記事メタデータ

阿寺断層帯は、岐阜県中津川市から下呂市にかけて南北約70kmにわたって延びる大規模な活断層帯です。活動度はA級(1,000年あたり1〜10mのずれ)と評価されており、日本有数の活動的な断層のひとつです。

特に主部北部区間は、地震調査研究推進本部の評価で30年以内の発生確率が6〜11%(Sランク)とされています。下呂温泉や中津川市街地を含むエリアに位置するため、地域住民だけでなく観光業や不動産にも大きな影響があります。

この記事では、地震調査研究推進本部や産業技術総合研究所の公開データに基づき、阿寺断層帯の地震リスクを解説します。

阿寺断層帯の基本情報

項目 内容
全長 約70km
走向 北北西〜南南東
位置 岐阜県中津川市〜下呂市
区間数 4区間(主部北部・主部南部・佐見・白川)
断層型 左横ずれ断層(一部逆断層成分)
活動度 A級(1,000年あたり1〜10m)

阿寺断層帯は、木曽山脈(中央アルプス)の西縁に沿って走る左横ずれ断層です。断層の両側で地質が大きく異なり、累積変位量は推定5〜8kmに達します。地形的にも明瞭な断層崖や河川の屈曲が随所に見られ、古くから地質学者に注目されてきました。

4区間の地震発生確率

阿寺断層帯は、活動性の違いから4つの区間に分けて評価されています。

区間 範囲 長さ 想定規模 30年以内の発生確率 平均活動間隔
主部北部 下呂市〜付知峡付近 約31km M6.9 6〜11% 1,800〜2,500年
主部南部 付知峡付近〜中津川市 約34km M7.8 ほぼ0% 1,700〜1,900年
佐見断層帯 下呂市金山町付近 約17km M6.7程度 不明 不明
白川断層帯 白川町付近 約12km M6.4程度 不明 不明

出典: 地震調査研究推進本部「阿寺断層帯の長期評価」(2004年公表、2024年1月1日時点算定)

主部北部(Sランク)

主部北部は30年以内の発生確率が6〜11%で、地震調査研究推進本部のランク分けでSランクに分類されています。これは全国の主要活断層の中でも高い部類に入ります。

最新活動時期は1586年の天正地震の可能性が指摘されていますが、確定はしていません。仮に天正地震で活動していなければ、前回の活動からの経過時間は相当に長くなり、発生確率はさらに高くなる可能性があります。

主部南部

主部南部は想定規模がM7.8と4区間中最大ですが、1586年の天正地震で活動した可能性があり、30年以内の発生確率はほぼ0%と評価されています。ただし、天正地震との関連が確定していないため、今後の研究によって評価が変わる余地があります。

佐見断層帯・白川断層帯

佐見断層帯と白川断層帯は、活動履歴の情報が限られているため、発生確率が算出されていません。しかし、主部との連動の可能性は否定されておらず、注意が必要です。

過去の地震活動

地震名 規模 被害概要
1586年 天正地震 M7.8〜8.0 帰雲城壊滅(推定死者数百人)、内ヶ島氏全滅。白川郷・飛騨地方に壊滅的被害

天正地震(1586年)は、阿寺断層帯の主部南部が活動した可能性が指摘される歴史地震です。この地震では、飛騨国帰雲城が山体崩壊により完全に埋没し、城主の内ヶ島氏一族が全滅したとされています。

天正地震の震源断層については、阿寺断層帯のほか庄川断層帯や養老-桑名-四日市断層帯など複数の断層が関与した可能性があり、研究者間で議論が続いています。

影響を受ける主な市町村

市町村 人口(2024年推計) 主な影響
中津川市 約74,000人 主部南部が直下。市街地・JR中央本線に影響
下呂市 約29,000人 主部北部が直下。下呂温泉の観光業に甚大な影響
白川町 約7,000人 白川断層帯が直下
東白川村 約2,000人 佐見断層帯に近接

出典: 総務省「住民基本台帳に基づく人口」

下呂温泉・観光業への影響

下呂温泉は年間約100万人が訪れる日本有数の温泉地で、阿寺断層帯主部北部の直上に位置しています。想定されるリスクは以下のとおりです。

リスク項目 内容
温泉源への影響 断層運動による地下水脈の変化で湧出量・泉温が変動する可能性
旅館・ホテル被害 木造建築が多く、耐震改修が課題
交通遮断 JR高山本線・国道41号が断層沿いを走行。土砂災害で長期不通の恐れ
復旧長期化 山間部のため重機搬入が困難。復旧に数ヶ月を要する可能性

不動産・移住視点での留意点

阿寺断層帯周辺は、近年の移住促進やリモートワーク普及に伴い、自然環境を求めた移住先として注目されています。不動産取得や移住を検討する際のポイントを整理します。

観点 留意事項
地価 中津川市中心部は坪5〜10万円前後。下呂市中心部も同程度。都市部と比べ割安だが、災害リスクを考慮した価格かは不明
ハザードマップ 各市が活断層の位置をハザードマップに記載。土地購入前に必ず確認
建物耐震性 2000年以降の新耐震基準適合物件を推奨。木造旧耐震は補強費用を見積もること
土砂災害 断層沿いは急傾斜地が多く、地震時の斜面崩壊リスクが高い
リニア中央新幹線 中津川市に岐阜県駅が設置予定。利便性向上の一方、断層帯との位置関係に注意

防災対策のポイント

阿寺断層帯周辺に居住・滞在する場合の備えをまとめます。

  1. 耐震診断・補強: 1981年以前の旧耐震建物は耐震診断を受ける。岐阜県の補助制度を活用
  2. 家具固定: 山間部は揺れが増幅されやすい。重量家具の固定は必須
  3. 備蓄: 山間部は道路寸断で孤立する可能性が高い。最低7日分の水・食料を備蓄
  4. 避難経路の複数確保: 国道41号・JR高山本線が使えない場合の代替ルートを把握
  5. 土砂災害警戒: 地震後の余震・降雨による二次災害に注意

まとめ

阿寺断層帯は活動度A級の大規模活断層帯であり、特に主部北部区間はSランク(30年以内の発生確率6〜11%)と評価されています。下呂温泉や中津川市街地を含む生活圏に直接影響するため、地域住民・観光事業者・移住検討者にとって無視できないリスクです。

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データ出典

  • 地震調査研究推進本部「阿寺断層帯の長期評価」(2004年公表)
  • 地震調査研究推進本部「活断層の長期評価(令和6年1月1日時点)」
  • 産業技術総合研究所「活断層データベース」
  • 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」