相模原市の災害リスクと過去の被害|防災DB独自データで解説
神奈川県最大の内陸都市・相模原市は、防災DBの統合リスクスコアで92点(極めて高い)を記録しています。これは全国約1,900市区町村のうち、最上位グループに位置する水準です。台地と河川沿い低地が複雑に入り組む地形、そして北から南に向けて複数の河川が流下する地理的条件が、この高いリスクの背景にあります。
2019年10月の台風第19号では市内で8人が死亡、全壊24棟・半壊42棟・一部損壊56棟、河川被害151件という甚大な被害が記録されました。1970年代から現在に至るまで118件の災害事例がNIEDデータベースに収録されており、繰り返し水害に見舞われてきた都市であることがわかります。
この記事では防災DBの125mメッシュ解析データと過去の被害記録をもとに、相模原市の災害リスクを多角的に解説します。
なぜ相模原市は水害に弱いのか
相模原市は神奈川県北部に位置し、面積328.91km²、人口約72万人(政令指定都市)を擁します。2010年に緑区・中央区・南区の3区が設置されました。
地形的な特徴として、市域の大部分を占める相模原台地(標高50〜100m程度の洪積台地)と、台地を刻む複数の河川沿いの低地・河岸段丘が共存しています。台地部は比較的安定していますが、相模川・境川・鳩川・串川・道志川などの河川沿い低地は、大雨時に浸水リスクが高まります。
特に相模川は、甲府盆地に源を発し、相模湖・津久井湖を経由して相模原市を南北に縦貫する神奈川県最大の河川です。相模川の本支流が運ぶ土砂は台地を形成した一方で、現在もその氾濫が周期的に市域を襲い続けています。
また緑区北部の山間地帯は、丹沢山地の急峻な地形が続いており、土砂災害の危険性が高い区域が集中しています。
防災DBの統合リスクスコア
防災DBによる相模原市のリスクプロファイルは以下の通りです(2024年時点)。
| リスク項目 | スコア(0〜100) | 主要指標 |
|---|---|---|
| 統合リスクスコア | 92(極めて高い) | 全国最上位グループ |
| 洪水リスク | 100 | 最大浸水深20m想定・浸水ハザード区域224,396件 |
| 高潮・広域浸水 | 100 | 相模川下流域を含む広域評価 |
| 土砂災害 | 50 | ハザード区域131箇所 |
洪水スコアが満点の100を記録しているのは、相模川をはじめとする複数河川の想定浸水深が非常に大きく、ハザード区域の広がりが全国的に見ても上位水準にあるためです。
過去の主要災害
2019年台風第19号(令和元年東日本台風)—— 40年ぶりの大水害
2019年10月12〜13日、「令和元年東日本台風」と命名された台風第19号が神奈川県を直撃しました。全国で死者・行方不明者が100人を超え、1979年台風第20号以来40年ぶりの大被害となった記録的な台風です。
相模原市では、相模川・中津川・道志川などが増水し氾濫危険水位を突破。市内各地で浸水被害が発生しました。
相模原市内の被害(2019年台風第19号)
| 被害種別 | 件数・棟数 |
|---------|-----------|
| 死者 | 8人 |
| 全壊 | 24棟 |
| 半壊 | 42棟 |
| 一部損壊 | 56棟 |
| 床上浸水 | 10戸 |
| 床下浸水 | 51戸 |
| 河川被害 | 151件 |
河川被害151件という数字は、流域内の護岸崩壊・堤防越水・支流の小河川への被害が広域に及んだことを示しています。
(出典:相模原市地域防災計画資料編・NIED自然災害データベース)
1978年7月——床下浸水1,345戸の記録的水害
1978年7月11日に発生した集中豪雨は、床上浸水173戸・床下浸水1,345戸という相模原市史上でも特に大きな浸水被害をもたらしました。当時はまだ市街地化が進む過渡期で、低地部の排水インフラが現在より脆弱であったことが被害拡大の一因と考えられます。
同年4月6日にも床上浸水205戸・床下浸水620戸の水害が発生しており、1978年は春から夏にかけて二度の大規模水害に見舞われた年でした。
(出典:★相模原市地域防災計画-資料編)
1976年台風第17号——床上浸水172戸
1976年9月9日の台風第17号では、床上浸水172戸・床下浸水832戸の被害が発生。相模川水系の主要河川が軒並み増水し、市内各地の低地部が浸水しました。
過去の災害年表(抜粋)
| 年月 | 災害名 | 死者 | 全壊 | 半壊 | 床上浸水 | 床下浸水 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2019年10月 | 台風第19号(令和元年東日本台風) | 8 | 24 | 42 | 10 | 51 |
| 1984年7月 | 大雨 | ー | ー | ー | 105 | 54 |
| 1982年9月 | 台風第18号・豪雨 | ー | ー | ー | 32 | 191 |
| 1979年10月 | 台風第20号 | ー | ー | 2 | 7 | 15 |
| 1978年7月 | 集中豪雨 | ー | ー | ー | 173 | 1,345 |
| 1978年4月 | 大雨 | ー | ー | ー | 205 | 620 |
| 1977年9月 | 沖永良部台風 | ー | ー | ー | ー | 154 |
| 1976年9月 | 台風第17号 | ー | ー | ー | 172 | 832 |
| 1985年6月 | 梅雨前線豪雨・台風第6号 | 1 | 1 | ー | ー | 41 |
(出典:NIED自然災害データベース・相模原市地域防災計画資料編)
118件の記録のうち、死者が明記されているのは2019年の8名のほか少数にとどまりますが、床上浸水・床下浸水の被害は1970年代から現在まで断続的に発生し続けています。
洪水・浸水リスク:流域ごとの脅威
防災DBの125mメッシュ解析では、相模原市域に影響を与える河川の浸水ハザードを詳細に把握しています。
| 河川名 | 影響メッシュ数 | 最大浸水深 | 平均浸水深 | 最大浸水継続時間 |
|---|---|---|---|---|
| 三沢川 | 9,231 | 10m | 0.45m | 72時間 |
| 秋川 | 5,229 | 20m | 1.55m | 12時間 |
| 相模川 | 1,943 | 5m | 1.98m | 168時間(7日間) |
| 残堀川 | 1,074 | 5m | 0.33m | 168時間 |
| 境川 | 958 | 20m | 1.74m | 24時間 |
| 浅川 | 788 | 10m | 1.39m | 72時間 |
| 多摩川 | 684 | 10m | 1.84m | 72時間 |
| 中津川 | 557 | 5m | 1.67m | 24時間 |
| 小鮎川 | 546 | 20m | 2.77m | 72時間 |
| 金目川 | 323 | 10m | 1.96m | 72時間 |
浸水深の目安:
- 0.5m未満 = 膝下まで(歩行困難な場合あり)
- 1m = 成人の腰まで(車は水没)
- 3m = 1階の天井まで(1階の人命に危険)
- 5m = 2階の床上(2階への避難も危険)
- 10m以上 = 建物全壊レベル
相模川では最大7日間(168時間)の浸水継続が想定されており、水が引くまで長期間の避難を余儀なくされる可能性があります。小鮎川では平均浸水深が2.77mと最も深く、沿川での被害が特に懸念されます。
相模原市公式の洪水ハザードマップでは、相模川・境川・鳩川・道保川・串川・道志川の氾濫時の浸水想定が公開されています。自宅の浸水想定深は必ず確認してください。
土砂災害リスク:緑区山間部に集中
防災DBの解析では、相模原市域で4,835メッシュ(125m×125m単位)に土砂災害のリスクが検出されています。土砂災害警戒区域・特別警戒区域は市内に131箇所指定されており、特に緑区の丹沢山麓エリアに集中しています。
土砂災害は発生が突発的で、特に夜間の大雨時に逃げ遅れるリスクが高くなります。緑区山間部に居住・訪問する際は、大雨・台風情報に特に注意が必要です。
相模原市の土砂災害ハザードマップはこちらで確認できます。
地震リスク:相模トラフと三浦半島断層群
30年以内の地震発生確率(2024年全国地震動予測地図)
防災DBの125mメッシュデータによると、相模原市域の地震リスクは以下の通りです。
| 指標 | 市域平均 | 市域最大 |
|---|---|---|
| 30年以内に震度6弱以上 | 21.0% | 91.3% |
| 30年以内に震度5弱以上 | 90.3% | 100% |
| 表層地盤平均Avs30 | 509.2 m/s | — |
30年震度6弱以上確率の市域平均21.0%は全国的に見ても高水準です。一部地域では91.3%という極めて高い確率が算出されており、相模原市のどこに住んでいても地震への備えは不可欠といえます。
表層地盤のAvs30平均値509.2 m/sは比較的硬質な地盤を示していますが、相模川沿いや低地部では軟弱な地盤が分布し、局所的に揺れが増幅される箇所があります。
近隣の主要活断層
| 断層名 | 想定M | 30年発生確率 |
|---|---|---|
| 三浦半島断層群主部武山断層帯 | M6.5 | 8.4% |
| 三浦半島断層群南部 | M7.0 | 0.6% |
| 三浦半島断層群主部衣笠・北武断層帯 | M6.7 | 0.006% |
| 伊勢原断層 | M6.6 | 0%(長期評価値) |
三浦半島断層群は相模原市の南方に位置する活断層群です。特に武山断層帯は30年発生確率8.4%と全国的に見ても「やや高い」水準にあります(全国の活断層の多くは確率1%未満)。
また相模原市は、相模トラフ(フィリピン海プレートと北米プレートの境界)に近く、1923年の関東大震災(M7.9)を引き起こした震源域の北側に位置します。政府の南海トラフ地震臨時情報に準じた形で、相模トラフ地震への備えも重要です。
避難施設情報
相模原市内の避難場所は1,145箇所(うち広域避難場所30箇所)が登録されています(国土数値情報2024年版)。
広域避難場所は、大規模災害発生時に近隣の方が多く集まる大規模な公園・広場です。平時から最寄りの避難場所の場所・経路を確認しておくことが重要です。
相模原市の避難場所一覧および詳細は、相模原市防災・各種マップまたは「さがみはら防災マップ」でご確認ください。
今からできる備え
1. ハザードマップを確認する(最優先)
居住地・勤務地・学校のハザードマップを確認し、どの災害リスクにさらされているかを把握してください。
- 相模原市 防災・各種マップ一覧: https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kurashi/1026529/bousai/1008688/index.html
- 洪水ハザードマップ: https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kurashi/1026529/bousai/1008688/1008692.html
- 土砂災害ハザードマップ: https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kurashi/1026529/bousai/1008688/1013027/index.html
- さがみはら防災マップ(Web GIS版): https://www.arcgis.com/apps/webappviewer/index.html?id=e0f12e9ebfaa46b79f8c61e962fea2d0
2. 避難行動計画(マイ・タイムライン)を作る
相模川・中津川沿いに住む方は、台風接近情報が出た時点から動く行動計画を作成してください。相模川の氾濫では、浸水が最長7日間継続する想定があります。「避難指示が出てから動く」では手遅れになる可能性があります。
3. 早めの避難を心がける
2019年台風第19号では、相模原市内で8人が命を落としました。市が「避難指示」を発令する前に、自主的に早期避難することが命を守ります。特に高齢者・障がいのある方は、警戒レベル3(高齢者等避難)で避難を開始してください。
4. 72時間分の備蓄と持出し袋
相模川の最長7日間浸水継続想定を踏まえると、1週間分の食料・水・薬の備蓄が理想的です。最低でも72時間(3日間)分を備えましょう。
データ出典
| データ | 出典 |
|---|---|
| 統合リスクスコア・各リスクスコア | 防災DB(bousaidb.jp) |
| 125mメッシュ洪水浸水深・継続時間 | 国土交通省 洪水浸水想定区域図(防災DBが加工・集計) |
| 125mメッシュ土砂災害 | 国土交通省 土砂災害警戒区域等GISデータ(防災DBが加工) |
| 30年地震動確率 | 地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図2024年版」(防災DBが加工) |
| 活断層データ | 地震調査研究推進本部 活断層長期評価(防災DBが加工) |
| 過去の災害事例(118件) | 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース・相模原市地域防災計画資料編 |
| 避難場所・施設 | 国土数値情報 避難施設データ(2024年版) |
| ハザードマップURL | 相模原市公式ウェブサイト |
記事作成: 防災DB編集部 / 最終更新: 2026年4月
本記事の数値は、防災DBが政府公開データを集計・加工したものです。最新情報は各出典元および相模原市公式ウェブサイトにてご確認ください。ご意見・データの誤りのご指摘は 防災DB までお寄せください。
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