BCPの策定方法|中小企業が初版を完成させる7ステップ

BCP策定の7ステップをカードで整理する担当者の説明用イラスト 重要事業と復旧期限から始め、資源・代替策・体制・訓練へ進みます。AI生成の説明用イラストです。

BCPの初版は、白紙の様式を上から埋めるより、重要事業と復旧期限を先に決め、その実現を妨げる資源と代替策を後からつなぐ方が作りやすくなります。

進め方は7ステップです。担当者が情報を集め、経営者には「何を優先するか」「いつまでに戻すか」を決裁してもらいます。最初から全項目を確定させる必要はありません。分からない項目は「未確認」とし、確認する人と期限を付ければ初版として前へ進められます。

この記事の内容

まず、完成条件を1枚にする

初版の完成条件は、次の1枚が埋まっていることです。この記事を読みながらコピーして使えます。

項目 自社の記入欄
BCPの対象拠点・事業
優先して続ける事業
目標復旧時間 発災から__時間・日以内
最低限の業務水準 平常時の__%、または__件/日
復旧を止める可能性がある資源 人/建物/設備/電力/通信/データ/仕入れ/物流/資金
最初に使う代替策
BCP発動責任者・代行者
次回の訓練・見直し日

連絡先一覧や備蓄表は、この骨格が決まった後に付けます。先に名簿だけを完成させても、重要事業を何日以内に戻すかは決まりません。

BCP担当者が事実を集め、経営者が優先順位を決め、現場が実行可能性を確認する分担図 担当者だけで全項目を決めず、経営判断と現場確認を必要な箇所へ絞ります。

ステップ1 目的と対象を絞る

「全社のあらゆる危機」を対象にすると、関係者と確認項目が増えます。初版は一つの拠点と一つの主要事業に絞ります。

最初の文は、次の形で十分です。

本計画は、__拠点が利用できない、または重要な人員・設備・情報が不足する事態において、__事業を継続・早期復旧するための判断と行動を定める。

災害名を一つに限定しすぎる必要はありません。「地震編」「洪水編」を別々に作る前に、拠点や電力が使えない状況でも共通する判断を作ります。

ステップ2 優先する事業を一つ選ぶ

経営者と現場責任者に、次の三つを聞きます。

  1. 一週間止まると、主要顧客との取引に最も影響する事業は何か
  2. 他の業務を再開するために、先に動かす必要がある業務は何か
  3. 社会や利用者への影響が大きく、停止を長引かせられない業務は何か

候補が複数ある場合は、「売上」「顧客への影響」「代替の難しさ」の三列で比べます。経営者が何を最優先と決めたかを記録すれば、復旧時の判断が割れにくくなります。

ステップ3 目標復旧時間と最低水準を決める

中小企業庁は、目標復旧時間を決めるときに、取引先やサプライチェーンから許容される停止時間と、収入の途絶や復旧費用に自社資金が耐えられる時間の二つを考慮するよう示しています。

担当者は、次の材料を並べます。

  • 主要顧客への納期と、遅延時の連絡・契約条件
  • 一日止まった場合に失う売上や粗利の概算
  • 人件費、賃料、借入返済など停止中も発生する支出
  • 建物、設備、データ、仕入れ、物流の復旧・代替にかかる時間

その上で、経営者が期限と最低水準を決裁します。「可能な限り早く」ではなく、「72時間以内に主要顧客向け出荷を30%で再開」のように書きます。

ステップ4 重要業務と必要資源をつなぐ

優先事業を、受注、製造・提供、検査、出荷、請求などの業務へ分けます。それぞれに必要な資源を書きます。

中小企業庁の指針では、必要資源を一つずつ「使えなくなったら」と考えます。対象は、従業員、施設・店舗、設備、原材料、パソコン、情報システム、電話、電力、ガス、水道、輸送手段、書類などです。

重要業務 必要な人 場所・設備 情報・IT 外部依存

各資源について「目標復旧時間内に戻るか」を確認します。間に合わない資源が、対策を優先するボトルネックです。

ステップ5 ボトルネックごとに代替策を一つ決める

代替策は候補をたくさん書くより、最初に使う一つを決めます。

止まる資源 最初の代替策 実行条件 未確認事項・担当
例:本社オフィス 在宅勤務へ切替 建物立入禁止、または交通停止 VPN同時接続数/情報システム担当
例:主力設備 協力会社へ一時移管 自社復旧が72時間を超える見込み 加工条件と費用/製造部長
例:基幹システム 手書き受付と後日入力 4時間以上利用不可 帳票保管場所/業務担当

中小企業庁も、必要資源の代替には労力や費用の違いがあり、人材・資金を踏まえた継続可能な対策を選ぶよう案内しています。契約も訓練もない代替先は、計画上「未確認」です。

重要事業に必要な資源からボトルネックを見つけ、最初の代替策を決める流れ 対策を列挙する前に、復旧期限へ間に合わない資源を一つ特定します。

ステップ6 発動基準、責任者、最初の24時間を決める

BCPを使い始める条件を、災害名ではなく事業への影響で書きます。

重要事業が目標復旧時間内に戻らないおそれがあると責任者が判断した場合、BCPを発動する。

次に、責任者、代行者、連絡手段を決めます。中小企業庁の策定工程も、発動基準、発動時の体制、関連情報の文書化を整理する構成です。

最初の24時間は、次のように時間帯で分けると使いやすくなります。

時間 行動 判断する人
発災〜1時間 人命安全、避難、安否確認、二次災害防止 各拠点責任者
1〜4時間 建物・設備・電力・通信・人員の状況確認、BCP発動判断 BCP責任者
4〜12時間 重要事業の継続可否、代替策、顧客への第一報 経営者・事業責任者
12〜24時間 復旧見込みの更新、要員・仕入れ・物流の手配 各担当部門

これは編集部が作った一般的なひな形です。避難や安全確認は、施設の消防計画や自治体の指示を優先してください。

ステップ7 机上訓練をして、未確認を次版へ送る

初版を配布する前に、60分の机上訓練を行います。

  1. 「平日午前10時、拠点が使えず、停電が24時間続く」と仮定する
  2. 責任者と代行者へ本当に連絡できるか確かめる
  3. 重要事業を最低水準で動かすため、誰が何をするか読み上げる
  4. 代替設備、仕入先、データへ実際にアクセスできるか確認する
  5. 分からなかった項目に担当者と期限を付ける

BCPは、訓練で見つかった修正を次版へ反映して初めて実効性が上がります。組織、拠点、設備、主要取引先が変わったときも見直します。

架空の20人規模の加工会社で埋めるとこうなる

次は完成形のイメージです。会社と数値は架空で、業界の推奨値ではありません。

項目 架空の記入例
対象 第一工場・主要顧客向け部品A
重要事業 受注、加工、検査、出荷
目標 72時間以内に平常時の30%で出荷再開
ボトルネック 加工担当2人、NC加工機、加工データ、電力、材料、配送便
代替策 協力工場への一時移管。加工データはクラウド保管
発動 工場長。連絡不能なら製造課長
未確認 協力工場の受入量を製造部長が今月末までに確認
訓練 来月15日に、停電・工場立入不可の机上訓練

この表で重要なのは、未確認項目を消していないことです。確認していない代替策を確定事項に見せるより、誰がいつ確かめるかを残した方が手戻りを減らせます。

防災DBが作成するBCP資料の企業記入欄と未確認事項チェックリスト 防災DBで作成できるWord資料の表示例です。未入力項目を隠さず、社内で確認する欄を残した下書きです。

7ステップを初版の骨格にする

この記事の表を埋めれば、重要事業、復旧期限、必要資源、代替策、発動責任者、訓練日までを1枚で確認できます。空欄には担当者と確認期限を付け、経営者が優先順位と期限を、現場責任者が代替策の実行可否を確認してください。

この記事だけで個社の復旧期限の妥当性、設備の復旧時間、代替先の実効性、契約・資金・業種固有の義務までは確定できません。確認できた内容を初版の骨格とし、BCPとBCMの公式資料は、内閣府の企業防災ページで確認してください。


7ステップで決めた内容を、BCPの初版にまとめる

取得できた公的な災害情報を含む編集可能なWord資料8点の下書きを無料で作成できます。出力後、この記事で整理した重要事業・復旧期限・代替策・責任者を追記してください。

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