BCPのリスク分析|拠点の災害リスクを優先対策へ変える手順

架空の拠点地図から災害リスクと必要な対策を整理する担当者の説明用イラスト 災害情報を、止まる資源・重要業務・対策へつなげます。架空の地図を使ったAI生成の説明用イラストです。

BCPのリスク分析は、ハザードマップの色を資料へ貼って終わりではありません。その災害で何が使えなくなり、重要事業の復旧期限に間に合わなくなるかまでつなげて、初めて対策の優先順位を決められます。

手順は4段階です。①拠点の災害条件を確認する、②止まる資源を想定する、③重要事業と復旧期限への影響を見る、④期限に間に合わない資源へ対策と発動条件を割り当てます。

この記事の内容

ハザードの大きさだけでは、対策順位は決まらない

同じ浸水想定でも、1階に在庫と受電設備がある倉庫と、上階でノートPC中心に働くオフィスでは、事業への影響が違います。地震の危険度が高くても、重要業務を別拠点ですぐ継続できるなら、復旧期限への影響は小さくなる場合があります。

反対に、災害の発生確率が比較的低く見えても、代替できない設備が一台だけで、停止が会社存続に直結するなら検討対象です。

内閣府の事業継続ガイドラインでは、リスクの分析・評価と事業影響度分析を行き来します。災害の情報と事業の情報を別々の表に置くだけでは足りません。

手順1 拠点ごとに、災害の種類と条件を確認する

国土地理院のハザードマップポータルサイトは、住所を起点に洪水、土砂災害、高潮、津波などを重ねて表示します。「わがまちハザードマップ」から、自治体が作成したハザードマップも探せます。

BCP用の確認表には、地図の色だけでなく、次を残します。

確認項目 記録する内容
対象拠点 住所、建物名、使用階、主要設備の場所
災害種別 地震、洪水、内水、土砂、津波、高潮など
条件 想定浸水深、区域区分、地震の指標など、表示された単位のまま
出典 作成機関、資料名、URL、確認日
補足 地下、1階設備、避難経路、周囲の道路など現地条件

地図に色がないことを「安全」とは判断しません。国土地理院のFAQは、情報が未整備の場所や、表示の精度・誤差があることを案内し、最新で詳細な情報は市町村のハザードマップで確認するよう示しています。

拠点のハザード情報を建物、設備、在庫、道路の停止条件へ変換する図 地図の色だけで順位を決めず、現地の設備配置と事業条件へ接続します。

手順2 災害を「使えなくなる資源」へ翻訳する

次に、災害名を事業停止のシナリオへ変えます。

災害条件の例 使えなくなる可能性がある資源 確認すること
洪水・内水 1階や地下の在庫、受電設備、車両、道路 何cmで搬出・上階移動を始めるか。代替ルートはあるか
強い地震 建物、棚、製造設備、従業員、電力・通信 設備固定、点検完了までの時間、操作できる代行者
土砂災害 建物、進入路、従業員の出勤 警戒情報でいつ操業停止・退避するか。別ルートはあるか
停電・通信障害 サーバー、電話、決済、冷蔵設備、勤怠 非常電源の対象と稼働時間。手作業へ切り替えられるか
物流停止 原材料、製品配送、燃料、廃棄物回収 在庫が何日持つか。代替仕入先・配送先は使えるか

これは一般例です。実際の影響は、建物構造、使用階、設備、在庫配置、周辺道路、勤務体制で変わります。現場責任者と施設・設備担当者が確認します。

手順3 重要事業と目標復旧時間へつなぐ

中小企業庁の評価手順では、災害が中核事業に必要な資源へ与える影響を整理します。続いて、その資源が目標復旧時間内に回復するかを確認します。

一つの拠点について、次の1行を作ります。

災害条件 止まる資源 影響する重要業務 自力復旧の見込み 目標復旧時間

「差」には、目標より早い、間に合う、間に合わない、未確認のいずれかを書きます。間に合わない、または未確認の資源が優先対策の候補です。

例えば、主要商品の出荷を72時間以内に再開する必要があるのに、浸水した受電設備の復旧見込みが一週間なら、発電機の有無だけでは解決しません。設備の上階移設、別拠点への業務移管、在庫の事前移動などを比較します。

災害条件から停止資源、重要業務、復旧期限との差、優先対策へつなぐ流れ 復旧期限を超える差が、代替策や事前対策を優先する根拠になります。

手順4 対策、発動条件、確認責任者を決める

対策は「備蓄を増やす」のような大きな言葉で終わらせず、誰が、どの情報を見て、いつ動くかまで書きます。

優先資源 事前対策 発動条件 実行する人 確認方法
1階在庫 高い棚へ移す対象と順番を決める 自治体の避難情報と河川情報を確認し、社内基準に到達 倉庫責任者 訓練で移動時間を計測
業務データ 別拠点から使える保存先へ複製 拠点への立入不可 情報システム担当 別回線・別端末で復元確認
主要原材料 代替仕入先の条件を確認 主仕入先の復旧が目標時間を超える 購買責任者 年1回、連絡先と供給量を確認

発動条件には、自治体や気象機関の情報と、会社独自の判断基準を混同せず記録します。法令や施設の避難計画が定める行動はそちらを優先し、BCPでは事業停止や代替移管を決めます。

優先順位は「影響」「期限との差」「代替の弱さ」で決める

点数を細かく作る前に、次の三つで並べ替えます。

  1. 影響:止まると重要事業が大きく止まるか
  2. 期限との差:自力復旧が目標復旧時間に間に合わないか
  3. 代替の弱さ:代替先がない、契約していない、訓練していないか

三つとも該当する資源を最優先にします。発生確率だけで順位を決めないため、低頻度でも経営存続に大きく影響する停止を取りこぼしにくくなります。

影響 期限に間に合うか 代替策 扱い
間に合わない なし・未確認 今期の優先対策
間に合わない 訓練済み 代替策の維持・定期確認
間に合う あり 復旧手順と責任者を記録
間に合う あり 記録し、変更時に見直す

架空の物流倉庫で1行を完成させる

次は架空の例です。浸水深、時間、設備条件は実在の拠点を示しません。

項目 架空の記入例
災害条件 洪水浸水想定区域。詳細は自治体資料で再確認
止まる資源 1階在庫、フォークリフト、受電設備、前面道路
重要業務 主要顧客への日次出荷
目標復旧時間 48時間
自力復旧 受電設備が浸水した場合は48時間を超える可能性。未確認
優先対策 優先在庫の上架、車両退避、代替倉庫の受入条件確認
発動条件 自治体情報と河川情報を基に社内責任者が事前移動を判断
担当・期限 倉庫長が今月中に移動時間を訓練で確認

この1行なら、地図の説明ではなく、予算と訓練を決める材料になります。「受電設備の復旧時間が未確認」という空欄も、設備会社へ確認する仕事として扱えます。

防災DBが作成する拠点別ハザード評価とBCP判断のサンプル 防災DBで作成できるWord資料の表示例です。公的な災害情報と、会社が決めるBCP上の判断を分けて確認します。

出力後に現場で確認すること

公的な災害情報を資料に入れても、BCPのリスク分析は完成しません。この記事の表に沿って、次を社内で追記・確認します。

  • ハザード情報が現場のどの設備・在庫・経路に影響するか
  • 自力復旧が目標復旧時間に間に合うか
  • 代替先が実際に利用できるか
  • 誰がどの条件で移動・停止・代替を判断するか

公的データにも未整備や精度の限界があります。国土地理院の注意事項を踏まえ、自治体の最新ハザードマップ、現地条件、設備仕様を合わせて確認してください。


拠点の災害リスクを含む、BCPの下書きを作る

拠点住所から取得できた公的な災害情報を含む、編集可能なWord資料8点の下書きを無料で作成できます。出力後、この記事で作ったリスク台帳の1行と現場条件を追記してください。

拠点リスクを含むBCP資料を無料で作成する

入力条件:会社名・拠点住所・担当者名・部署/役職・法人メール・電話番号の入力と同意が必要です。取得できない災害項目がある場合があります。完成版や制度適合を保証するものではありません。