水害 6 2 床下浸水185棟
1974年9月7日 台風第14号 風水害 2 1,355 27 河川被害112か所
1976年9月7日 台風第17号 風水害 2 1,102 4 河川被害107か所
1979年9月3日 (豪雨) 風水害 47 床下浸水1,364棟
1982年9月24日 (台風・豪雨) 風水害 107 2 床下浸水1,039棟
1984年8月7日 (地震) 地震
1993年9月3日 台風第13号 風水害 1 901 6 床下浸水2,713棟
1997年9月 台風第19号 風水害 100 床下浸水139棟
1998年10月 前線・台風第10号 風水害 19 河川被害50か所
1999年9月 台風第18号 風水害 負傷者19人
2004年〜 複数台風(16・18・21・23号) 風水害 47 1 複数台風が連続上陸
2005年9月 台風第14号 風水害 126 床下浸水375棟
2006年9月 台風第13号 風水害 1 負傷者2人
2020年7月6日 令和2年7月豪雨 風水害 35 大分川観測史上最高水位
2020年9月6日 台風第10号 風水害 一部損壊5棟

※出典:NIED(自然災害情報室)データ、大分市地域防災計画資料編(2024年時点)


大分市の避難施設

大分市内には352か所の指定避難施設がある。津波避難ビルの数が多い点が特徴で、沿岸部・低地では近くの高層建築物への垂直避難が有効な手段となる。

主な指定避難所(一部):
- こうざき小学校(大分市大字本神崎945番地の2)
- アイリスおおいた(大分市大字横尾字武生4451番地の8)
- グリーンライフ(大分市大字丹生1747番地の10)
- やすらぎ苑(大分市大字松岡1946番地)
- わさだケアセンター(大分市大字市字大坪11番地の2)

自宅・職場から最寄りの避難所を事前に確認してください。

大分市ハザードマップ・防災関連マップ一覧(大分市公式)


今からできる備え

大分市のリスクを踏まえた防災行動の優先順位は以下のとおりだ。

1. ハザードマップで自宅の浸水深・土砂災害区域を確認する
洪水・津波・土砂の3種類のハザードマップをすべて確認すること。特に「浸水深〇m」の数字と「避難まで何分かかるか」を組み合わせて考える。

2. 地震・津波対策:「揺れたらすぐ高台へ」
別府−万年山断層帯は「いつ動いてもおかしくない」状態にある。大きな揺れが来たら、津波や崖崩れのリスクがある場所からただちに離れる。津波警報を待ってから逃げるのでは遅い。

3. 家庭備蓄:7日分を目標に
内水氾濫・浸水継続時間72時間のシナリオでは、3日以上の孤立が生じる可能性がある。水・食料・医薬品の7日分備蓄を目標にする。

4. 家族との避難計画を立てる
「大分川が氾濫したら」「地震が来たら」など、具体的なシナリオごとに集合場所・避難先を決めておく。

大分市地域防災計画・防災情報(大分市公式)
防災DB:大分市のリスク詳細データ


データ出典

本記事は以下の公的データをもとに防災DB編集部が作成した。

データ 提供元 時点
統合リスクスコア・浸水想定メッシュデータ 防災DB(bousaidb.jp) 2024年
過去の災害事例(NIED) 防災科学技術研究所(NIED)自然災害情報室 2024年収録分
地震確率データ(30年確率) 地震調査研究推進本部(地震本部) 2024年
活断層評価(別府−万年山断層帯) 地震調査研究推進本部 2024年
大分市地域防災計画 大分市 最新版
避難施設データ 国土数値情報(MLIT) 2024年
大分川・大野川浸水想定区域 国土交通省 九州地方整備局 2024年

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著者:防災DB編集部 | 最終更新:2026年4月