山陽小野田市の災害リスクと歴史年表|洪水・津波・地震が三重に迫る周防灘の街

山陽小野田市は、防災DBの統合リスクスコア83点(極めて高い)——全国でも上位に位置する高リスク都市だ。周防灘に面した低地に4本の河川が流れ込み、洪水スコア・津波スコア・高潮スコアはいずれも100点満点。2010年7月には梅雨前線豪雨で厚狭川が氾濫し、JR厚狭駅周辺の商店街が浸水深1.4mに達した。活断層「周防灘断層帯」は30年以内に2〜4%の確率でM7クラスの地震を起こすリスクを抱え、歴史記録をさかのぼれば1676年から約350年間で25件の災害が確認されている。

防災DBの125mメッシュ解析によると、市内には洪水浸水想定区域が219,377メッシュ、津波・高潮浸水想定区域が181,348メッシュに及ぶ。市内に住む約5.7万人のうち、多くがこれらの重複ハザードゾーンに暮らしていることになる。


なぜ山陽小野田市はこれほど災害リスクが高いのか

山陽小野田市は2005年、小野田市と山陽町が合併して誕生した。旧市街地は周防灘に面した標高数メートル以下の沿岸低地に広がり、北から流れ下る複数の河川が市内を縦断する。この地形こそが、複合的な災害リスクの根本原因だ。

市内を流れる主要河川は厚東川・厚狭川・有帆川・真締川の4本。いずれも北側の丘陵地帯から始まり、市内中心部の低地を経て周防灘に注ぐ。流域の上流に降った大雨が短時間で低地に集中するため、河川の氾濫リスクが高い。

JR厚狭駅周辺の地形については国土地理院も特に言及しており、「東西約3km・南北約2.5kmの盆地状の低地で、周囲を標高100〜150mの丘陵に囲まれている」と分析している。雨水が山から一気に流れ込む地形条件が、繰り返す浸水被害の背景にある。

さらに、市の南側は周防灘に直接面している。台風や低気圧が接近した際の高潮、そして周防灘断層帯を震源とする津波のリスクも無視できない。防災DBの解析では、津波・高潮の浸水想定メッシュ数は181,348にのぼり、洪水浸水想定と重複するゾーンが市内の広い範囲を占める。


過去の主要災害(詳細)

2010年7月15日——厚狭川氾濫・商店街浸水

2010年7月、西日本を直撃した梅雨前線豪雨は山陽小野田市に深刻な被害をもたらした。東厚保雨量観測所では時間雨量58mmを記録。厚狭川が越流氾濫を起こし、右岸の厚狭天満宮付近では溢水深約1.3mに達した。商店街南側地区では浸水深0.9〜1.4mの被害が広がり、国土技術政策総合研究所による緊急調査が実施された(国総研調査報告、2010年7月29日)。

この災害を受け、山陽小野田市は厚狭川洪水ハザードマップを更新(2022年3月)。2日間累積雨量552mmを想定した最新版が公開されている。

2023年——梅雨前線豪雨で再び浸水

山口大学の研究(2024年8月公表)によると、2023年の梅雨前線豪雨でも厚狭地区が浸水被害を受けた。2010年との比較解析では、発生メカニズムや浸水域の特徴が詳細に分析されており、同地区が繰り返し浸水するリスク地帯であることが裏付けられている。

2001年3月24日——芸予地震

2001年3月24日、広島県と愛媛県の間の安芸灘を震源とするM6.7の芸予地震が発生。山陽小野田市でも揺れが観測された(NIEDデータより)。山口県全体では建物被害や地盤液状化の報告があった。

1999年9月24日——平成11年台風第18号

1999年9月24日、台風18号が熊本県北部に上陸。九州・山口を中心に高潮・強風被害をもたらした。高潮の主要被害は熊本・大分方面に集中したが、周防灘に面する山陽小野田市も強風・高波の影響を受けた記録がNIEDに残る。この台風は日本の台風史上最強クラスの勢力で、最大風速69.0m/sを記録している。

1997年6月25日——山口県北部の地震

1997年6月25日、山口県北部を震源とするM6.6の地震が発生。山陽小野田市を含む山口県内広域で揺れが観測された(NIED記録)。

1942年——周防灘台風

1942年(昭和17年)、「周防灘台風」と記録された台風が山陽小野田市を直撃。NIEDデータに「周防灘台風」として明示されており、周防灘沿岸地域に甚大な高潮・暴風被害をもたらしたとされている。戦時中の記録のため詳細被害数は不明だが、沿岸低地への高潮は壊滅的であったと考えられる。

1707年11月21日——防長の地震

1707年11月21日(宝永4年10月4日)、「防長の地震」と記録される地震が発生。同日は宝永地震(M8.6)も発生しており、この地震に関連する揺れが山口県(当時の長門国・周防国)に及んだとされる。宝永地震は南海トラフを震源とする超巨大地震であり、翌日には宝永大津波が太平洋岸を中心に広大な被害をもたらした(本データはNIEDより)。


全災害年表

月日 災害名・概要 種別
2001 3/24 芸予地震 地震
1999 9/24 平成11年台風第18号 台風・高潮
1998 5/23 地震(詳細不明) 地震
1997 6/25 山口県北部の地震 地震
1991 10/28 地震(詳細不明) 地震
1991 平成3年台風第19号 台風
1987 11/18 地震(詳細不明) 地震
1979 7/13 地震(詳細不明) 地震
1968 4/1 日向灘地震 地震
1960 5/23 チリ地震津波 地震・津波
1960 5/11 地震(詳細不明) 地震
1953 6 風水害 風水害
1943 8/8 地震(詳細不明) 地震
1942 周防灘台風 台風・高潮
1941 4/6 地震(詳細不明) 地震
1937 2/27 地震(詳細不明) 地震
1935 7/17 地震(詳細不明) 地震
1929 8/4 地震(詳細不明) 地震
1898 4/3 見島の地震 地震
1859 10/4 石見の地震 地震
1857 7/8 萩の地震 地震
1793 1/13 長門・周防の地震 地震
1778 2/14 石見の地震 地震
1707 11/21 防長の地震 地震
1676 7/12 石見の地震 地震

出典: 国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース

この年表からわかるとおり、25件のうち実に21件が地震だ。山陽小野田市は「洪水の街」であると同時に「地震の多い街」でもある。


洪水・浸水リスク——繰り返す河川氾濫

防災DBの125mメッシュ解析が示す洪水リスクは深刻だ。市内で最もリスクが高い河川の内訳は以下のとおり。

河川名 浸水想定メッシュ数 最大浸水深 平均浸水深 最大継続時間
厚東川 1,473 10.0m 2.82m 72時間
厚狭川 1,260 5.0m 2.80m 336時間(14日間)
木屋川 902 5.0m 1.91m 72時間
有帆川 860 5.0m 1.91m 72時間
神田川 426 5.0m 0.99m 12時間
田部川 298 5.0m 1.06m 24時間
真締川 150 20.0m 1.38m 72時間

出典: 防災DB(国土交通省洪水浸水想定区域データを125mメッシュに変換・集計)

浸水深のリアルな感覚を持ってほしい。 0.5mは大人の膝上まで、1mは腰まで、2mは頭上まで、3mは1階の天井まで、5mは2階の窓まで水が来る水位だ。厚東川では最大10m(3階建て建物の屋根付近)、真締川では最大20m(6〜7階建て相当)という想定もあり、河川沿いの低地では完全な浸水が避けられない。

特に注目すべきは厚狭川の「継続時間336時間(14日間)」という数値だ。これは、氾濫した場合に水が引くまでに2週間かかる可能性があることを意味する。長期避難を余儀なくされるリスクが高い。

2010年の氾濫では国土技術政策総合研究所の調査で「商店街南側地区で浸水深0.9〜1.4m」が記録された。このレベルの浸水でも、車は動かず、電気系統はショートし、1階に残っていた場合の脱出は極めて困難になる。


津波・高潮リスク——周防灘からの脅威

山陽小野田市は周防灘に直接面しており、防災DBの分析では津波スコア100点・高潮スコア100点という最高値が記録されている。

市の津波ハザードマップは、以下の3シナリオを想定して作成されている(山陽小野田市公式HPより):
1. 南海トラフ巨大地震
2. 周防灘断層群主部の地震
3. 日本海沿岸の地震

防災DBの125mメッシュ解析では、市内の津波・高潮浸水想定区域は181,348メッシュ。最大浸水深は5.0m(2階の床上相当)が想定されている。沿岸低地の多くが浸水エリアに含まれており、周防灘に面した市街地への到達時間は短い。

歴史的にも1960年のチリ地震津波がNIEDに記録されており、太平洋を伝わってきた津波が周防灘にまで到達していたことが分かる。

高潮については、1942年の「周防灘台風」、1999年の台風18号など、台風接近時に周防灘から高潮が押し寄せるリスクが繰り返し記録されている。


地震・活断層リスク——30年以内に2〜4%の確率

山陽小野田市の直下・近傍には周防灘断層帯が走っている。

断層名 想定規模 30年発生確率 影響メッシュ数
周防灘断層帯(主部区間) M7.0〜M7.6 2.93%(約3%) 156,992
周防灘断層帯(秋穂沖断層区間) M6.6 0.75% 102,112

出典: 防災DB(地震調査研究推進本部データより算出)、地震本部「周防灘断層帯の長期評価」

地震調査研究推進本部(地震本部)の評価では、周防灘断層帯主部が全体として活動した場合、M7.6程度の地震が発生する可能性があり、今後30年以内の発生確率は2〜4%とされている。確率だけ見れば小さく感じるかもしれないが、これは「新幹線が今後30年で重大事故を起こす確率」と同程度のオーダーだ——「ない」とは言えない数字である。

防災DBの125mメッシュ解析による地震動確率は以下のとおり。

  • 震度5弱以上(30年確率): 平均43.04%、最大89.09%
  • 震度6弱以上(30年確率): 平均3.89%、最大19.98%
  • 平均Vs30(表層地盤のS波速度): 449.1 m/s

Vs30の値が449m/sという数値は、岩盤や礫層が多い「比較的硬い地盤」を示すが、市内の沿岸低地や河川沿いの地域では地盤が軟弱な場所も混在する。震度6弱以上の確率が最大で約20%に達するメッシュが市内に存在する点は見逃せない。


土砂災害リスク

防災DBの125mメッシュ解析では、市内の土砂災害リスクメッシュ数は123メッシュ、土砂災害ハザード区域数は75箇所と記録されている。市の北部から中部にかけての丘陵地帯が主な対象エリアだ。

市は土砂災害ハザードマップ(土砂災害警戒区域・特別警戒区域対象)を公式に公表しており、丘陵地沿いの集落では急傾斜地崩壊や土石流のリスクがある。洪水と土砂災害が同時発生する複合災害時には、丘陵地から低地への移動が困難になる可能性があり、早めの避難判断が求められる。


市内の避難施設一覧

山陽小野田市内には58箇所の避難場所が指定されている(うち広域避難場所3箇所)。

広域避難場所(大規模災害時の最終避難地)

施設名 所在地
江汐公園 山口県山陽小野田市高畑
竜王山 山口県山陽小野田市竜王山
須恵健康公園 山口県山陽小野田市須恵一丁目

主な避難場所(一部)

施設名 所在地
厚狭中学校体育館 山陽小野田市大字山川829
厚狭高等学校南校舎体育館 山陽小野田市貴船町東
厚陽中学校体育館 山陽小野田市大字郡3250
埴生中学校体育館 山陽小野田市大字埴生283
小野田中学校 山陽小野田市丸河内1018
市民体育館 山陽小野田市中川五丁目2番1号
山口東京理科大学 山陽小野田市大学通1-1-1
市役所 山陽小野田市日の出1-1-1

最寄りの避難所を今すぐ確認する: 山陽小野田市防災ページ(ハザードマップ一覧)


今からできる備え

ハザードマップで自宅のリスクを確認する

山陽小野田市は洪水・津波・高潮・土砂災害の4種類のハザードマップを公式に公開している。自宅の住所がどのリスクゾーンに該当するかを必ず確認してほしい。

山陽小野田市は4種類のハザードマップをすべて公式に公開している。洪水は有帆川・厚狭川等の洪水ハザードマップ、海からの脅威については津波ハザードマップ高潮ハザードマップ、そして北部丘陵地帯向けに土砂災害ハザードマップが整備されている。まず防災情報ページのトップにアクセスし、自宅周辺の全リスクを一度に確認することを強く勧める。

複合災害への備え

山陽小野田市では「台風上陸 → 高潮 + 洪水が同時発生」という複合災害が特に危険だ。高潮で海からの水が市内に流入すると同時に、河川氾濫で陸からの水も押し寄せる。この状況では逃げる方向を誤ると孤立する。台風が周防灘に接近する前に、早めに広域避難場所(丘陵地のある江汐公園・竜王山など)へ移動することが鉄則だ。

備蓄・避難計画

  • 食料・水: 最低7日分(厚狭川の氾濫継続時間336時間=14日を考慮すれば2週間分が理想)
  • 避難経路: 洪水・津波・高潮のそれぞれで逃げる方向が異なる。事前にルートを確認する
  • 避難タイミング: 「避難指示」が出る前に動く。2010年・2023年の浸水では、水位上昇が急速だった

データ出典

データ 出典
洪水浸水想定(125mメッシュ) 防災DB(bousaidb.jp)、原データ: 国土交通省洪水浸水想定区域
津波・高潮浸水想定 防災DB(bousaidb.jp)、原データ: 国土交通省・山口県
地震発生確率・地盤データ 防災DB(bousaidb.jp)、原データ: 防災科学技術研究所J-SHIS(2024年版)
活断層データ 防災DB(bousaidb.jp)、原データ: 地震調査研究推進本部
過去の災害事例 防災科学技術研究所(NIED)自然災害データベース
避難場所情報 国土数値情報 避難施設データ(国土交通省)
2010年厚狭川氾濫調査 国土技術政策総合研究所(国総研)調査報告(2010年7月29日)
2010年・2023年浸水比較研究 山口大学(2024年8月公表)
厚狭川ハザードマップ更新情報 山陽小野田市公式HP(2022年3月)
周防灘断層帯評価 地震調査研究推進本部「活断層の長期評価」
津波ハザードマップ作成根拠 山陽小野田市公式HP(南海トラフ・周防灘断層群・日本海沿岸)

著者: 防災DB編集部 / 最終更新: 2026年4月

本記事のリスクスコアは防災DB(bousaidb.jp)の125mメッシュ解析(2024年データ基準)に基づきます。実際の避難判断は自治体が発令する避難指示に従ってください。