住まい

マンションの在宅避難は何を備える?水・携帯トイレの不足計算と設備の確認

マンションで在宅避難を続けられるのは、建物や周囲が安全で、家族が水・トイレ・食事・必要な医療を確保できる場合です。高い階に住んでいることや、水を買ってあることだけでは決まりません。地震後は排水管の復旧が確認できるまでトイレを流さず、点検が終わるまでエレベーターを使わないという制約もあります。東京都のマンション防災リーフレット

この記事では、平時に「わが家は何が足りないか」を確かめます。建物の安全診断や、災害発生中の避難指示の代わりにはなりません。火災や建物の損傷などで自宅に危険があるときは、備蓄の点検より身の安全の確保を優先してください。

集合住宅の室内で水や携帯トイレ、LEDランタンを備えるイメージ
AI生成のイメージです。実際の検証・取材写真ではありません。
この記事の内容

自宅に残れるかは「建物・周囲・生活」の順に確認する

東京都は、耐震基準を満たすマンション等でも、被害が軽微であることを在宅避難の条件として挙げています。室内だけを見て、建物全体や共用設備まで無事だと判断することはできません。東京都・在宅避難特設ページ

確認は、次の3つを分けます。

確認するもの 平時に押さえること
建物と室内 耐震性、防災マニュアル、災害後の安全確認を誰が行い、住民へどう知らせるか
周囲の災害 洪水・高潮・土砂災害・津波など、自宅と避難経路に関係するハザードマップ
家族の生活 水・トイレ・食料の在庫、階段移動、暑さ寒さ、薬や医療機器を含む個別の事情

地震への備えを、そのまま水害時の「残ってよい」という判断に使わないでください。洪水などで自宅の上階にとどまる場合も、家屋倒壊等氾濫想定区域にないこと、浸水しない居室があること、浸水中の生活上の支障に対応できることなどの条件があります。内閣府・屋内安全確保の条件(8ページ)

地図では、部屋の高さだけでなく、周辺道路や出入口が浸水する期間も確かめます。掲載のない項目は、リスクがないと扱わず自治体に確認します。自宅が安全でも、物資を受け取りに行けない状況は生活の計画に影響します。

水が出ても、トイレを流せるとは限らない

蛇口から水が出ることは、排水管が無事である証拠にはなりません。東京都の案内では、損傷した排水管に上階から水を流すと、下階に汚水があふれるおそれがあるため、復旧確認までは携帯トイレ・簡易トイレを使います。風呂の残り湯を備えていても、排水管の確認前に水洗トイレを使う理由にはできません。東京都・マンション防災(3ページ)

備えを品名だけで数えると、このようなつながりを見落とします。家で行いたいことから逆に確かめると、不足が見えます。

家で続けたいこと 備品以外に必要な条件 自分の家で確認すること
トイレを使う 水洗なら給水と排水の両方 使用再開の連絡方法。流せない間の携帯トイレと使用後の保管場所
食事をとる 食品に合った水・加熱手段 電子レンジだけで作る食品に偏っていないか。加熱不要の食品はあるか
水を補充する 給水場所までの安全な移動と運搬 エレベーター停止中、家族が階段で運べるか。支援を頼める先はあるか
夜に動く・連絡する 照明と通信機器の電源 ライトの位置と電池、スマートフォンの充電手段

これは東京都の設備上の注意点を、家庭の生活手順へ当てはめた点検表です。ポンプの方式や非常用電源の供給先はマンションごとに異なるので、「非常用発電機があるから各住戸のコンセントも使える」とは決めず、管理側に確認します。

水と携帯トイレは、在庫を「何日分」に直す

水の箱とトイレの箱は、そのままでは比べられません。まず人数と日数をそろえて計算します。飲料水は東京消防庁の1人1日3L、携帯トイレは経済産業省が示す成人1人1日5回を、計算の出発点にします。期間は東京都のマンション向け備えに合わせて7日とします。東京消防庁・非常物品内閣府掲載・トイレ備蓄の目安

飲料水の目標量=人数×3L×日数。携帯トイレの目標回数=人数×1日の使用回数×日数。

例えば、成人4人で7日を準備するなら、水は84L、携帯トイレは140回分です。ここからが在庫点検です。仮に家にあるのが2Lの水24本と、携帯トイレ60回分なら、次のようになります。実在する家庭の調査値ではなく、計算方法を示す例です。

品目 手元の在庫 計算上の日数 7日分までの不足
飲料水 2L×24本=48L 48÷(4人×3L)=4日 84−48=36L、2Lなら18本
携帯トイレ 60回分 60÷(4人×5回)=3日 140−60=80回分

この例では、水より先に携帯トイレが不足します。 水だけを増やしても、排水が止まったときの不足は解消しません。どちらか少ない方の日数を見ることで、買い足す順を決められます。ただし「3日は暮らせる」という安全保証ではありません。食事や電源、家族の体調がそれより早く支障になる場合もあります。

箱単位で買うときは不足を購入単位で割り、端数を切り上げます。この例なら水が1箱12Lの場合、36÷12=3箱。トイレが1箱50回分なら80÷50=1.6なので2箱です。買う前に、手元の箱が「何枚」ではなく何回分として使える製品かを表示で確認します。

3Lは飲料水の目安で、洗濯やトイレを流す水まで含めた生活用水の総量ではありません。使用回数も年齢や体調で変わります。乳幼児の調乳、服薬、食事の調理など家族固有の水の使い方を確認し、必要な分を別に考えます。飲水やトイレを我慢して日数を延ばす計画にはしません。

管理組合には「備蓄がありますか」より、使える条件を聞く

共用の備蓄があっても、各戸への配布数や開錠方法が未確認なら、自宅の在庫と同じようには数えられません。東京都は、排水管の確認手順、エレベーターの復旧、住民への情報発信などのルールを平時に決めておくよう勧めています。東京都・マンション全体の備え(4ページ)

マニュアルや管理会社への確認では、次の欄を埋めます。

  • 排水とエレベーター: 誰が確認し、使用再開をどこに掲示するか。停電や通信障害でアプリを見られないときの連絡方法はあるか。
  • 共用備蓄: 水・トイレは1戸あたり何日分を想定しているか。倉庫の場所、鍵を持つ人、配布条件はどうなっているか。
  • 給水と移動: 停電中の給水方式、階段で運べない人への支援、地域の避難所や支援窓口への連絡方法は何か。

賃貸で管理組合と接点がない場合は、管理会社や貸主に同じ内容を確認します。回答がない部分は「自分で解決済み」とせず、家庭の備蓄や支援の計画で補う対象として残します。

備蓄が残っていても、在宅避難を続ける条件は見直す

在宅避難は、一度決めたら最後まで続ける約束ではありません。建物や周囲の危険が増した、室内の暑さ寒さに対応できない、必要な薬・医療機器・水・トイレを確保できないなど、家族の生活条件が崩れたら継続を見直します。支援が必要な家庭は、平時から主治医や自治体の窓口と、移動先・移動手段を相談しておきます。災害中は自治体や管理側の情報に従い、安全な移動や支援要請を判断してください。医療機器を使っている家庭の準備や相談先は、東京都の要配慮者支援の案内も参考にしてください。

今日の点検は、水の本数とトイレの使用回数を書き出し、少ない方の日数を計算するところまでで一区切りです。併せて管理マニュアルの「トイレを再開してよいという連絡」を探します。足りない数量と、家庭だけでは確認できない設備の条件。両方が分かって初めて、わが家の在宅避難の準備が具体的になります。