南海トラフ地震の30年以内発生確率は70〜80%(地震調査研究推進本部、2024年1月算定)。国内最大級の地震リスクとして、想定死者32万人・経済被害220兆円が内閣府から公表されています。

本記事は、対象地域(静岡〜宮崎の太平洋側)に住む家庭向けに、発生前にできる備え・臨時情報時の行動・発災時の行動を整理します。地震全般の備えは地震の備え 完全ロードマップで、家庭向け地震対策は地震への対策(家族・自宅向け)完全ガイドで解説しています。

この記事でわかること

  • 南海トラフ地震の発生確率70〜80%の意味と根拠
  • 対象9都県の震度分布・津波想定
  • 臨時情報(巨大地震警戒・巨大地震注意)発表時の行動
  • 家庭でできる8つの具体的備え
  • 防災DBで自宅リスクを確認する手順

第1章:南海トラフ地震とは

1-1. 地震の規模

  • マグニチュード8〜9クラス(最大M9.1想定)
  • 震源域は駿河湾〜日向灘の約700km
  • 東日本大震災(M9.0)に匹敵する規模

1-2. 過去の発生履歴

過去1400年で9回の発生、平均100〜150年間隔:

  • 1361年 正平南海地震
  • 1498年 明応地震
  • 1605年 慶長地震
  • 1707年 宝永地震(最大級、富士山噴火併発)
  • 1854年 安政東海・南海地震
  • 1944年 昭和東南海地震1946年 昭和南海地震
  • 前回発生から79〜81年経過(2026年時点)

1-3. 30年確率70〜80%の意味

次の1年以内に起きる確率ではなく、「今後30年以内に発生する確率が70〜80%」という意味。

  • 統計的には遅くとも2050年代までに発生する可能性が高い
  • 明日起きる可能性もある」のも事実

第2章:対象地域と想定被害

2-1. 想定震度分布

内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定」による震度7〜6強が想定される主要地域:

都県 想定震度 特に影響大の地域
静岡県 7 静岡市・浜松市・沼津市・磐田市・富士市
愛知県 7 名古屋市南部・豊橋市・豊川市・田原市
三重県 7 津市・伊勢市・鳥羽市・尾鷲市
和歌山県 7 和歌山市・新宮市・串本町
徳島県 7 徳島市・阿南市・海陽町
高知県 7 高知市・室戸市・土佐清水市・黒潮町
宮崎県 7 宮崎市・日向市・延岡市
大阪府・兵庫県 6弱〜6強 大阪湾岸・淡路島南部
千葉県・神奈川県 6弱 南部沿岸部

2-2. 津波想定高

沿岸部では巨大津波が想定されています:

都県 想定最大津波高 到達時間
高知県黒潮町 34m 4〜6分
静岡県下田市 33m 6〜8分
三重県尾鷲市 26m 8〜10分
宮崎県日向市 17m 14〜16分
大阪湾岸 5m 50〜110分

津波到達時間が極めて短い地域もあり、「揺れを感じたら即高台避難」が絶対条件。

2-3. 想定被害

  • 死者:最大32万3,000人
  • 全壊住宅:約238万棟
  • 帰宅困難者:約380万人
  • 経済被害:約220兆円

この想定は2012年の公表値で、その後の防災対策進展で減災効果も期待されています。


第3章:臨時情報(巨大地震警戒・注意)

3-1. 臨時情報とは

気象庁が南海トラフ想定震源域での異常現象(M6.8以上の地震、ゆっくりすべり等)を観測した際に発表する情報。

3-2. 3種類の臨時情報

  • 巨大地震警戒:M8.0以上の地震が観測された時(半割れ想定)
  • 巨大地震注意:M7.0〜8.0の地震観測時、またはゆっくりすべり観測時
  • 調査中:異常観測後、判定会議前の段階

3-3. 臨時情報発表時の行動

巨大地震警戒(最も厳重)
- 1週間、沿岸部は事前避難
- 津波浸水想定地域の住民は避難生活
- 企業はBCP発動、危険作業を中止

巨大地震注意
- 1週間、いつでも避難できる準備
- 備蓄・持ち出し袋の再確認
- 家族との連絡手段の確認

3-4. 発表時に困らないための事前準備

  • 避難場所と避難ルートの家族合意
  • 1週間の宿泊先(親戚宅・ホテル)の選定
  • 持ち出し袋の玄関常備
  • 会社・学校の対応ルールの確認

第4章:家庭でできる8つの備え

4-1. ①自宅の位置リスク確認

防災DBに自宅住所を入力し、以下を確認:

  • 想定震度(6強〜7)
  • 津波浸水想定(深さ・到達時間)
  • 土砂災害警戒区域該否
  • 最寄り避難所・高台までの距離

4-2. ②耐震性の確認

  • 1981年以前建築(旧耐震)→ 耐震診断を即実施
  • 1981〜2000年建築(新耐震)→ 補強検討
  • 2000年以降 → 標準対策

詳細は木造住宅の耐震対策 完全ガイド

4-3. ③家具固定の徹底

  • 全家具を突っ張り棒・L字金具で固定
  • 寝室に背の高い家具を置かない
  • 詳細は家具固定の方法

4-4. ④食料・水の備蓄を強化

一般家庭は3日分が標準ですが、南海トラフ対象地域では:
- 最低7日分(都市部)
- 14日分以上(沿岸部・半島・離島)

詳細はローリングストックの進め方

4-5. ⑤津波避難の事前訓練

沿岸部は揺れたら即高台が鉄則:
- 避難ルートを実際に歩く(徒歩5分以内の高台を目指す)
- 夜間・雨天時のシミュレーション
- 高齢者・子ども同伴での訓練

4-6. ⑥家族連絡手段の多重化

  • LINE・SMS・電話・災害伝言ダイヤル171・Web171
  • 遠方の親戚を連絡中継点に
  • 紙で連絡先リストを共有

4-7. ⑦地震保険の加入

  • 火災保険に地震保険特約を付帯
  • 南海トラフ対象地域は木造で年2〜4万円の保険料
  • 津波被害も補償対象

4-8. ⑧臨時情報対応プランの作成

  • 臨時情報発表時の家族の集合場所・宿泊先を決める
  • 会社・学校の対応ルールを把握
  • 備蓄を即活用できる位置

第5章:津波対策(沿岸部住民必読)

5-1. 「揺れを感じたら即高台」が絶対ルール

  • 津波警報を待たず、自主避難
  • 徒歩5分以内の高台を把握
  • 車避難は原則NG(渋滞で津波に巻き込まれる)

5-2. 高台避難ルートの確認

  • 複数ルートを家族全員で把握
  • 夜間・雨天・停電下でも歩ける道
  • 津波避難タワー・津波避難ビルの位置

5-3. 避難後の行動

  • 72時間は戻らない(津波は何波も来る)
  • 津波警報解除まで待機
  • 家族の安否確認は無線・伝言板

5-4. 沿岸部住民の事前準備

  • 高台避難用リュック」を玄関に(2〜3kg、5分で出発可能)
  • ライフジャケット・防水バッグ
  • 高台での連絡手段(モバイルバッテリー・ラジオ)

第6章:都県別の重点対策

6-1. 静岡県

  • プレート境界直上、揺れ最大級
  • 県防災ガイド「わたしの避難計画」活用
  • 沿岸部は津波5〜33m想定、高台避難必須

6-2. 愛知県

  • 名古屋市南部・知多半島の液状化リスク
  • 伊勢湾沿岸の高潮+津波複合被害想定

6-3. 三重県・和歌山県

  • リアス式海岸で津波が増幅
  • 尾鷲市・熊野市・串本町の30m超津波想定地域
  • 高台移住を検討する家庭も

6-4. 徳島県・高知県

  • 黒潮町34m、土佐清水30m超の津波想定
  • 過疎地域での孤立リスク
  • 備蓄は14日分目標

6-5. 宮崎県

  • 日向灘側の津波17m想定
  • 延岡市・日向市の事前避難計画
  • 企業のBCP重点エリア

6-6. 大阪府・兵庫県

  • 震度6弱〜6強、湾岸部の液状化
  • 津波到達時間50〜110分、避難時間あり
  • 帰宅困難者対策が重点

6-7. その他(千葉県南部・神奈川県・東京湾岸)

  • 震度6弱想定、長周期地震動による高層ビル被害
  • 相模湾沿岸は津波到達時間短

第7章:臨時情報1週間の過ごし方

7-1. 沿岸部(事前避難推奨地域)

  • 避難先に1週間滞在(親戚宅・ホテル・避難所)
  • 最低限の荷物で出発
  • 仕事・学校は一時休業・休校

7-2. 内陸部(通常生活を継続)

  • 通常生活を送りつつ、備蓄・連絡手段の再確認
  • 夜間はすぐ避難できる服装
  • 子どもの学校連絡を確認

7-3. 企業・テナントの対応

  • BCP発動
  • テレワーク・時差出勤
  • 顧客対応は電話・オンラインで継続

詳細は企業防災の完全ガイドの南海トラフ対応。


第8章:発災時の行動

8-1. 発災後の1時間

  1. 身を守る(机の下、頭を保護)
  2. 揺れが収まったら火元確認、家族安否
  3. 沿岸部は即高台避難(徒歩)
  4. 内陸部は家屋の安全確認、家具倒壊なければ屋内待機

8-2. 発災後の1〜72時間

  • 津波警報解除まで高台滞在
  • 備蓄を使って生活
  • ラジオで情報収集
  • 家族・近隣との連絡・安否確認

8-3. 発災後の1週間

8-4. 発災後の1〜3ヶ月

  • 仮設住宅・みなし仮設の申請
  • 住宅再建・修繕
  • 罹災証明書・地震保険請求

まとめ:確率70〜80%は「備えを実行する段階」

南海トラフ地震は「もし起きたら」ではなく「いつ起きてもおかしくない」段階です。

  1. 発生確率70〜80%を正しく理解する
  2. 対象地域は9都県、地域ごとに対策が異なる
  3. 臨時情報(巨大地震警戒・注意)の行動を事前決定
  4. 耐震性・家具固定・備蓄の3点セットを完成
  5. 沿岸部は高台避難訓練を必ず実施
  6. 防災DB自宅リスクを確認

「いつか起きる」ではなく「いつ起きても対応できる」状態を目指しましょう。

関連記事


データ出典:地震調査研究推進本部「南海トラフで発生する地震の長期評価」(2024年1月算定)、内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定」(2012・2013年公表)、気象庁「南海トラフ地震臨時情報」、全国地震動予測地図(防災科学技術研究所 J-SHIS、2020年版)、各県防災計画、国土数値情報(国土交通省)。防災DBの基盤データ詳細はデータソース一覧をご覧ください。