竹田市の災害リスク完全解説|繰り返す水害と山岳地帯の脆弱性

大分県竹田市では、1990年・2012年・2020年と10年に一度の頻度で死者・全壊棟数を伴う大規模水害が発生している。防災DBの統合リスクスコアは83点(極めて高い)——大分県内の全市区町村のなかでも最上位水準に位置する。くじゅう連山と祖母山系に囲まれた山間盆地という地形が、雨水を市街地に集中させる構造的な問題として残り続けている。

この記事では、NIEDのデータベース・防災DBの125mメッシュ解析・竹田市公式ハザードマップをもとに、竹田市に住む人・移住を検討している人が知るべき災害リスクを徹底解説する。

なぜ竹田市は繰り返し水害に見舞われるのか

竹田市は大分県南西部に位置し、くじゅう連山・阿蘇外輪山・祖母山・傾山など標高1,000m超の山岳群に四方を囲まれた山間盆地だ。この地形が洪水リスクを高める根本原因になっている。

山岳地帯で降った雨は急峻な斜面を一気に流れ下り、玉来川・稲葉川・大野川など複数の河川に集中する。市の平均年間降水量は約1,885mmと多雨で、梅雨期の集中豪雨との相性が最悪だ。市街地を貫流する玉来川は、大野川本流に合流するまでの区間が特に氾濫しやすく、過去の主要水害はほぼ全てこの玉来川の溢水が引き金になっている。

防災DBの統合リスクスコアの内訳を見ると、洪水スコアと地震スコアが突出している。

リスク種別 スコア(0-100) 評価
統合リスク 83 極めて高い
洪水 100 最高レベル
土砂災害 50 中〜高
地震 85 極めて高い

出典:防災DB・2024年時点データ

過去の主要災害年表

1982年(昭和57年)7月豪雨:竹田水害の原点

1982年7月の梅雨前線による豪雨で、竹田市街地が大規模浸水した。「竹田水害」として地域に記憶されるこの出来事が、後の治水ダム建設の遠因となった。

1990年(平成2年)梅雨前線豪雨:死者5名、2,000人が避難

1990年7月の梅雨前線豪雨は、竹田市にとって戦後最大級の水害だった。稲葉川・玉来川が同時に氾濫し、死者5名・2,000人以上が避難を余儀なくされた。床上・床下浸水は市内全域に及び、農地・道路被害も甚大だった。

この水害を受けて翌1991年、国は「竹田水害緊急治水ダム建設事業」を採択。稲葉川に稲葉ダム(2010年竣工)、玉来川に玉来ダム(2022年本格運用)の建設が決定された。

2012年(平成24年)九州北部豪雨:死者2名、全壊11棟

2012年7月11〜12日の九州北部豪雨では、竹田市内で記録的な大雨が降り、死者2名・住宅全壊11棟・半壊87棟・床上浸水87棟・床下浸水88棟という甚大な被害が生じた。

稲葉ダムが2010年に完成していたため稲葉川流域の被害は軽減されたが、玉来ダムはまだ建設中だった。玉来川が再び氾濫し、1990年と同じ構図で市街地が浸水した。「ダムが間に合えば防げた水害」として竹田市の記憶に刻まれている。

2020年(令和2年)7月豪雨:河川被害149件

令和2年7月豪雨では、竹田市内で負傷者2人・全壊1棟・一部損壊12棟・河川被害149件が記録された(NIED記録)。同年9月の台風10号も相次いで直撃し、2020年は二重の災害年となった。

2022年(令和4年)台風14号:玉来ダムが初めて機能

2022年の台風14号は強大な勢力で九州に上陸し、竹田市も激しい雨に見舞われた。しかし前年2021年に試験湛水が始まった玉来ダムが洪水調節機能を発揮し、2012年・2020年と続いた玉来川流域の浸水被害を抑制した。ダム完成から初めて「守られた」と実感できた災害だったと地元では語られている。

主要災害一覧

災害名 死者 全壊 河川被害 主な原因河川
1982 昭和57年7月豪雨 不明 不明 玉来川・稲葉川
1990 梅雨前線豪雨 5名 多数 多数 玉来川・稲葉川
2012 九州北部豪雨 2名 11棟 多数 玉来川
2020.7 令和2年7月豪雨 0名 1棟 149件 複数河川
2020.9 令和2年台風10号
2022 台風14号 0名 0棟 軽微 玉来川(ダム抑制)

1990年・2012年のデータは竹田市公式資料・玉来ダム関連資料より。2020年はNIED記録。

洪水・浸水リスクの詳細

防災DBの125mメッシュ解析によると、竹田市内では稲葉川・大野川・玉来川を中心に、最大浸水深20mを超える区域が存在する。

河川名 解析メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 継続時間
稲葉川 114 20.0m 5.1m 24時間
大分川 27 20.0m 6.4m 72時間
大野川 128 10.0m 5.4m 24時間
玉来川 62 10.0m 5.0m 24時間
町田川 68 10.0m 4.2m 12時間
山鹿川 145 5.0m 3.6m

出典:防災DB・国土交通省浸水想定区域データに基づく125mメッシュ解析(2024年)

浸水深のイメージ:

  • 3m: 1階天井まで水没(脱出困難)
  • 5m: 2階床上まで水没
  • 10m: 3階建て建物全体が水没
  • 20m: 5〜6階建て相当まで浸水

稲葉川の20mという数値は洪水調節施設が機能しない最悪ケースの想定だが、平均浸水深5m超という数値は、氾濫した際に深い浸水が長時間続くことを示している点は見逃せない。

土砂災害リスク:91,867メッシュの警戒区域

防災DBによると、竹田市のエリア内で土砂災害警戒区域に相当するメッシュは91,867メッシュ(約1,435km²相当)に達する。山岳地帯に囲まれた地形的特性から、大雨時には至るところで土砂崩れ・地すべり・土石流の危険がある。

竹田市が公開するハザードマップでは「土砂災害ハザードマップ」を別途整備しており、警戒区域・特別警戒区域が詳細に示されている。山沿いの集落・斜面下に立地する住宅では、洪水だけでなく土砂災害への備えが不可欠だ。

地震リスクと近傍の活断層

防災DBの地震確率データ(地震調査研究推進本部・2024年版)によると、竹田市の震度6弱以上の30年確率は平均6.7%・最大39.4%だ。最大値が突出して高い地点が市内に複数存在する。

主要な近傍活断層

竹田市周辺には、過去に大きな地震を起こした、あるいは今後の活動が懸念される複数の活断層が集中している。

断層名 距離 想定M 30年確率 備考
阿蘇外輪南麓断層群 約12km M6.8 0.08% 阿蘇外輪山南麓
日出生断層帯 約14km M6.9 大分県北西部
布田川断層帯布田川区間 約19km M6.5〜7.4 2016年熊本地震の震源断層
万年山−崩平山断層帯 約23km M6.8 大分県西部
中央構造線断層帯(豊予海峡-由布院区間) 約9km M7.2 西日本最大級の断層帯

出典:防災DB・地震調査研究推進本部「活断層及び海溝型地震の長期評価」(2024年)

2016年4月の熊本地震では、竹田市でも震度5強〜6弱の揺れが観測され、建物への被害や土砂崩れが多発した。直接の震源(布田川断層)まで約19kmという距離は「他人事ではない」距離だ。中央構造線断層帯(豊予海峡-由布院区間)は竹田市北部まで延びており、M7.2の地震を想定すれば市内への影響は甚大になりうる。

ダム建設の経緯:繰り返された水害の教訓

竹田市の治水史は、水害→調査→建設決定→完成→次の水害、というサイクルの繰り返しだった。

  • 1982年水害 → 稲葉川・玉来川の治水対策が本格検討へ
  • 1990年水害(死者5名) → 国が「竹田水害緊急治水ダム建設事業」採択(1991年)
  • 2010年 → 稲葉ダム竣工(稲葉川の洪水を調節)
  • 2012年水害(死者2名) → 玉来ダムはまだ建設中 → 玉来川が再び氾濫
  • 2022年 → 玉来ダム試験湛水開始、台風14号で初の洪水調節機能を発揮

ダムの完成で竹田市の洪水リスクが低下したことは事実だが、ダムで防げるのは計画規模以内の洪水だ。稲葉川で記録された最大想定浸水深20mという数値は、計画規模を超える大雨のシナリオを含む。気候変動による降水量増加が指摘される現在、ダム完成後も油断は禁物だ。

避難施設一覧(主要施設)

竹田市内には一次避難所が72ヶ所登録されている(2024年時点)。広域避難場所の指定はなく、一次避難所への分散避難が基本となる。

施設名 住所 種別
南部小学校体育館 大字君ケ園1044 一次避難所
岡本小学校体育館 大字三宅1543番地 一次避難所
宮城台小学校体育館 大字炭竃500 一次避難所
城原小学校体育館 大字城原1705 一次避難所
久住中学校体育館 久住町大字白丹1525 一次避難所
久住公民館 久住町大字久住6154 一次避難所
旧下竹田小学校体育館 直入町大字上田北2012番地 一次避難所
ドイツ村簡易宿泊施設 直入町大字長湯8195番地11 一次避難所
久住保健センター 久住町大字久住6154番地 福祉避難所

全ての避難所の場所・対応種別は竹田市防災マップ(WEB版)で確認できる。竹田市は市域が広く集落間の距離が大きいため、大雨・土砂災害警報発令時は道路が寸断される前に早めに避難することが重要だ。

今からできる備え

ハザードマップの確認(最優先)

まず自宅が洪水・土砂災害のどの区域に入るかを確認する。

警戒情報の入手

竹田市は梅雨期(6〜7月)と台風シーズン(9〜10月)が特に危険だ。竹田市の緊急速報メール・防災情報は市役所総務課防災危機管理室(0974-63-1111)に問い合わせて事前登録しておく。気象庁の「土砂災害警戒情報」発表時(警戒レベル4相当)には即座に避難行動が必要だ。

備蓄と非常持ち出し品

竹田市では玉来川・稲葉川の氾濫時に道路が寸断され、数日間孤立するケースがある。最低7日分の飲料水・食料を常備することを推奨する。特に山間集落では消防・救急の到達に時間がかかる場合がある。

防災DB(bousaidb.jp)の活用

防災DBでは竹田市の125mメッシュ単位の詳細な浸水深・土砂危険度・地震確率を無料で公開している。自宅・職場・学校のピンポイントなリスク確認に活用できる。


データ出典

データ 出典 時点
統合リスクスコア・125mメッシュ解析 防災DB(bousaidb.jp) 2024年
浸水想定区域(洪水) 国土交通省・九州地方整備局(防災DBに収録) 2024年
土砂災害警戒区域 大分県・国土交通省(防災DBに収録) 2024年
地震確率データ 地震調査研究推進本部「地震動予測地図2024年版」 2024年
活断層情報 地震調査研究推進本部「活断層及び海溝型地震の長期評価」 2024年
過去の災害事例 NIED自然災害データベース 2024年
1990年・2012年水害被害 竹田市公式資料・玉来ダム関連資料 公表時点
ハザードマップURL 竹田市公式サイト 2024年
避難施設データ 国土数値情報・避難施設データ(防災DBに収録) 2023年

著者: 防災DB編集部
最終更新: 2026年4月