千葉市の災害リスクと歴史|過去の台風・地震・液状化被害を徹底解説

著者: 防災DB編集部
更新日: 2026年4月
データソース: 防災DB(bousaidb.jp)、国土交通省ハザードマップポータル、内閣府防災情報


千葉市では過去に記録された重大な自然災害が数十件にのぼります。2019年の令和元年房総半島台風では市内3,763棟が一部損壊し、2011年の東日本大震災では美浜区の埋立地で1,906戸が液状化被害を受けました。防災DBの解析による千葉市の統合リスクスコアは92/100(極めて高い)。洪水・津波・高潮・地震・液状化のほぼ全カテゴリが高スコアを示す、複合リスク都市です。


千葉市の災害リスクの全体像

千葉市は人口約97万人を擁する政令指定都市で、東京湾に面した6区(中央区・花見川区・稲毛区・若葉区・緑区・美浜区)から構成されます。東側は九十九里平野、西側は東京湾岸の埋立地、内陸は台地と谷地が複雑に入り組む地形です。この多様な地形が、複数種類の災害リスクを生む根本的な要因です。

防災DBの125mメッシュ解析によるリスク評価は以下のとおりです(2024年時点のデータ)。

リスク区分 スコア(0〜100) 評価
洪水リスク 100 最高
津波リスク 100 最高
高潮リスク 100 最高
土砂災害リスク 50 中程度
総合リスクスコア 92 極めて高い

地震リスクについて補足すると、防災科学技術研究所(J-SHIS)の地震動予測地図(2024年版)に基づくと、千葉市域の30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は平均62.74%、最大97.14%に達します。震度5弱以上の確率はほぼ100%です。これは全国でも最高水準の地震リスクです。


なぜ千葉市は水害に弱いのか|地形と地盤の特徴

東京湾に向かって開いた地形

千葉市の市域は、北に利根川水系の低地、西に東京湾、南東に太平洋方向へ続く台地が広がる地形です。台地から東京湾へ流れ込む養老川・都川・村田川などの河川は、台地部では谷を刻みながら流れ、低地部に出ると勾配が緩くなり洪水を起こしやすくなります。特に高崎川流域はハザードマップで最大浸水深20mが想定される地点があり、氾濫時の継続時間が336時間(14日間)に及ぶとされています。

埋立地の液状化リスク

美浜区の大部分と中央区の海寄りエリアは、高度経済成長期に東京湾を埋め立てて造成されました。砂質土で構成される埋立地は地下水位が高く、強い地震動が加わると「液状化」が発生しやすい特性があります。2011年の東日本大震災では、この弱点が顕在化しました。


過去の主要災害(詳細)

2019年9月 令和元年房総半島台風(台風15号)

千葉市に最も大きな爪痕を残した近年の台風です。2019年9月9日、台風15号は千葉市付近に上陸し、市内で観測史上最大の最大瞬間風速57.5m/sを記録しました。

被害状況(千葉市内)は以下のとおりです。

被害区分 棟数
全壊 10棟
半壊 165棟
一部損壊 3,763棟
床上浸水 3棟
床下浸水 4棟

(出典:内閣府「令和元年台風第15号第101報」2019年)

住宅被害に加え、市内ほぼ全域の約64万戸が停電し、一部地域では復旧まで2週間以上を要しました。送電線の倒壊・断線が相次ぎ、停電の長期化が社会問題となりました。千葉市内の学校・公共施設でも屋根の損壊や外壁の剥落が多数発生しています。

2011年3月 東日本大震災(液状化被害)

マグニチュード9.0の東日本大震災は、2011年3月11日14時46分に発生しました。千葉市内では津波被害はほぼなかったものの、美浜区を中心とした埋立地で広域の液状化現象が発生し、深刻な被害をもたらしました。

  • 液状化被害: 美浜区で住宅等1,906戸に傾斜・沈下・地盤隆起などの被害
  • 被害エリア: 稲毛海岸・幸町・美浜区の大部分(国道357号沿いの埋立地一帯)
  • ライフライン: 下水管・ガス管・水道管・電柱の損壊が相次ぎ、一部エリアで復旧に数ヶ月

(出典:千葉市「東日本大震災千葉市災害記録誌」、千葉県環境研究センター「東日本大震災液状化報告書」)

この液状化は、埋立から40年以上経過した地盤でも発生しうることを示した事例として、全国の防災計画に影響を与えました。なお、本事例はNIEDデータセットに未収録のため本文で別途記載しています。

1999年5月27日 突風による住宅被害

1999年5月27日、千葉市内で突風が発生し、住宅36棟が全壊する甚大な被害が発生しました(出典:千葉市地域防災計画共通資料編)。この被害は竜巻またはダウンバーストによるものと推定されますが、当時の記録では気象種別の詳細が明確に分類されていません。5月下旬という季節は積乱雲が発達しやすく、局地的な突風が発生しやすい条件が揃っていました。同年には4月2日にも突風で2棟全壊・負傷者2名の被害が記録されています。

1993年8月 梅雨前線・台風7・11号による洪水

1993年8月26日、梅雨前線に台風7号・11号が重なり、千葉市内で大規模な洪水が発生しました。

被害区分 件数
床上浸水 118棟
床下浸水 201棟
全壊 1棟
半壊 1棟

(出典:気象庁「平成5年梅雨前線、台風第7・11号」)

都川や村田川など市内を流れる中小河川が氾濫し、台地の谷底低地や低平地で床上浸水が広がりました。


過去の災害年表(1991年〜2019年)

以下は、千葉市に被害をもたらした主な災害の記録です(NIEDデータセットおよび千葉市地域防災計画より)。

災害名・気象庁名 主な被害
2019 9月 令和元年房総半島台風 全壊10、半壊165、一部損壊3,763棟
2019 10月 令和元年東日本台風 一部損壊36棟
2011 3月 東日本大震災 液状化1,906戸(美浜区)
2007 9月 平成19年台風第9号 床下浸水2棟ほか
2006 9月 竜巻・暴風雨 床上浸水最大11棟
2006 8月 大雨 床上浸水複数
2006 7月 大雨 床上浸水8棟
2004 9月 台風・大雨 床上浸水11棟
2000 6月 突風 全壊7棟
1999 11月 突風 全壊2棟
1999 5月 竜巻・突風 全壊36棟
1999 4月 突風 負傷2名、全壊2棟
1993 8月 梅雨前線・台風7・11号 床上118、床下201棟
1991 10月 洪水 床上5、床下23棟

洪水・浸水リスク|9本の河川が市域を流れる

防災DBの125mメッシュ解析では、千葉市内で洪水浸水想定域が確認された主な河川は以下のとおりです。

河川名 浸水メッシュ数 最大想定浸水深 浸水継続時間(最大)
養老川 2,389 5m 72時間(3日間)
高崎川 1,140 20m 336時間(14日間)
江戸川 1,100 10m 336時間(14日間)
村田川 945 5m 168時間(7日間)
都川 884 5m 336時間(14日間)
勝田川 758 5m 336時間(14日間)
海老川 487 3m 168時間(7日間)
菊田川 290 5m 24時間
利根川 268 5m 336時間(14日間)

(出典:国土交通省洪水浸水想定区域、防災DB125mメッシュ解析 2024年時点)

浸水深の目安として覚えておきたい目安:
- 0.5m:道路が冠水し、徒歩での移動が困難になる水深
- 1m:一般的な乗用車が水没し始める水深
- 3m:木造1階部分が完全に水没する水深(天井まで)
- 5m:2階床上まで水没する水深
- 10m:3階建て以上の建物でも1・2階が完全水没

高崎川の「最大浸水深20m」は想定最悪シナリオ(計画規模を超える超過洪水)における数値です。これは5〜6階建ての建物が水に沈む水深に相当します。市東部の低地に居住している方は、早期避難が生死を分けると理解してください。


津波・高潮リスク|東京湾に面した1.4万メッシュが浸水域

千葉市の西部・南部は東京湾に面しており、津波・高潮の浸水リスクが高い地域です。防災DBの沿岸リスク解析では、市内14,012メッシュ(各125m×125m)が津波または高潮の浸水想定域に含まれています。

区分 最大浸水深 平均浸水深
津波 10m 0.81m
高潮 10m 1.78m

高潮の浸水深別の分布:
- 3m以上の深刻浸水域:4,275メッシュ(湾岸低地の広い範囲)
- 1〜2m浸水域:5,807メッシュ
- 1m未満浸水域:1,221メッシュ

高潮は台風接近時の満潮と重なると被害が拡大します。美浜区・中央区の海岸沿いエリアでは、台風時の高潮と内水氾濫が同時発生するリスクを想定した避難計画が必要です。


地震・液状化リスク|埋立地で震度6弱確率97%

地震発生確率

J-SHIS(防災科学技術研究所)の地震動予測地図(2024年版)に基づく千葉市の地震動確率は以下のとおりです。

区分 平均値 最大値
30年以内に震度6弱以上 62.74% 97.14%
30年以内に震度5弱以上 ほぼ100% 100%

(出典:防災DB 125mメッシュ解析、J-SHIS 2024年版データ)

「30年以内に震度6弱以上」の平均確率62.74%は、コインを投げて表が出る確率(50%)より高い数値です。千葉市に住む・働く人が生涯で震度6弱以上の地震を経験する可能性は、統計的に非常に高いといえます。

周辺の活断層

千葉市に影響を与えうる主な活断層は以下のとおりです(地震調査研究推進本部のデータより)。

断層名 想定マグニチュード 30年発生確率
三浦半島断層群主部武山断層帯 M6.5 8.39%
立川断層帯 M6.8 1.35%
三浦半島断層群南部 M7.0 0.59%

三浦半島断層群は神奈川県三浦半島に位置しますが、M6〜7クラスの地震は50〜100km離れた千葉市にも震度5〜6の揺れをもたらすことがあります。なお、千葉市付近には相模トラフ・南関東直下地震のリスクもあり、政府の首都直下地震対策では「M7クラスの直下地震が30年以内に70%の確率で発生する」と評価されています。

液状化リスク

平均地盤のS波速度(Avs30)は千葉市全域平均で235.8 m/sです。Avs30が200 m/s未満は「軟弱地盤」の目安とされており、美浜区の埋立地エリアではこれを下回る地点が多数存在します。東日本大震災で美浜区の1,906戸が液状化被害を受けたことからも、埋立地居住者は「震度5強以上で液状化が起こりうる」と認識したうえで備えることが重要です。


土砂災害リスク

内陸部の台地と谷地形が複雑に入り組む若葉区・緑区には、土砂災害警戒区域が集中しています。防災DBの解析では、千葉市の土砂災害リスク域メッシュは178メッシュ、法指定の土砂災害ハザード区域は76箇所です。

台地の斜面部や谷底に近い住宅は、大雨時に表面崩壊・斜面崩落のリスクがあります。土砂災害警戒情報が発表された際は、早めに安全な場所へ移動することが重要です。


千葉市内の主な広域避難場所

千葉市内には避難場所が380箇所(うち広域避難所73箇所)整備されています。以下は代表的な広域避難場所の一覧です。

施設名 住所
千葉公園 中央区弁天3-1 中央区
みなと公園 中央区千葉港6 中央区
千葉大学構内 稲毛区弥生町1-33 稲毛区
千葉県総合スポーツセンター 稲毛区天台町323 稲毛区
ふるさと農園 花見川区三角町656-3 花見川区
千葉工業大学グラウンド一帯 花見川区千種町300 花見川区
加曽利貝塚公園 若葉区桜木町163 若葉区
千城台公園一帯 若葉区千城台南1-21 若葉区
創造の杜公園 緑区大椎町1809-1 緑区
幕張海浜公園 美浜区ひび野2丁目 美浜区
こじま公園 美浜区高洲4-2 美浜区

(出典:国土数値情報 避難施設データ、防災DB解析)

最寄りの避難場所の確認は、千葉市公式のWEB版ハザードマップでリアルタイムに検索できます。自宅・職場から複数の避難ルートを事前に確認しておきましょう。


今からできる備え

公式防災情報の確認

  • 千葉市地震・風水害ハザードマップ(WEB版):
    https://www.city.chiba.jp/other/jf_hazardmap/index.html
    住所検索・位置情報連動で洪水・津波・土砂災害の浸水域を確認できます。

  • 千葉市防災ポータルサイト:
    https://city-chiba.my.site.com/
    避難情報のリアルタイム確認・防災情報登録が可能です。

  • 防災DB(bousaidb.jp):
    https://bousaidb.jp/
    千葉市の125mメッシュ単位の詳細なリスクデータをAPI・MCPで取得できます。

特に重点的に確認すべきこと

  1. 自宅の液状化リスク確認(美浜区・中央区海岸側の方は必須)
  2. 高潮・津波の避難経路確認(台風シーズン前に毎年見直す)
  3. 洪水時の早期避難タイミング理解(高崎川・養老川沿いの方は特に注意)
  4. 備蓄の見直し(停電が2週間に及んだ令和元年台風の経験から、水・食料は2週間分を推奨)
  5. 液状化後のライフライン途絶への備え(給水袋・携帯トイレ・カセットコンロ)

データ出典

データ 出典
市区町村別リスクスコア 防災DB(bousaidb.jp)125mメッシュ解析(2024年)
洪水浸水想定区域 国土交通省洪水浸水想定区域データ(各水系管理者)
津波・高潮浸水想定区域 千葉県津波被害想定調査・高潮浸水想定区域図
過去の災害事例 内閣府防災情報(NIED)災害データベース
地震動予測 防災科学技術研究所(J-SHIS)地震動予測地図2024年版
活断層情報 地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図」
液状化被害データ 千葉市「東日本大震災千葉市災害記録誌」
避難場所データ 国土数値情報 避難施設(nlftp_p20)2024年版

本記事の数値データは記載の時点のものです。最新情報は各公式情報源をご確認ください。データや記事内容についてのご指摘・フィードバックは bousaidb.jp まで。

© 防災DB編集部 | 防災DB