青森県六ヶ所村の災害リスクと過去の災害年表【防災DB調査】

著者: 防災DB編集部 / 最終更新: 2026年4月


青森県上北郡六ヶ所村は、日本原燃の核燃料再処理工場が立地する太平洋岸の村として知られる。しかし、防災の観点からこの村を評価すると、防災DBの統合リスクスコアは83点(極めて高い)——洪水・津波・高潮の3リスクで満点(100点)を記録する、全国でも有数の複合リスクエリアであることがわかる。

1933年の昭和三陸地震津波、1946年の暴風雨による死者15名・行方不明13名、1968年の十勝沖地震と、この村は繰り返し自然災害に見舞われてきた。2011年の東日本大震災でも大津波警報が発令され、沿岸住民が避難を余儀なくされた。125mメッシュの浸水シミュレーションでは、高瀬川沿いの低地に最大3mの浸水域が広がり、沿岸部では海溝型巨大地震による最大20m超の津波が想定されている。

本記事では、BQデータ・村公式資料・国土交通省データをもとに、六ヶ所村の災害リスクを詳細に解説する。


この村の災害リスクはなぜ「極めて高い」のか

太平洋岸の低平地と汽水湖という脆弱な地形

六ヶ所村は下北半島の太平洋側付け根に位置し、北は太平洋、西は小川原湖(面積63.2km²、日本最大級の汽水湖)に挟まれた細長い地形をしている。海成段丘が広く分布するが、海岸線に近い尾駮・鷹架・出戸エリアは標高が低く、高潮や津波の直撃を受けやすい。

高瀬川は小川原湖の唯一の流出河川で、湖東北端から約7kmで太平洋に注ぐ。特徴的なのは、潮汐によって海面水位が湖水位を上回るタイミングに海水が逆流するという構造だ。つまり、台風による高波と降雨が重なれば、河川から内陸へ海水が逆流する「バックウォーター現象」が起きやすい地形となっている。

防災DBの125mメッシュ解析によれば、村内の洪水浸水想定メッシュ数は252,066(氾濫域面積の広さを示す)、津波・高潮の影響を受けるメッシュ数は139,622に達する。これは隣接する他市町村と比較しても突出した数字だ。

リスクスコアの内訳

リスク種別 スコア(100点満点) 最大浸水深(想定下限値)
洪水 100 20m超
津波 100 20m超
高潮 100
地震 85
土砂災害 50
液状化 20

洪水・津波・高潮が全て満点という組み合わせは、太平洋岸の低地に立地する六ヶ所村の地形的特性を如実に示している。


過去の主要災害

1946年12月3日——死者15名・行方不明13名(記録上最大の被害)

六ヶ所村の防災計画が記録する過去最大の人的被害がこの事例だ。1946年12月3日、猛烈な暴風雨が村を直撃し、死者15名・行方不明者13名の計28名が犠牲となった。12月という冬期の発生という点も特徴的で、冬の太平洋岸を直撃した暴風雪・高波による被害と考えられる(六ヶ所村地域防災計画記録)。詳細な被害記録はオンライン公開されていないが、この事例は村の防災史上最も深刻な自然災害として記録されている。

1933年3月3日——昭和三陸地震・津波(M8.1)

「金華山沖津波」とも呼ばれる昭和三陸地震(M8.1)は、岩手県三陸沿岸を中心に死者・行方不明者3,064名という壊滅的被害をもたらした。六ヶ所村でも全壊2棟が記録されており、津波の波及が下北半島太平洋岸まで到達したことを示す。三陸沿岸に比べ被害は限定的だったものの、今後の日本海溝・千島海溝沿い巨大地震で想定される津波は、当時をはるかに超える規模になると国の評価では示されている。

1961年12月29日——暴風雪・高波(床上浸水60戸・床下70戸)

1961年12月末の暴風雪・高波による被害で、床上浸水60戸・床下浸水70戸が記録された。冬期の太平洋岸を猛烈な低気圧が通過した際に、高波と強風が重なった典型的な「冬季風水害」だ。六ヶ所村では南東から吹き付ける冬の季節風と太平洋からの高波が組み合わさると、沿岸集落に甚大な浸水被害をもたらす。

1968年5月16日——1968年十勝沖地震(M7.9)

1968年5月16日、十勝沖を震源とするM7.9の地震が青森・岩手を直撃した。六ヶ所村では半壊6棟・一部損壊23棟の建物被害が記録された。同地震は青森・岩手県全体で死者52名(うち津波による犠牲3名)、建物全壊673棟という広域被害をもたらしており、六ヶ所村の被害はその一部を構成している。

1994年12月28日——三陸はるか沖地震(M7.6)

1994年12月28日のM7.6「三陸はるか沖地震」は、青森市を中心に死者10名・全壊家屋794棟という被害をもたらした青森県内最大規模の直下型地震(発生域は沖合だが影響は大きかった)。六ヶ所村への具体的な被害数値は村防災計画に記録されているが、数値データは未公開(NIEDデータセット参照)。津波は三陸沿岸で最大1.5mが観測されている。

2011年3月11日——東日本大震災(BQデータ未収録・本文で補足)

NIEDの六ヶ所村データセットには2011年東日本大震災の記録は収録されていないが、村公式サイトの記録によれば、大津波警報が発令(3月12日)され、沿岸住民への避難指示が出された。実際の津波高さは気象庁むつ小川原験潮所での「被害認められず」の記録に留まったが、警報継続中は村内の津波・高潮ハザードマップ対象8地区(泊・出戸・尾駮・戸鎖・鷹架・平沼・倉内・中志)の住民が避難対象となった。

過去の全災害年表

以下は六ヶ所村地域防災計画(風水害等災害対策編・地震津波等対策編)に基づく全記録だ。

年月日 種別 災害名称 主な被害
1933/3/3 地震・津波 昭和三陸地震(M8.1) 全壊2棟
1946/12/3 風水害 (名称不明・暴風雨) 死者15名・行方不明13名
1954/10/11 台風 (台風) 詳細不明
1955/12/25 風水害 (暴風雪・高波) 全壊(詳細不明)
1957/3/10 風水害 (春先の暴風雨) 床上浸水12戸・床下70戸・河川被害
1958/9/27 風水害 (台風・秋雨) 詳細不明
1961/12/29 風水害 (冬季暴風雪) 床上浸水60戸・床下70戸
1966/6/27 風水害 (梅雨末期大雨) 河川被害
1968/5/16 地震 十勝沖地震(M7.9) 半壊6棟・一部損壊23棟
1973/9/24 風水害 (台風) 詳細不明
1994/12/28 地震 三陸はるか沖地震(M7.6) 記録あり(数値非公開)
2011/3/11 地震・津波 東日本大震災(M9.0) 大津波警報発令・避難指示(実被害軽微)

出典: 六ヶ所村地域防災計画、NIED自然災害データベース、防災DB独自集計


なぜ六ヶ所村は洪水に強く、かつ弱いのか

高瀬川の「336時間浸水」という現実

防災DBの125mメッシュ洪水解析データによれば、高瀬川の計画規模降雨時の洪水浸水想定メッシュは1,194メッシュ(1メッシュ=125m四方)、最大浸水深は3.0m、そして浸水継続時間は最大336時間(14日間)に及ぶ。

浸水深3mとは、一般的な木造住宅の「1階天井まで」に相当する。しかも2週間近く水が引かない。これは、小川原湖という巨大な水溜りが上流にあり、大雨で湖水位が上昇すると高瀬川の水位も上がり続ける構造に由来する。

河川名 浸水想定メッシュ数 最大浸水深 浸水継続時間
高瀬川 1,194 3.0m 336時間(14日)
赤川 13 3.0m 336時間(14日)

国土交通省高瀬川河川事務所の資料によれば、1958年の台風22号(狩野川台風)では高瀬川流域で死者3名・住家流出損壊151戸・床上床下浸水2,801戸・浸水面積3,150haという記録的な被害が発生した(六ヶ所村を含む高瀬川流域全体の数値)。


津波・高潮リスク——太平洋岸の最前線

六ヶ所村の沿岸部は、日本海溝・千島海溝沿いの海溝型巨大地震が発生した場合、津波の直撃を受ける位置に立地する。青森県が令和3年(2021年)に公表した浸水想定(東日本大震災と同レベルの想定)を受けて、村は令和8年(2026年)3月に「津波避難マップ」を刷新し、8地区それぞれの避難目標地点を明示した。

防災DBの125mメッシュ解析では、村内の津波・高潮影響メッシュが6,413メッシュに達する。これは沿岸低地のほぼ全域が津波・高潮ハザードゾーンに含まれることを意味する。想定最大浸水深は20m超——5mで2階床上、10mで3階床上に相当する壊滅的な規模だ。

村公式サイトの津波・高潮ハザードマップは下記から確認できる:
https://www.rokkasho.jp/index.cfm/9,322,43,html


地震リスク——震度6弱の30年確率が最大51%

防災DBの125mメッシュ地震解析データ(全国地震動予測地図2024年版)によれば、六ヶ所村の震度6弱以上30年確率の平均値は13.91%、最大値は51.16%に達する。震度5弱以上の30年確率平均は82.18%で、今後30年以内に震度5弱以上を経験する可能性が高い地域だ。

平均地盤S波速度(Vs30)は306.8 m/sで、中程度の地盤強度。三陸沿岸の軟弱地盤と比べると液状化リスクは低い(液状化スコア20)が、地震動増幅には注意が必要だ。

近隣の活断層

村から最も近い主要活断層として、青森湾西岸断層帯(M6.8、30年発生確率0.66%)が挙げられる。また、六ヶ所村の直下には「六ヶ所撓曲」と呼ばれる活断層変形帯(南北方向)の存在が指摘されており、特に日本原燃の核燃料再処理工場の安全審査で問題として取り上げられてきた(原子力規制委員会審査資料、CNIC資料)。


土砂災害リスク

防災DBの125mメッシュ土砂災害解析によれば、六ヶ所村内の土砂災害影響メッシュは166メッシュ(土砂災害警戒区域・特別警戒区域数: 49箇所)。洪水・津波に比べると相対的にリスクは低いが、内陸の段丘崖沿いや谷沿いには崖崩れ・土石流の危険箇所が存在する。

村の土砂災害ハザードマップは下記で確認できる:
https://www.rokkasho.jp/index.cfm/9,321,63,html


村内の避難施設一覧

防災DB調査時点(2025年時点)で確認された村内の避難場所は8施設(広域避難場所は0)。村域の広さと人口規模に対して、整備された避難施設の数は決して多くない。

施設名 住所 施設種別
大石総合運動公園 尾駮字野附521-1 避難場所
第一中学校 尾駮字野附1054 避難場所
泊中学校 泊字焼山611-1 避難場所
泊小学校 泊川原75-17 避難場所
かけはし寮 出戸字棚沢130-23 避難場所
第二中学校 倉内字湯ノ沢112-1 避難場所
新城平集会所 倉内字切揚場106-1 避難場所
とうほく天間農業協同組合 平沼字久保68-23 避難場所

村が令和8年3月に作成した「津波避難マップ」では、8地区それぞれの避難目標地点(高台)が指定されている。津波・高潮ハザードゾーン内の住民は、この避難マップを今すぐ確認し、徒歩での避難経路を事前に確認しておくことが不可欠だ。


今からできる備え

公式ハザードマップの確認(必須)

六ヶ所村公式サイトには、以下4種のハザードマップが公開されている。自宅・職場がどのゾーンに位置するかを必ず確認すること。

この村で特に重要な3つの備え

1. 津波・高潮への即時避難体制
沿岸部の8地区(泊・出戸・尾駮・戸鎖・鷹架・平沼・倉内・中志)に居住・勤務する場合、地震発生後は揺れが収まったらすぐに高台へ向かう習慣を身につける。三陸沖の海溝型地震は、発震から津波到達まで30〜50分の猶予しかない。

2. 高瀬川洪水時の長期避難準備
洪水浸水は2週間続く可能性がある。短期的な避難グッズだけでなく、1週間分以上の食料・水・薬を常備し、長期避難を想定した準備が必要だ。

3. 地震動への構造的対策
震度6弱以上の30年確率が平均14%という数字は、静岡・神奈川などの太平洋ベルト地帯と同水準だ。旧耐震基準(1981年以前)の建物に居住している場合、耐震診断・改修を検討すること。

より詳細なリスクデータは 防災DB(bousaidb.jp) で市区町村別に確認できる。


データ出典

データ 出典 時点
統合リスクスコア・メッシュ解析 防災DB(bousaidb.jp) 125mメッシュ分析 2024年時点
過去の災害事例 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース 六ヶ所村地域防災計画収録値
洪水浸水想定区域 国土交通省 洪水浸水想定区域図(高瀬川) 国交省公開データ準拠
津波浸水想定 青森県 津波浸水想定(令和3年公表) 2021年
地震動確率 全国地震動予測地図2024年版(地震調査研究推進本部) 2024年
高瀬川・小川原湖 国土交通省高瀬川河川事務所 公開資料
地形・活断層情報 CNIC(原子力資料情報室)・地質調査記録 公開資料
ハザードマップURL 六ヶ所村公式サイト(www.rokkasho.jp) 2025年確認
東日本大震災の対応記録 六ヶ所村公式サイト 東日本大震災関連ページ 2011年
1958年洪水被害 国土交通省高瀬川河川事務所 資料 昭和33年記録