BCPは、重要事業・復旧期限・必要資源・判断体制を決めるところから始めます。AI生成の説明用イラストです。
BCP(事業継続計画)は、災害や事故で人・建物・設備・システムが使えなくなったときに、どの事業を優先し、いつまでに、何を代わりに使って再開するかを決める計画です。
避難手順や安否確認だけを書いた防災マニュアルとは役割が違います。BCPの初版で先に決めたいのは、重要事業、目標復旧時間、不可欠な資源、発動・判断責任者の4つです。この4点が決まれば、分厚い資料を作らなくても事業継続の骨格はできます。
BCPは「何でも元に戻す計画」ではない
被災直後は、人も設備も時間も足りません。すべての業務を平常どおりに戻そうとすると、かえって重要な仕事の復旧が遅れます。
中小企業庁は、BCPの特徴として、優先して継続・復旧すべき中核事業を特定すること、目標復旧時間を定めること、事業拠点や生産設備、仕入品調達などの代替策を用意することを挙げています。
つまりBCPで決めるのは「全業務の完全復旧」ではなく、会社の存続や顧客への供給に直結する仕事を選び、限られた資源をそこへ寄せる順番です。
防災マニュアル、緊急連絡網、BCPの違い
3つは競合する文書ではありません。発災直後の安全確保から事業再開まで、役割が連続しています。
| 文書 |
主に答えること |
例 |
| 防災マニュアル |
発災直後に人命を守るにはどう動くか |
避難、初期消火、安否確認、負傷者対応 |
| 緊急連絡網 |
誰が誰へ、どの順番で連絡するか |
従業員、経営者、取引先、建物管理者への連絡 |
| BCP |
限られた資源で、どの事業をいつまでに戻すか |
重要事業、復旧期限、必要資源、代替拠点、発動体制 |
内閣府の解説書では、BCPを、危機的事象により事業が中断した、または中断する可能性があるときに発動する、重要業務の継続行動の計画文書として説明しています。平常時の教育・訓練や見直しまで含む継続的な取り組みは、BCM(事業継続マネジメント)です。
避難訓練や備蓄をしていても、「工場が1週間使えないとき、どの商品をどこで作るか」が決まっていなければBCPの課題は残ります。一方、事業再開だけを急ぎ、人命安全の手順がなければ実行できません。両方が必要です。
防災マニュアルと連絡網で人命・状況を確認し、BCPで限られた資源を重要事業へ振り向けます。
防災マニュアルとBCPは、発災直後から事業再開まで役割が連続しています。
最初に決める4つのこと
重要事業と復旧期限を先に決めると、必要な資源と責任者を具体化できます。
1. 何を最優先で続けるか
売上が最大の事業だけが重要とは限りません。停止すると主要顧客を失う業務、社会的な影響が大きい業務、他の業務を動かす基盤業務も候補です。
最初は一つに絞ります。
緊急時でも優先する事業:________
その事業を優先する理由:________
事業名が大きすぎる場合は、「受注」「製造」「出荷」「請求」のように、再開に必要な業務へ分けます。
2. いつまでに、どの水準へ戻すか
目標復旧時間は「できれば早く」では判断に使えません。12時間、3日、1週間など、期限を置きます。さらに、平常時の100%ではなく「主要顧客向けの出荷を30%で再開」のように最低限の水準も決めます。
期限は担当者の感覚だけで置かず、次の二つを見ます。
- 顧客やサプライチェーンが許容できる停止時間
- 売上停止、固定費、復旧費を踏まえ、自社が耐えられる時間
目標復旧時間:発災から__時間・日以内
最低限の業務水準:平常時の__%、または__件/日
3. 何が止まると復旧できないか
重要事業に必要なものを、人・場所・設備・情報・取引先・資金に分けます。一つでも欠けると期限に間に合わないものが、優先して備える資源です。
| 資源 |
確認する問い |
| 人 |
その人しか判断・操作できない仕事はあるか。代行者はいるか |
| 場所・設備 |
建物や機械が使えない場合、別の場所・設備で代替できるか |
| 情報・IT |
顧客情報、設計データ、会計、連絡先を別端末から使えるか |
| 仕入れ・物流 |
一社、一つの道路、一つの倉庫に依存していないか |
| 資金 |
売上が止まる期間の固定費と復旧費を払えるか |
「パソコンが必要」で止めず、端末、電源、通信回線、ログイン情報、データ、操作できる人まで分解すると代替策が見えます。
4. 誰がBCPを発動し、優先順位を変えるか
災害の種類を細かく並べるより、「重要事業が期限内に戻せないおそれがある」ときに誰が発動するかを決めます。責任者が不在なら代行順位も必要です。
発動を決める人:________
第1代行者:________
集まれない場合の連絡手段:________
現場が迷いやすいのは、停止するか再開するか、顧客へ何を伝えるかです。担当者だけで決められない事項を先に特定し、経営者が判断する範囲を明記します。
4項目は独立した記入欄ではなく、前の判断が次の判断を決める順序になっています。
架空の部品加工会社なら、骨格はこうなる
次は、従業員20人の部品加工会社を想定した架空の記入例です。数値は推奨値ではありません。
| 決めること |
架空の記入例 |
| 重要事業 |
主要顧客向け部品Aの受注・加工・出荷 |
| 目標復旧時間 |
72時間以内に通常の30%で出荷を再開 |
| 不可欠な資源 |
加工担当2人、NC加工機、加工データ、電力、材料、配送便 |
| 発動・判断責任者 |
工場長。連絡不能なら製造課長が代行 |
| 最初の代替策 |
加工データを別拠点から取得し、協力工場への一時移管可否を確認 |
この表を作ると、次に調べるべきことも見えます。協力工場との条件が未確認なら、「代替できるはず」と書かず、確認担当者と期限を置きます。
防災DBで作成できるWord資料の表示例です。数値と責任者はサンプルであり、自社の経営判断と現場確認で書き換えます。
初版は、空欄を隠さず判断に使える状態にする
BCPは一度で完成させる文書ではありません。初版の合格点は、緊急時の判断に使えることです。
- 優先して戻す事業が一つに絞られている
- 復旧期限と最低限の水準が数字で書かれている
- 期限を妨げる資源と、代替策の有無が分かる
- 発動責任者と代行者が決まっている
- 未確認事項に、確認する人と期限が付いている
まず4項目を1枚にまとめ、経営者と現場責任者に事実の誤りがないか確認します。その後、連絡先、初動手順、備蓄、訓練記録などを足します。
白紙から作る場合は、中小企業庁のBCP様式類を利用できます。WordやPDFの様式が用意されています。提出先や認定制度がある場合は、その指定様式を先に確認してください。
この記事だけで個別企業の復旧期限や安全性は決められません。建物・設備の状況、取引先との契約、資金繰り、業種固有の義務は、社内の責任者と必要な専門家へ確認してください。BCPとBCMの公式資料は、内閣府の企業防災ページから確認できます。
4つの判断を、BCPの初版へ進める
会社名と拠点住所などを入力すると、取得できた公的な災害情報を含む編集可能なWord資料8点の下書きを無料で作成し、その場でZIP形式でダウンロードできます。出力後、この記事で決めた4項目を追記してください。
BCP資料8点の下書きを無料で作成する
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